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○生活保護法による保護の実施要領について

(昭和36年4月1日)

(厚生省発社第123号)

(各都道府県知事・各指定都市長あて厚生事務次官通知)

標記については、昭和33年6月6日厚生省発社第111号厚生事務次官通知を全面改正して新たに次のとおり定めることとしたので、生活保護法による保護の実施については、法令及び告示に定めるもののほか、この要領によることとされたい。

なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準であることを申し添える。

第1 世帯の認定

同一の住居に居住し、生計を一にしている者は、原則として、同一世帯員として認定すること。

なお、居住を一にしていない場合であっても、同一世帯として認定することが適当であるときは、同様とすること。

第2 実施責任

保護の実施責任は、要保護者の居住地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事実がある場所をいうものであること。

なお、現にその場所に居住していなくても、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。

第3 資産の活用

最低生活の内容としてその所有又は利用を容認するに適しない資産は、次の場合を除き、原則として処分のうえ、最低限度の生活の維持のために活用させること。

なお、資産の活用は売却を原則とするが、これにより難いときは当該資産の貸与によって収益をあげる等活用の方法を考慮すること。

1 その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの

2 現在活用されてはいないが、近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持に実効があがると認められるもの

3 処分することができないか、又は著しく困難なもの

4 売却代金よりも売却に要する経費が高いもの

5 社会通念上処分させることを適当としないもの

第4 稼働能力の活用

要保護者に稼働能力がある場合には、その稼働能力を最低限度の生活の維持のために活用させること。

第5 扶養義務の取扱い

要保護者に扶養義務者がある場合には、扶養義務者に扶養及びその他の支援を求めるよう、要保護者を指導すること。また、民法上の扶養義務の履行を期待できる扶養義務者のあるときは、その扶養を保護に優先させること。この民法上の扶養義務は、法律上の義務ではあるが、これを直ちに法律に訴えて法律上の問題として取り運ぶことは扶養義務の性質上なるべく避けることが望ましいので、努めて当事者間における話合いによって解決し、円満裡に履行させることを本旨として取り扱うこと。

第6 他法他施策の活用

他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者又は受けることができると推定される者については、極力その利用に努めさせること。

第7 最低生活費の認定

最低生活費は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別等による一般的な需要に基づくほか、健康状態等によるその個人又は世帯の特別の需要の相異並びにこれらの需要の継続性又は臨時性を考慮して認定すること。

1 経常的最低生活費

経常的最低生活費は、要保護者の衣食等月々の経常的な最低生活需要のすべてを満たすための費用として認定するものであり、したがって、被保護者は、経常的最低生活費の範囲内において通常予測される生活需要はすべてまかなうべきものであること。

実施機関は、保護の実施にあたり、被保護者がこの趣旨を理解し、自己の生活の維持向上に努めるよう指導すること。

2 臨時的最低生活費(一時扶助費)

臨時的最低生活費(一時扶助費)は、次に掲げる特別の需要のある者について、最低生活に必要不可欠な物資を欠いていると認められる場合であって、それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合に限り、別に定めるところにより、臨時的に認定するものであること。

なお、被服費等の日常の諸経費は、本来経常的最低生活費の範囲内で、被保護者が、計画的に順次更新していくべきものであるから、一時扶助の認定にあたっては、十分留意すること。

(1) 出生、入学、入退院等による臨時的な特別需要

(2) 日常生活の用を弁ずることのできない長期療養者について臨時的に生じた特別需要

(3) 新たに保護開始する際等に最低生活の基盤となる物資を欠いている場合の特別需要

第8 収入の認定

収入の認定は、次により行なうこと。

1 収入に関する申告及び調査

(1) 要保護者が保護の開始又は変更の申請をしたときのほか、次のような場合に、当該被保護者の収入に関し、申告を行なわせること。

ア 実施機関において収入に関する定期又は随時の認定を行なおうとするとき。

イ 当該世帯の収入に変動のあったことが推定され又は変動のあることが予想されるとき。

(2) 収入に変動があるときの申告については、あらかじめ被保護者に申告の要領、手続等を十分理解させ、つとめて自主的な申告を励行させること。

(3) 収入に関する申告は、収入を得る関係先、収入の有無、程度、内訳等について行なわせるものとし、保護の目的達成に必要な場合においては、前記の申告を書面で行なわせること。なお、その際これらの事項を証明すべき資料があれば、必ずこれを提出させること。

(4) 収入の認定にあたっては、(1)から(3)までによるほか、当該世帯の預金、現金、動産、不動産等の資産の状況、世帯員の生活歴、技能、稼働能力等の状況、社会保険その他社会保障的施策による受給資格の有無、扶養義務者又は縁故者等からの援助及びその世帯における金銭収入等のすべてについて綿密な調査を行ない、必要に応じて関係先につき調査を行なう等収入源について直接に把握すること。

2 収入額の認定の原則

収入の認定は、月額によることとし、この場合において、収入がほぼ確実に推定できるときはその額により、そうでないときは前三箇月間程度における収入額を標準として定めた額により、数箇月若しくはそれ以上の長期間にわたって収入の実情につき観察することを適当とするときは長期間の観察の結果により、それぞれ適正に認定すること。

3 認定指針

(1) 就労に伴う収入

ア 勤労(被用)収入

(ア) 官公署、会社、工場、商店等に常用で勤務し、又は日雇その他により勤労収入を得ている者については、基本給、勤務地手当、家族手当及び超過勤務手当等の収入総額を認定すること。

(イ) 勤労収入を得るための必要経費としては、(4)によるほか、社会保険料、所得税、労働組合費、通勤費等の実費の額を認定すること。

イ 農業収入

(ア) 農業により収入を得ている者については、すべての農作物につき調査し、その収穫量に基づいて認定すること。

(イ) 農業収入を得るための必要経費としては、(4)によるほか、生産必要経費として小作料、農業保険法(昭和22年法律第185号)による掛金、雇人費、農機具の修理費、少額農具の購入費、納屋の修理費、水利組合費、肥料代、種苗代、薬剤費等についてその実際必要額を認定すること。

ウ 農業以外の事業(自営)収入

(ア) 農業以外の事業(いわゆる固定的な内職を含む。)により収入を得ている者については、その事業の種類に応じて、実際の収入額を認定し、又はその地域の同業者の収入の状況、その世帯の日常生活の状況等から客観的根拠に基づいた妥当性のある認定を行なうこと。

(イ) 農業以外の事業収入を得るための必要経費は、(4)によるほか、その事業に必要な経費として店舗の家賃、地代、機械器具の修理費、店舗の修理費、原材料費、仕入代、交通費、運搬費等の諸経費についてその実際必要額を認定すること。ただし、前記家賃、地代等の額に住宅費を含めて処理する場合においては、住宅費にこれらの費用を重ねて計上してはならないこと。また、下宿間貸業であって家屋が自己の所有でなく、家賃を必要とする場合には、下宿間貸代の範囲内において実際家賃を認定して差し支えないこと。

エ その他不安定な就労による収入

知己、近隣等よりの臨時的な報酬の性質を有する少額の金銭その他少額かつ不安定な稼働収入がある場合で、その額(受領するために交通費等を必要とする場合はその必要経費の額を控除した額とする。)が月額15,000円をこえるときは、そのこえる額を収入として認定すること。

(2) 就労に伴う収入以外の収入

ア 恩給、年金等の収入

(ア) 恩給、年金、失業保険金その他の公の給付(地方公共団体又はその長が条例又は予算措置により定期的に支給する金銭を含む。)については、その実際の受給額を認定すること。ただし、(3)のオ、ケ又はコに該当する額については、この限りでない。

(イ) (ア)の収入を得るために必要な経費として、交通費、所得税、郵便料等を要する場合又は受給資格の証明のために必要とした費用がある場合は、その実際必要額を認定すること。

イ 仕送り、贈与等による収入

(ア) 他からの仕送り、贈与等による金銭であって社会通念上収入として認定することを適当としないもののほかは、すべて認定すること。

(イ) 他からの仕送り、贈与等による主食、野菜又は魚介は、その仕送り、贈与等を受けた量について、農業収入又は農業以外の事業収入の認定の例により金銭に換算した額を認定すること。

(ウ) (ア)又は(イ)の収入を得るために必要な経費としてこれを受領するための交通費等を必要とする場合は、その実際必要額を認定すること。

ウ 財産収入

(ア) 田畑、家屋、機械器具等を他に利用させて得られる地代、小作料、家賃、間代、使用料等の収入については、その実際の収入額を認定すること。

(イ) 家屋の補修費、地代、機械器具等の修理費、その他(ア)の収入をあげるために必要とする経費については、最小限度の額を認定すること。

エ その他の収入

(ア) 地方公共団体又はその長が年末等の時期に支給する金銭(ア又は(3)のエ、ケ、コ若しくはサに該当するものを除く。)については、その額が世帯合算額8,000円(月額)をこえる場合、そのこえる額を収入として認定すること。

(イ) 不動産又は動産の処分による収入、保険金その他の臨時的収入((3)のオ、カ又はキに該当する額を除く。)については、その額(受領するために交通費等を必要とする場合は、その必要経費の額を控除した額とする。)が、世帯合算額8,000円(月額)をこえる場合、そのこえる額を収入として認定すること。

(3) 次に掲げるものは、収入として認定しないこと。

ア 社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く。)から被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないもの

イ 出産、就職、結婚、葬祭等に際して贈与される金銭であって、社会通念上収入として認定することが適当でないもの

ウ 他法、他施策等により貸し付けられる資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

エ 自立更生を目的として恵与される金銭のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額

オ 災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額

カ 保護の実施機関の指導又は指示により、動産又は不動産を売却して得た金銭のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

キ 死亡を支給事由として臨時的に受ける保険金(オに該当するものを除く。)のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額

ク 高等学校等で就学しながら保護を受けることができるものとされた者の収入のうち、次に掲げるもの(ウからキまでに該当するものを除く。)

(ア) 生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)別表第7「生業扶助基準」に規定する高等学校等就学費の支給対象とならない経費(学習塾費等を含む。)及び高等学校等就学費の基準額で賄いきれない経費であって、その者の就学のために必要な最小限度の額

(イ) 当該被保護者の就労や早期の保護脱却に資する経費に充てられることを保護の実施機関が認めた場合において、これに要する必要最小限度の額

ケ 心身障害児(者)、老人等社会生活を営むうえで特に社会的な障害を有する者の福祉を図るため、地方公共団体又はその長が条例等に基づき定期的に支給する金銭のうち支給対象者一人につき8,000円以内の額(月額)

コ 独立行政法人福祉医療機構法第12条第1項第10号に規定する心身障害者扶養共済制度により地方公共団体から支給される年金

サ 地方公共団体又はその長から国民の祝日たる敬老の日又はこどもの日の行事の一環として支給される金銭

シ 現に義務教育を受けている児童が就労して得た収入であって、収入として認定することが適当でないもの

ス 戦傷病者戦没者遺族等援護法による弔慰金又は戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法による特別弔慰金

セ 未帰還者に関する特別措置法による弔慰料(同一世帯内に同一の者につきスを受けることができる者がある場合を除く。)

ソ 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)により支給される医療特別手当のうち39,390円並びに同法により支給される原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当及び葬祭料

タ 戦没者等の妻に対する特別給付金支給法、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法又は戦没者の父母等に対する特別給付金支給法により交付される国債の償還金

チ 公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号)により支給される療養手当及び同法により支給される次に掲げる補償給付ごとに次に定める額

(ア) 障害補償費(介護加算額を除く。)

障害の程度が公害健康被害の補償等に関する法律施行令(昭和49年政令第295号)第10条に規定する表(以下「公害障害等級表」という。)の特級又は1級に該当する者に支給される場合

36,930円

障害の程度が公害障害等級表の2級に該当する者に支給される場合

18,470円

障害の程度が公害障害等級表の3級に該当する者に支給される場合

11,110円

(イ) 遺族補償費

36,930円

ツ 国及び地方公共団体が実施する統計調査の調査対象となり、協力した際に謝礼として支給される金銭

(4) 勤労に伴う必要経費

(1)のアからウまでに掲げる収入を得ている者については、勤労に伴う必要経費として別表「基礎控除額表」の額を認定すること。

なお、新規に就労したため特別の経費を必要とする者については、別に定めるところにより、月額12,200円をその者の収入から控除し、20歳未満の者については、別に定めるところにより、月額11,600円をその者の収入から控除すること。

(5) その他の必要経費

次の経費については、真に必要やむを得ないものに限り、必要な最小限度の額を認定して差し支えないこと。

ア 出かせぎ、行商、船舶乗組、寄宿等に要する一般生活費又は住宅費の実費

イ 就労に伴う子の託児費

ウ 他法、他施策等による貸付金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額の償還金

エ 独立行政法人住宅金融支援機構の貸付金の償還金

オ 地方税等の公租公課

カ 健康保険の任意継続保険料

キ 国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料

第9 保護の開始申請等

生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も現に慎むこと。

第10 保護の決定

保護の要否及び程度は、原則として、当該世帯につき認定した最低生活費と、第8によって認定した収入(以下「収入充当額」という。)との対比によって決定すること。また、保護の種類は、その収入充当額を、原則として、第1に衣食等の生活費に、第2に住宅費に、第3に教育費及び高等学校等への就学に必要な経費に、以下介護、医療、出産、生業(高等学校等への就学に必要な経費を除く。)、葬祭に必要な経費の順に充当させ、その不足する費用に対応してこれを定めること。

第11 施行期日及び関係通知の廃止

1 この通知は、昭和36年4月1日から施行すること。ただし、母子加算に関する改正は、昭和36年9月1日から施行すること。

2 昭和33年6月6日厚生省発社第111号厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」は、廃止すること。ただし、当該通知中母子加算に関する部分は、昭和36年8月31日までなお効力を有すること。

別表

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