添付一覧
○医療用エックス線装置承認基準の改正について
(平成一三年六月一一日)
(医薬発第六二二号)
(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知)
医療用エックス線装置承認基準については、平成4年6月18日薬機第149号厚生省薬務局医療機器開発課長通知「医療用エックス線装置の製造(輸入)承認申請の取扱いについて」に示されていたが、平成13年3月28日医薬審発第316号厚生労働省医薬局審査管理課長「医療用エックス線装置基準の改正に伴う製造(輸入)承認申請の取扱いについて」をもって、上記通知を廃止したところである。
今般、承認審査を行う上で用いるガイドラインとして、新たに基準を定めたので、下記にご留意のうえ、貴管下関係業者への周知徹底方よろしくお願いする。
なお、本通知の写しを財団法人医療機器センター理事長、日本医療機器関係団体協議会会長、在日米国商工会議所医療機器小委員会委員長及び欧州ビジネス協会協議会医療機器委員会委員長あて送付することとしている。
記
1 趣旨
医療用エックス線装置の放射線障害防止に関する規格については、医療用エックス線装置基準(平成13年3月22日厚生労働省告示第75号)が平成13年4月1日に施行されたところであるが、今般、放射線障害防止に関する規格以外の規格について、承認審査を行う上で用いるガイドラインとして、別添のとおり「医療用エックス線装置承認基準」を定めたこと。
2 基準の取扱いについて
承認申請を行う際には以下の点に留意すること。
(1) 基準の「定義」に該当する医療用具であって、当該基準に適合しないものについては、個別に有効性、安全性、品質等について資料の提出を求め、これに基づき審査し、承認を行うものであること。
(2) 基準の「定義」に該当する医療用具であって、既に薬事法第14条第1項(第23条において準用する場合を含む。)又は第19条の2第1項の規定に基づく承認を受けているもののうち、規格及び試験方法が当該基準に定めるところと異なるものについては、直ちに当該基準に適合した記載とするための承認事項一部変更承認申請を行う必要はないが、今後、何らかの承認事項一部変更承認申請を行う場合に、当該基準に準じた整備を図ること。
(3) 基準のうち「表示」については、承認を行うに当たって要求される事項ではないが、「定義」に該当する医療用具の表示に当たっては、本規定を参考として適切な表示を行うよう指導されたいこと。
3 その他
別添の「医療用エックス線装置基準」のⅠの「その他医療用エックス線装置に必要なもの」とは、エックス線画像処理装置(ディジタル撮影装置、ディジタル透視装置及びこれらの附属器具等)及びエックス線管装置から放射されるエックス線を利用するその他の関連機器(フィルムカセッテ、フィルムチェンジャー及びこれらの附属器具等)をいうものであること。
別添
医療用エックス線装置承認基準
Ⅰ 定義
医療用エックス線装置とは、診断又は治療に用いられる定格管電圧10キロボルト以上400キロボルト以下のエックス線装置であって、エックス線発生装置(エックス線管装置及びその附属器具、高電圧発生装置及びエックス線制御装置並びに一体型エックス線発生装置をいう。)、エックス線機械装置(保持装置、エックス線透視撮影台、エックス線撮影台、エックス線治療台等をいう。)、エックス線映像装置(イメージインテンシファイア、間接撮影装置、エックス線テレビジョン等をいう。)その他医療用エックス線装置に必要なものから成るものをいう。
Ⅱ 規格及び試験方法
1 総則
医療用エックス線装置を構成するすべての装置及び関連機器は、次の規格及び試験に適合しなければならない。
(1) 電撃に対する保護
ア 電撃に対する保護の方法
装置及び関連機器は基礎絶縁によるほか、基礎絶縁の事故時に接触可能金属部分が生きにならないようにするため、設備の接地端子に保護接地する手段(保護接地端子、保護接地線等)を備えなければならない(クラスⅠ機器)。ただし、電源部から二重絶縁又は強化絶縁によって分離した部分は保護接地しない(クラスⅡ機器)。
交流1000Vを超える電圧又は直流1500V若しくはピーク値1500Vを超える電圧をもつ部分には保護カバーを設け、高電圧部分であることを表示しなければならない。
イ 保護接地線
公称断面積が10mm2以下の電源導線を使用する装置及び関連機器は、保護接地線を含めた3心又は4心の電源コードを使用しなければならない。ただし、公称断面積10mm2を超える電源導線を使用する場合には、電源回路が保護接地した部分に短絡したとき、過電流開放器(配線遮断器、ヒューズ等)が作動するまでに溶断するおそれのない断面積をもつ保護接地線を、電源コードと別個に備えてもよい。
保護接地線の電気抵抗は、JIST0601-1に規定する方法に準拠して測定するとき、0.1Ω以下でなければならず、また、装置及び関連機器の接触可能金属部分と保護接地線の端末との間の電気抵抗は、0.2Ω以下でなければならない。
ウ 連続漏れ電流
装置及び関連機器の保護接地していない外装から外部の導体を通って大地又はその他の保護接地していない外装部分に流れる連続した外装漏れ電流は、直流、交流又は合成波形の実効値で、正常状態において0.1mAを超えてはならず、単一故障状態において0.5mA(ただし、電源に着脱する移動型及び携帯型エックス線装置においては2mA)を超えてはならない。
保護接地線が永久接続される装置(エックス線透視撮影台、エックス線治療台等)の保護接地線に流れる連続した接地漏れ電流は、直流、交流又は合成波形の実効値で、正常状態で5mA(ただし、エックス線高電圧装置にあっては10mA)を超えてはならず、単一故障状態において10mAを超えてはならない。保護接地線が永久接続されない装置(移動型及び携帯型エックス線装置等)の保護接地線に流れる連続した接地漏れ電流は、直流、交流又は合成波形の実効値で、正常状態において2.5mAを超えてはならず、単一故障状態において5mAを超えてはならない。上記以外の一般機器及び関連機器の保護接地線に流れる連続した接地漏れ電流は、直流、交流又は合成波形の実効値で、正常状態において0.5mAを超えてはならず、単一故障状態において1mAを超えてはならない。
上記連続漏れ電流は、漏れ電流の波形及び周波数に関係なく、正常状態及び単一故障状態において10mA(ただし、保護接地線が永久接続されるエックス線高電圧装置にあっては20mA)を超えてはならない。
連続漏れ電流の測定はJIST0601-1に規定する方法によって行うものとする。
(2) 電流回路の耐電圧
電源部の開閉器をすべて閉路した状態で、電源回路と保護接地端子との間に、次に示す50Hz又は60Hzの交流試験電圧を1分間加えるとき、これに耐えなければならない。
定格電圧が50Vを超え150V以下のとき1000V、定格電圧が150Vを超え250V以下のとき1500V、定格電圧が250Vを超え1000V以下のとき、定格電源電圧の2倍に1000Vを加えた電圧
2 エツクス線発生装置
(1) エツクス線管装置及びその附属器具
ア 高電圧側耐電圧
エツクス線管装置をJISZ4702に適合するエックス線高電圧装置に接続し、JISZ4704に規定する高電圧側耐電圧試験によって試験を行うとき、次の事項に適合しなければならない。
公称最高管電圧の1.1倍の電圧を加えるとき、10分間これに耐えなければならない。ただし、長時間の公称最高管電圧と短時間の公称最高管電圧とが異なる場合には、短時間の公称最高管電圧の1.1倍の電圧を加えるとき0.1秒間、長時間の公称最高管電圧の1.1倍の電圧を加えるとき10分間これに耐えなければならない。
コンデンサ式エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置の場合には、公称最高充電管電圧の1.1倍の電圧を加えるとき、10分間これに耐えなければならない。
イ 焦点の呼び及び焦点寸法
JISZ4704に規定する焦点試験によって試験を行うとき、焦点寸法毎の許容差は、焦点の呼びが0.8mm未満のものにあっては0~+50%、0.8mm以上1.5mm以下のものにあっては0~+40%、1.5mmを超えるものにあっては0~+30%でなければならない。
ウ 可動絞り
(ア) エックス線管装置及び一体形エックス線発生装置に組み合わせる可動絞りの最大エックス線照射野は、焦点受像面間距離65cmにおいて35×35cmを超えてはならず、最小エックス線照射野は焦点受像面間距離1mにおいて5×5cm以下でなければならない。
(イ) 可動絞りの光照射野の平均照度は、JISZ4701に規定する光照射野表示器の照度試験によって試験を行うとき、基準軸に直交し焦点から1m離れた平面上での平均照度は100lx以上なければならない。
(ウ) エックス線照射野の境界とそれに対応する光照射野の境界とのずれは、JISZ4701に規定する光照射野表示器の表示精度試験によって試験を行うとき、焦点から光照射野までの距離の2%を超えてはならない。
(2) エックス線高電圧装置(高電圧発生装置及びエックス線制御装置)
ア 高電圧側耐電圧
JISZ4702に規定する高電圧側耐電圧試験によって試験を行うとき、短時間定格の最高管電圧の1.2倍に3分間以上、また、長時間定格の最高管電圧の1.2倍に15分間以上耐えなければならない。ただし、長時間定格の最高管電圧が短時間定格の最高管電圧の80%を超えない場合には、短時間定格の値を満足すればよい。
コンデンサ式エックス線高電圧装置の場合には、短時間定格の最高管電圧の1.1倍の電圧に15分間以上耐えなければならない。
イ 管電圧の許容差
エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定する管電圧試験によって試験を行うとき、管電圧の表示値に対する測定値の誤差は±10%以内でなければならない。
ウ 管電流の許容差
エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定する管電流試験によって試験を行うとき、管電流の表示値に対する測定値の誤差は±20%以内でなければならない。
エ 撮影用タイマの許容差
エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定する撮影用タイマ試験によって試験を行うとき、撮影時間の表示値に対する測定値の誤差は±(10%+1ms)以内でなければならない。
オ 管電流時間積の許容差
管電流時間積によってエックス線出力を制御する方式のエックス線高電圧装置については、使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定する管電流時間積試験によって試験を行うとき、管電流時間積の表示値に対する誤差は±(10%+0.2mAs)以内でなければならない。
カ エックス線出力の再現性
エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定するエックス線出力の再現性試験によって試験を行うとき、次の式によって計算した撮影時におけるエックス線出力の変動係数は0.05以下でなければならない。
ここに、C:変動係数
S:10回の測定による標準偏差
K:10回の測定による相加平均値
Ki:i番目の測定値
キ 自動制御システムのエックス線出力の安定性
エックス線高電圧装置に使用するエックス線管装置を接続し、JISZ4702に規定する自動露出制御システムのエックス線出力の安定性試験によって試験を行うとき、エックス線フィルムの濃度の変化は次の値を超えてはならない。
(a) 被写体の厚さを一定にしたとき、管電圧の変化に起因する濃度の変化は0.15
(b) 管電圧を一定にしたとき、被写体の厚さの変化に起因する濃度の変化は0.20
(c) 管電圧及び被写体の厚さの両者の変化に起因する濃度の変化は0.20
(d) 管電圧及び被写体の厚さとも変化しないときの濃度の変化は0.10
(3) 一体形エックス線発生装置及びその附属器具
ア 高電圧側耐電圧
JISZ4711に規定する高電圧側耐電圧試験によって試験を行うとき、短時間定格の最高管電圧の1.1倍に3分間、又は、長時間定格の最高管電圧の1.1倍に15分間耐えなければならない。ただし、長時間定格の最高管電圧が短時間定格の最高管電圧の80%を超えない場合には、短時間定格の値を満足すればよい。
イ 焦点の呼び及び焦点寸法
Ⅱの2の(1)のイを準用する。
ウ 可動絞り
Ⅱの2の(1)のウを準用する。
エ 管電圧及び管電流の許容差
JISZ4711に規定する管電圧試験及び管電流試験によって試験を行うとき、管電圧の表示値に対する測定値の百分率平均誤差は±10%以内でなければならない。また、管電流の表示値に対する測定値の百分率平均誤差は±15%以内でなければならない。
オ 撮影用タイマの許容差
JISZ4711に規定する撮影用タイマ試験によって試験を行うとき、撮影時間の表示値に対する測定値の百分率平均誤差は±10%以内でなければならない。ただし、1ピーク形エックス線発生装置で0.2秒未満及び2ピーク形エックス線発生装置で0.1秒未満の表示値については、測定値の百分率平均誤差は±1パルス以内でなければならない。
3 エックス線機械装置
(1) 成人を対象とする装置はZ4703の負荷質量試験によって試験を行うとき、少なくとも100kgの体重まで正常に動作し、また、少なくとも135kgの体重を安全に支持する機械的強度がなければならない。
(2) 診断のために患者に圧力を加える電動圧迫機構には、加える圧力を適正に制御する手段を備えなければならない。
特別に必要な場合を除き、患者に対する圧力は最大70kPa、力は200N以下に制限すること。ただし、エックス線透視撮影台の圧迫筒の圧力の強さは、80Nを超えないこと。
また、停電時及び故障時に患者に加えられた圧力を速やかに除去する手段を備えなければならない。
(3) 患者に危害を与えるおそれがある部分の操作はデッドマン形制御でなければならない。
(4) 患者又は操作者に危害を与えるおそれのある動力駆動の動きには、非常停止スイッチを備えなれけばならない。
(5) 安全装置を備えない懸垂保持機構は、表面の欠陥、材料の損傷などによる事故の危険をできる限り少なくするために、高い破断伸びをもつ金属を使用しなければならない。安全率は、JISZ4703に規定する懸垂保持機構の試験によって試験を行うとき、次の値をみたさなければならない。
ア 磨耗、腐食、材料疲労及び経時変化によって支持機能が劣化するおそれがない場合には、すべての懸垂支持部品の静安全率を4以上とする。
イ 摩耗、腐食、材料疲労及び経時変化による損傷があると考えられる場合には、初期の静安全率を8以上とする。
ウ 破断伸び5%未満の金属を使用している場合の静安全率は、ア及びイに規定した静安率の1.5倍とする。
(6) 安全装置を備えた懸垂保持機構の安全装置の静安全率は、JISZ4703に規定する懸垂保持機構の試験によって試験を行うとき4以上でなければならない。
(注) 静安全率とは、最大静荷重に対する安全動作荷重の比をいう。
4 エツクス線映像装置
診断及び治療を目的としたエックス線放射を除き、5kVを超える電圧で動作する真空管を利用した機器から放射するエックス線は、その機器の表面から5cmの距離において、1時間の空気中で測定した空気カーマの積算値が4.35μGyを超えてはならない。
Ⅲ 表示
医療用エックス線装置の直接の容器又は直接の外装には、次の事項を表示しなければならない。
1 製造業者又は輸入販売業者の氏名又は名称及び住所
2 型式名称及び製造番号
3 焦点の呼び
4 定格出力
5 電撃に対する保護の方法(クラスⅠを除く)と程度の分類
6 電源(相数、周波数、電圧)
7 電源入力
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