○社会福祉施設における火災防止対策の強化について
(昭和四八年四月一三日)
(社施第五九号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会・児童家庭局長連名通知)
標記について最近における社会福祉施設等の火災事故にかんがみ昭和四八年三月九日厚生省発医第三四号をもつて厚生事務次官から貴職あて通達されたところであるが、貴管内の社会福祉施設における防火管理の充実強化を図るため、次の事項に留意のうえ火災防止に万全を期するよう指導の徹底に努められたい。
なお、社会福祉施設における防火管理設備等の整備状況を確認するとともに、今後の整備計画樹立のため一斉点検調査を実施することとしたので、別紙1「社会福祉施設防火管理設備等一斉点検要領」により実施するよう貴管内社会福祉施設をご指導願いたい。また、消防庁から各都道府県消防主管部長あて昭和四八年三月一四日消防庁第四八号「病院等の防火安全対策の強化及び一斉点検の実施について」の通知が出されているので念のため申し添える。
1 防火管理体制の強化について
施設の管理者は、施設管理の最高責任者として火災発生の防止に万全を期すること。なお、管理者一人で施設全般にわたつて防火管理の完璧を期することは不可能であるから、全職員の理解と協力により防火管理の効果をあげるよう指導訓練につとめること。
2 予防管理組織について
防火上の安全管理に関し、平素の業務上の責任分担を考慮して、時間、場所、設備により施設全般にわたり間隙のない責任分野を明確にした予防管理組織を確立すること。
3 消防計画の確立、避難訓練の実施について
(1) 平素から消防機関等関係諸機関と具体的かつ充分な協議を行ない施設の実態に即した消防計画の策定を図らせること。
また、有事の際における入所者の避難、収容について最寄り関係施設の相互協力体制の確立に努めること。
(2) 職員、入所者に対して常に避難経路を周知徹底させるとともに、定期的な避難訓練の実施に努めること。ことに夜間の火災においては、特殊な集団心理状況などのため悲惨な結果を招くことが多いことを考慮し夜間避難訓練の実施についてもその徹底を図ること。
(3) 自力避難の不可能な者については、できる限り一階(避難出入口が地上に通ずる階を含む。)または火災危険が少なく避難の容易な場所に収容すること。二階以上に収容する場合には、スロープの設置等避難のための措置について充分な配慮を払うこと。
4 火災発生時の措置について
火災の発生を知つた時は、直ちに消防機関に通報するとともに、人身事故の防止を第一に考えて入所者の避難誘導に全力を挙げること。ことに入所者等へ火災発生を早期に知らせることが災禍の拡大を防ぐ有効な方途であるので、職員は冷静に各棟、各階のすべての入所者への周知に努めること。
5 有害ガスを発生する新建材等について
最近普及している新建材、化学繊維のカーテン、寝具等には、火災に際して有害ガスを発生したために人身事故の原因となる例が多いので、これが整備にあたつて、防火管理上の充分な配慮をすること。
6 自主点検の実施について
火災は人為的なものが多く、その発生場所、原因、経過等をみると、その建物等に居住又は勤務する人々の火災に対する注意心があれば未然に防止できるものであることにかんがみ、今回の一斉点検とは別に平素においても一斉点検事項等について定期的に自主点検を実施させ、火災危険の是正排除に努めること。
7 消防設備及び避難設備等の整備について
消防用設備及び避難設備等の未整備な施設については、早急に整備を行なう配意とすること。
8 最近発生した済生会八幡病院の火災において別紙2「済生会八幡病院の火災における問題点」に掲げるような欠陥がみられたので、了知のうえ指導すること。
別紙1
社会福祉施設防火管理設備等一斉点検要領
1 点検の実施時期
原則として昭和四八年五月中に実施すること。
2 点検結果の報告
都道府県は、社会福祉施設の点検結果報告(別紙様式1)に基づき、別紙様式2による不備欠陥項目別件数集計表(2―1)及び改善計画整備額集計表(2―2)二部を昭和四八年六月三○日までに社会局施設課あて提出すること。
3 対象施設
(1) 生活保護法による保護施設
救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設
(2) 老人福祉法による老人福祉施設
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター
(3) 身体障害者福祉法による身体障害者更正援護施設
(ただし、国立施設は除く)
肢体不自由者更生施設、失明者更生施設、ろうあ者更生施設、内部障害者更生施設、身体障害者療護施設、重度身体障害者更生援護施設、身体障害者授産施設、重度身体障害者授産施設、身体障害者福祉工場、補装具製作施設、点字図書館、点字出版施設
(4) 売春防止法による婦人保護施設
婦人相談所一時保護所
婦人保護施設
(5) 児童福祉法による児童福祉施設
(ただし、国立施設は除く)
助産施設、乳児院、母子寮、保育所、養護施設、精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、盲児施設、ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設、肢体不自由児通園施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設、救護院、児童館
(6) 精神薄弱者福祉法による精神薄弱者援護施設、精神薄弱者更正施設、精神薄弱者授産施設、精神薄弱者総合援護施設
(7) 母子福祉法による母子福祉施設
母子福祉センター、母子休養ホーム
(8) 母子保健法による母子保健施設
母子健康センター
(9) その他の社会福祉施設
生活の扶助を行なう施設、授産施設、宿所提供施設、盲人ホーム、無料低額診療施設、隣保館、へき地保健福祉館、有料老人ホーム
4 点検事項
「社会福祉施設点検結果報告」(別紙様式1)の「点検項目」欄に掲げる事項について点検すること。
5 報告書の記入要領
(1) 社会福祉施設点検結果報告(別紙様式1)について
ア 点検にあたつては、原則として防火管理者または、その補助者が行なうこと。なお点検の際、所轄消防署の指導を受けて点検にあたられたい。
イ 点検結果報告には、所轄消防署の確認を受けること。
ウ 「経営主体の名称」欄は、施設の経営主体の名称を、たとえば、○○市、○○町村一部事務組合、社会福祉法人○○会などのように記入すること。
エ 「設置主体の名称」欄は、経営主体と異なる場合についてのみ記入すること。
オ 点検項目の「適否」欄には、適合している場合にはAと、不適合である場合にはBと、設置の義務がない場合にはCと記入すること。
カ 「改善計画」欄は、改善を要する事項を記入し、その改善に必要な整備額(見込額)を併記すること。
(2) 社会福祉施設種類別、公立、民間立別、不備欠陥項目別件数集計表(2―1)(別紙様式2)について
ア 点検結果報告(別紙様式1)に基づき集計すること。
イ 施設数欄には点検結果報告のあつた施設数を計上することとし、( )内には、不備欠陥のあつた施設数を計上すること。
ウ 点検結果報告(別紙様式1)による点検項目の「適否」欄中、「B」(不適合の場合)を種類別、公立、民間立別(経営主体のみ)にあげること。
エ 同一項目に不適箇所が二以上である場合であつても一件として取り扱うこと。
オ 児童福祉施設の助産施設と母子保健施設の母子健康センターが併設されている施設については、それぞれの施設数に計上し、当該施設数を括弧して再計すること。
(3) 社会福祉施設種別、公立、民間立別、改善計画整備額集計表(2―2)について、
ア 点検結果報告(別紙様式1)に基づき集計すること。
イ 「改善計画整備額内訳」欄は、点検結果報告(別紙様式1)の「改善計画」欄における改善に要する整備額をあげること。
別紙様式1
別紙様式2
別紙2
済生会八幡病院の火災における問題点
1 消防機関への通報の遅延
火災発見者が火元を自力で消火しようとしたため、当直者等他の職員に対する連絡が遅れたこと等により消防機関への通報が発見時より三○分を経過して行なわれている。
2 入院患者に対する不適正な連絡
火災発生を知つた職員は、所内放送で窓の開放を連絡したのみで、火元の現象及び避難についての連絡指示をしていない。
3 建造物整備
(1) 構造上の欠陥
ダクト、リフト等縦穴部分の耐火性建設施工が完全に行なわれていない。
(2) 防火シャッターの機能欠陥
防火シャッターが自動式に改造されていない(職員がシャッターを閉鎖していない。)
(3) 内装の不燃化の不徹底
内装の不燃化(昭和四四年五月建築基準法施行令改正)が行なわれていない。
(4) カーテンの防炎処理が不徹底
カーテンの防炎処理(昭和四七年六月消防法令改正)が行なわれていない。
4 避難口の完全確保
避難口が施錠されており容易に解錠できない状態になつていた。また避難口に障害物が置かれていた。
5 避難器具の使用
避難器具が全く使用されてなく、使い方、設置場所が周知されていない。
6 自力避難可能者の誘導
自力避難できない患者の搬出に全力がそれぞれ、自力避難可能者の誘導が行なわれてなく現場の困乱を招き、消火活動に支障が生じた。
7 自動火災報知器に日頃から誤報があつたため、報知器の作動を職員が誤報として処理している。