添付一覧
○生活保護法の施行に関する件
(昭和二五年五月二〇日)
(発社第四六号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
旧生活保護法は、昭和二一年一○月一日に施行されてから救済福祉に関する基本的法律として極めて効果的な役割を果してきたのであるが、制定当時とは社会的、経済的事情を著しく異にする今日においては、法制上も幾多の不備欠陥が認められ、殊に新憲法の精神に立脚して真に国民の最低生活を保障するためには、この制度の根本的再編を必要とすることが認められるに至つたので、このたび、この法律の全面的改正が行われるに至つたのである。新法は、昭和二五年五月四日法律第一四四号として公布と同時に施行され、これに伴う政令(政令第一四八号)及び省令(厚生省令第二一号)も夫々本日公布施行の運びとなつたが、この法律運用の適否は、国民生活の安定に影響するところ極めて大なるものがあるから、過去の経験を最大限度に活かし、この法律施行に関する諸般の整備を周到綿密に行うとともに、広く改正の趣旨の普及徹底を図り、特に左記事項に留意し、新法の目的達成に万遺憾のないよう致されたく、命によつて通知する。
なお、この通知において、新たに制定された生活保護法を「新法」と、生活保護法施行令を「令」と、生活保護法施行規則を「規則」と、又従前の生活保護法を「旧法」と夫々略称する。
記
第一 法律改正の趣旨
一 旧法は、救護法における所謂慈恵的な救貧思想を一応脱却していたのであるが、未だ完全に救貧法的色彩を拭払し得るに至らず、殊に憲法第二五条に規定されている生存権保障の精神が未だ法文上明確となつていなかつたので、新法においては、国が国民の最低生活を保障する建前を明確にするため、保護を受ける者の法的地位を確立し、保護機関等の職責権限と要保護者の権利との法的関係とを明瞭化するとともに、保護に関する不服申立制度によつて、要保護者が正当なる保護の実施を主張し得る法的根拠を規定したこと。
二 旧法においては、民生委員をして市町村長の事務を補助せしめていたのであるが、勢の赴くところ民生委員の負担を次第に加重し、且つ、この法律の執行における公的責任を曖昧にするおそれがあつたため、新法においては、一定の資格要件を具備した有給専任職員を市町村長の補助機関とし、民生委員に対しては、その社会奉仕者としての性格よりみて適当と認められる範囲内においてこの法律による保護事務につき協力を求めることとし、以つて、この法律の運用上両者の責任区分を明確にするとともに、それらの協力体制を整えたこと。
三 この法律による医療担当者は、この法律の実施上極めて重要な役割を担当するものであるにもかかわらず、従来その指導、監督につき十分な考慮が払われていなかつた状況にかんがみ、新法においては医療機関に関する基本的事項を明確に規定し、且つ、それらに対する監督を強化したこと。
四 生活保護制度の運用は、旧法の六章四七箇条からなる極めて簡単なる法律を以てしてはその万全を期しがたく、且つ、旧法においては法律で明らかに規定しなければならない事項の多くが施行令以下に譲られており、法制的にみても不完全なものとなつて来たので、新法においてはこの制度における基本問題については、すべてこれを法律において明確に規定したこと。
第二 一般事項
一 この法律による最低生活の保障は、憲法に宣言されている所謂生存権的基本的人権の保障を実定法上に実現したものであり、この法律による保護は、要保護者の困窮の程度に応じて必要の最小限度において行われなければならないものであるから、この保護を漫然と機械的に行うことによつて、国民の勤労意欲を減退させたり、或いはこの法律により当然与えられるべき保護を理由なく抑制することによつて、要保護者の更生の力を枯渇させるようなことがあつては、この法律の目的に背反するものであつて、この法律の目的は、法第一条に明文化されているように要保護者の最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することにあるのであるから、この旨を関係機関に十分認識させ、この目的達成のために法の最も効果的な運用を期する必要があること。
二 この法律による保護は、この法律に定める要件を充たす限り、要保護状態に立ち至つた原因の如何や、又人種、信条、性別、社会的身分、門地等の如何によつて優先的に取扱をすることは、厳に戒めるべきであると同時に、新法において国民に対し積極的に保護請求権を認めた趣旨にかんがみ、この取扱に当つては、あらゆる方面において名実ともに慈恵的観念を一擲して臨むよう十分に指導されたいこと。
三 この法律による保護は、法第一条に規定されているように国民についてのみなされるものであるが、日本国に居住する朝鮮人及び台湾人であつて日本国籍離脱の事実のない者は、この法律の適用に関しては差し当り日本国民として取り扱うこと。
四 新法にいう生活困窮者とは、生活の全分野において、健康で文化的な最低限度の生活を維持することのできない者を総称するのであつて、単に生活扶助該当者のみを指すのでなく、具体的に云えば、新法による保護の種類として定められているところの生活、教育、住宅、医療、出産、生業及び葬祭のために最低限度必要な費用のうち、その一つでも欠く者は、この法律にいう生活困窮者であることに注意し、運用上過誤なきを期すること。
五 この法律による保護は、国民の最低生活を保障するための最後の手段として行われるものであるから、要保護者に対してはまず自力により、又は他の法律による扶助により、生活の維持をすることにあらゆる努力を払わしめ、然る後に、はじめてこの法律による保護を補足的に行う建前をとつているのであつて、この法律の適用に当つては、要保護者をしてその利用し得る物質的又は精神的の資源を最大限に活用させるとともに、他の社会福祉、公衆衛生その他の公的扶助を受け得る者に対してはその扶助を、或いは扶養義務者の扶養を受け得る者に対してはその扶養を受けさせる等、新法の適正な運用を期するよう関係機関を十分指導督励すること。但し、これらの手段を講じても要保護者が最低生活を充たすことの出来ないときは、その不足分を補う程度において保護が積極的に行われなければならないものであることは勿論である。
なお、旧法の下においては、生計の維持に努めない者又は素行不良な者は、保護の絶対的欠格者として取り扱われ保護を実施する余地がなかつたのであるが、これは国民の最低生活保障法としての理念からみて好ましくないので、新法においてはこれを改め、急迫した事由がある場合には、一応先ず保護を加え、然る後、適切な指導、指示その他の措置をすべきこととなつているから、これらの点を実施機関等に十分理解させ、遺漏なき運用を期すること。
第三 保護の原則に関する事項
一 新法においては、生活に困窮する国民に対して保護の請求権を認めたことに対応して、保護は申請に基いて開始することの建前を明らかにしたのであるが、これに決して保護の実施機関を受動的、消極的な立場に置くものではないから、保護の実施に関与する者は、常にその区域内に居住する者の生活状態に細心の注意を払い、急迫の事情のあると否とにかかわらず、保護の漏れることのないようこれが取扱については特に遺憾のないよう配慮すること。
二 この法律による保護の基準は、保護の実質的内容を規定する最も重要なものであるので、更生大臣がこれを定めて別途告示することになつたから、保護の実施機関はこの基準に準拠し、個々の要保護者の個人的又は世帯の実情を考慮し、適正なる保護の程度を決定するよう指導すること。
三 法第九条に規定する必要即応の原則は、要保護者の生活の実情に最も適応した保護を実施すべきことを要請するものであつて、これは厚生大臣が保護の基準を決定するに当り従わなければならない原則であることは勿論、市町村長が保護を実施する上においても従わなければならない原則であること。従つて、例えば、稼働能力のある要保護者に対して、その者の適性に応じ生業扶助を適用しその就労の促進を図ることはもとより必要と認められるが、乳幼児をかかえた母親に対して、同一の方針をもつてのぞむことはむしろ避けるべきであつて、これに対してはその母親がその乳幼児の養育に専念し得るように保護を決定すべきものであること。或いはその世帯において看護を不可欠とする病人がある場合においては、ある程度稼働能力のある者であつてもその病人の看護に専念することができるよう、又人工栄養を必要とする乳児がある場合には、人工栄養によつてその乳児の必要とする栄養が十分に補給し得るようにする等その世帯の必要なる事情を十分に考慮し、保護の種類及び方法を決定することが必要即応の原則にかなう所以であること。
第四 保護の種類及び範囲に関する事項
一 この法律による保護の実施に当つて、保護の種類及び範囲を決定することは極めて重要な意義を有するものであるが、殊に従来生活扶助としてまとめられていたものが今回の改正によつて生活扶助、教育扶助及び住宅扶助の三種類に区別して取り扱われることとなつたから、その運用上不都合の生じないよう十分注意すること。特に、保護の決定をするに当つて、当該要保護世帯の収入を先ず生活の如何なる部面に充当させるかということは、生活を全一的なものと考える場合には一概に速断できない問題であるが、この法律が最低生活保障法である建前を考えると、その収入は原則として先ず衣食の費用に、次いで住居の費用に、次いで教育の費用其の他の必要な費用に充当させる様にし、その不足する経費に対して、この法律による保護を適用すべきであること。
二 法第十八条第二項の規定による葬祭扶助は、被保護者が死亡した場合又は資力に乏しい者が死亡した場合であつて、それらの者の葬祭を行う扶養義務者がないために第三者が代つて葬祭を執行する場合に行われるものであつて、本来の葬祭扶助とは趣を異にし、この場合は葬祭を行う者の資力を問うことなく、実費弁償の意味で葬祭扶助を行うものであること。
なお、この場合葬祭を行うものがないときは、墓地埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)の定めるところにより、その死者の死亡地の市町村長が葬祭を行うこととなり、その場合の費用の負担についても同法の規定するところによるものであること。
第五 保護の機関及び実施に関する事項
一 この法律による保護の実施機関である市町村長は、保護事務という国家事務を国の機関として行う地位にあり、この法律施行上最も重要な責務を有する立場にあるものであるから、市町村長に対しこの法律の趣旨及び運用につき十分理解させる必要があること。
二 市町村長の補助機関としてこの法律実施の主軸となる社会福祉主事の資格、定数については、社会福祉主事の設置に関する法律(昭和二五年五月一五日法律第一八二号)に規定されているが、社会福祉主事は、市町村長の行う保護の決定及び被保護者の生活指導等に関する事務の執行を司るものであり、従つて、その執務の適否は、この法律の目的達成に影響するところ極めて大なるものがあるから、これが職員の設置並びに指導訓練については格別の努力を払うこと。
三 この法律による保護事務の執行は、市町村長又は社会福祉主事の責任によつて行わるべきものであるが、この法律の所期する目的を達成するためには、民生委員の協力を必要とすることが多い現状にかんがみ、民生委員を協力機関としこの法律による保護の実施に協力を求めることとしたものであるから、各地の実情に応じその必要とする協力を得るに努めること。
なお、民生委員のこの法律の施行事務に対する協力の方法については、昨年一○月三一日厚生省発社第七二号社会局長、児童局長連名通知により措置することと了知ありたいこと。
四 この法律の施行に関する事務の監査は、この法律の適正な運営を期する上において極めて重要な意義を有するので、今回の改正によつて厚生大臣及び都道府県知事に対し事務監査を行うことを明文をもつて義務づけ、且つ、この監査に当る官吏及び吏員に対し強力な権限を附与したものであるから、監査に当る者の指導訓練に努め、且つ、事務監査に伴つて必要な費用を十分に計上し、以つて所期の効果をあげるよう努めること。
五 法第二八条の規定により市町村長に附与された調査及び検診の権限は、保護の適正な実施を図るために認められた強力な権限であるから、その行使に当つては要保護者の人権侵害にわたらぬよう慎重なる注意を払い、目的達成のため必要な最少限度に止めるよう特に指導監督を加えること。
第六 保護の方法に関する事項
一 新法において使用されている「居宅保護」及び「収容保護」という用語は、生活扶助についてのみ使用され、他の種類の扶助については居宅又は収容を保護の方法における区別として採用していないこと。但し、統計その他の方面において、特に別途の取扱をする場合があるが、この場合においてはその旨別に明示する予定である。
二 生活扶助のための保護金品は、必ず一月分以内を限度としてこれを前渡しなければならないにもかかわらず、従来とかくこれが厳格に実行されず、ために被保護者の生活に支障の生ずるような事例が相当みられたのであるが、このようなことは絶対に許されないことであるから、今後は保護の実施機関を指導督励してかかる事例の絶無を期すること。
なお、特別の事由によつて一月分をこえて前渡した場合においては、その市町村名、前渡した理由、前渡した世帯数、前渡した月数、前渡した金額等を具し都道府県知事から当省に報告すること。
三 教育扶助のための保護金品は、被保護者の親権者に交付することを原則とすること。但し、これが生活費その他に流用されるおそれのある場合には、これを学校の長に対して交付し、学校の長から被保護者に現物給付させるよう指導すること。
四 出産扶助は、旧法において現物給付によることを原則としていたが、新法においては、金銭給付によることを原則として居り、これは出産扶助の性質上給付の範囲及び程度が概ね一定していること及び被保護者に対する心理的影響等を考慮したことによるものであること。
第七 保護施設に関する事項
一 新法においては、保護施設の種類及びその定義を明確に定めているが、これは保護施設の種類別にその設備及び運営における最低基準を考慮する必要に基くものであるから、その種類別特性を活かすよう留意するとともに、現存の保護施設についても種類別の特性を活かすため、必要に応じ利用者の入替を行う等の措置を講ずること。
なお、今後保護施設の認可に当つては種類別を明らかにすること。
二 保護施設を認可しようとするときは、その施設の状況の事実の認定及び法律の解釈に関する態度を統一する必要があるので、当分の間、あらかじめ、当省に協議の上、認可すること。都道府県が保護施設を設置しようとするときも同様であること。
三 新法による保護施設の基準については、別途通知するから、当分の間、旧法に基き実施された標準によつて取り扱うこと。
なお、授産施設については、昭和二五年四月一○日社乙発第五一号社会局長通知「授産事業の刷新について」によること。
四 旧法第七条の規定により認可された市町村又は公益法人の設置にかかる保護施設は、新法の経過規定により、この法律に基いて認可されたものとして取り扱われるが、この法律に定める要件を充たさないときは、期限を示してこれを改善整備させるよう努めること。
なお、旧法に基いて設置された公益法人以外の私人の保護施設については、この法律施行後三月間(八月四日迄)は、この法律による保護施設として存続することが認められているからその期間内に、すみやかに、公益法人を設立させ法第四一条による認可をうけさせるよう指導すること。この場合においては第七の二による当省への協議は、これを必要としないこと。
五 新法により都道府県知事に対し保護施設の立入検査等強力な権限が附与されたが、これが運用については行き過ぎのないよう十分注意すること。
第八 医療機関及び助産機関に関する事項
一 今回の改正により医療機関等(国の開設するものを除く。)の指定は、都道府県知事がこれを行うことになつたのであるが、その指定に当つては規則第一一条の規定により医療機関等の所在地又は住所地の市町村長の意見を徴した後これを行うこと。
然して、指定に際し医療機関の開設者又は本人の同意を得るに当つては、指定された場合の法律関係、特に診療方針及び診療報酬、医療費審査等の事項について、あらかじめ、十分これを了解せしめた上でこれを行い、後日に問題を生ずることのないよう配意すること。
なお、指定に伴い了解すべき事項の準則については、別途通知する予定である。
二 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、原則として国民健康保険の例によることとし、国民健康保険の行われていない地域においては健康保険の例によることとしたのであるが、社会保険に規定されていないので特に必要と認める場合又は社会保険に準拠することが適当でない場合においては、別途厚生大臣が定めることになつているが、現在旧法によつて行われている診療方針を制限又は低下させる趣旨のものではないから、この点誤解のないよう関係機関にその趣旨を十分周知徹底させること。
三 この法律による医療は、最低医療を本則とし、かりそめにも濫療に亘るべきでないから、医療費の適正な支払を確保するため指定医療機関の診療内容及び診療報酬の審査を適切な方途を講じて実施すること。
右の医療費審査を行うに当つては、なるべく社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会の意見を聞いて行うよう努めること。この場合における取扱の細目については別途通知する。
右以外の場合において国民健康保険診療調整協議会を利用する場合には、その協定案又は実施案を、その他の場合には審査機関を設置する都道府県又は市の名称、審査機関の構成、一月当り平均取扱件数、一件当りの事務費単価及びその算出基礎を明らかにし、あらかじめ、当省に協議すること。
四 都道府県知事が、法第五四条の規定に基いて指定医療機関について実地に立入検査を行うに当つては、医師たる吏員又は医療監視員をして行わせ、又はそれらの者を社会福祉主事に同行させて行わせ、且つ、この検査はこの法律に定められた検査の目的以外の事項に亘らせぬよう慎重を期すること。
第九 被保護者の権利及び義務に関する事項
一 新法は、被保護者のこの法律上占める地位を明らかにし、その権利を保障するとともに、その守るべき義務を課しているのであるが、それらの義務の履行については十分に指導し、いやしくも権利の濫用に陥らしめることのないよう万全の配意をつくすこと。
二 被保護者が指示等に従う義務に違反した場合の保護の停止、廃止等の処分については、特に慎重を期し、被保護者の権利を不当に侵害することのないよう厳に留意すること。
第一○ 不服の申立に関する事項
一 昨年四月旧法施行規則の一部改正によつて道を開かれた不服申立の制度は、単に行政事務処理上の手続として実施されたものに過ぎなかつたが、新法による不服申立は、国民の保護請求権の上に築かれた法律上の制度であつて、被保護者の権利がこれによつて具体的に保障されるという重大な意義を有するものであるから、その取扱については慎重を期し、国民の権利救済の遺憾なきを期すること。
二 不服申立のできる事項は、市町村長のなした保護に関する処分の一切に亘るが、あくまで市町村長の職務権限においてなされた処分に対してのみ認められるものであつて、厚生大臣や都道府県知事の権限に属する事項、例えば、保護の基準や医療機関の指定等の変更を内容とする不服申立は認められないことは勿論であること。
三 不服の申立をするに当つて、市町村長を経由させることにしているが、これは都道府県知事が当事者の一方のみの主張を聞いて決定することは妥当でないので相手方の主張をも併せて徴するものであるとともに、かくすることによつて市町村長に対して自己の行つた保護の決定処分について反省する機会を与える目的をも有するものであるから、この場合において市町村長が自己に誤りのあつたことを認めた場合には、不服の申立に対する決定又は裁決をまつまでもなく、直ちに処分を変更して新たに適当な保護の決定をするよう指導すること。
四 不服の申立に関する諸手続については、令第三条乃至第八条に詳細な規定があるからこれが取扱に遺憾なきを期すること。
第一一 費用に関する事項
一 生活保護制度は、その建前が形式上如何に完璧であつても、その実施に要する経費が不十分であるときは、その効果が著しく阻害される結果となるから、都道府県及び市町村は、この法律の実施に関し必要にして十分な費用を予算に計上し、且つ、支出するよう特に留意すること。
なお、市町村における費用は、その負担が極めて低率であるとはいえ、その金額が相当多額に上る関係上、従来往々にして市町村における財政的理由により保護の実施がゆがめられ勝ちな傾向があつたが、このようなことは、この法律の趣旨からしても許されることでなく、且つ、これらの財源については近く地方財政平衡交付金法の実施に伴い必要な額を確保できることになつているから、財政的な理由でこの法律の施行が阻害されるようなことのないよう厳に留意すること。
二 被保護者を、保護施設以外の適当な施設に収容し、又はその収容を適当な施設若しくは私人の家庭に委託した場合、これに伴つて必要な委託事務費については、保護施設事務費とは別にその基準を定めて実施することになつたから別途通知に基き措置すること。
三 法第七二条第一項の規定は、保護の実施機関との連絡が不十分な被保護者の保護及びこれの利用する保護施設等の運営に支障を来さないよう施設所在地の市町村に保護費及び保護施設事務費を一時繰替支弁させることとしているのであるが、この措置は施設所在地の市町村に一時的にせよ財政的負担を課する結果となるので、都道府県知事は、統轄する区域内に法第七二条第一項の規定による厚生大臣の指定を必要とする施設等があるときは、その施設又は機関の名称、所在地、事業の種類、繰替支弁を必要とする者の出身地別概数及び繰替支弁を必要とする一箇月分の費用の総額等を明らかにし、且つ、関係市町村の同意を徴したるうえ、当省社会局長に対し法第七二条の規定による施設等の指定の申請をされたいこと。
四 規則第二一条に規定した期間計算の例外的取扱の趣旨は、旧法と同じく施設所在地の市町村の負担を過重ならしめないためであるが、宿所提供施設及び母子寮において保護を受けている場合の取扱が、従来と異ることになつたから誤りなきを期すること。
五 都道府県が公益法人の設置する保護施設の修理、改造、拡張又は整備に要する費用に対して補助金を交付する場合は、法第七四条第一項各号に適合することが絶対的要件であり、且つ、同条第二項に規定する厳格なる監督に服しなければならないものであるから、この取扱については特に慎重を期すること。
六 この法律による保護費、民生委員費、保護施設事務費、委託事務費及び保護施設設備費に関する国庫負担の取扱については、別途通知すること。
第一二 その他の事項
一 新法の施行後においても、旧法に基いて発した通知等はこの法律の趣旨に反しない限り、当分の間、なお有効なものとして取り扱うこと。
おつて、これらの通知の改廃については、別途詳細に指示する。
二 新法の施行に伴い旧法に基いて実施された取扱手続等で改めなければならないものがあるときは、遅滞なくこれを整備し、新法の趣旨に基くところの保護の渋滞や間隙を生ずることのないよう留意すること。
なお、新法の施行に伴い都道府県条例、規則又は施行手続等を定め、又は変更したときは遅滞なく当省に報告すること。