添付一覧
○一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内空気中濃度測定方法ガイドラインについて
(平成15年7月28日)
(薬食審査発第0728001号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)
今般、ヒトへの健康影響に関するリスク評価に資すること等を目的として新たに、「一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内での有効成分の空気中濃度測定方法ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)を別添のとおりとりまとめたので、下記の事項に御留意の上、貴管下関係業者に対し周知徹底方御配慮願いたい。
記
1 本ガイドラインの適用対象
平成11年4月8日付医薬審第666号厚生省医薬安全局審査管理課長通知(以下「課長通知」という。)の別表1―(2)の(1)及び(2)に規定する医薬品(原体は除く。)、及び昭和55年5月30日付薬発第700号厚生省薬務局長通知の記の第二の一に規定する医薬部外品のうち、殺虫剤であるもの。その承認申請にあっては、課長通知別表1―(2)のニの7の資料として、本ガイドラインに従って作成された資料を添付すること。
なお、当面の間(5年間を目途)は、本ガイドラインに準じた実地試験によって作成された資料でもよいこととする。
2 本ガイドラインの適用時期
本ガイドラインは1の適用対象について、平成15年8月1日以降に行われる承認申請に適用すること。ただし、平成16年7月31日までは、なお従前の例によることができること。
3 その他
昭和44年6月9日付薬製第227号薬務局製薬課長通知「蒸散剤の取扱いについて」の別紙「蒸散剤の製造承認申請に際し必要な資料の提出基準」のⅣ空気中濃度の項については、本ガイドラインにより実施された資料をもってかえることも可能とする。
別添
一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内空気中濃度測定方法ガイドライン
本ガイドラインは、一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内での有効成分の空気中濃度測定方法を定め、ヒトへの健康影響に関するリスク評価に資することを目的とする。
テストチャンバーを用いた室内空気中濃度測定方法
1 殺虫剤の使用
1) 殺虫剤使用を行う際に、テストチャンバーの床面全面に、吸湿性のある(非光沢性)紙を敷く。
2) 殺虫剤はその用法・用量及び使用上の注意に基づき使用する。
3) 薬量は設定されている用法・用量の最大値とする。
2 室内空気のサンプリング
1) サンプリングの位置
室内空気のサンプリング位置は、少なくとも高さはテストチャンバー床面より20cm(就寝時及び乳幼児を想定)及び120cm(椅子着席時を想定)の2点とし、製品の種類や特性を考慮して、可能な限り平均的な濃度測定値が得られるように定める。
2) サンプリングの時期
① 通常の生活の中で、直接、間接、空間及び残留使用を目的とする殺虫製剤の場合は、使用開始以降の空気中濃度の経時的推移を検出限界まで、または、減衰が十分確認できるまで測定する。
② 使用後一定期間密閉を条件として、空間使用を目的とする殺虫製剤の場合は、所定時間の密閉時間終了を起点として、有効成分の空気中濃度の経時的推移を検出限界まで、または、減衰が十分確認できるまで測定する。
③ 長時間にわたって連続的に有効成分が放出または揮散することを目的とする殺虫製剤の場合は、使用開始時から使用終了時にわたって空気中濃度の経時的推移を把握するとともに、最高空気中濃度を求め、かつ、使用終了直後から検出限界まで、または、減衰が十分確認できるまで空気中濃度の経時的推移を把握する。
④ ただし、上記①から③の各殺虫製剤とも、検出限界以降、または空気中濃度の減衰が十分確認されてから以降6時間毎に24時間にわたり有意な濃度上昇が見られなくなるまで測定を継続する。
⑤ 上記①から③の各殺虫製剤とも、検出限界または空気中濃度の十分な減衰の確認に至る時間を求めることとする。
⑥ その他、殺虫製剤の剤型の特性を考慮したものとする。
3) サンプリングの方法
空気サンプリングは等速吸引を行うこととし、空気サンプリング総量/回、及び、サンプリングされた空気中からの有効成分捕集方法については、環境計量の手法に準じて行う。
3 分析
1) サンプリングされた空気中の有効成分の定性及び定量分析を技術的に認知された方法で行う。
2) 有効成分の検出限界は、サンプリング空気量を考慮し、最新の技術水準に基づいて設定する。
4 測定条件
1) 温度及び湿度条件
① 温度設定は25±5℃とし、湿度はRH50%以上とする。
② 測定中はテストチャンバー内温度及び湿度を連続的にモニターすることが必要であることから、自記記録計等で測定する。
2) 換気
① 換気の停止や一定時間密閉を求めない使用条件下での、直接、空間及び残留使用を目的とする殺虫製剤にあっては、0.5回/時間の換気条件下で行う。
② 使用後一定時間密閉を条件として、空間使用を目的とする殺虫製剤にあっては、用法・用量に従って換気装置を止めて部屋を目張り等をともなった密閉処置を行い、薬剤を使用し、所定の密閉時間経過後1時間十分な換気(10回/時間以上の換気回数)を行った後、通常(0.5回/時間)換気条件にする。ただし、検体の用法・用量における使用後の密閉時間に幅がある場合は最も短い時間とする。
③ その他、用法・用量で定められた換気条件に基づくものとする。
3) 反復
試験の反復回数は最小n=2とする。(なお、n=2のうち値の大きいものをリスク評価の対象とし、値の差が著しく大きい場合(リスク評価に用いる時間加重平均濃度が2倍以上を目途)には反復回数を増やすこと。)
5 テストチャンバーの標準的な仕様
殺虫製剤使用時の室内空気中濃度測定に際し、信頼性及び再現性の高いデータの取得のために、以下のテストチャンバーを標準仕様として用いることが望ましい。
1) 広さ
6畳間(W2.7m×L3.6m×H2.5m=24.3m3)の広さ(空間)を基準とする。空間の大きさが異なる場合は6畳空間に換算する。
2) 窓
必要に応じて室外からの観察用として適度の大きさの固定したガラス窓を取り付ける。
3) ドア
人の出入りや実験資材及び機具等が搬入できるドア(例えば、高さ約1.9m、幅約0.6m)を少なくとも1ヶ所取り付ける。閉鎖時にはテストチャンバー室内の密閉性を高めるため、周囲にはパッキング等を使用して室内外の空気の流れを遮断する。
4) 材質
天井、壁面及び床面の材質は特に限定しないが、薬剤浸透性のない又は殆どない、洗浄によって有効成分が除去しやすい材質を用いる。
5) 換気設備
テストチャンバー内の空気を均一にし、かつ、所定の換気を得るために、吸気口、排気口及び排気量を管理できる換気設備を設置する。1方向からの排気によって換気を行う場合には、室内空気の淀みを生じることがないように、適正な数や位置の吸気口を設定する。
6) その他
テストチャンバー内部の洗浄のための排水溝を設置する場合は気密性を考慮する。
6 備考
類似する他剤への適用、部屋の大小変更、換気率の変更等は、合理的な根拠を示して、文献公知のデータを利用したシミュレーションの結果を以って実測に代えることができる。効果的なシミュレーションのためには、用法・用量に基づいて使用したときの典型的な粒子径を測定しておくことが有用である。
注)
○ 「空気中濃度」とは、ある限定された空間のガス化された化学物質および空間に放出されたエアロゾルを対象としている。
○ 「通常の生活の中で直接、間接、空間及び残留使用することを目的とする殺虫製剤」とは、乳剤、油剤、エアゾール剤などの製剤を指す。
○ 「使用後一定の期間密閉を条件として、空間使用を目的とする殺虫製剤」とは、加熱蒸散剤、燻煙剤、全量噴射型エアゾール剤、ULV剤などの製剤を指す。
○ 「長期間にわたって連続的に有効成分が放出または揮散することを目的とする殺虫製剤」とは、樹脂蒸散剤、蚊取り線香剤、蚊取りマット剤、液体蚊取り剤などの製剤を指す。