添付一覧
○身体障害者スポーツの振興について
(昭和三八年五月二〇日)
(社発第三七〇号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会局長通知)
身体障害者のスポーツについては、すでに諸外国では機能回復その他心理的及び健康保持等の面から更生上の効果が極めて著るしい点に着目し、広く実施され、また国際的な競技会の開催等も行なわれている現状である。
しかるに、わが国においては、近年ようやく全国的に身体障害者スポーツ振興の気運が高まりつつあるが、未だ必ずしも十分な状態にあるとはいい難いので、今後国としても身体障害者スポーツの振興を身体障害者更生援護の一環として積極的に推進することとなつた。
ついては、身体障害者スポーツの振興施策に関しては左記事項に留意のうえ、所要の対策の充実強化に格段の配意を煩わしたい。
なお、昭和三八年度において別添「身体障害者体育大会実施要綱」に準拠して行なわれた大会の運営費に対し、予算補助を行なうこととなつたので、了知のうえ、遺憾のないよう措置されたい。
記
1 身体障害者スポーツ振興の基本方針
身体障害者スポーツの振興は、身体障害者がその適性及び健康状態に応じてにスポーツに親しむことができる諸条件の整備を前提として身体障害者の体力の維持、増強、残存能力の向上及び心理的更生等の効果を図り、身体障害者の更生援護に資することを目的とするものであること。
2 関係機関との協力
身体障害者スポーツの振興は、管下市区町村はもとより、関係行政機関、身体障害者関係施設、身体障害者福祉関係団体、医療関係者、体育、教育関係団体等関係諸機関の協力を得て初めて成果を得ることができるものであることに留意し、これらの指導啓発に努めるとともに積極的な協力を得る必要があること。
3 身体障害者スポーツ行事の実施及び奨励
(1) 身体障害者が広くかつ積極的に参加できる運動競技及び体育活動(キヤンプ活動その他野外活動を含む。)等のスポーツ行事を実施するように努めること。
(2) 身体障害者の適正に応じたスポーツの講習会、研究集会等の開催その他必要な措置を講ずるように努めること。
(3) 前記(1)、(2)に掲げる事項については、管下市区町村はもとより、関係諸機関に対しても、これが実施について奨励するとともに、これらの指導連絡に努めること。
4 指導者の育成
身体障害者スポーツは、健常者のスポーツに比し、身体障害者に対する医学的及び心理学的効果との関連性又は事故防止の方法等について特別の配慮を必要とするものであることにかんがみ、身体障害者スポーツの指導に習熟した指導員の育成に努める必要がある。
5 施設の利用
スポーツ施設を支障のない限り、身体障害者スポーツのための利用に供するように努めるとともに、管下スポーツ施設設置者に対しても、その旨を普及指導されたいこと。
6 事故の防止
身体障害者スポーツ参加者の事故を防止するため、スポーツ参加者の健康診断、補装具の調整、スポーツ施設及び競技用具の整備、指導員の充実、事故防止に関する知識の普及その他必要な措置を講ずるよう配意すること。
〔別添〕
身体障害者体育大会実施要綱
1 趣旨
身体障害者体育大会(以下「大会」という。)は身体障害者の医学的、心理的更生効果の促進を図るため、身体障害者福祉法の趣旨にのつとり諸般の条件を満たした適切な配意のもとに実施される運動競技として運営するものとする。
2 目的
大会は、身体障害者が参加することにより、運動競技を通じ、体力の維持、増強及び残存能力の向上を図るとともに、明朗、快活かつ積極的な性格と協調精神を養ない、身体障害者に対して明るい生活の形成に寄与することを目的とする。
3 主催
都道府県及び指定都市とする。
4 大会参加資格
身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号)第一五条の規定により身体障害者手帳の交付を受けた者とする。
5 大会の運営
(1) 主催者は、関係行政機関、身体障害者関係施設、身体障害者福祉関係団体、医療関係者、体育、教育関係団体等関係諸機関の協力を得て大会運営に万全を期するものとする。
(2) 大会の運営を円滑かつ効果的に実施するため、関係者による運営委員会等を設けて企画ないし立案を行ない、計画的かつ組織的な運営をはかるものとする
(3) 大会の実施については「大会実施要綱」等を作成し、綿密周到な実施計画のもとに行なうものとする。
(4) 大会の執行機関として事務局等を設け、実施計画を適確に遂行するものとする。
(5) 大会の周知については、関係行政機関、報道関係機関等の協力を得てその徹底を期するものとする。
6 大会の実施
(1) 参加者
ア 一般家庭、職場等における身体障害者の参加を奨励し参加者が施設収容者、学生等特定の身体障害者のみにかたよることのないよう配慮するものとする。
イ 参加者はあらかじめ専門医の診断等により競技の種目に応じ参加に適しているものと判定された者とする。
(2) 実施時期
実施時期は広く一般の身体障害者が参加できる時期を選び、開催日程は概ね一日とする。
(3) 競技種目
競技種目の選定にあたつては、次に掲げる事項に留意するものとする。
なお、競技種目と障害別との関係は別紙を参考とされたい。
ア 身体障害者の更生上有効適切であること。
イ 身体障害者の体力、気力を養なうに適したものであること。
ウ 場所、用具、競技の方法、競技管理、経費等からみて、実施が容易であること。
エ 健常者による一般スポーツとの関連性があること。
オ 可及的に国際性を有し、かつ国内の生活様式に適したものであること。
カ チーム・ワークの愉快さが自発的に楽しめるチーム・スポーツを取り入れること。
(4) 用具の規格、実施方法等
用具の規格、競技の実施方法、競技採点基準については、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 競技の実施にあたつては、参加者に競技規則の周知徹底を図るものとすること。
イ 競技の用具については、参加者の実態に即応したものを適宜選択して使用すること。
ウ 競技の採点は、障害の程度に応じ、著るしく不均衡の生ずることのないように配慮すること。
(5) 事故防止
身体障害者の特性にかんがみ、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 医師その他指導員の看視によつて、事故防止を図るとともに事故発生に備え、救護班による救急の万全を期すること。
イ 事故防止のため補装具の適否、競技用具の整備、介護方法、補助位置等について十分注意すること。
(6) その他留意事項
その他次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 競技の記録に重点をおきすぎないよう特に配慮すること。
イ 身体障害者と健常者とを混合編成することは本来の目的に照して望ましくないこと。
身体障害者のスポーツ種目及び適用者
競技種目 |
適用者 |
備考 |
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肢体不自由 |
視覚障害 |
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1 競走競技Ⅰ |
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100m(60m)走 |
{一側上肢切断者 一側下肢切断者 一側上肢機能障害者 |
半盲者 |
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400m走 |
{/一側上肢切断者/一側上肢機能障害者/ |
同上 |
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1,500m走 |
同上 |
同上 |
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60m鉄線競走 |
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全盲者 |
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2 競走競技Ⅱ |
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50m(30m)片脚跳 |
{/一側下肢切断者/一側下肢機能障害者/ |
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40m(30m)〃 |
{/一側上肢切断者/一側上肢機能障害者/ |
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3 跳躍競技Ⅰ |
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立巾跳(立巾跳) |
{/一側下肢切断者 一側下肢機能障害者/両側上肢 機能障害者/ |
全盲者 |
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立高跳 |
一側下肢切断者 |
全盲者 |
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立三段跳 |
上肢切断者上肢機能障害者 |
全盲者 |
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4 跳躍競技Ⅱ |
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走巾跳(走巾跳) |
{/一側上肢切断者/一側上肢機能障害者/ |
半盲者 |
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走高跳(走高跳) |
同上 |
半盲者 |
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三段跳 |
同上 |
半盲者 |
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5 砲丸投 |
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砲丸投5.45kg(4kg) |
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車椅子上 |
{/両側下肢切断者/両側下肢機能障害者/ |
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投擲台上 |
同上 |
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直立 |
{/一側下肢切断者 一側下肢機能障害者/一側上肢切断者 一側上肢機能障害者/ |
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半盲者 |
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6 バスケツトボール投 |
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(女子用バスケツトボール投) 車椅子上 |
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砲丸投と同じ。 |
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投擲台上 |
全盲者 |
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直立 |
半盲者 |
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7 競歩競技 |
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1,000m(500m) |
両側下腿切断者 両側下腿以下機能障害者 一側大腿切断者 一側大腿以下機能障害者 |
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補装具使用 |
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500m(300m) |
一側大腿一側下腿切断者 |
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8 杖競歩及び松葉杖競歩 |
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300m(200m) |
{/両側大腿切断者/両下肢機能障害者/ |
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9 重量挙俵さし15kg時間 |
{/一側上肢切断者/一側上肢機能障害者/ |
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砂のう片手水平保持重量 |
同上 |
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10 車椅子競技 |
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50mスラローム(50mスラローム) |
{/両下肢切断者/両下肢機能障害者/ |
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両手手動輪付車椅子使用 |
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11 水上競技(水泳) |
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全盲者 半盲者 |
1肢障害者は50m 2肢障害者は25mとする。 |
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自由型 25m50m |
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(一側上肢切断者 一側下肢切断者 一側上肢機能障害者 一側下肢機能障害者 |
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背泳 25m50m |
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(一側下肢一側上肢切断者 一側下肢一側上肢機能障害者 両側下肢切断者 両側下肢機能障害者 |
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平泳 25m50m |
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12 弓(弓)(洋弓、和弓) |
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車椅子上20m30m |
{/両下肢切断者/両下肢機能障害者/ |
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直立20m30m |
{/一側下肢切断者/一側下肢機能障害者/ |
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13 卓球 (卓球) |
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車椅子上 |
両側下肢切断者 両下肢機能障害者 |
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直立 |
{/一側上肢切断者/一側上肢機能障害者/ |
全盲者 半盲者 |
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義手ラケツト握 |
義手でラケツトを操作する。 |
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14 バトミントン(バトミントン) |
{/一側下肢切断者 一側下肢機能障害者/一側上肢切断者 一側上肢機能障害者/一側下肢一側上肢切断者 同機能障害者/ |
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15 車椅子バスケツトボール |
両下肢切断者 両下肢機能障害者 |
全盲者 半盲者 |
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16 ソフトボール |
一肢切断者 一肢機能障害者 |
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17 テニス(テニス) |
同上 |
全盲者 半盲者 |
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18 相撲 |
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19 盲人野球 |
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全盲者 半盲者 |
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注
1 競技種目と適用者の関係は、当該競技種目についてここに挙げた障害より軽度の者は、競技に参加することができないこと。
2 競技種目は、ここに挙げた種目のほか、次に掲げる種目についても適宜実施することができること。
円盤投、槍投、ハンマー投、槍正確投、メジシンボール投等。
3 競技種目の( )の動きは、女子に適用するものであること。