添付一覧
○社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の一部の施行(平成一二年六月七日)及びそれに伴う政省令の改正について
(平成一二年六月七日)
(障第四五一号・社援第一三五一号・児発第五七四号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部長・社会・援護・児童家庭局長連名通知)
平成一二年六月七日付けで公布された「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律(平成一二年法律第一一一号)」については、同日付けでその一部が施行されたところである。
今般、前記法律において、福祉サービスに関する情報の提供、利用の援助及び苦情の解決に関する規定を整備し、福祉サービスの利用者の利益の保護を図るとともに、身体障害者、知的障害者、障害児に係る相談支援事業等について、新たに社会福祉事案に追加する等の関係規定が施行された。これを受け、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成一二年政令第三三四号。以下「整備政令」という。)及び社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う厚生省関係省令の整備等に関する省令(平成一二年厚生省令第一〇〇号。以下「整備省令」という。)が同日公布、施行され、関係政令及び厚生省関係省令について所要の規定の整備を行ったところである。
今回の改正の趣旨及び内容について、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二四五条の四第一項の規定に基づく技術的助言として、左記のとおり通知するので、管内市町村、関係団体、関係機関等に周知徹底をお願いしたい。
なお、社会福祉事業の事業規模要件の緩和に係る部分(平成一二年六月七日施行)、身体障害者福祉法の盲導犬訓練施設等に係る部分、児童福祉法の助産施設及び母子生活支援施設の入所方式に係る部分及び社会福祉施設職員等退職手当共済法(昭和三六年法律第一五五号)の一部改正に係る部分(平成一三年四月一日施行)並びに社会福祉法の地域福祉計画に係る部分及び身体障害者福祉法等の障害者福祉サービスに係る支援費支給方式に係る部分(平成一五年四月一日施行)については、別途通知するものとする。
記
第一 法改正の趣旨等
1 法改正の趣旨
現在の社会福祉制度は、戦後の復興期に貧困者、身体障害者、戦災孤児等が急増する中で、こうした生活困窮者を緊急に保護・救済するために旧社会福祉事業法を中心に、行政主導で措置の対象者及び内容を判断し、保護・救済を行う仕組み(措置制度)として制度化され、一定の成果を上げてきた。
しかしながら、生活水準の向上、少子・高齢化の進展、家庭機能の変化等の社会環境の変化に伴い、今日の社会福祉制度には、従来のような限られた者に対する保護・救済に留まらず、児童の育成や高齢者の介護等、国民が自立した生活を営む上で生じる多様な問題に対して、社会連帯に基づいた支援を行うことが求められるようになった。こうした変化を踏まえ、利用者と事業者が対等な関係に立って、福祉サービスを自ら選択できる仕組みを基本とする利用者本位の社会福祉制度の確立を図り、障害者等のノーマライゼーションと自己決定の実現を目指すため、今般の法改正を行うこととしたものである。
具体的には障害者福祉サービスについて、利用者の申請に基づき支援費を支給する方式(以下「支援費支給方式」という。)を導入するとともに、福祉サービスの利用者の利益の保護について、福祉サービスに関する情報の提供、利用の援助及び苦情の解決に関する規定を整備することとしたところである。また、地域福祉の推進を図るための規定を整備する等の所要の措置を講じることとした。さらに、これらの改正と併せ、民生委員法についても社会情勢の変化に対応し、民生委員の機能強化を図る等の改正を行ったところである。
2 政令及び省令改正の趣旨
今回の整備政令及び整備省令においては、社会福祉事業法施行令を改正し社会福祉法施行令とするほか、改正法により必要となる福祉各法の政省令について規定整備を行うものである。
第二 社会福祉事業法の一部改正(平成一二年六月七日施行関係)
1 題名の改正
従来、この法律は、「社会福祉事業法」という名称が表すとおり、社会福祉事業が公明かつ適正に行われるための諸規制を行うことを主眼とするものであった。しかしながら、今回の改正により、目的及び理念規定を利用者本位の社会福祉制度を確立する観点から規定し直すとともに、「福祉サービスの適切な利用」、「地域福祉の推進」という新しい章を設けたこと等によりその内容及び性格が変更されたことに伴い、法律の名称を「社会福祉法」と改めることとした。
2 目次の改正
福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域福祉の推進を図るための規定を整備するため、新たに「福祉サービスの適切な利用(第八章)」という章を設けるとともに、従来の「共同募金及び社会福祉協議会」の章(旧第八章)を、「地域福祉の推進(第一〇章)」という章に改めた。
3 総則の改正(社会福祉法第一章関係)
(1) 目的規定の改正(社会福祉法第一条関係)
第二の1で述べたとおり、この法律の内容及び性格を改めたことを受け、目的規定において、「社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域福祉の推進などを図り、もって社会福祉の増進に資すること」を明文化した。
(2) 社会福祉事業に係る改正(社会福祉法第二条関係)
社会福祉事業について、新たに九事業を追加し、一事業を削除するとともに、政令で定める社会福祉事業について規模要件を緩和できる規定の整備を行った。
① 新規社会福祉事業の追加
誰もがその有する能力を活用し、自立した地域生活を営むことがてきるよう支援し、また、福祉サービスの利用者が福祉サービスを適切に選択し利用することができるよう援助するため、以下の九事業を新たに第二種社会福祉事業に追加することとした。
ア 児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)に規定する障害児相談支援事業
イ 身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号)に規定する身体障害者相談支援事業
ウ 身体障害者福祉法に規定する身体障害者生活訓練等事業(平成一三年四月一日施行)
エ 身体障害者福祉法に規定する手話通訳事業
オ 身体障害者福祉法に規定する盲導犬訓練施設を経営する事業(平成一三年四月一日施行)
カ 知的障害者福祉法(昭和三五年法律第三七号)に規定する知的障害者デイサービス事業
キ 知的障害者福祉法に規定する知的障害者相談支援事業
ク 知的障害者福祉法に規定する知的障害者デイサービスセンターを経営する事業
ケ 福祉サービス利用援助事業
なお、「福祉サービス利用援助事業」については、利用契約方式への移行に当たり、特に判断能力が不十分な方々について援助の必要性が高いことから、全国的な整備を図るとともに事業従事者の資質の向上及び本事業に対する普及・啓発を行うために、都道府県社会福祉協議会が事業を実施することを社会福祉法に定めたところである。さらに多様な主体によるサービス提供を可能とするために、本事業を第二種社会福祉事業として位置づけたものであり、社会福祉法第六九条の届出を行うことにより、都道府県社会福祉協議会以外にも社会福祉法人や公益法人、特定非営利活動法人(NPO)等多様な主体がこの事業を経営できることとした。
② 公益質屋を経営する事業の削除
公益質屋については、社会福祉制度全般の充実や、母子寡婦貸付制度、生活福祉資金貸付制度等の代替施策の整備等により、昭和三〇年代を境に貸付金額及び貸付口数は顕著に減少している。このような需要の減少に伴い、公益質屋の福祉的要素は後退していることから、公益質屋を営業する事業を社会福祉事業から除外した。
③ 事業規模要件の緩和
旧社会福祉事業法においては、入所型事業でない社会福祉事業については、常時保護を受ける者が二〇人以上としていたが、今回の改正により政令で定める事業については、常時保護を受けるものが一〇人以上であれば、社会福祉事業に含まれることとした。これにより、当該事業の経営を目的とする社会福祉法人の設立を容易にし、必要な規制及び支援の対象とすることを可能にした。
政令で定める事業としては、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の通所授産施設を経営する事業を規定することを予定しており、現在準備を進めている。
(3) 基本理念規定の改正(社会福祉法第三条~第六条関係)
個人が自らの選択に基づいてサービスを利用することができる利用者本並の制度を整備し、自立を地域全体で支援する仕組みを確立するに当たって、従来の基本理念を改め、第三条から第六条に通則的な規範として整理し、関係者の責任を明確化した。
① 福祉サービスの基本的理念(社会福祉法第三条関係)
福祉サービスとは何らかの社会的支援を必要とする者に対するサービスであることから、福祉サービスの内容について、その提供者が従うべき通則的な規範を明確にする必要がある。
すなわち、福祉サービスの提供に当たっては個人の尊厳の保持を旨とし、また、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならないことを定めた。
② 地域福祉の推進(社会福祉法第四条関係)
誰もが身近な地域で、その人らしく安心して暮らせるようにするためには、住民の社会福祉に関する活動への積極的な参加を得つつ、社会福祉に関わる者が連携して地域の特性を生かしたサービスの提供体制を確立することが重要である。
このため、地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられ、いわゆるノーマライゼーションが図られるように、地域福祉の推進に努めなければならないことを明確化した。
③ 福祉サービスの提供の原則(社会福祉法第五条関係)
利用者が自ら福祉サービスを選択し、自立した生活を営むためには、福祉サービスの提供者が、多様なサービスを利用者の意向に則して総合的に提供することが重要である。
このため、社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、かつ他の関連サービスとの連携を図りつつ、総合的に提供するよう努めるべきものとした。
④ 福祉サービスの提供体制の確保等に関する国及び地方公共団体の責務について(社会福祉法第六条関係)
国及び地方公共団体は、国民の福祉の増進を図るため、今後とも、計画的な基盤整備、利用者保護制度の適切な運用や費用負担などについてその責任を果たす必要がある。
このため、制度の運営・管理を行う国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、福祉サービスの提供体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない旨定め、国及び地方公共団体の責務を明確化することとした。
4 社会福祉法人に係る改正(第六章関係)
福祉サービスの提供において中心的な役割を果たしている社会福祉法人は、介護保険制度や支援費支給方式等利用者が自らサービスを選択して利用する制度(以下「利用制度」とする。)の導入に伴い、利用者から選択されるために、自主的に創意工夫を行ってより質の高いサービスの提供を目指すとともに、国民の高い信頼を得るために、事業の効率性や透明性を確保しようとする積極的な姿勢が求められることとなる。このような観点から、社会福祉法人について、経営の原則を定めるとともに、その達成に資する規定の整備を行うこととした。
(1) 社会福祉法人の経営の原則(社会福祉法第二四条関係)
今後とも福祉サービスの提供において中心的な役割を担うことが求められる社会福祉法人について、その経営の安定性を確保し、かつ利用者の多様な選択を支援するため、経営基盤の自主的な強化、提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性を、社会福祉法人の経営の原則として規定することとした。
(2) 収益事業の収益の充当先の拡大(社会福祉法第二六条、社会福祉法施行令第一条関係)
(1)の経営の原則のうち経営基盤の自主的な強化に資する観点から、従来は社会福祉事業のみに充当が認められていた収益事業の収益については、次に掲げるとおり、社会福祉の増進に密接に関わる公益事業にも充当できることとした。
① 社会福祉法第二条第四項第四号に規定する要件(いわゆる事業規模要件)を満たさないために社会福祉事業に含まれない小規模な事業
② 介護保険法第七条第五項に規定する居宅サービス事業のうち社会福祉事業以外のもの及び同条第一八項に規定する居宅介護支援事業
③ 介護保険法第七条第二二項に規定する介護老人保健施設を経営する事業のうち社会福祉法第二条第三項第一〇号に規定する事業(いわゆる無料低額介護老人保健施設事業)以外のもの
④ 社会福祉士及び介護福祉士法第七条第二号若しくは第三号に規定する社会福祉士養成施設及び同法第三九条第一号から第三号までに規定する介護福祉士養成施設を経営する事業
⑤ 精神保健福祉士法第七条第二号又は第三号に規定する精神保健福祉士養成施設を経営する事業
⑥ 児童福祉法施行令第一三条第一項第一号に規定する指定保育士養成施設を経営する事業
⑦ 前記①から⑥までに掲げる事業に準ずる事業であって厚生大臣が定めるもの
(3) 財務諸表等の開示義務(社会福祉法第四四条関係)
(1)の経営の原則のうち社会福祉法人の事業の透明性を確保し、かつ福祉サービスの利用者が社会福祉法人の提供する福祉サービスの選択に必要な判断材料となる情報を入手できるようにするため、財務諸表等必要な書類の閲覧を可能にする必要がある。
このため社会福祉法人に対し、事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書並びにこれに関する監事の意見を記載した書面を各事務所に備え置き、当該社会福祉法人が提供するサービスの利用希望者等の利害関係人から請求があった場合には、請求権の濫用と認められるような例外的な場合を除き、原則として閲覧に供しなければならないこととした。
5 社会福祉事業に係る改正(第七章関係)
(1) 第一種社会福祉事業の経営主体に係る規定及び事業経営の準則に係る規定の移動(社会福祉法第六〇条及び第六一条関係)
旧社会福祉事業法は、社会福祉事業を行う者についての事業規制をその主眼としており、そのため第一種社会福祉事業の経営主体に係る規定(旧第四条)及び社会福祉事業の経営準則に係る規定(旧第五条)については、総則に置かれていた。しかしながら、1、2及び3において述べたとおり、この法律は社会福祉の全般に関する共通的基本事項を定めるものとして、その内容及び性格を変えていることから、改正後の社会福祉法の総則部分にこれらの事業規制に関する規定を置くことは適切ではないこととなる。
このため、旧第四条及び旧第五条については、事業規制について定める「社会福祉事業」の章(第七章)に移動することとした。
(2) 社会福祉施設の最低基準に係る改正(社会福祉法第六五条)
一定の質が確保された福祉サービスの提供を保障するため、施設サービス提供に関する最低基準が定められているところであるが、今後、利用者が事業者と対等な立場で、契約に基づき適切なサービスを利用することが基本となることを踏まえ、同基準においても利用者の苦情解決への取り組み等を加える必要がある。
したがって、社会福祉事業の経営者に対し、提供する福祉サービスに係る利用者からの苦情を適切に解決する責務を課す(社会福祉法第八二条。6(2)②ア参照)とともに、厚生大臣は、社会福祉施設の最低基準として、設備の規模及び構造の他に、福祉サービスの提供の方法、利用者等からの苦情への対応その他の社会福祉施設の運営について定めなければならないことを明確にした。
(3) 社会福祉事業の経営者に対する不利益処分に係る規定の改正(社会福祉法第七二条)
2及び3で述べたように、社会福祉法の目的の一つは利用者の利益の保護を図ることにあり、この目的を具体化するため、「福祉サービスの適切な利用」という章を新たに追加する(6参照)こととし、利用者の利益の保護の仕組みの実効性を担保するため、所要の規定を置くこととした。
すなわち、次の6で述べるように、社会福祉事業の経営者に対し、利用契約の成立時における書面の交付を義務付ける規定及び誇大広告を禁止する規定を置くこととしているが、これらの規定に違反した経営者に対しては、都道府県知事が事業停止処分、許認可取消処分等の不利益処分を課すことができるものとした。
6 福祉サービスの適切な利用に係る規定の追加(第八章関係)
措置制度の下では、福祉サービスの利用者と提供者の間に直接の契約関係がなく、サービスの内容は、措置権者である行政により決められていたため、利用者の意向を反映した福祉サービスの選択を保障する制度的な仕組みがなかった。
今般、利用制度の導入に伴い、利用者の選択を保障するための諸般の仕組みの整備が不可欠となる。具体的には、利用者の判断を可能にする十分かつ適切な情報の確保と、判断能力が不十分なために自らサービスを選択して利用することが困難な者を保護するための福祉サービスの利用の援助等を定めることとした。
(1) 情報の提供に係る規定の追加(第一節関係)
利用者の選択に必要な情報が得られる仕組みや、より質の高いサービスを確保する仕組みの整備に当たり、福祉サービス全般に共通する事項として、次の①から⑤を定めることとした。
① 情報の提供(社会福祉法第七五条)
利用制度への移行に伴い、利用者が福祉サービスを適切かつ円滑に選択できるよう、福祉サービスに関する的確な情報が利用者に対して自主的かつ積極的に提供されることが重要である。
こうした観点から、社会福祉事業の経営者に対し、その提供する福祉サービスに関する情報の提供に努めなければならない責務を課すとともに、国及び地方公共団体に対し、サービスを利用しようとする者が情報を容易に入手できるよう、必要な措置を講ずるよう努めなければならない責務を課すこととした。
② 契約申込者に対する説明(社会福祉法第七六条)
利用者の適切な選択を保障するとともに、契約時の情報不足による無用の混乱を避けるため、社会福祉事業の経営者に対し、その提供する福祉サービスの利用希望者から申込みがあった場合には、当該福祉サービスを利用するための契約の内容及びその履行に関する事項について説明するよう努める義務を課すこととした。
③ 利用契約成立後における書面交付義務(社会福祉法第七七条)
ア 利用者と事業者の契約関係を明確にするとともに、利用者が実際に不利益を被った場合の事後的な救済に資するため、社会福祉事業の経営者に対し、契約成立後遅滞なく、以下に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない義務を課すこととした。
(ア) 当該社会福祉事業の経営者の名称及び主たる事務所の所在地
(イ) 当該社会福祉事業の経営者が提供する福祉サービスの内容
(ウ) 当該福祉サービスの提供につき利用者が支払うべき額に関する事項
(エ) 福祉サービスの提供開始年月日
(オ) 福祉サービスに係る苦情を受け付ける窓口
なお、本条にいう書面交付の方法としては、前記(ア)から(オ)までに掲げる事項をすべて記載した書面を交付するという方法だけでなく、本条の趣旨が十分に反映されている方法であるものと評価される限り、事前説明に用いた文書やサービス提供記録が記載されている資料などを利用者に交付する等の代替的な方法でも良いものとする。
具体的には、社会福祉事業に該当する介護サービスについての本条の適用に当たっては、前記(ア)から(オ)に掲げる事項の書面交付については、介護保険法に基づく指定事業者・施設の指定基準等を遵守した文書の交付及び書面への記載をもって、これに代えることができるものとする。
これは、社会福祉事業に該当する介護サービスについては、その指定事業者・施設の指定基準において、①サービスの提供に際し、あらかじめ利用申込者に福祉サービスの内容や利用料その他の費用の額等の重要事項を記した文書を交付して説明を行い、サービス提供に関する同意を得ること、②契約成立後のサービス提供に際し、居宅サービスについてはサービス提供の記録を居宅サービス計画等に記載し、施設サービスについては、入退所(入退院)を被保険者証に記録することが義務づけられており、本条の趣旨が担保されているからである。
イ 各種相談事業をはじめ、以下に掲げる事業については、その事業の性格上、社会福祉法第七七条に規定する書面の交付を社会福祉事業の経営者に対して義務づける実益に乏しいと考えられることから、同条の規定を適用しないこととした。
(ア) 社会福祉法第二条第三項第一号に規定する事業
(イ) 児童福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第二号)のうち、障害児相談支援事業、保育所を経営する事業、児童厚生施設を経営する事業、児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業
(ウ) 母子福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第三号)のうち、母子福祉施設を経営する事業
(エ) 老人福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第四号)のうち、老人福祉センターを経営する事業及び老人介護支援センターを経営する事業
(オ) 身体障害者福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第五号)のうち、身体障害者相談支援事業、身体障害者福祉センターを経営する事業及び身体障害者の更生相談に応ずる事業
(カ) 知的障害者福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第六号)のうち、知的障害者相談支援事業及び知的障害者の更生相談に応ずる事業
(キ) 精神障害者福祉に係る事業(社会福祉法第二条第三項第七号)のうち、精神障害者地域生活支援センターを経営する事業
(ク) 生計困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業(社会福祉法第二条第三項第九号)
(ケ) 隣保事業(社会福祉法第二条第三項第一一号)
④ 福祉サービスの質の向上(社会福祉法第七八条)
福祉サービスの利用が、行政の行う措置制度から利用者が選択する利用制度を基本とすることに伴い、福祉サービスの質の確保についても、行政が委託契約を通じ画一的にサービスの質を確保する考え方から、社会福祉事業の経営者が最低基準を遵守した上で、その提供する福祉サービスの質の一層の向上に自主的に取り組むことを促すという考え方が基本となる。
このため、社会福祉事業の経営者に対し、自らが提供するサービスの質の自己評価その他の措置を講ずることにより福祉サービスの質の確保・向上に努めなければならない義務を規定することとした。
また、国は、福祉サービスの質の評価に関する基準の作成、第三者評価機関の育成等の必要な措置を講ずることにより社会福祉事業の経営者の取り組みを支援するよう努めなければならないこととした。
⑤ 誇大広告の禁止(社会福祉法第七九条)
従来、社会福祉事業については、これまで措置制度が基本であったために、個々の事業者が公告する必要性がなく、福祉サービスに係る広告について規制する規定は置かれていなかった。今後、利用制度を基本とすることから、利用者の利益の保護を図るとともに、不正な競争を防止する観点から、社会福祉事業の経営者に対し、以下に掲げる事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人に誤認させるような表示(いわゆる「誇大広告」)を行うことを禁止することとした。
ア 提供される福祉サービスの質その他の内容に関する事項
イ 利用者が事業者に支払うべき対価に関する事項
ウ 契約の解除に関する事項
エ 事業者の資力又は信用に関する事項
オ 事業者の事業の実績に関する事項
(2) 福祉サービスの利用の援助等(第二節関係)
① 福祉サービスの利用の援助
福祉サービスの利用者の中には、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者等、判断能力が不十分なために福祉サービスを自ら選択し、事業者と契約を結んでサービスを利用することができないおそれのある者がいる。このため、これらの者によるサービスの利用を援助する仕組みを整備し、利用者の利益の保護を図ることとした。
ア 福祉サービス利用援助事業を行う者の留意事項(社会福祉法第八〇条関係)
福祉サービス利用援助事業は、判断能力が不十分な者を対象とすることから、特に利用者の立場に立ち、その意向を尊重する必要が強く求められる。したがって、この事業を行う者の義務として、利用者の意向を尊重し、利用者の立場に立って公正かつ適切な方法で行うことを特に明記した。
イ 都道府県社会福祉協議会が行う福祉サービス利用援助事業等(いわゆる地域福祉権利擁護事業)(社会福祉法第八〇条、第八一条関係)
福祉サービス利用援助事業については、その実施体制が全国的に整備されている必要があることから、都道府県社会福祉協議会について、都道府県の区域内においてあまねく福祉サービス利用援助事業が実施されるために必要な事業を行うとともに、福祉サービス利用援助事業の従事者の資質向上及びこの事業の普及啓発のための事業を行うものとした。
ウ 運営適正化委員会の役割(社会福祉法第八三条関係)
都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であって、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される公正・中立な第三者機関として、運営適正化委員会を置くこととした。
(ア) 運営適正化委員会については、福祉サービス利用援助事業の助言・勧告を行う合議体と、福祉サービスに関する苦情の解決を行う合議体をそれぞれ一以上設けることとする。委員については、それぞれ同数の公益を代表する者、福祉サービスの利用者を代表する者及び社会福祉事業を経営する者により構成される選考委員会の同意を得て、都道府県社会福祉協議会の代表が選任することとする。(社会福祉法施行令第二条、第七条関係)
(イ) なお、運営適正化委員会については、その公正性・中立性を確保するために、事務局を都道府県社会福祉協議会に置くものの、運営適正化委員会の組織、運営については独立したものとするため、委員の互選による委員長が会議を招集し、合議体を構成する委員を指名する等の規定を整備する。なお、事務局についても、事務局長は運営適正化委員会の委員長の命を受けて局務を掌理することとする。(社会福祉法施行令第五条~第八条関係)
(ウ) さらに、運営適正化委員会の業務が個人のプライバシーに関わることを考慮し、その委員及び事務局員について守秘義務を課す一方、運営適正化委員会に少なくとも年に一回その業務の状況等について報告書を作成し、これを公表することを義務づけ、業務の透明性を確保することとした。(社会福祉法施行令第九条、第一〇条関係)
(エ) なお、選考委員会の委員については、あらかじめ住民、福祉サービスの利用者、社会福祉事業を経営する者その他の関係者の意見を聴取して、都道府県社会福祉協議会の代表者が選任するものとする。(社会福祉法施行令第二条第五項関係。)なお、具体的な方法としては、意見書の提出を受け付ける方法、意見を聴取する方法等のうち、都道府県社会福祉協議会があらかじめ定める方法とする。なお、選考委員会の委員長については、公益を代表する者のうちから委員が選挙する者とし、利用者等関係者の意見を広く反映しつつ、中立性の保持を図ることとした。(社会福祉法施行規則第一七条~第二〇条関係)
② 福祉サービスに係る苦情解決(社会福祉法第八二条、第八五条及び第八六条関係)
利用者の意向が十分反映された福祉サービスが提供されるためには、利用者が、福祉サービスに関する苦情を自由に申し出ることができる環境を整える必要があるため、福祉サービスに係る苦情を適切に解決するための仕組みを整備することとした。
ア 事業者による苦情の適切な解決(社会福祉法第八二条関係)
苦情については、まず第一義的には事業者による解決の努力が不可欠であることから、社会福祉事業の経営者に対して、常に、その提供する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないこととした。特に、社会福祉施設については、社会福祉法第六五条に基づき、苦情への対応を最低基準に盛り込むこととしている。なお、事業者の苦情解決に取り組むに当たっての具体的な方法に関する指針については、別途通知する。
イ 運営適正化委員会による苦情解決(社会福祉法第八五条、第八六条関係)
利用者からの苦情については、第一義的には事業者の努力により適切な解決が図られるべきものであっても、個々の処遇の内容等に関する苦情、当事者同士の話し合いでは解決が困難な苦情もある。このような苦情については、公正・中立な第三者機関によるあっせん等により解決することが望ましい。したがって、公正・中立な第三者機関として、都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会に苦情解決を行わせるものである。
(ア) 福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは、運営適正化委員会は、その相談に応じ、必要な助言及び調査を行う。また、苦情の申出人又は当該申出人に福祉サービスの提供を行った事業者が書面により苦情の解決のあっせんを申請した場合には、運営適正化委員会は、書面により他方当事者に通知し、双方の同意を得て、あっせんを行うことができる。
(イ) 運営適正化委員会があっせんを行う場合には、合議体によるあっせんに付するものとする。あっせんを行わない場合やあっせんをうち切る場合には、当事者に理由を付した書面をもって通知するものとする。(社会福祉法施行規則第二一条~第二四条関係)
(ウ) なお、運営適正化委員会が苦情の解決にあたり、利用者に対して虐待等の不当な処遇が行われているおそれがあると認めるときには、都道府県知事に速やかに通知し、行政機関による解決を促すこととする。
(3) 社会福祉を目的とする事業を経営する者への支援(第三節関係)
都道府県社会福祉協議会は、社会福祉を目的とする事業の健全な発達に資するため、社会福祉を目的とする事業を経営する者がその行った福祉サービスの提供に要した費用に関して地方公共団体に対して行う請求事務の代行等の支援を行うよう努めなければならないこととした。(社会福祉法第八八条関係)
7 地域福祉の推進に係る規定の追加(第一〇章関係)
利用者本位の社会福祉制度を確立するためには、利用者が身近な地域で多様なサービスを利用し、自立した生活を送ることを支援するための仕組みを構築するとともに、併せて地域福祉の推進を図る必要がある。そこで、従来の「共同募金及び社会福祉協議会」の章を、「地域福祉の推進」の章として再構成し、共同募金会及び社会福祉協議会のそれぞれについて、規定を整備することとした。なお、平成一五年度からは、本章において地域福祉計画に関する規定が施行される予定である。
(1) 社会福祉協議会に係る規定の追加(第一節関係)
社会福祉事業法制定時には、社会福祉協議会は共同募金と表裏一体の関係を確保し、円滑に運営されていくことが必要であるという趣旨から、都道府県社会福祉協議会を中心に規定されていた。しかしながら、現在の社会福祉協議会の活動は、事業者間の連絡調整のみならず、社会福祉活動への住民参加を推進する事業、住民参加による社会福祉を目的とする事業の実施が中心となっている。
したがって、社会福祉協議会の役割について、地域福祉の推進の中心的な担い手として明確に位置付けることとし、かつ、より住民に身近な市町村社会福祉協議会から規定することとした。
① 市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会(以下「市区町村社会福祉協議会」という。)に係る規定の改正(社会福祉法第一〇七条関係)
ア 市区町村社会福祉協議会の組織について
社会福祉協議会は、今後地域福祉の推進において中心的な役割を果たすことが期待されていることから、社会福祉協議会が地域福祉の推進を目的とし、また、社会福祉を目的とする事業を経営する者のみならず社会福祉に関する活動を行う者(ボランティア団体等)が参加する団体であることを明確化することとした。
イ 市区町村社会福祉協議会の設置に係る区域の拡大
市区町村社会福祉協議会は、現在それぞれの市区町村を単位として設置されている。しかしながら、住民の生活圏が市区町村の境界を超えて一体的に形成されており、個々の市区町村を単位として設立しても、地域福祉の推進のための十分な体制が整備できない場合もある。
そこで、市区町村社会福祉協議会について、それぞれ同一都道府県内の二以上の市町村及び指定都市内の二以上の区を区域として設立することができることとする。
ウ 市区町村社会福祉協議会の事業実施区域の拡大
住民の生活圏が市区町村の境界を超えて一体的に形成されており、個々の市区町村において事業の実施を行うことが効果的ではない場合や、一定の専門性を要し、かつ対象者が限られている活動のように、広域的に事業を実施することが合理的な場合は、その区域を越えて事業を実施することができるものとした。
② 都道府県社会福祉協議会に係る規定の改正(社会福祉法第一〇八条関係)
ア 都道府県社会福祉協議会の組織について
社会福祉協議会は、今後地域福祉の推進において中心的な役割を果たすことが期待されていることから、都道府県社会福祉協議会についても、地域福祉の推進を目的とし、また、社会福祉を目的とする事業を経営する者のみならず社会福祉に関する活動を行う者が参加する団体であることを明確化することとした。
イ 都道府県社会福祉協議会の事業について
都道府県社会福祉協議会の事業として、社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修並びに社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言を行うことを追加した。
(2) 共同募金に係る規定の改正(第二節関係)
① 配分委員会に関する規定の創設(社会福祉法第一一五条、社会福祉法施行令第一一条、社会福祉法施行規則第三三条関係)
寄附金の公正な配分に資するため、共同募金会に配分委員会を置くことを法律上義務付けることとした。
なお、配分委員会については、委員の任期を二年以内において定款で定める等委員の任期及び欠員の際の規定を整備するほか、その組織及び運営については理事による配分委員会の招集、会議の定足数等について定めた。
② 過半数配分原則の撤廃(社会福祉法第一一五条関係)
共同募金については、従来、都道府県の区域内において社会福祉事業等を経営する者の過半数に配分しなければならない旨の原則(いわゆる過半数配分原則)があったところである。
しかしながら、今後は、共同募金会が地域の実情に応じ、寄附金の配分対象とすべき事業者を選定して配分できるようにすることが、地域福祉の推進の観点からふさわしいことである。
このため、過半数配分原則については、撤廃することとした。
③ 共同募金会の配分の期限(社会福祉法第一一七条関係)
共同募金の寄附金については、その募集の終了後速やかに配分が行われることが原則である。
このため、共同募金については、当該募集を行った会計年度の翌年度の末日までにその寄附金を配分しなければならないこととした。
④ 準備金の積立て(社会福祉法第一一八条関係)
大規模災害の発生等に対応するためには、あらかじめ準備金を積み立てることができる仕組みを整備することが適当である。また、このような災害については、共同募金を行う都道府県の区域内で発生するものとは限らないため、区域外で発生したものについても拠出を認めることが妥当である。
このため、以下に掲げるような特別の事情がある場合に備え、寄附金総額の三%に相当する額又は法人からの寄附金の総額に相当する額のいずれか低い方を限度として、準備金を積み立てることができることとし、特別の事情があった場合には当該準備金の全部又は一部を他の共同募金会に拠出できることとした。また、併せて、当該規定を社会福祉法第一一七条に定める共同募金の配分期限の例外とすることとした。
ア 災害救助法(昭和二二年法律第一一八号)第二条に規定する災害が生じたこと。
イ 災害弔慰金の支給等に関する法律施行令(昭和四八年政令第三七四号)第一条第一項に規定する災害が生じたこと。
ウ 被災者生活再建支援法施行令(平成一〇年政令第三六一号)第一条第二号又は第三号に規定する自然災害が生じたこと。
エ 準備金に繰り入れて三年が経過したこと(当該共同募金の区域内において社会福祉を目的とする事業を経営する者に配分する場合に限る。)。
8 その他
(1) 用語の適正化
「収容」等の用語を改める等所要の改正を行うこととした。
(2) 社会福祉法に名称及び内容を改めることに伴い、従来の章立ての見直し、枝番号の整理等を行った。
第三 身体障害者福祉法の一部改正(平成一二年六月七日施行分)
1 法改正の趣旨
近年、多様化している身体障害者の福祉に対する需要に的確に対応するため、身体障害者相談支援事業及び手話通訳事業を新たに法律上の事業として位置付け、視聴覚障害者情報提供施設の事業内容を拡充するとともに、身体障害者の社会参加を促進する事業の実施に関する地方公共団体の責務規定を設けること等所要の改正を行った。
2 新規事業の追加等
(1) 地域で生活する身体障害者の自立と社会経済活動への参加を支援するため、次の事業を新たに身体障害者福祉法上の事業及び施設に追加した。(身体障害者福祉法第四条の二関係)
① 身体障害者相談支援事業
市町村の委託を受けて、身体障害者又はその介護を行う者に対する情報の提供並びに相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を総合的に行う事業
② 手話通訳事業
聴覚障害者等につき、手話通訳等(手話通訳及び要約筆記等をいう。(2)において同じ。)に関する便宜を供与する事業
(2) 近年の情報通信関連機器の普及状況等を踏まえ、また、視聴覚障害者等の意思伝達や情報確保の手段の確保が重要であることにかんがみ、視聴覚障害者情報提供施設の行う製作又は利用の提供の対象となる記録物として視覚障害者用の録音物を位置付けるとともに、当該施設の機能に、点訳又は手話通訳等を行う者の養成又は派遣、点字刊行物の普及の促進、視聴覚障害者に対する情報機器の貸出、視聴覚障害者に関する相談等の便宜の供与を位置付けた。(身体障害者福祉法第三三条関係)
3 身体障害者等に対する相談及び指導の委託
市町村は、身体障害者相談支援事業を行う者に対し、主として居宅において日常生活を営む身体障害者及びその介護者に係る相談及び指導を委託することができることとした。(身体障害者福祉法第九条関係)
4 社会参加の促進
身体障害者の社会参加を促進する事業の実施に努めることを地方公共団体の責務とした。(身体障害者福祉法第二一条の三)
5 その他所要の規定の整備を行うこととした。
第四 知的障害者福祉法の一部改正(平成一二年六月七日施行分)
1 法改正の趣旨
知的障害者のノーマライゼーションの流れを踏まえ、法目的の改正を行い、知的障害者の自立への努力についての規定を設けるとともに、国及び地方公共団体の責務を明示し、知的障害者デイサービス事業及び相談支援事業等を新たに法律上の事業として位置付ける等所要の改正を行った。
2 法目的の改正等
知的障害者の自立と社会経済活動への参加の促進をこの法律の目的として明示するとともに、知的障害者の自立への努力について定め、また、すべての知的障害者はあらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとした。(知的障害者福祉法第一条及び第一条の二関係)
また、国及び地方公共団体の責務として、知的障害者の自立と社会経済活動への参加の促進を明示するとともに、新たに国民の責務に関する規定を設け、知的障害者の福祉について理解し、社会経済活動への参加に対する協力を行うよう努めなければならないこととした。(知的障害者福祉法第二条関係)
3 新規事業及び施設の追加
地域で生活する知的障害者の自立と社会経済活動への参加を支援するため、次の事業を新たに知的障害者福祉法上の事業及び施設に追加した。
(1) 知的障害者デイサービス事業
入浴、食事の提供、手芸、工作その他の創作的活動、機能訓練、介護方法の指導、社会適応訓練等の便宜の供与を必要とする一八歳以上の知的障害者又はその介護を行う者を知的障害者デイサービスセンターその他これらの便宜が適切に供与できる施設に通わせ、これらの便宜を提供する事業(知的障害者福祉法第四条関係)
(2) 知的障害者相談支援事業
都道府県等の委託を受けて、一八歳以上の知的障害者又はその介護を行う者に対する情報の提供並びに相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を総合的に行う事業(知的障害者福祉法第四条関係)
(3) 知的障害者デイサービスセンター
知的障害者デイサービスを提供することを目的とする施設(知的障害者福祉法第五条及び第二一条の五関係)
4 知的障害者デイサービスの実施又は委託の措置
市町村は、知的障害者デイサービスを受けることが必要な一八歳以上の知的障害者又はその介護を行う者に対し、その自立の促進及び生活の改善等が図られるよう、障害、環境等に応じて適切な便宜を供与できる施設を選定して、知的障害者デイサービスを実施し、またはその実施を委託する措置ができることとした。
5 知的障害者等に対する指導の委託
都道府県の福祉事務所長は、知的障害者相談支援事業を行う者に対し、一八歳以上の知的障害者及びその介護者に係る相談及び指導を委託することができることとした。(知的障害者福祉法第一三条関係)
6 その他所要の規定の整備を行うこととした。
第五 児童福祉法の一部改正(平成一二年六月七日施行分)
1 法改正の趣旨
近年、多様化する障害児の福祉に対する需要に的確に対応するため、相談支援事業を新たに法律上の事業として位置付けるとともに、児童委員について、近年増加する児童虐待等の問題に対応して、保護を必要とする児童等の発見や関係機関への連絡通報などの役割を適切に行うことができるよう所要の改正を行った。
2 新規事業の追加
障害児の地域での生活を支援するため、障害児相談支援事業(都道府県等の委託を受けて、障害児及びその保護者に対する情報の提供並びに相談及び指導並びに関係機関との連絡調整等の援助を総合的に行う事業)を新たに児童福祉法上の事業に追加した。(児童福祉法第六条の二関係)
3 児童委員に関する事項
(1) 児童委員が、担当区域内における児童又は妊産婦に関し、児童福祉法第一三条に基づいて児童相談所長に通知する場合には、市町村長を経由するものとされているが、児童虐待などで緊急の必要があると認めるときは、市町村長を経由することなく直接通知することができることとし、児童委員の活動を児童相談所の迅速な対応に結びつけることができることとした。(児童福祉法第一三条関係)
(2) 地域において保護を必要とする児童を発見した者が、児童福祉法第二五条に基づいて福祉事務所又は児童相談所に通告する場合には、児童委員を介して行うことができることとし、児童虐待等の早期発見、早期対応を促進することとした。(児童福祉法第二五条関係)
4 児童等に対する指導の委託
児童相談所長又は都道府県は、障害児相談支援事業を行う者に対し、児童又はその保護者に対する指導を委託することができることとした。(児童福祉法第二六条、第二七条関係)
5 児童福祉施設の設置者に対する監督に関する事項
都道府県知事は、厚生大臣の定める最低基準を維持するため、児童福祉施設の設置者に対して、報告の徴収、立入検査等を行うことができることとした。(児童福祉法第四六条関係)
6 その他所要の規定の整備を行うこととした。
第六 民生委員法の一部改正
1 法改正の目的
福祉サービスの利用者がその選択するサービスを身近な地域で利用し、自立した生活が送れるよう、地域全体で支援する制度を確立していくためには、民生委員を地域福祉の推進の担い手として明確に位置付ける必要があることから、所要の改正を行うこととした。
2 民生委員の理念に関する事項(民生委員法第一条関係)
民生委員の理念は、常に住民の立場に立って相談に応し、及び必要な援助を行い、社会福祉の増進を図るよう努めることとした。
3 民生委員推薦会に関する事項(民生委員法第八条関係)
これまで、民生委員推薦会の委員の要件として、当該市町村の議会の議員の選挙権を有する者でなければならないこととされていたが、この要件はかえって幅広く適切な委員を選ぶことの障害となっていた。
このため、選挙権を有する者という要件を削除し、代わりに当該市町村の区域の実情に通ずる者であることを追加することとした。
4 民生委員の職務に関する事項(民生委員法第一四条関係)
民生委員の職務の内容をその期待される役割にふさわしいものとするため、援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を追加する等の改正を行った。
5 その他
(1) 民生委員を名誉職としていた規定を削除し、民生委員には給与を支給しない旨を明確にした。「名誉職」という語については、単に報酬を受けないことを表すに過ぎないが、関係者の間に誤解を生じやすいので改正を行うこととした。(民生委員法第一〇条関係)
(2) 現在あまり用いられない「統制」等の用語を適切な表現に改めた。
第七 生活保護法の一部改正
「収容」等の用語を適切な表現に改めること。
第八 公益質屋法の廃止
公益質屋については、需要の減少に伴い、その福祉的要素は後退していることから、社会福祉事業から除外するとともに、公益質屋法(昭和二年法律第三五号)を廃止し、併せて公益質屋法第三条ノ規定ニ依ル国庫補助ノ件(昭和二年勅令第二三二号)、公益質屋法施行規則(昭和二年内務省令第三四号)を廃止した。