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○福祉事務所の整備・運営について

(昭和二八年二月一一日)

(厚生省社乙発第一五号)

(各都道府県知事あて厚生省社会局長通知)

福祉事務所の発足以来既に年余をへ、着々その成果を挙げつつあるが、発足当初に於ける諸般の事情もあつて、福祉事務所本来の使命である現業機能が今なお十分に発揮されていない現状にあるので、今後措置すべき基本的事項を左記のとおり示すと共に、その整備強化を一段と図るうえから別紙要綱に基き、標準福祉事務所を設置することとしたから、貴都道府県におかれてもこの辺の事情を了察のうえ福祉事務所の整備と運営に一層の配意を煩わしたい。

なお、この通知に基く運営上の具体的事項については、近く配付される「福祉事務所運営指針」に準拠されたい。

1 福祉事務所の性格について

福祉事務所に対する監査の結果、事務量分析の結果等からみるに、発足当初において意図した現業機能が十分に発揮されていないのみならず、単なる事務処理機関的な方向に漸次移行しつつあるやにも見受けられ、且つ更にはこのような傾向を以て福祉事務所本来の在り方の如く考えがちな向も少なくないので、早急に現業機能の確保に努められたいこと。

なお、福祉事務所が福祉三法以外の社会福祉事務を所掌する場合は、昭和二六年六月四日厚生省発社第五六号通知を以て指示したとおり、福祉三法の施行に支障を来さない場合に限り、即ち現業機能を阻害しない限度において許されるものであるから、如何なる場合といえどもこれが機能の発揮には万全の措置を講じ、いやしくも社会福祉に関する福祉三法以外の事務を所掌することにより、現業機能の発揮に支障を来すことのないよう留意されたいこと。

2 職員の充足と訓練について

前項の福祉事務所における現業機能が十分に発揮出来ない要因の主なものは、福祉事務所に於ける必要人員の確保が十分でないことにあるものと考えられる。この際指導員、現業員、事務員の確保は勿論のこと、福祉三法以外の事務を所掌する場合は、その事務量に応じた人員を必ず確保されたいこと。

又指導員、現業員は必ず社会福祉主事でなければならないことは法の明記する処であるが、その資格保有の状況は必ずしも満足すべきものとは云い難いので、新規職員の採用に当つては必ず社会福祉主事の資格者を確保されると共に、配置転換等によつて補充された指導員、地区担当員の訓練にあたつては、単に実務中心の応急訓練に偏ることなく社会福祉に関する基礎的な資質に関する事項についての訓練も常に計画的に実施されるよう努められたいこと。特に指導員は現業機能を発揮するうえから、重要なる役割を果すものであるから、これが訓練にあたつては特に意を用いられたいこと。

3 福祉事務所に対する指導について

管下福祉事務所に対する査察指導は、客年来相当の成果を収めてきたところであるが、査察指導の際ややもすれば福祉三法の所管課又は係が相互の連絡なしに単独に実施している向も見受けられるので、福祉事務所の綜合的運営が計られるよう、各課各係との連絡調整或いは査察指導機構の確立に努められたいこと。

4 福祉事務所における事務処理過程の確立について

福祉事務所がその機能を十分に発揮するためには、第二項において述べた人員の確保を図ることはもとよりであるが、標準事務を設定し、その事務処理過程を明確にし、最も能率的な事務処理方法を確立することも喫緊の要務と考える。

このような意味から、当省においても福祉事務所の所掌事務全般の能率的な処理方式を検討中であるが、近く通知する予定であるから了知のうえ、この趣旨に副うよう諸準備を進められたいこと。

5 町村との協力関係について

町村長の福祉事務所に対する協力関係については、夫々の法律に規定され、その具体的な事項については、しばしば指示がなされている次第であるが、福祉事務所に於ける人員を不足或は事務量の過重が、勢い法律の意図する協力の程度を逸脱して、当然福祉事務所において処理すべき事項を町村長をして代行せしめている傾向が見られる。よつて、公的保護の実施に関する福祉事務所の責任態制を速やかに確立し、その間の調整を図られたいこと。

6 民生委員との協力関係について

公的保護事務における福祉事務所と民生委員の協力関係は、相当区々に亘り、中には福祉事務所と民生委員との間に摩擦を生じている向も少くないが、速やかに相互の反省と良識とによつてこれを払拭し、夫々の立場を理解し合い、尊重し合って、密接な連繋の下にその活動が円滑に行われるよう指導されたいこと。

別紙

標準福祉事務所設置運営要綱

一 趣旨

社会福祉事業の再編整備の線に沿い、福祉事務所制度が発足したが、発足当初における行政機構の改革、行政整理等の関係もあつて、その性格及び運営が多様性を帯びている現状にかんがみ、標準的に整備、運営せられる福祉事務所を設置し、之をモデルとして逐次他に倣わせ、福祉事務所全体の整備強化とその能率化を図るものとする。

二 設置計画

1 設置場所 全国を概ね六地区(北海道東北地区、関東信越地区、東海北陸地区、近畿地区、中国四国地区、九州地区)に分ち、各地区につき郡部、市部(但し東京都を含む)各一か所宛計一二か所設置するものとする。

2 設置方法 都道府県の申請に基き、厚生省は福祉事務所の現況、地理的条件とを勘案して指定するものとする。

3 標準福祉事務所選定基準

(A) 独立組織であること。

(B) 福祉三法のみを所掌する福祉事務所、福祉三法以外の社会福祉事務を所掌する福祉事務所の何れたるを問わず現業機能が完全に確保されていること。

(C) 職員の量的、質的状況が次に掲げる条件に合致するもの。

(一) 所長は、専任であること。

(二) 指導員、現業員、事務員及び身体障害者福祉司が基準以上確保されており且つ、専任であること。

(三) 指導員、現業員、身体障害者福祉司は法定の資格を保有していること。

(四) 福祉三法以外の社会福祉事務を所掌する場合は、その事務量に応じた人員が必ず確保されていること。

(五) 母子相談員は専任であること。

三 運営方法

「福祉事務所運営指針」に則り能率的、合理的に運営されること。なお次に掲げる事務をも兼ねて行うこと。

1 事務量分析を年二回以上

2 職能分析を年二回以上

3 福祉事務所運営協議会を三か月に一回以上

4 ケース研究会を月一回以上

5 その他福祉地区の実態調査等福祉事務所の運営に必要な事項

四 指導方法

1 厚生省は都道府県と協力して随時実地指導を行うこと。

2 標準福祉事務所を他に倣わせる為厚生省は都道府県と協力して年一回程度ブロック管内の都道府県及び福祉事務所の関係者を現地に招集し運営研究会を開催すること。

3 都道府県は第一号の外必要な指導を随時行うこと。

五 経費

標準福祉事務所の運営に必要な経費については別途指示すること。