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○社会福祉事業法の施行について

(昭和二六年六月四日)

(発社第五六号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

社会福祉事業法は本年三月二九日法律第四五号をもつて、公布せられ、六月一日より施行され(既に四月一日より一部施行、第三章及び附則第七項から第九項までの規定は、一○月一日から施行)、社会福祉法人登記令、社会福祉事業法施行規則も既に施行をみたのであるが、この法律は、戦後の社会福祉事業の新しい理念と体系とを定めたもので公的社会福祉事業と私的社会福祉事業とが夫々合理的に、適正に運営される基礎を確立すると共に、その各々の責任と活動分野とを明確にして、且つ、その協力体制をととのえることによつて社会福祉事業の組織的発達と民主的運営とを期し、もつて社会福祉の増進に寄与せんとするものであるから左記事項に十分御留意の上この法律の所期する目的を達成するようつとめられたい。

右命により通知する。

第一 一般事項

一 この法律制定の趣旨にかんがみ、すべて社会福祉事業の経営に当つては、援護、育成又は更生の措置を要する者に対し、その独立心をそこなうことなく、正常な社会人として生活することができるように援助するという理念に基いて行われるよう指導せられたいこと。

二 この法律は、国及び地方公共団体が、その責任に属する社会福祉事業行政を自己の責任において最も合理的、効果的に運営するための制度を確立せんとするものであつて、とくに公的保護行政の現段階において必須のものであるから、地方財政窮迫の際ではあるが、それだけに公費の経済的運営が必要とされるものであるから、この制度の意義を真に理解して、これが実現を期せられたい。

三 この法律は、民間社会福祉事業の再建整備によつてその健全な発達を図ることを目的としているので、民間社会事業が、その純粋性を保ち、公共性を高めることによつて社会的信頼を得ることができるようにすると共に、国及び地方公共団体と民間社会福祉事業を経営する者とのそれぞれの責任と関係とを明らかにし、民間社会福祉事業が自主的にその本来の使命が達成できるよう援助せられたいこと。

四 この法律は、社会福祉事業の民主的運営を図ることを目的としている。とくに地域社会組織化事業の規定は、新しい試みであるが、これは公私社会福祉事業の提携協力のみでなく、国民が社会福祉事業へ参加することを目ざすものであるから、社会福祉事業が一般国民の関心と理解とを得るようにつとめると共に、更に社会福祉協議会活動の健全な育成につとめられたいこと。

第二 社会福祉審議会

社会福祉審議会については、中央の組織のみが規定せられて、地方の社会福祉審議会については規定せられていないが、これは、固有事務の審議を主とすることとなる地方社会福祉審議会についての法律の規定を地方自治尊重の趣旨からさけたにすぎないものであるから、都道府県にあつては設置せられたいこと。なお市における設置は任意であること。

第三 福祉事務所の設置

福祉事務所に関する規定は、一○月一日から施行されるので、これが具体的な事項については、関係法令の整備をまつて可及的すみやかに通知する筈であるが、差し当つては次により、これが設置につき、具体的計画をたて、その準備を進められたいこと。

一 所掌事務について

1 福祉事務所は、法第一三条第六項の規定により生活保護法、児童福祉法及び身体障害者福祉法に定めるところにより、援護、育成又は更生の措置に関する事務、すなわち、三法の施行に関する現業事務をつかさどるところであること。

2 前号の事務の施行に支障を来たさないで、他の社会福祉に関する事務をも所管せしめ、その綜合的な運営によつて、それぞれの機能がより効果的に遂行される場合には、その範囲において、地方自治法第五三条の規定により、都道府県知事及び市長(福祉事務所を管理する町村長を含む。)は、その権限に関する事務の全部又は一部を委任し所掌せしめることができること。

3 前号の委任事務の範囲は、社会福祉事業法の施行に関する事務、民生委員法の施行に関する事務等主として厚生省社会局、児童局及び引揚援護庁援護局の所管に属する事務の系統に属する事務とされたいこと。

4 法第一四条の規定は、第一三条第六項に規定する事務の執行に必要な所員についてのみ規定しているので前号の事務の委任に当つて、その事務の量及び内容等によつて算定した委任事務の遂行に必要な職員を必ず配置すること。

二 組織及び所員の定数等について

1 福祉事務所は、原則として生活保護法、児童福祉法及び身体障害者福祉法に定めるところにより援護、育成又は更生の措置に関する事務をつかさどる専門職業的な地方第一線の行政機関であるから、その組織は、これらの業務が科学的な方法によつて最も能率的に運営されるものでなければならないこと、従つて具体的には、地方の実情に従つて、最も合理的に事務の運営がなし得るような組織を設けられたいのであるが、一応標準的な組織の形態を示せば、少くとも、庶務、会計等のいわゆる家政的業務をつかさどるための庶務課並びに事務所本来の業務である三法の措置に関する現業事務をつかさどるための福祉課等を置くことが考えられること。

なお、現業を行う所員は、各人がそれぞれ三法の措置に関する現業事務をつかさどるものであるから、一法又は二法のみの事務を分担せしめるようなことをしないこと。

2 前号の外、地方自治法により他の社会福祉に関する事務を委任し所管せしめる場合には、法第一四条に規定する組織の外に社会課等の組織を置かれたいこと。

3 五大都市及び中都市にあつては、既に市厚生行政機構の再組織を実施しているのでその組織を基礎として独立の事務所を設けること。

4 事務所に設置すべき所員の定数は法第一四条及び第一五条の規定により各事務所につき条例で定められるので、これが準則については、別途通知の予定であるが、所員の確保については概ね左の標準により、可及的に適格者を得るよう配慮されること。

なお、法定の所員の数は最低を示したものであること。

所長 職務の級一○級以上とすること。

指導監督を行う所員(査察指導員) 社会福祉主事で、現業を行う所員七名につき一名とし、職務の級八級以上とすること。

現業を行う所員(地区担当員) 定数については、法第一五条の規定により、社会福祉主事で、職務の級五級以上とすること。

事務を行う所員 各事務所につき平均専任二名(福祉事務所要員として一括国の財政措置済分)であるが、可及的所要人員の確保につとめ、場合によつては、支庁、地方事務所及び市(町村)の関係課員と兼務せしめる等の措置を講ずること。

身体障害者福祉司 都道府県及び市の設置する各事務所につき一名とし、職務の級八級以上とすること。

5 地方自治法第一五三条の規定により委任される他の社会福祉に関する事務をつかさどる所員のうち、社会福祉事業法の施行事務をつかさどる所員は社会福祉主事とし、それらの定款は委任する事務を効果的且経済的な執行を確保するに必要にして十分な人員とすること。

三 所員の初度設備等について

事務所の設置に伴つて新規増員される所員の初度設備等については、さきに通知した通り必要な財政措置を講じているので所要数を準備されたいこと。

なお参考のため、福祉事務所の設置及び運営に要する昭和二六年度経費の財政措置に関する当省と地方財政委員会との共同通知の写を添付したこと。

四 設置に関する協議について

福祉事務所の設置に関し、直ちに右各項により、独立の事務所とすることが困難な場合(附則第九項の規定により、所の長の兼務の場合を除く。)は、その事由及び設置せんとする具体的計画について、当省に協議されたいこと。

なお、附則第七項の規定により、都道府県は、当分の間、支庁、地方事務所に法第一三条第六項に定める事務を行う組織を置くことができ、又附則第九項の規定により福祉事務所の長に、当該都道府県又は市町村の社会福祉に関する事務をつかさどる他の職を兼ねしめることができるのであるが、附則第七項の規定により、支庁又は地方事務所に、その組織を置く場合においても、その組織に専任の長をおくことは勿論附則第八項の規定により、第一四条から第一六条までの規定が準用され、独立の事務所の場合と同様、事務所に設置すべき所員及び定数並びに指導監督を行う所員及び現業を行う所員等の専従の規定が準用されるので、この点特に留意の上、必要な職員の確保については第二項に従つて組織の長、指導監督を行う所員、現業を行う所員及び事務を行う所員の必要数を設置すること。

なお、これら職員の職務の級についても、単に地方事務所の一般組織との均衡などから格付されることなく第二項に準じ、指導監督を行う所員については八級以上、現業を行う所員については五級以上とし、又組織の長については、これら職員を指導監督するに相応しい職務の級とすること。

第四 社会福祉法人

一 この制度を創設した趣旨は現在の民法による公益法人の不備を補正しようとしたものであるから、既存の社会福祉事業を経営する法人中資格あるものは、なるべく社会福祉法人への組織変更を奨励すると共に、新設の社会福祉事業団体についても、その設立によつて、社会福祉事業が組織的に健全に行われるよう指導せられたいこと。

二 社会福祉法人の申請手続

社会福祉法人の設立、組織変更、定款変更、合併、解散等の認可申請は、すべて、主たる事務所の都道府県知事を経由して行われるのであり、その経営する施設又は事業等に関して、十分必要な調査をなして、厚生大臣に進達せられたいこと。

三 社会福祉法人の資産

公益法人の要件としての基本的な資産は、従来は、極めて抽象的な考え方から原則として、五○万円以上と定められていたのであるが、社会福祉法人については、かゝる認可基準の建前とは異なり、その経営する社会福祉事業の形態、規模等をかん・・案して、相対的に定める考えであること。

四 社会福祉法人の収益事業

社会福祉法人が収益を目的とする事業を行うに当つては、次の諸点に留意せられたいこと。

1 その事業の種類が社会福祉事業の経営上支障のない事業であつて、社会福祉事業全般についての社会的信用を失わない種類のものであること。

2 収益を目的とする事業は、堅実な基盤の上に立つて経営せられるものであり、その事業の失敗のため、社会福祉事業そのものの基本的財産を失うようなことのないこと。

3 収益を目的とする事業は、社会福祉事業に対し、従たる地位にあること。

4 社会福祉事業の財源の大半を収益を目的とする事業に求めるような計画の下に行われるものであつてはならないこと。

五 社会福祉法人の組織変更

社会福祉法人の組織変更は、昭和二七年五月三一日までに組織変更登記を完了しなければならないのであるが、その組織変更の認可申請に対しては十分その実体の調査を行い、不良法人を淘汰するとともに、基礎の弱いもの、又は、名目のみの理事或いは評議員から構成されており、理事会或いは評議員会が構成されており、理事会或いは評議員会が殆んど開かれていないような法人については、特にこれが健全な発達をするよう指導育成に努められたいこと。

第五 社会福祉事業に関する事項

一 第一種社会福祉事業の許可

第一種社会福祉事業は、原則としては、地方公共団体又は社会福祉法人によつて経営せられるものとしたのは個人人格に影響するところ大であり、弊害を伴い易いおそれが多いからである(保護施設及び公益質屋は社会福祉法人に限られている。)。従つて、その他の者がその経営の許可を申請した場合には、法第五七条第四項又は第六二条第四項の規定により、慎重に要件を審査せられたいこと。

二 社会福祉事業の許可及び届出手続

社会福祉事業の開始、変更又は廃止に関し許可の申請又は届出がなされたときは、実地調査の上許可の可否又は届出の受理不受理を決定し、許可をなし、又は届出を受理したときは、速やかに許可及び届出の申請人、関係市町村長、税務関係者等に対し適当な方法によりこれを知らしめるよう措置せられたいこと。

三 社会福祉事業の指導監督

社会福祉事業を経営するものに対しては、毎年度の事業成績書並びに収支決算書を年度終了後速やかに徴収し、又は必要と認める事項に関し、報告を求め、調査又は指示を行う等、本法の目的を達成するため、適当な方法によりその指導監督を実施せられたいこと。

第六 寄附金の募集に関する事項

一 濫用の防止

社会福祉事業経営に要する寄附金の募集は、なるべく共同募金として、一般的に行われるのが望ましいが特別の事情により共同募金の配分によらないで、事業を経営するための寄附金の募集を行うことは差しつかえがない。かかる寄附金募集の許可に当つては十分審査することにより、これが濫用を防止するとともに時宜に適するよう措置せられたいこと。

二 許可の条件

法第六九条の寄附金の募集の許可に関しては、地方の実情並びに当該社会福祉事業の事情に応じその許可を決定すべきであるが特に共同募金との時期的調整及び寄附金により得たる財産の処分に関する事項等については、特に考慮され、最も適正にして妥当であるよう許可の可否又は許可の条件を決定せられたいこと。

第七 共同募金会と社会福祉協議会

一 両者の関係

共同募金会と社会福祉協議会とは地域社会福祉事業における車の両輪の如きものであるから、夫々の性格と機能を明らかにし、両者の緊密なる提携を図られたいこと。

二 地区協議会

郡、市、町村等の社会福祉協議会については、都道府県社会福祉協議会に準じ郡、市、町村における社会福祉協議会活動の育成につとめられたいこと。

三 共同募金会の役員

第七三条第三号の規定は共同募金の配分の公正を確保するためのものであるから、共同募金会の役員又は評議員の選任上とくにやむを得ない事情があるときは配分を受ける社会福祉事業団体の役員であつても、別の資格例文は商工会議所又は共同募金支会の代表として共同募金会の役員又は評議員になることは関係者に異存がなく且つ配分の公正を欠くおそれのない限り差しつかえないこと。

なお、配分を受ける者とは配分を受ける個人又は団体の代表責任者を意味すること。