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○社会福祉施設における防火安全対策の強化について

(昭和六二年九月一八日)

(社施第一〇七号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会・児童家庭局長連名通知)

標記については、昭和六二年六月三〇日付社施第八四号をもつて通知したところであるが、今般、「社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会」において社会福祉施設(以下「施設」という。)の防火安全対策のあり方について基本的な見直しが行われ、別添のとおり検討結果が報告されたところである。ついてはこの報告を踏まえ施設の防火安全対策の強化を図ることとしたので、今後次の事項に留意のうえ貴管下各施設に対し指導願いたい。

また、施設の指導監査等にあたつては、防火安全対策について特に重点的に指導を行うよう配慮されたい。

なお、本通知については、消防庁とは予め協議済みであるので念のため申し添える。

一 対象施設について

本通知は、施設の性格上、自力避難が困難な者が多数入所する次の施設(以下「自力避難困難施設」という。)を指導の対象とする。

特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、身体障害者療護施設、重度身体障害者更生援護施設、重度身体障害者授産施設、視覚障害者更生施設、聴覚・言語障害者更生施設、救護施設、重症心身障害児施設、精神薄弱者更生施設(通所施設を除く)、精神薄弱者授産施設(通所施設を除く)、精神薄弱児施設、肢体不自由児施設(通所施設を除く)、盲ろうあ児施設(通所施設を除く)、乳児院

なお、これらの施設以外の施設についても以下の各指導事項に準じ、施設の実態に応じた防火安全対策を指導すること。

二 火災発生の未然防止について

(一) 寝具類、カーテン等の防炎化の促進

施設においては、壁、天井等の内装やカーテン、じゆうたん等については、既に消防法令で一定の防炎化、難燃化が義務づけられているので、未整備の施設は早急に改善を図るほか、今後は布団、毛布、シーツ等の寝具類についても一定以上の防炎性能を有するものを積極的に使用するよう努めること。

また、寝衣類についても、個人的嗜好等に配慮しつつできるだけ防炎性能を有するものを使用することが望ましいこと。

(二) 暖房機器の改善

放射形又は自然対流形の石油ストーブ等は転倒、可燃物の接触等により出火原因となりやすいので、原則として使用しないこととし、ストーブ類を使用する場合には、強制対流形のストーブ又はこれと同等以上の火災安全性を有する器具を使用するよう努めること。

(三) 出火防止対策の強化

ア 火災発生を未然に防ぐために、各部署について火気取締責任者を定めるとともに、たばこの吸殻等火気の取扱いについては職員及び入所者(通所、利用者も含む。以下同じ)に対して注意を喚起するよう指導すること。特に喫煙については、指定された場所での喫煙を励行すること。

また、夜間においては、可燃物のあるリネン室、倉庫等人気のない密室については施錠すること。

イ 夜間に勤務する者は火気の取扱いの確認や可燃物のあるリネン室等の施錠等を行うため、夜間の巡回を強化することにより火災発生の未然防止に努めること。

三 火災発生時の早期通報・連絡について

(一) 消防機関への早期通報

夜間に火災が発生した場合、当直職員等だけで消火及び入所者全員の避難誘導、搬送を行うことは極めて難しいので、出来る限り早期に消防機関へ連絡し迅速に消火・救助活動が出来るようにすることが重要である。このため、管轄の消防機関と事前に協議したうえで、宿直室等必要な場所に非常通報装置等を設置すべきであること。

(二) 職員動員体制の確保

夜間に火災が発生した場合、幹部職員及び施設の近隣に居住する職員を含めた初動体制が重要であるので、(一)の非常通報装置に幹部職員宅へも通報できるシステムの設置や職員の宿舎を同一敷地又は近隣に設けること等についても配慮すること。

四 初期消火対策について

(一) スプリンクラー設備

スプリンクラー設備は現在、原則として六〇〇〇m2以上の建物に設置することが義務付けられているが、自力避難困難施設については一定の要件を満たす建物を除き、その設置対象を延面積一〇〇〇m2以上のものにまで拡大するよう消防法施行令等の改正が近く行われる予定である。

(二) 屋内消火栓設備

屋内消火栓設備に関しては、施設のスプリンクラー設備の設置拡大に伴つて、消防法施行令上設置義務対象に矛盾を生じないよう整合性が図られる予定であること。

(三) スプリンクラー設備等の整備に当たつての留意点

スプリンクラー設備及び屋内消火栓設備に関する消防法施行令等の改正に当たつては、既存の施設に対しては猶予期間を設ける経過措置についての配慮がなされる予定であるが、あわせて水量の低減等弾力的な対応が図られる予定である。

施設においてはこれらの設備について可能な限り早急に設置するよう努めること。

また、設置義務のない自力避難困難施設についても立地条件等施設の状況により自主設置することが望ましいこと。

(四) 消火設備等の維持管理及び可燃物の保管状況の点検の実施

消火設備、警報設備、避難設備等は、出火等災害発生時に遺漏なく機能するよう日頃から維持管理に努めるとともに、可燃物の保管状況の点検等に努めること。

五 夜間防火管理体制の充実について

職員の勤務体制については、施設の性格、規模、介護需要の必要性等により、各施設の実態に応じた体制がとれるよう措置費上所要の予算措置が講じられているところである。

特に夜間勤務体制については、防災上の観点からも必要な配慮を行うよう従前から指導してきたところであるが、今後は特に次に示すところにより徹底を図ること。

(一) 夜間における所要配置人員

ア 夜勤・宿直に対する手当については、措置費上所要の予算措置を講じているので、この配置人員を目安とし所要の人員を配置すること。(別紙参照)

なお、この場合、各施設における入所者の状況、建物の構造、配置、立地条件及び消防設備等を総合的に勘案すること。

イ また、特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設については、夜勤者(直接処遇職員)とは別に、宿直者を必ず配置すること。

ウ 現状において、直ちに夜勤・宿直に当たる職員の確保が困難な場合にあつては、例えば夜間宿直専門の者を雇い上げる等創意工夫することにより、入所者の処遇の低下を来たさないよう配慮しつつ、入所者の安全が確保されるよう夜間勤務体制の整備充実を図ること。

(二) 夜間における勤務形態

夜間における標準的な勤務形態として従来から施設の種別に応じて交替制・宿直制を指導しているので、原則としてこの勤務形態を確保すること。(別紙参照)

ただし、三交替制勤務の施設で、諸般の事情によりこれにより難い場合にあつては少なくとも二交替制勤務(ただし、変則は除く。)は確保すること。

六 避難対策等について

(一) 有効な避難訓練及び職員の教育等

避難訓練は最低年二回以上実施することとなつているが、この実施に当たつては消防機関の協力を得て行うよう努め、特に自力避難困難者の避難・救出訓練及び夜間における避難に重点を置いた訓練等実態に即した訓練を定期的に実施すること。

この場合、職員には消火訓練等も併せて行わせ、平素から消防設備等の操作について熟知させておくこと。

また、職員に対しては、火気の取扱いその他火災予防に関する指導監督、防災意識の高揚に努めるとともに入所者に対しても常日頃から防災に対する意識の高揚に努めること。

(二) バルコニーの設置

居室に接するバルコニーは、出火の際の避難場所として有効なものであるので、今後建設される施設については二階以上の部分に設置することが望ましいこと。

(三) 避難路の確保及び構造改善

入所者の避難又は搬送が容易に行えるよう避難路となるバルコニー等を含め床の段差、溝、急な傾斜をなくし十分幅員を確保するとともに、ゆるやかな傾斜の避難路を設けることや手すりを設置することについて十分配慮すること。

(四) 避難誘導設備の改善

視覚あるいは聴覚に障害がある者に入所する施設については、閃光型警報装置、点滅型誘導灯、誘導音装置付誘導灯等を施設の実態に応じて設置することが望ましいこと。

(五) 居室の避難階への設置促進

出火等災害発生時に避難が迅速かつ円滑に行えるよう、入所者のうち寝たきり等最も重度な者のための居室については、極力一階又は避難の容易な場所に設けること。

(六) 延焼防止及び防煙対策

今後建設される社会福祉施設については、延焼防止対策として間仕切り壁を防火上有効に小屋裏又は天井に達せしめるようにすること。また、防煙対策として防煙垂れ壁を設置することが望ましいこと。

七 近隣住民、近隣施設、消防機関等との連携協力体制の確保について

(一) 近隣住民、近隣施設との協力体制

施設の火災においては、施設職員だけではその対応が必ずしも十分でない場合が多く、また、救助された者を一時的に収容する場所も必要であるため、近隣に所在する施設、病院等相互間の連携を図るとともに地域住民及びボランティア組織とも日常の連携を密にし、施設で行う避難訓練への参加等により施設の構造・配置、入所者の実態を認識してもらい、緊急の場合の応援、協力体制を確保しておくよう努めること。

(二) 消防機関等との連携

避難訓練の計画、実施等施設の防火安全対策に関して常時消防機関の指導を受けるなど連携を密にし、施設の設備、構造・配置、入所者の状況等についても十分な理解を得ておくよう努めること。

また、必要に応じ地域における福祉関係者等と消防関係者との連絡会議を設置することも検討すること。

八 その他

施設は防火安全対策に万全を期すことは当然であるが、万が一入所者に傷害、死亡事故が発生し、施設管理責任上損害賠償金を支払わなければならない場合に備え、各種の補償保険制度があるので、その活用についても検討すること。

(添付資料)

一 「社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会」報告

二 消防庁通知

ア 「社会福祉施設等における防火安全対策について」

(昭和六二年九月一日付消防予第一六〇号)

イ 「消防機関へ通報する非常通報装置の取扱いについて」

(昭和六二年七月一四日付消防予第一一八号)

ウ 「点滅型誘導灯等の設置上の取扱いについて」

(昭和六二年二月一三日付消防予第二四号)

エ 「誘導音装置付誘導灯等の取扱いについて」

(昭和六二年一月一六日付消防予第八号)

三 建設省通知

「社会福祉施設等における防火安全対策について」

(昭和六二年九月三日付建設省住指発第三〇二号)

(別紙)

1 予算上の夜間の所要配置人員(参考例)

施設の種類

宿直手当

夜勤手当

定員

50人

定員

70人

定員

110人

定員

140人

定員

50人

定員

70人

定員

90人

定員

110人

特別養護老人ホーム

1

1

1

1

2

3

4

5

養護老人ホーム

2

2

2

3

身体障害者療護施設

1

1

1

1

2

3

4

5

重度身体障害者更生援

護施設

1

1

2

2

重度身体障害者授産施

1

1

1

1

視覚障害者更生施設

1

1

1

1

聴覚・言語障害者更生

施設

1

1

1

1

救護施設

1

1

2

2

精神薄弱者更生施設

2

3

3

3

精神薄弱者授産施設

2

3

3

3

精神薄弱児施設

2

3

3

3

盲ろうあ児施設

2

3

3

3

乳児院

4

4

4

4

2 夜間における勤務形態

勤務体制

施設の種類

3 直三交替制

特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設、乳児院

2 直二交替制

精神薄弱者更生施設、精神薄弱者授産施設、精神薄弱児施設、盲ろうあ児施設

2 直変則二交替制

重度身体障害者更生援護施設、救護施設

宿直制

養護老人ホーム、重度身体障害者授産施設、視覚障害者更生施設、聴覚・言語障害者更生施設

(別添)

社会福祉施設等における防火安全対策について

(昭和六二年八月二八日 社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会)

はじめに

去る六月六日(土)深夜に発生した東京都東村山市特別養護老人ホーム「松寿園」の火災では、寝たきり老人を含め、死者一七名、負傷者二五名の犠牲者を出した。

この火災で多数の死傷者が発生した原因については現在調査中であるが、現時点で判明している事実から判断する限り、当該施設は、消防法及び建築基準法の防災関係規定並びに社会福祉施設としての設置基準等からみて、所要の措置が講じられていた施設であつた。それにもかかわらず多数の者が犠牲になつたことが深刻な問題を提起している。

このことは、昨年七月三一日に発生した兵庫県神戸市精神薄弱者援護施設「陽気寮」火災(八名死亡)においても同様である。

当委員会では、このような事実を踏まえ、両施設を含め、この種の施設で火災が発生した場合の問題点を整理するとともに、関係省庁等で講ずべき対策について緊急に取りまとめることとしたものである。

第一 検討の対象範囲

この委員会では、消防法施行令別表第一(六)項ロ(老人福祉施設、身体障害者更生援護施設等)の施設であつて、施設の性格上自力避難困難な者が多数入所する施設(以下「社会福祉施設」という。)を検討の対象とした。

なお、社会福祉施設と相違はあるが、類似点を有する(六)項イ(病院)についても、検討の対象とした。

第二 社会福祉施設における火災の問題点

社会福祉施設等において火災が発生し、初期消火に失敗した場合には、入所者等を避難させることは一般に極めて困難となる。

自力避難困難な者については、担架、車椅子等により搬送する必要があるうえ、自力避難可能な者であつても、火災情報の覚知能力、状況の理解・判断能力、行動能力等について、大きなハンディキャップを有している。

火災が十分な数の職員のいる時に発生した場合には、あらかじめ、ソフト面、ハード面で入念な準備をしておけば、初期消火を含めた人的初動対応によつて安全性を担保することはある程度可能であるが、夜間、休日等、職員数が少なくなつた時に火災が発生した場合には、人的対応に頼るだけでは、初期消火に失敗する可能性も高くなるうえ、その後の避難誘導等が極めて困難となる。

第三 社会福祉施設等について今後講ずべき防火安全対策

第二に述べたような問題点を有する社会福祉施設等の防火安全対策としては、初期消火、避難誘導・搬送、早期通報等が極めて重要であり、あわせて、出火防止対策を含む防火管理体制についてもその徹底を期していく必要がある。

現行法令においても、また、消防機関等の指導の際にも、基本的にはこのような考え方に立つて、防火安全対策が講じられてきているが、陽気寮、松寿園の両火災の経験に基づき、今後、新たに以下の対策を講じるべきである。

一 社会福祉施設における防火安全対策

(一) 初期消火対策

ア スプリンクラー設備の設置対象の拡大

スプリンクラー設備は、通常の火災の初期消火に関し一○○%に近い奏効率を示す極めて有効な自動消火設備である。

設置費が他の消防用設備等と比べて高額に上ることもあり、現在、他の不特定多数の者が入所する施設と同様に、原則として延べ面積六○○○m2以上の施設に設置することが義務付けられているが、初期消火に失敗した場合の入所者の避難・搬送等が極めて困難であることが、陽気寮、松寿園の両火災によつて改めて明らかになつたことに鑑み、その設置対象を、一定の条件を満たす防火対象物を除き、延べ面積一○○○m2以上のものにまで拡大すべきである。

また、それ以外のものについても自主設置に努めるべきである。

なお、スプリンクラー設備の未警戒部分については、スプリンクラー設備の配管から分岐した補助散水栓で警戒することにより、スプリンクラー設備と屋内消火栓設備を併設することがないよう配慮することが必要である。

イ 屋内消火栓設備の改善等

現在、法令で定められている屋内消火栓設備の基準は、操作性より消火能力を重視したものとなつており、その結果、実際に設置されている屋内消火栓設備は、複数の者でなければ使用できないものが多い。比較的少数の者で夜間の防火安全に万全を期さなければならない社会福祉施設においては、放水量等を小さくしてでも、操作性が高く一人でも容易に使用できる屋内消火栓設備を設置し得るよう、基準の見直しを行うべきである。

また、屋内消火栓設備の設置対象については、スプリンクラー設備の設置対象の拡大に伴い、所要の調整を図る必要がある。

(二) 避難対策

ア 自力避難困難な者の避難階への入所

スプリンクラー設備が設置されていない社会福祉施設の場合は、自力避難困難な者の居室は、極力、避難・搬送の容易な避難階に設けるよう指導すべきである。

イ バルコニーの設置

外気に面して適切に設置されたバルコニーは、避難した者の一時避難場所や自力避難困難な者の一時搬送の場として、また、消防隊の消火、救助活動の場として有効なものであり、松寿園火災においてもその効果が改めて明らかになつたことに鑑み、今後建設されるものについて、社会福祉施設の二階以上の部分に居室を設ける場合には、当該室に面し避難・搬送及び消防活動上有効なバルコニーの設置を推進すべきである。

ウ 避難路の構造の改善

社会福祉施設においては、避難又は搬送の際に、歩行器、車椅子、担架等を使用することが多いので、避難路となる部分は、これらの器具を使用しても容易に避難できるよう、避難路となるバルコニー等を含め、床の段差、傾斜、溝、幅、手すり等について、特段に配慮をすべきである。

エ 避難誘導設備の改善

社会福祉施設においては、目や耳が不自由な者が入所している場合も多いため、これらの者に火災であることを知らせるための閃光型警報装置、これらの者の自力避難を助けるための点滅型誘導灯、誘導音装置付誘導灯等を、施設の実態に応じて設置することが望ましい。

(三) 一一九番通報装置の改善

社会福祉施設の夜間の火災において、当直職員だけで入所者全員の避難誘導・搬送を行うことは極めて難しいので、できる限り早期に消防機関に連絡し、消防隊が迅速に消火・救助活動を行うことができるようにする必要がある。

このため、宿直室等必要な場所に一の押しボタン操作で通報可能な電話機等の設置やこれに準じた有効な通報手段の確保を図るべきである。さらに、非火災報対策が十分行われている自動火災報知設備については、当該設備の受信機から前述の機器等を介して直接火災信号を消防機関に送るシステムの整備を図る必要がある。

(四) その他

ア 出火防止対策

(1) 暖房機器の改善

転倒、可燃物の接触等により、出火原因となり易い放射形又は自然対流形の石油ストーブ等については、原則として、社会福祉施設における使用を禁止し、ストーブ類を使用する場合には、強制対流形のストーブと同等以上の火災安全性を有する器具の使用の推進を図るべきである。

(2) 防炎寝具等の設置

第一着火物となりやすい物品の防炎化、難燃化を推進することは、出火防止及び延焼拡大の遅延を図るうえで極めて有効である。

社会福祉施設においては、壁、天井等の内装や、カーテン、じゆうたん等の調度類等、既に法令で一定の防炎化、難燃化が義務付けられている部分を除くと、内部の可燃物のうち、布団、毛布、シーツ、枕、枕カバー等の寝具類や寝巻等の寝衣類の占める割合は極めて大きい。

松寿園の火災において、これらの物品が着火物となり、延焼拡大を早めた可能性があることに鑑み、寝具類については一定以上の防炎性能を有するものを使用することを促進すべきであり、寝衣類についても同様に使用することが望ましい。この場合において、これらの防炎製品の使用形態、個人的嗜好等について配慮する必要がある。

(3) 出火防止のための周知徹底等

出火防止対策の強化を図るため、夜間巡回の強化、夜間におけるリネン室等の施錠、喫煙場所の指定等の指導が必要である。

イ 延焼防止及び防煙対策

社会福祉施設についても、今後建設されるものについては、病院等と同様に、間仕切壁を防火上有効に小屋裏又は天井裏に達せしめることが必要である。また、防煙垂れ壁の設置等についても防煙対策として有効であると考えられるので設置の推進を図ることが望ましい。

ウ 防火管理体制の整備

以上の措置を前提としたうえで、夜間等における災害発生時に的確な初動対応ができるよう、夜間の人的体制や災害が発生した場合の職員動員体制について指導を行うことが必要である。

そのため、職員の宿舎を同一の敷地又は近隣に設けること等についても配慮すべきである。

さらに、発災時の初動対応、消防機関と連携した職員等の教育訓練、夜間等における避難訓練、日常における防火戸や防火設備の点検・維持管理、可燃物の保管状況の点検等のあり方について検討する必要がある。

なお、これら防火管理体制のあり方については、社会福祉施設の特性に応じた具体的な指針を作成し、その普及を図る必要がある。

エ 近隣住民等との応援・協力体制の確立

社会福祉施設の火災においては、施設職員による対応だけでは必ずしも十分でない場合も多く、また、避難・搬送・救助された者を一時的に収容する場も必要である。

このため、社会福祉施設の設置者等は、当該施設の防火安全対策に関して、消防機関に相談するとともに、社会福祉施設相互間並びに他の施設、近隣住民及びボランティア組織とも日常の連携を密にし、施設の構造、入所者の実態を認識してもらうよう努力することにより、万一の場合の応援・協力体制等について、事前に十分準備しておくことが望ましい。

また、必要に応じ、地域における福祉関係者等と消防関係者の連絡会議の設置の推進を図る。

二 病院における防火安全対策

病院と社会福祉施設との相違点に鑑み、第三、一、(一)初期消火対策のうち、スプリンクラー設備の設置対象については、延べ面積三○○○m2以上のものとする。その他の防火安全対策については、病院の特殊性を考慮しつつ、社会福祉施設に準じた対策を講ずべきである。

第四 防火安全対策の推進に係る留意事項

一 既存の施設に係る措置

第三に掲げる対策は、原則的には、既存の施設についても遡及的に実施されるべきものであるが、大規模な工事を伴うものについては、入所者(入院患者)を多数かかえるこの種の施設では、工事内容・工程管理等に極めて難しい問題が多い。

また、新設のものに比べて工事費がかなり割高になるという問題もある。

このような実態を踏まえ、既存の施設に対する防火安全対策の実施にあたつては、経過的措置について特段の配慮を行うことや屋内消火栓設備、スプリンクラー設備の水量等の低減、屋内消火栓設備のスプリンクラー設備への改造、これらの消火設備に代るパッケージタイプの消火設備の設置等防火対象物の実態に応じた弾力的な対応をとることが必要である。

なお、既存の施設に対する整備にあたつては、特に重度の障害等を有する者が多数入所する施設から優先して推進すべきである。

二 援助措置

第三に掲げる対策のうち、例えばスプリンクラー設備は効果の大きい反面、設置に係る経費が大きいため、この種の設備を新たに設置することには大きな困難がある。

従つて、これらの防火安全対策の実施にあたつては、国、地方公共団体等は、必要な援助措置を講ずるよう努める必要がある。

三 円滑な実施の確保

本報告に示された対策の円滑な実施を確保するため、関係省庁及び関係者が定期的に協議することが必要である。

四 その他

以上検討してきた施設以外の社会福祉施設等についても、本検討結果を踏まえ、その実態に応じた適切な防火安全対策を推進する必要がある。

なお、社会福祉施設等におけるスプリンクラー設備の普及に鑑み、今後、きめ細かく施設の特性を配慮したより適切なものとなるよう研究開発が必要である。

また、在宅の一人暮らしの老人や身体障害者のいる家庭等に係る住宅防火対策、非常時の安全対策等についても、具体的な検討が必要である。

(参考)

社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会設置要綱

(趣旨)

第一条 特別養護老人ホーム松寿園火災にかんがみ、自力避難が困難な者を収容する施設における夜間の防火管理体制のあり方及び消防用設備等の設置のあり方等に係る今後の対策について調査検討を行うため、「社会福祉施設等における防火安全対策検討委員会(以下「委員会」という。)」を設置する。

(検討事項)

第二条 委員会は、次の事項について調査検討を行う。

一 自力避難困難な者を収容する施設における消防用設備等のあり方

二 前記施設における防火管理のあり方

三 その他

(委員会)

第三条 委員会は、二○名以内の委員をもつて構成する。

2 委員は、学識経験者、関係省庁職員、消防機関職員及び関係団体の代表者とし、消防庁長官及び厚生省社会局長が委嘱する。

3 委員会に委員長を置く。

4 委員長は、消防庁次長をもつて充てる。

5 委員長は、委員会を主宰する。

(庶務)

第四条 委員会の庶務は、消防庁予防課が処理する。

(補則)

第五条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し、必要な事項は、委員長が定める。

附 則

この要綱は、昭和六二年六月一一日から実施する。