添付一覧
○医薬品の迅速分析法について
(平成15年5月6日)
(医薬監麻発第0424002号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知)
医薬品の迅速分析法については、薬事監視業務の効率化を図るため、かねてより順次作成してきているところであるが、今般、新たにキノロン系抗菌薬の迅速分析法を別添の通り作成したので、監視指導上の予試験として活用を図られたい。
なお、薬事法上の最終的な適否の判定は、承認書記載の規格及び試験方法により試験した結果によるものとされたい。
別添
キノロン系製剤の迅速分析法
本法は,キノロン系抗菌薬14種(エノキサシン,塩酸シプロフロキサシン,塩酸ロメフロキサシン,オフロキサシン,スパルフロキサシン,トシル酸トスフロキサシン,ナジフロキサシン,ノルフロキサシン,フレロキサシン,レボフロキサシン,シノキサシン,ナリジクス酸,ピペミド酸三水和物,ピロミド酸)1―3)の製剤を液体クロマトグラフ法により定量する方法である。
なお,別に規定するもののほか,日本薬局方通則及び一般試験法を準用する。
本迅速分析法は,液体クロマトグラフ法による予試験であり,薬事法に基づく最終的な医薬品としての適否の判定は,承認書に記載の規格及び試験方法に基づく試験の結果により行う。
1 定量用試料の調製
錠剤は10個以上をとり,その重量を精密に量り,粉末とし4),試料とする。カプセル剤はカプセル10個以上をとり,カプセルを切り開き,内容物を注意して取り出し,その重量を精密に量り,粉末とし,試料とする。顆粒剤及び細粒剤は10包以上をとり,開封し,内容物を注意して取り出し,その重量を精密に量り,粉末とし,試料とする。シロップ剤及び点眼液は,そのまま試料とする。ただし,試料調製法は必要に応じて変更できるものとする5)。
2 キノロン系抗菌薬の分析法6)
本操作は出来るだけ光を避け7),速やかに行う。試料のキノロン系抗菌薬約0.10gに対応する量を精密に量り8)9),希水酸化ナトリウム試液10mLもしくは20mL10)11)を加えてよく振り混ぜ,必要ならば超音波処理を行い溶かし,更にメタノールを加えて全量を正確に100mLとする。この液を遠心分離するか又はメンブランフィルター(0.45μm)でろ過し,上澄液又は初めのろ液10mLを除いた後のろ液10mLを正確に量り,これに内標準溶液4mLを正確に加え,移動相12)を加えて全量を100mLとし,試料溶液とする。別に定量用基準品を乾燥の必要がある場合には規定の乾燥条件により乾燥し13),その約0.050gを精密に量り,希水酸化ナトリウム試液10mLもしくは20mL10)11)を加えて溶かし,更にメタノールを加えて全量を100mLとする。この液の20mLを正確に量り,これに内標準溶液4mLを正確に加え,更に移動相12)を加えて全量を100mLとし,標準溶液とする。試料溶液及び標準溶液10μLにつき,次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い,内標準物質のピーク面積に対応する定量目的物質のピーク面積の比QT及びQSを求める。
試料中の定量目的物質の量(mg)=定量用基準品の量(mg)×QT/QS×2
内標準溶液:塩酸シプロフロキサシン(グループ1),ピペミド酸三水和物(グループ2),スパルフロキサシン(グループ2)14),又はフルメキン(グループ3)約0.250gを精密に量り,希水酸化ナトリウム試液30mLを加えてよく振り混ぜて溶かし,メタノールを加えて全量を100mLとする15)。
試験条件16)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)17)
カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:
グループ1 0.02mol/L リン酸塩緩衝液(pH3.5)/0.04vol%n―ジブチルアミンのメタノール溶液混液(41:9)に薄めたリン酸(1→10)を加えてpH3.5に調整する。
グループ2 0.02mol/L リン酸塩緩衝液(pH3.5)/0.04vol%n―ジブチルアミンのメタノール溶液混液(7:3)に薄めたリン酸(1→10)を加えてpH3.5に調整する。
グループ3 0.02mol/L リン酸塩緩衝液(pH3.5)/0.04vol%n―ジブチルアミンのメタノール溶液混液(13:12)に薄めたリン酸(1→10)を加えてpH3.5に調整する。
流量:
グループ1 塩酸シプロフロキサシンの保持時間が約21分になるように調整する。
グループ2 ピペミド酸三水和物18)の保持時間が約3分になるように調整する。
グループ3 フルメキンの保持時間が約13分になるように調整する。
システム適合性
システムの性能:標準溶液10μLにつき,上記の条件で操作するとき,定量目的物質がカラムに保持され,かつ内標準物質のピークと完全に分離するものを用いる19)20)。
システムの再現性:標準溶液10μLにつき,上記の条件で試験を6回繰り返すとき,内標準物質のピーク面積に対する定量目的物質のピーク面積の比の相対標準偏差は2.0%以下である。
試薬
定量用基準品 医薬品各条などにより定量するとき,キノロン系抗菌薬99.0%以上を含むもの。
0.04vol%n―ジブチルアミンのメタノール溶液 n―ジブチルアミン0.2mLにメタノールを加えて500mLとする。
0.02mol/L リン酸緩衝液(pH3.5) リン酸二水素カリウム2.72gを水約900mLに溶かし,これにリン酸を加えてpH3.5に調整し,これに水を加えて1000mLとする。
注
1) 各キノロン系抗菌薬について,迅速性及び分離度の点から,ピペミド酸三水和物,オフロキサシン,フレロキサシン,エノキサシン及びレボフロキサシンをグループ1に,ノルフロキサシン,塩酸ロメフロキサシン,スパルフロキサシン,シノキサシン,塩酸シプロフロキサシン及びトシル酸トスフロキサシンをグループ2に,ナリジクス酸,ナジフロキサシン及びピロミド酸をグループ3に分類し,それぞれのグループに対応した移動相を適用する。
2) グループ1及び2に分類されるキノロン系抗菌薬について,各グループにおける移動相条件において保持時間が近接しているために一斉定量が困難な場合がある。
3) オフロキサシンはラセミ体であり、レボフロキサシンはL体であるため,同時検出は不可能である。
4) フィルムコーティング錠の場合,すり混ぜによる粉砕操作ではフィルム片が残存し,錠剤が均一に粉末化されないことがあるため,粉砕機を用いるか,あるいは錠剤を適切な溶媒などで超音波処理し,規定された量に対応した容量を分取するなどの方法を適用してもよい。
5) 剤形により試料の調製法を変更する。
6) 本操作法は,錠剤,カプセル剤,顆粒・細粒剤,点眼液及びシロップ剤に適用する。
眼軟膏剤及びクリーム剤は承認書の試験法を参照すること。
7) エノキサシン,塩酸シプロフロキサシン,オフロキサシン,ノルフロキサシン,ピペミド酸三水和物,レボフロキサシンは光により徐々に分解する。
8) 必要であれば,試料採取量を増減させてもよい。ただし,定量用基準品採取量も同様に増減させる。
9) 必要に応じ[容量を正確に量る]に読みかえること。例えば,点眼薬などで含量が容量あたりで表示されている場合。
10) ナリジクス酸については希水酸化ナトリウム試液への溶解性が他のキノロン系抗菌薬と比べて悪いため,試料溶液及び標準溶液の調製については20mLの希水酸化ナトリウム試液を加える。
11) オフロキサシン及びレボフロキサシンについて,試料溶液及び標準溶液の調製では,HPLCに注入する際の最終調製液中の水酸化ナトリウム量を同等とすること。
12) トシル酸トスフロキサシン,ピロミド酸及びグループ3に適用する内標準物質フルメキンについては,移動相への溶解度が低いために調製後時間の経過とともに結晶が析出するため,試料及び標準液の最終調製を移動相の替わりにメタノールで行うこと。
13) 承認方法に従って乾燥する。
14) 本条件において,ピペミド酸三水和物はメタノール溶液においてピーク形状に問題が生じるため,トシル酸トスフロキサシンの定量に用いる内標準物質はスパルフロキサシンを適用する。
15) 定量目的物質とのピークバランスをとるために濃度を変更してもよい。
16) 標準被検試料,内標準物質,試験に用いる試薬・試液は測定の妨げとなる物質を含まないものを用いる。液体クロマトグラフ法で用いられているカラムの内径及び長さ,充てん剤の粒径,カラム温度,移動相の組成比及び流量は実験により良好な結果が得られることを確認すれば変更することができる。
17) ピークバランスをとるために測定波長を変えてもよい。
18) トシル酸トスフロキサシンの定量にはスパルフロキサシンを内標準物質として使用しているため,流量はスパルフロキサシンの保持時間が約10分になるように調製する。
19) システムの性能は定量目的物質と内標準物質の分離で行う。ただし,賦形剤などが試験に影響を与えないことを確認すること。
20) カラムはシンメトリー係数が2以内のものを用いることが望ましい。また,定量目的物質によりカラムに分配されにくいもの,よく分配されるものがあるのでキノロン系抗菌薬の一斉分析を目的とし本法を用いるときにはカラムの選定(購入)を注意して行うこと。なお,カラムによく分配される物質の分析に際しては,注16に基づいて移動相の組成比などを変更し,迅速な分析を行うこと。