添付一覧
○社会福祉法人監査指導要綱の制定について
(昭和五四年五月一六日)
(社庶第五七号)
(各都道府県知事あて厚生省社会局長・厚生省児童家庭局長通達)
社会福祉法人に対する指導監督については、かねてから種々御配慮を煩わしているところであるが、近年、社会福祉法人の数が増加するとともに、その果たすべき役割も一層大きなものとなっている。
いうまでもなく、社会福祉法人は、きわめて公共性の高い組織であり、健全な社会福祉事業の経営と公正な法人運営を維持することによって国民の負託にこたえることが要請される。このことは、何よりも法人自らの不断の努力によるべきものではあるが、同時に十分な指導監督も必要である。
このことから、今般都道府県において法人監査を行う際の指針として、社会福祉法人監査指導要綱を別添のとおり制定することとしたが、社会福祉法人の指導監督に当たっては、本要綱に定める事項が社会福祉法人の運営において遵守されるよう指導するとともに、今後とも次の点に留意のうえ、監査指導の一層の強化を図り、適正な法人運営の確保について特段の配意を願いたい。
1 監査指導の目的
社会福祉法人に対する監査指導は、関係法令、通知による法人運営、事業経営についての指導事項について監査を行うとともに、運営全般について積極的に助言、指導を行うことによって、適正な法人運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図るものであること。
2 監査指導の実施
(1) 法人監査の実施に当たっては、監査の方針、実施時期及び具体的方法等について監査指導の実施計画を策定すること。
(2) 監査の結果、改善を要する事項については、改善措置を文書をもって指導すること。また、具体的改善措置について、期限を附して報告させること。
(3) 必要がある場合には、改善状況について確認のための再調査を実施すること。
(4) (2)の指導に係る事項について改善措置が講じられない場合は、個々の事例に応じ、社会福祉事業法第五四条又は第五六条の規定により改善を命ずる等所要の措置を講ずること。
〔別添〕
社会福祉法人監査指導要綱
項目 |
監査指導事項 |
備考 |
1 組織運営 |
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1 定款 |
1 定款準則に準拠していること。 2 定数の変更が所定の手続きを経て行われていること。 |
定款準則……昭和39年1月10日社発第15号社会局長・児童局長通知 |
2 役員 |
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(1) 定数・現員 |
1 定数は、事業規模等の実態に則したものであること。 |
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2 欠員が生じていないこと。 |
法律上はその定数の3分の1までは欠員が認められているが、1名でも欠員が生じた場合には、速やかに補充が行われるのが望ましいこと。 |
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3 役員名簿が整備されていること。 |
役員名簿記載事項は次のとおり。 ① 役職名 ② 氏名 ③ 生年月日(年齢) ④ 住所 ⑤ 職業 ⑥ 現就任年月日・任期 ⑦ 代表権の有無 |
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(2) 選任・任期 |
1 役員の選任手続が、定款の定めに従い行われていること。 |
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2 選任関係書類が整備されていること。 |
選任関係書類は、次のとおり。 ① 理事会議事録(評議員会議事録) ② 就任承諾書 ③ 履歴書 |
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3 役員の任期が明確になっていること。なお、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間であること。 4 任期の切れている役員がいないこと。 5 評議員会を設置しなければならない場合は、評議員会において役員を選任することが適当なこと。 |
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(3) 適格性 |
1 欠格事由を有する者が選任されていないこと。 |
欠格事由は次のとおり。 ① 禁治産者又は準禁治産者 ② 生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法又は社会福祉事業法の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 ③ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者 ④ 所轄庁の解散命令により解散を命ぜられた社会福祉法人の解散当時の役員 |
2 関係行政庁の職員が法人の役員となっていることは適当でないこと。ただし、社会福祉協議会にあっては役員の総数の5分の1までは差し支えないこと。 3 実際に法人運営に参画できない者が名目的に選任されていることは適当でないこと。 4 地方公共団体の長等特定の公職にある者が慣例的に理事長に就任したり、役員として参加していることは適当でないこと。 |
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3 理事 |
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(1) 定数 |
定数は、実質的審議がなされるよう概ね15名以内が適当であること。 |
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(2) 適格性 |
1 各理事について、親族等の特殊の関係のある者が定款に定める数を超えて選任されていないこと。 |
親族等の特殊の関係のある者とは次のとおり。 ① 当該役員と民法に定める親族関係にある者 ② 当該役員とまだ婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻と同様の事情にある者 ③ 当該役員の使用人及び当該役員から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者 ④ ②又は③の親族で、これらの者と生計を一にしている者 ⑤ 当該役員が役員となっている会社の役員、使用人及び当該会社の経営に従事する他の者並びに当該会社の同族会社の使用人であって、役員と同等の権限を有する者 ⑥ ①~④の者と同族会社の関係にある法人の役員及び使用人 |
2 当該法人に係る社会福祉施設の整備、運営と密接に関連する業務を行う者が過半数を占めていることは適当でないこと。 |
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3 老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人にあっては、理事の1/2以上が社会福祉事業について知識経験を有する者及び地域の福祉経験者であること。その他の法人にあっては、理事の1/4以上が社会福祉事業について知識経験を有する者であること。 また、社会福祉協議会にあっては、その区域において社会福祉事業を経営する団体の役職員が参加していること。 |
次のような者は、社会福祉事業について知識経験を有する者であること。 ① 社会福祉に関する教育を行う者 ② 社会福祉に関する研究を行う者 ③ 社会福祉事業又は社会福祉関係の行政に従事した経験を有する者 ④ 公認会計士、税理士、弁護士等専門知識を有する者 次のような者は、地域の福祉関係者であること。 ① 社会福祉協議会等社会福祉事業を行う団体の役職員 ② 民生委員・児童委員 ③ 社会福祉に関するボランティア団体、親の会等の民間社会福祉団体等の代表者等 ④ 医師、看護婦、保健婦等保健医療関係者 ⑤ 自治会、町内会、婦人会及び商店会等の役員 ⑥ その他その者の参画により施設運営や在宅福祉事業の円滑な遂行が期待できる者 |
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4 地域の代表が参加していること。 |
次の者は地域の代表であること。 ① 自治会、町内会、婦人会及び商店会等の役員 ② 民生委員・児童委員 |
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5 当該法人の経営する社会福祉施設の長が1名以上参加していること。 ただし、施設長等施設の職員である理事が理事総数の3分の1を超えていることは適当でないこと。 |
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(3) 代表者 |
1 当該法人の代表権は、理事長にのみ与えられていること。 2 理事長は、各理事の意見を十分に尊重し、理事会の決定に従って法人運営及び事業経営を行っていること。 |
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4 監事・監査 |
1 理事、評議員及び職員又はこれらに類する他の職務を兼任していないこと。 2 1人は社会福祉事業法第42条に規定する財務諸表等を監査しうる者であること。 また、1人は社会福祉事業について知識経験を有する者が加わっていること。 3 他の役員と親族等の特殊の関係がある者でないこと。 4 当該法人に係る社会福祉施設の整備、運営と密接に関連する業務を行う者であってはならないこと。 5 理事の業務執行の状況、当該法人の財産の状況、特に当該法人の事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書について毎年定期的に十分な監査が行われていること。 6 監査を行った場合には、監査報告書が作成され、理事会、評議員会及び所轄庁に報告後、法人において保存されていること。 |
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5 理事会 (1) 開催状況 |
1 開催手続が、定款の定めにしたがって行われていること。 2 予算のための理事会、決算のための理事会の外理事会の議決を要する事項がある場合その他事業運営の実態に即し、必要に応じて理事会が開催されていること。 |
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(2) 審議状況 |
1 理事会が定款に定める定足数を満たして有効に成立していること。 2 議決が定款の定めにしたがって、有効に成立していること。 3 理事会への欠席又は書面による議決権の行使が継続している理事がいないこと。 |
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4 理事会の要議決事項について審議され、議決が行われていること。 |
理事会の要議決事項は次のとおり。 ① 事業計画、予算 ② 予算外の新たな義務の負担又は権利の放棄 ③ 事業報告、決算 ④ 定款の変更 ⑤社会福祉施設の許認可関係 ⑥ 施設長の任免その他重要な人事 ⑦ 基本財産の処分、担保提供等 ⑧ 金銭の借入 ⑨ 社会福祉法人の運営に関する規則の制定及び変更 ⑩ 施設用財産に関する契約その他の主要な契約 ⑪ 寄付金の募集に関する事項 ⑫ 合併、解散、解散した場合における残余財産の帰属者の選定 ⑬ その他、この法人の業務に関する重要事項。なお、日常の軽微な業務は、理事長が専決し、理事会に報告すればよいこと。 |
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(3) 記録 |
議事録は、正確に記録され、保存されていること。 |
議事録記載事項は次のとおり。 ① 開催年月日 ② 開催場所 ③ 出席者氏名(定数) ④ 議案 ⑤ 議案に関する発言内容 ⑥ 議案に関する表決結果 ⑦ 議事録署名人の署名、署名年月日 |
6 評議員・評議員会 |
1 公益事業、収益事業又は措置委託の対象とならない施設若しくは老人福祉及び障害福祉に係る入所施設の設置経営を行う法人は評議員会が設置されていること。ただし、老人福祉又は障害福祉に係る入所施設を設置経営する法人であって、理事の定数が10名以上であるものはこの限りでない。 2 評議員の定数及び現員は、理事の2倍を超えていなければならないが、概ね40名以内であるのが適当であること。 3 各評議員について親族等の特殊の関係のある者が定款に定める数を超えて選任されていないこと。 4 当該法人に係る社会福祉施設の整備、運営と密接に関連する業務を行う者が過半数を占めていることは適当でないこと。 5 地域の代表が参加していること。 また、社会福祉協議会にあっては、その区域において社会福祉事業を経営する団体の役職員が参加していること。 6 評議員の選任、評議員会の開催、議決は定款の定めにしたがい行われていること。 |
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7 評議員会の要議決事項について審議され、議決が行われていること。 8 評議員会への欠席が継続している評議員がいないこと。 9 議事録は正確に記録され、保存されていること。 |
評議員会の要議決事項は次のとおり。 ① 予算、決算、基本財産の処分、事業計画及び事業報告 ② 予算外の新たな義務の負担または権利の放棄 ③ 定款の変更 ④ 合併 ⑤ 解散及び解散した場合の残余財産の帰属者の選定 ⑥ 寄附金の募集に関する事項 ⑦ 施設長の任免その他の重要な人事 ⑧ 法人又は施設の運営に関する規則の制定及び変更理事を兼ねる評議員が出席者の過半数を占めるような評議員会の開催は、評議員会の章制機能を弱め、好ましくないことから、特に理事を兼ねていない評議員の欠席が継続しているような場合には、充分な指導を行われたいこと。 ⑨ その他、この法人の業務に関する重要事項で、理事会において必要と認める事項 |
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7 その他 |
社会福祉施設の長については、関係法令及び通知で定める資格を有する者でなければならないこと。 |
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Ⅱ 事業 |
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1 事業一般 |
1 定款に記載されている事業が行われていること。 |
事業を停止している事実があるときは、その措置について、法人側の方針を確かめたうえ、その具体的な是正の方法について報告を求めるとともに、廃止する場合は定款変更等の手続を行わせること。 |
2 定款に記載されていない事業を行っていないこと。 |
定款に記載されていない事業を行っている場合は、その措置について法人側の方針を確かめたうえ、実態に合わせた定款変更等の手続を行わせること。 |
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2 社会福祉事業 |
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(1) 運営状況 |
1 当該法人の事業のうち主たる地位を占めるものであること。 2 関係法令通知による設置及び運営の基準に則して、適正に経営されていること。 3 社会福祉事業を行うための必要な資金が確保されていること。 4 関係機関との連絡が十分になされ、地域社会との協調が図られていること。 |
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(2) 事務手続 |
事業の開始、変更及び廃止等に係る所要の手続が遅滞なく行われていること。 |
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3 公益事業 |
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(1) 必要性 |
1 社会福祉と関係を有し、公益性を有するものであること。 2 公益事業の経営により、社会福祉事業の経営に支障を来していないこと。 3 事業規模が社会福祉事業に比べて過大なものとなっていないこと。 4 会計が、社会福祉事業及び収益事業と明確に区分され、特別会計として経理されていること。 |
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(2) 収益の処分 |
収益が生じた場合は、公益事業又は社会福祉事業の経営に充てられていること。 |
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4 収益事業 |
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(1) 必要性 |
社会福祉事業経営の財源に充てるために行われているものであること。 |
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(2) 事業内容 |
1 収益事業の経営により、社会福祉事業の経営に支障を来していないこと。 2 事業規模が社会福祉事業に比べて過大なものとなっていないこと。 3 社会福祉法人の社会的信用を傷つけるおそれのあるもの及び投機的なものでないこと。 4 社会福祉事業用設備の使用又は社会福祉事業従事職員の兼務により、本来の業務に支障を来していないこと。 5 収益事業は、特別会計とされていること。 なお、収益事業に係る借入金は、収益事業用財産の1/2を超えていないこと。 |
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(3) 収益の処分 |
収益が社会福祉事業の経営に充てられていること。 |
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Ⅲ 管理 |
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1 人事管理 |
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(1) 任免関係 |
1 施設長の任免に当たっては、理事会の議決を経ていること。 2 施設長以外の職員の任免に当たっては、理事会の審議を経ていることが望ましいこと。 |
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(2) 職務関係 |
1 就業規則、給与規定が設けられていること。 2 職員の処遇が労働基準法等関係法令通知等に則して適正に行われていること。 3 職員の資質向上を図るため、職員研修について具体的計画が立てられていること。 |
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2 資産管理 |
1 基本財産、運用財産、公益事業用財産及び収益事業用財産は、明確に区分管理されていること。 2 資産のうち現金は、確実な金融機関に預け入れ、確実な信託会社に信託し、又は確実な有価証券に換えて、保管されていること。 |
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3 法人の所有する社会福祉事業の用に供する不動産は、全て基本財産として定款に記載されていること。また、当該不動産の所有権について登記がなされていること。 |
基本財産とすべき不動産とは、社会福祉施設の最低基準により定められた設備を含む建物並びにその建物の敷地及び社会福祉施設の最低基準により定められた設備の敷地をいうこと。 |
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4 基本財産を、〔所轄庁〕の承認を得ずに、処分し、貸与し又は担保に供していないこと。 |
所定の手続を経ずに、処分、貸与し又は担保に供している基本財産がないことが登記簿謄本により確認されること。 |
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5 社会福祉事業の経営上必要な運用財産は、適正に管理され、処分がみだりに行われていないこと。 6 不動産を国又は地方公共団体から借用している場合は、国又は地方公共団体の使用許可等を受けていること。 |
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3 会計管理 |
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(1) 予算 |
1 予算は、定款の定めにしたがい適正に編成されていること。 2 予算が適正に執行されていること。なお、予算の執行に当たって、変更を加えるときは、あらかじめ理事会の同意を得ていること。 |
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(2) 会計処理 |
1 経理規程を制定していること。 |
1 昭和51年1月31日社施第25号社会局長・児童家庭局長通知「社会福祉施設を経営する社会福祉法人の経理規程準則の制定について」 2 社会福祉施設を経営しない社会福祉法人にあっても特に支障がない限り上記1の経理規程準則によることが望ましいこと。 |
2 会計責任者が置かれていること。 なお、会計責任者と出納職員の兼務は避け、内部けん制組織が確立されていること。 3 現金保管については、保管責任が明確にされていること。 |
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(3) 債権債務の状況 |
1 法人の借入金が、事業運営上の必要によりなされたものであること。 2 借入金は、理事会(評議員会)の議決を経て行われていること。 3 借入金の償還財源に寄付金が予定されている場合は、法人と寄付予定者との間で書面による贈与契約が締結されており、その寄付が遅滞なく履行されていること。 |
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(4) 会計帳簿等の整備状況 |
会計帳簿が整備され、証ひょう書類が保存されていること。 |
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(5) 決算及び財務諸表 |
1 決算手続は定款の定めにしたがい適正に行われていること。 2 決算と予算との間で、大幅にくい違う科目がある場合は、その原因が究明され、必要な改善措置がなされていること。 3 財産目録、貸借対照表及び収支計算書が整備され、保存されていること。 |
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(6) その他 |
1 寄附金を募集する際には、関係法令の定めにしたがい行われていること。 また、寄附金が募集の際の使途に即して使用されていること。 2 社会福祉施設の入所者から預かっている金銭は別会計で経理されているとともに適正に管理がなされていること。 |
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4 その他 |
1 社会福祉施設設備等の管理が十分に行われ、防災対策等が立てられているとともに、その実施体制が確立されていること。 2 法人印及び代表者印については、管理者が定められているとともにその管理が適正になされていること。 3 当該法人が登記しなければならない事項について登記がなされていること。 |
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