添付一覧
○「モニタリング及び監査の受入れに関する標準運用指針」等の送付について
(平成一二年七月二四日)
(医薬審第八八九号)
(各都道府県薬務主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
標記指針につきましては平成一〇年二月に設置された「治験を円滑に推進するための検討会」の下にワーキンググループを設け、検討を行っておりましたが、検討会終了時までに十分な議論ができず、別途委員会として平成一一年七月より討議を開始いたしました。この度委員会が終了し、指針が取りまとめられましたので送付いたします。貴管下関係者への周知につきまして御配慮の程お願い申し上げます。
モニタリングの受入れに関する標準運用指針
第一章 目的
本指針は、治験の実施医療機関(以下「医療機関」という。)がモニタリングを受け入れる際の標準的な手順について示したものである。
第二章 治験開始前の準備
第一 手順書の作成
治験事務局は、医療機関の長の指示に基づいて、モニタリングの受入れに関する手順書を作成する。
第二 確認しておくべき事項
一 契約内容
医療機関の長、治験責任医師等、治験薬管理者、記録保存責任者、治験事務局等は、治験依頼者(治験依頼者が業務を委託した者を含む。以下同じ。)によるモニタリングを受け入れること、原資料等の全ての治験関連記録(以下「原資料等」という。)を閲覧に供すること及びこれに関連する費用について、治験の契約その他の治験依頼者と医療機関との合意文書に規定されていることを確認する。
二 モニタリングの計画及び手順
治験責任医師、治験事務局等は、モニタリングの計画及び手順について治験依頼者(又はモニター)に確認する。なお、治験の実施状況等を踏まえて計画及び手順と異なるモニタリングを行う必要が生じ得ることに留意する。
三 原資料等の内容・範囲
治験責任医師及び治験事務局等は、原資料等の内容・範囲について治験実施計画書等に基づいて治験依頼者(又はモニター)に確認する。なお、治験の実施状況等を踏まえてその追加、変更を行う必要が生じ得ることに留置する。
また、診療録が診療科ごとに作成されている場合には、治験担当科以外の診療科で作成されている診療録等も閲覧の対象となり得るため、その取扱いについて治験実施計画書等に基づいて治験依頼者(又はモニター)に確認する。
第三章 モニタリングの実施への準備と対応
第一 一般的準備
治験事務局は、モニタリングを円滑に受け入れるために、以下の事項について準備を行う。なお、準備は治験事務局以外の者が行う場合もあり得ることから、治験事務局は具体的対応方法を第二章第一の手順書に定めておく。
一 日時の設定
モニターから医療機関を訪問して行うモニタリング実施の申入れを受けたとき、可及的速やかにモニターと訪問日時等を調整し、決定する。
二 モニタリングの内容及び手順の確認
モニタリングの内容及び手順をモニターに確認し、医療機関側の応対者を定めるとともに、要請があれば必要な原資料等を用意する。
三 場所の確保
閲覧を伴うモニタリングの場合には、原資料等と症例報告書その他の治験依頼者への報告書及び通知文書等との照合等が行われるため、被験者のプライバシーの保護と照合作業が可能な場所を準備する。
四 担当モニターの確認
モニターが治験依頼者によって指名された者であることを確認する。
第二 治験開始前のモニタリング
一 資料・情報の受領等
治験責任医師及び治験事務局は、治験依頼者から最新の治験薬概要書等治験を適正かつ円滑に行うのに必要な全ての資料・情報を受領していること及び治験分担医師、治験協力者、治験薬管理者等に十分な情報を与えていることをモニターの求めに応じて示す。
二 治験分担医師、治験協力者の業務内容
治験事務局は、医療機関の長が指名した治験分担医師及び治験協力者の分担業務一覧表を治験責任医師及び治験依頼者に提出し、その写しを保存していることをモニターの求めに応じて示す。
三 同意・説明文書
治験責任医師は、治験依頼者から資料・情報の提供を受けて作成した同意・説明文書を治験依頼者に提出していることをモニターの求めに応じて示す。
四 治験審査委員会の審議状況等
治験事務局は、治験審査委員会がGCPに従って運営されていること等を示す文書が医療機関の長から治験依頼者に提出されていること、当該委員会が治験の実施を承認していること並びにこれに基づく医療機関の長の指示・決定が医療機関の長から治験依頼者及び治験責任医師に文書で通知されていることをモニターの求めに応じて示す。
第三 治験実施中のモニタリング
治験責任医師等、治験協力者、治験薬管理者、記録保存責任者又は治験事務局は、以下の事項が確認できる資料その他をモニターの求めに応じて示す。
一 被験者の選定
① 治験実施計画書に定められた選択基準、除外基準が遵守されていること。
② 被験者の治験への参加の同意がGCP及び治験実施計画書を遵守して得られていること。
二 治験の進行
① 被験者の登録状況が適切であること。
② 原資料等がGCP、治験実施計画書及び治験の契約等に従って正確かつ完全に作成され、適切に保存されていること。
③ 治験の継続の適否について治験審査委員会の審査を受けるべき場合において、当該委員会が治験の継続を承認していること並びにこれに基づく医療機関の長の指示・決定が治験依頼者及び治験責任医師に文書で通知されていること。
三 症例報告書等の作成等
① 症例報告書その他GCP及び治験実施計画書等に定められた治験依頼者への報告書及び通知文書等が原資料等に照らして正確かつ完全に作成され、適切な時期に治験依頼者に提出又は通知されていること。
② 治験実施計画書からの逸脱に関する全ての記録が治験責任医師により直ちに治験依頼者及び医療機関の長に提出され、その写しが保存されていること。
③ モニターから指摘された症例報告書の記載ミス、記載漏れ又は判読不能事項について、治験責任医師又は症例報告書を作成した治験分担医師が治験依頼者から提供された手引きに従って適切に修正、追記又は削除を行い、日付の記入及び捺印又は署名をしていること。また、重大な修正等については理由等の説明も記載していること。
四 治験薬の管理
① 治験薬の受領、使用、返却及びこれらに関する記録の作成、保存等が治験実施計画書及び治験依頼者が医療機関の長に交付した手順書等に従って適切に行われていること。
② 治験薬の取扱い方法、保存期間、保存場所、保存条件等が適切であること。
第四 治験中断・中止・終了又は開発中止後のモニタリング
一 症例報告書等の提出等
治験責任医師等、治験協力者又は治験事務局は、症例報告書その他GCP及び治験実施計画書等に定められた治験依頼者への全ての報告書及び通知文書等が、原資料等に照らして正確かつ完全に作成され、治験依頼者に提出又は通知されていることをモニターの求めに応じて示す。
二 治験薬の管理
治験薬管理者は、治験薬が治験実施計画書及び治験依頼者から医療機関の長に交付された手順書等に従って適切に管理されていることをモニターの求めに応じて示す。
三 治験中断・中止・終了又は開発中止に関する通知文書
治験事務局は以下の事項をモニターの求めに応じて示す。
① 治験責任医師からの治験中断・中止又は終了の報告書に基づいて医療機関の長が治験審査委員会及び治験依頼者に文書で通知していること。
② 治験依頼者からの治験中断・中止又は開発中止の通知に基づいて医療機関の長が治験責任医師及び治験審査委員会に文書で通知していること。
四 記録の作成及び保存
治験責任医師等、治験協力者、治験薬管理者、記録保存責任者又は治験事務局は、原資料等の必須文書がGCP、治験実施計画書、治験の契約等に従って正確かつ完全に作成され、それぞれの記録保存責任者により適切に保存されていることをモニターの求めに応じて示す。
第五 その他
一 医療機関の長、治験責任医師等、治験協力者、治験薬管理者、記録保存責任者及び治験事務局等は、GCP、治験実施計画書及び治験の契約等に基づく前記以外のモニタリング事項についても、モニターの求めに応じて適切に対応する。
二 治験事務局は、モニターから問題事項が示されたときの対応方法を第二章第一の手順書に定めておく。
モニタリングの受入れに関する標準運用指針についてのQ&A集
Q一:モニタリング受入れに関する手順書の内容を依頼者に示す必要があるのか。
A :医療機関の判断による。
Q二:モニタリングに関する費用は全て契約に含めておくべきか。
A :医療機関は契約時にその受入れ実施に必要な費用を積算し、治験依頼者から治験の費用として支払いを求めること。
Q三:事前に治験依頼者(モニター)に確認したモニタリングの計画・手順について治験契約書等に盛り込む必要があるのか。
A :契約書中に盛り込む必要はない。治験実施計画書に規定されていない場合には治験依頼者(モニター)に確認した内容を必要に応じて記録をすることでよい。
Q四:原資料等の内容・範囲について覚書等で明文化する必要があるか。
A :治験実施計画書等に基づいて治験依頼者(モニター)に確認した内容を記録しておくことが望ましい。
Q五:被験者が他医療機関の診療を受けていることが判明した場合、その内容を確認する必要があるか。
A :治験責任医師が他の医師に治験の参加を連絡するとともに、その診療内容が治験実施計画書で求められているデータにとって必要と判断される場合には被験者の同意の下に当該診療内容を確認する必要がある。これらについても治験依頼者(又はモニター)に確認しておく必要がある。
Q六:他診療科に生じた直接閲覧対象の原資料等の保存はどのようにしたらよいか。
A :症例報告書等の作成の元になった原資料等については、他診療科の場合でも治験実施計画書等の定めるところに従って保存されるべきと考えられるが、実施医療機関の状況により保存方法を取り決めておくことが必要である。例えば、各診療科の資料を一括保存する方法や、他診療科の診療録等の写しに担当医が署名及び写しを取った日付の記入等を行ったものを、治験責任医師の診療科の原資料等とともに保管する方法が考えられる。
Q七:モニタリングは全て治験事務局が窓口となることでもよいか。
A :実施医療機関の申込み先と担当者を予め決めておくことが望ましい。治験事務局が唯一のモニタリングの受入れの窓口になった場合であっても、適切なモニタリングが妨げられない様に配慮しなければならない。
Q八:モニタリングの申入れは全て文書で行わせることとしてよいか。また、モニタリング予定日の提出期限を設定することはよいか。
A :申入れは全て文書で行っても良い。提出期限を設定し準備期間をおく場合は、準備期間を必要最小限にとどめるべきである。
Q九:直接閲覧の際には、医療機関側の立会い者は必ずおくようにするのか。
A :直接閲覧や照合の場合、当該治験を担当した者が立ち会うことが望ましいが、治験事務局等代理の者でも可能である。
Q一〇:治験依頼者から提供された資料・情報は全ての版を保存すべきか。
A :原則として、治験依頼者から提供された最新資料・情報は全て保存すべきである。ただし治験責任医師、治験薬管理者等が受領した資料・情報の以前の版の保存については治験依頼者に確認しておくことが必要である。
Q一一:保存してある契約書等の原本をモニターに見せる必要があるか。
A :直接閲覧は通常原資料等の原本を対象として実施されるので必要である。
Q一二:医療機関としてモニタリングを受けたことを記録として残す必要はあるか。
A :医療機関の判断による。
Q一三:措置の内容をモニターに示す必要があるか。
A :モニターの要請により、措置内容を示すことが望ましい。
監査の受入れに関する標準運用指針
第一章 目的
本指針は、治験の実施医療機関(以下「医療機関」という。)が監査を受け入れる際の標準的な手順について示したものである。
第二章 受入れの準備
第一 手順書の作成
治験事務局は、医療機関の長の指示に基づいて、監査の受入れに関する手順書を作成する。
第二 確認しておくべき事項
一 契約内容
医療機関の長、治験責任医師等、治験薬管理者、記録保存責任者及び治験事務局等は、治験依頼者(治験依頼者が業務を委託した者を含む。以下同じ。)による監査を受け入れること、原資料等の全ての治験関連記録(以下「原資料等」という。)を閲覧に供すること及びこれに関連する費用について、治験の契約その他の治験依頼者と医療機関との合意文書に規定されていることを確認する。
二 監査の計画及び手順
治験責任医師及び治験事務局等は、監査の計画及び手順について治験依頼者(又は監査担当者)に確認する。なお、監査には医療機関の治験のシステム(実施体制)に対する監査と個々の治験に対する監査があり、それぞれ監査の対象及び方法等が異なることに留意する。
三 原資料等の内容・範囲
治験責任医師及び治験事務局等は、原資料等の内容・範囲について治験実施計画書等に基づいて治験依頼者(又は監査担当者)に確認する。なお、治験の実施状況等を踏まえてその追加、変更を行う必要が生じ得ることを留意する。
第三章 監査の実施への準備と対応
第一 一般的準備
治験事務局は、監査を円滑に受け入れるために、以下の事項に関する準備を行う。なお、治験事務局は具体的対応方法を第二章第一の手順書に定めておく。
一 日時の設定
監査担当者から監査実施の申入れを受けたとき、可及的速やかに監査の日時等を調整し、決定する。
二 監査の内容及び手順の確認
監査の内容及び手順を監査担当者に確認し、医療機関側の応対者を定めるとともに、必要とされる資料を用意する。
三 場所の確保
監査が原資料等の閲覧を伴う場合には、原資料等と症例報告書その他の治験依頼者への報告書及び通知文書等との照合が行われるため、被験者のプライバシーの保護と照合作業が可能な場所を準備する。
四 監査担当者の確認
監査担当者が治験依頼者によって指名された者であることを確認する。
第二 監査への対応
一 治験のシステム(実施体制)に対する監査
治験事務局は、医療機関における治験のシステム(実施体制)がGCPに照らして適正に構築され、かつ適切に機能していることを示す資料を監査担当者の求めに応じて提示する。
二 各治験に対する監査
治験事務局、治験責任医師等、治験協力者、治験薬管理者又は記録保存責任者は、以下の事項がGCP、治験実施計画書及び治験の契約等を遵守して適切に行われていることを示す資料を監査担当者の求めに応じて提示する。
① 治験を適正かつ円滑に行うのに必要な全ての資料・情報の受領
② 治験分担医師及び治験協力者の業務分担
③ 同意・説明文書の作成及び治験依頼者への提出
④ 治験審査委員会が治験の実施又は継続実施を承認していること及びこれに基づく医療機関の長の指示・決定が治験依頼者及び治験責任医師へ文書で通知されていること、並びに当該委員会がGCPに従って運営されていること等を示す文書の治験依頼者への提出
⑤ 被験者の選定及び被験者からの同意取得
⑥ 正確かつ完全な症例報告書その他治験依頼者への報告書・通知文書等の作成及び提出・通知
⑦ 治験薬の管理
⑧ 治験責任医師からの治験終了の報告書に基づく治験審査委員会及び治験依頼者への文書通知
⑨ 正確かつ完全な原資料等の必須文書の作成及び記録保存責任者による保存
⑩ その他監査担当者が求める事項
第三 その他
治験事務局は、監査担当者(又は治験依頼者)から改善事項が示された場合の対応方法を第二章第一の手順書に定めておく。
監査の受入れに関する標準運用指針についてのQ&A集
Q一:医療機関に対する監査の目的は何か。
A ‥治験依頼者が指名した監査担当者による監査の主な目的は次のとおりである。
① 医療機関の治験のシステム(実施体制)が適正に構築され、かつ適切に機能していることの確認
② 治験が適切に実施され、データの信頼性が十分に保たれていることの確認
③ モニタリングが適切に行われていることの確認
Q二:監査の受入れに関する手順書は、治験依頼者(監査担当者)に見せる必要があるか。
A :医療機関の判断による。
Q三:治験を実施する場合、監査は必ず受けることになるのか。
A :モニタリングと異なり、治験を実施する全ての医療機関が監査を受けるとは限らない。監査の対象医療機関と時期は、治験依頼者が治験の重要性、被験者数、治験の内容と複雑さ、治験の危険性及びモニタリングで見出された問題点等を考慮して決定する。治験依頼者(監査担当者)から監査実施の申入れを受けた場合には、モニタリングと同様、監査に協力する必要がある。
Q四:医療機関での監査は、治験の契約書に記載されている治験の期間内に行われるのか。
A :契約書に記載されている治験の期間内にのみ実施されるとは限らない。治験開始前、あるいは終了後に行われることもある。
Q五:監査担当者から資料の提示または提出を要求された場合には、全て応じなければならないか。
A :平成九年三月二七日厚生省令第二八号第三七条にあるように、第四一条に規定される資料を要求された場合には全て応じなければならない。
Q六:監査を実施した結果については、どのように医療機関に伝えられるのか。
A :通常、監査終了後、監査担当者から監査で見出された問題点等について説明及び提案等が行われる。また、監査の対象となった治験の個別の問題点と措置方法についてはモニタリングの一環としてモニターからも伝えられることがある。
Q七:監査担当者(治験依頼者)から示された提案事項にはどのように対応すればよいのか。
A :標準的な対応方法は手順書に定めておき、提案の内容に応じて医療機関の判断で適切に対応すること。
Q八:医療機関として、監査を受けたことを記録として残す必要があるか。
A :医療機関の判断による。
Q九:監査の受入れに要する費用はどのように請求するのか。
A :監査の受入れ費用についても契約等に明記し、それに基づいて請求するべきである。
Q一〇:監査の申入れを文書で行わせることとし、監査希望日に対応した提出期限を設けることはよいか。
A :文書での申入れや提出期限を設けることは差し支えない。ただし、提出期限より監査実施日までの期間を必要最小限にとどめるべきである。
注) モニタリング受入れに関する標準運用指針についてのQ&A集にも関連事項があるので参照されたい。