○社会福祉施設における地震防災応急計画の作成について
(昭和五五年一月一六日)
(社施第五号)
(各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局施設課長・児童家庭局企画課長通知)
大規模地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする「大規模地震対策特別措置法」(昭和五三年六月一五日法律第七三号)の制定後、国、地方公共団体をはじめ関係各方面で地震防災対策の充実、強化が図られているところであるが、社会福祉施設は地震災害の際に特に配慮を要する老人、心身障害児者、児童等が入所しているため、その地震防災対策を確立することが強く要請されている。
今般、社会福祉施設における地震防災対策を推進するため、「地震防災応急計画作成要領」及び「地震防災応急計画作成例」を別紙一及び別紙二のとおり定めたので御了知のうえ、関係社会福祉施設の地震防災対策の推進について特段の指導を願いたい。
(別紙1)
地震防災応急計画作成要領
第1 地震防災応急計画を作成する施設
社会福祉施設のうち地震防災応急計画を作成しなければならない施設は、大規模地震対策特別措置法第3条第1項に基づく指定された地震防災対策強化地域内の次に掲げる施設とする。
(1) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条に規定する児童福祉施設(児童遊園を除く。)
(2) 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第5条第1項に規定する身体障害者更生援護施設
(3) 生活保護法(昭和25年法律第144号)第38条第1項に規定する保護施設
(4) 社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)第2条第2項第6号の授産施設
(5) 売春防止法(昭和31年法律第118号)第36条に規定する婦人保護施設
(6) 精神薄弱者福祉法(昭和35年法律第37号)第18条第1項に規定する精神薄弱者援護施設
(7) 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第14条第1項に規定する老人福祉施設及び同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
第2 地震防災応急計画の基本となるべき事項
地震防災応急計画の基本となるべき事項は次のとおりであり、別紙2の「地震防災応急計画作成例」を参考のうえ、それぞれ施設の特性を勘案し、実態に即した地震防災応急計画を作成しなければならない。
(1) 地震予知情報及び警戒宣言の伝達に関すること
地震予知情報等が地震警戒本部等外部機関と社会福祉施設及び社会福祉施設内部において確実に伝達されるようその経路及び方法を具体的に明示する。勤務時間内及び勤務時間外等の時間帯に応じ、伝達が確実に行われるよう定めるほか、必要な代替伝達方法等を定める。また入所者の保護者等への伝達方法等も定めるものとする。
(2) 地震防災応急対策の実施要員の確保等に関すること。
各社会福祉施設は、地震防災応急対策等を迅速かつ的確に実施するため指揮機能を有する組織を設置し、組織の構成、任務分担を定めるものとする。この場合、所要要員の不時の欠員に備え代替要員の確保についても配慮するものとする。
(3) 警戒宣言が発せられた場合、直ちに実施すべき措置に関すること。
警戒宣言が発せられた場合における施設及び設備の点検並びに整備、資機材の調達手配等地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために実施すべき措置を定める。なお、工事中の建築物等については、地震発生時の危険性にかんがみ、原則として工事の中断の措置を講ずることを明示する。
(4) 警戒宣言が発せられた場合の入所者等の安全指導に関すること。
警戒宣言が発せられた場合の入所者等の安全指導の方法等を明示するとともに、安全指導に当たつては入所者等に不安動揺を与えないよう配慮する。
施設の立地条件、耐震性等から判断して、入所者等を退避させる場合を考慮して、避難誘導に関することを定める。特に、施設が避難対象地区にあるときは、避難場所、避難経路、避難誘導方法、避難実施責任者等を具体的に明示する。
入所者の保護者等への引継ぎの方法については、施設の種類や性格を十分考慮して具体的にその内容を明示する。
(5) 大規模な地震に係る防災訓練に関する事項
強化地域に係る大規模な地震を想定した防災訓練を年1回以上実施するものとし、その実施内容、方法等を明示する。
防災訓練の実施に当たつては、地方公共団体、地域の自主防災組織等との連携を図ることに努める。また、通所施設にあつては、必要に応じて入所者の保護者等の参加を要請する。
(6) 地震防災上必要な教育及び広報に関すること。
施設職員等に対して、その果すべき役割等に相応した地震防災上の教育を実施するものとし、その実施内容、方法等を明示する。通所施設にあつては、入所者の保護者等にも地震防災教育を行い、入所者の引継ぎ等について周知徹底を図る。
(注) 地震防災応急計画は、社会環境の変化、施設設備の強化等に応じ絶えず見直しを行い、実態に即応したものとしておくこと。
第3 地震防災応急計画の作成方式、届出先等
施設 |
作成方法 |
作成期限 |
届出(提出)先 |
第1に掲げる施設であつて、消防法第8条第1項に規定する消防計画を作成することが必要とされていない施設 |
地震防災応急計画を作成すること。 |
地震防災対策強化地域の指定があつた日から6月以内 (注1) |
地震防災応急計画を都道府県知事に届け出るとともに、その写しを市町村長に送付すること。(公立公営施設については届出、送付の必要はない。) |
第1に掲げる施設であつて、消防計画を作成することが必要とされている施設 |
現行の消防計画を改正し、消防計画中に地震防災応急計画相当事項を定めること。 (注2) |
同上 |
改正した消防計画を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長)又は消防署長に届け出るとともに、その写しを市町村長に送付すること。(公立公営施設については、写しの市町村長への送付は必要ない。) |
(注1) 大規模地震対策特別措置法第3条第1項の規定に基づく東海地震に係る地震防災対策強化地域の指定は、昭和54年8月7日に行われたので、当該地域内の社会福祉施設については昭和55年2月6日までに地震防災応急計画を作成の上、所要の届出、提出を行うこと。
(注2) 消防計画を改正し、消防計画中に地震防災応急計画相当事項を定めるに当たつては、現行の消防計画との整合性に十分留意すること。
第4 その他
1 地震防災対策強化地域内の社会福祉施設については、第1に掲げる施設以外の施設も、地震防災対策を推進するために地震防災応急計画を作成することが望ましい。
2 地震防災対策強化地域外の社会福祉施設についても、地震防災対策を推進する見地から、地震防災計画を作成することが望ましい。この場合、消防計画を作成することが必要とされている施設については、従来より消防計画中に地震対策に関する事項が規定されているが、別紙2等を参考の上、現行の消防計画中の地震対策に関する事項を見直し、不十分な場合にはその改正を行うものとする。
(注) 地震防災対策強化地域外については、警戒宣言の発令、地震防災応急対策の実施等は行われないので、別紙2中の「第3章 地震防災応急対策」等は参考とする必要はないこと。
(別紙2)