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○社会福祉事業の経営者による福祉サービスに関する苦情解決の仕組みの指針について

(平成一二年六月七日)

(障第四五二号・社援第一三五二号・老発第五一四号・児発第五七五号)

(各都道府県知事、各指定都市市長、各中核市市長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部長・社会・援護・老人保健福祉・児童家庭局長連名通知)

社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律(平成一二年六月七日法律第一一一号)の施行に伴い、社会福祉法第八二条の規定により、社会福祉事業の経営者は、常に、その提供する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないものとされます。

そこで、新たに導入される苦情解決の仕組みが円滑に機能するよう、福祉サービスを提供する経営者が自ら苦情解決に積極的に取り組む際の参考として、苦情解決の体制や手順等について別紙のとおり指針を作成しましたので、貴管内市町村(指定都市及び中核市除く)及び関係者に周知をお願いします。

なお、当該指針については、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二四五条の四第一項の規定に基づく技術的助言として通知するものです。

また、社会福祉法第六五条の規定により、厚生大臣が利用者等からの苦情への対応について必要とされる基準を定めることとされたこと等に伴う対応については、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法等に基づく各施設の最低基準の改正等を検討しているところであり、追って通知する予定です。

(別紙)

社会福祉事業の経営者による福祉サービスに関する苦情解決の仕組みの指針

(対象事業者)

社会福祉法第二条に規定する社会福祉事業を経営する者とする。

また、前記以外の福祉サービスを提供する者等についても、本指針を参考として、苦情解決の仕組みを設けることが望まれる。

1 苦情解決の仕組みの目的

○ 苦情への適切な対応により、福祉サービスに対する利用者の満足感を高めることや早急な虐待防止対策が講じられ、利用者個人の権利を擁護するとともに、利用者が福祉サービスを適切に利用することができるように支援する。

○ 苦情を密室化せず、社会性や客観性を確保し、一定のルールに沿った方法で解決を進めることにより、円滑・円満な解決の促進や事業者の信頼や適正性の確保を図る。

2 苦情解決体制

(1) 苦情解決責任者

苦情解決の責任主体を明確にするため、施設長、理事等を苦情解決責任者とする。

(2) 苦情受付担当者

○ サービス利用者が苦情の申出をしやすい環境を整えるため、職員の中から苦情受付担当者を任命する。

○ 苦情受付担当者は以下の職務を行う。

ア 利用者からの苦情の受付

イ 苦情内容、利用者の意向等の確認と記録

ウ 受け付けた苦情及びその改善状況等の苦情解決責任者及び第三者委員への報告

(3) 第三者委員

苦情解決に社会性や客観性を確保し、利用者の立場や特性に配慮した適切な対応を推進するため、第三者委員を設置する。

○ 設置形態

ア 事業者は、自らが経営するすべての事業所・施設の利用者が第三者委員を活用できる体制を整備する。

イ 苦情解決の実効性が確保され客観性が増すのであれば、複数事業所や複数法人が共同で設置することも可能である。

○ 第三者委員の要件

ア 苦情解決を円滑・円満に図ることができる者であること。

イ 世間からの信頼性を有する者であること。

(例示)

評議員(理事は除く)、監事又は監査役、社会福祉士、民生委員・児童委員、大学教授、弁護士など

○ 人数

第三者委員は、中立・公正性の確保のため、複数であることが望ましい。その際、即応性を確保するため個々に職務に当たることが原則であるが、委員相互の情報交換等連携が重要である。

○ 選任方法

第三者委員は、経営者の責任において選任する。

(例示)

ア 理事会が選考し、理事長が任命する。

イ 選任の際には、評議員会への諮問や利用者等からの意見聴取を行う。

○ 職務

ア 苦情受付担当者からの受け付けた苦情内容の報告聴取

イ 苦情内容の報告を受けた旨の苦情申出人への通知

ウ 利用者からの苦情の直接受付

エ 苦情申出人への助言

オ 事業者への助言

カ 苦情申出人と苦情解決責任者の話し合いへの立ち会い、助言

キ 苦情解決責任者からの苦情に係る事案の改善状況等の報告聴取

ク 日常的な状況把握と意見傾聴

○ 報酬

第三者委員への報酬は中立性の確保のため、実費弁償を除きできる限り無報酬とすることが望ましい。ただし、第三者委員の設置の形態又は報酬の決定方法により中立性が客観的に確保できる場合には、報酬を出すことは差し支えない。

なお、かかる経費について措置費等より支出することは、差し支えないものとする。

3 苦情解決の手順

(1) 利用者への周知

施設内への掲示、パンフレットの配布等により、苦情解決責任者は、利用者に対して、苦情解決責任者、苦情受付担当者及び第三者委員の氏名・連絡先や、苦情解決の仕組みについて周知する。

(2) 苦情の受付

○ 苦情受付担当者は、利用者等からの苦情を随時受け付ける。なお、第三者委員も直接苦情を受け付けることができる。

○ 苦情受付担当者は、利用者からの苦情受付に際し、次の事項を書面に記録し、その内容について苦情申出人に確認する。

ア 苦情の内容

イ 苦情申出人の希望等

ウ 第三者委員への報告の要否

エ 苦情申出人と苦情解決責任者の話し合いへの第三者委員の助言、立ち会いの要否

○ ウ及びエが不要な場合は、苦情申出人と苦情解決責任者の話し合いによる解決を図る。

(3) 苦情受付の報告・確認

○ 苦情受付担当者は、受け付けた苦情はすべて苦情解決責任者及び第三者委員に報告する。ただし、苦情申出人が第三者委員への報告を明確に拒否する意思表示をした場合を除く。

○ 投書など匿名の苦情については、第三者委員に報告し、必要な対応を行う。

○ 第三者委員は、苦情受付担当者から苦情内容の報告を受けた場合は、内容を確認するとともに、苦情申出人に対して報告を受けた旨を通知する。

(4) 苦情解決に向けての話し合い

○ 苦情解決責任者は苦情申出人との話し合いによる解決に努める。その際、苦情申出人又は苦情解決責任者は、必要に応じて第三者委員の助言を求めることができる。

○ 第三者委員の立ち会いによる苦情申出人と苦情解決責任者の話し合いは、次により行う。

ア 第三者委員による苦情内容の確認

イ 第三者委員による解決案の調整、助言

ウ 話し合いの結果や改善事項等の書面での記録と確認

なお、苦情解決責任者も第三者委員の立ち会いを要請することができる。

(5) 苦情解決の記録、報告

苦情解決や改善を重ねることにより、サービスの質が高まり、運営の適正化が確保される。これらを実効あるものとするため、記録と報告を積み重ねるようにする。

ア 苦情受付担当者は、苦情受付から解決・改善までの経過と結果について書面に記録をする。

イ 苦情解決責任者は、一定期間毎に苦情解決結果について第三者委員に報告し、必要な助言を受ける。

ウ 苦情解決責任者は、苦情申出人に改善を約束した事項について、苦情申出人及び第三者委員に対して、一定期間経過後、報告する。

(6) 解決結果の公表

利用者によるサービスの選択や事業者によるサービスの質や信頼性の向上を図るため、個人情報に関するものを除き「事業報告書」や「広報誌」等に実績を掲載し、公表する。