添付一覧
○「ヒト医薬品に関する安全性薬理試験ガイドライン」(案)について
(平成一二年五月二二日)
(医薬審第七一一号)
(厚生省医薬安全局審査管理課長通知)
近年、優れた医薬品の研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、新医薬品の承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されています。このような要請に応えるため、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)が組織され、ハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われています。
今般、この活動の一環として、別添のとおり「ヒト医薬品に関する安全性薬理試験ガイドライン」(案)がまとまりましたのでお送りいたします。本案につきましては、寄せられた御意見をもとにICHにおいて検討及び修正を加え最終内容とし、ガイドラインとして公表する予定です。
つきましては、本案について御意見がありましたら、平成一二年八月二五日(金)までに左記宛理由を付して御提出いただきますよう御連絡申し上げます。なお、意見につきましては、ガイドライン(案)の内容に関するものと翻訳に関するものを分けて御提出下さい。
記
[意見提出先]
〒 一〇〇―八〇四五 東京都千代田区霞ケ関一―二―二
厚生省医薬安全局審査管理課
TEL 〇三―三五〇三―一七一一(内線二七四五)
FAX 〇三―三五九七―九五三五
別添
GUlDELlNE ON SAFETY PHARMACOLOGY STUDIES FOR HUMAN PHARMACEUTlCALS
ヒト医薬品に関する安全性薬理試験ガイドライン
1 序論
1.1 ガイドラインの目的
本ガイドラインは医薬品による有害反応から治験参加者及び上市製品を投与している患者を保護するとともに実験動物並びにその他の資源の不必要な使用を避けるために作成された。
本ガイドラインは安全性薬理を定義し、その評価のための一般原則と推奨を記述する。
1.2 背景
薬理試験はこれまでヒトに使用する医薬品の非臨床的評価の一部として永年、世界中で実施されてきた。しかしながら、安全性薬理試験の計画、実施に関して国際的に認められた定義、目的あるいは推奨はなかった。(注1)
ICHの非臨床安全性試験ガイドラインにおいて、「安全性薬理試験」という用語は臨床試験を開始する前に実施すべき試験として「医薬品の臨床試験のための非臨床安全性試験の実施時期についてのガイドライン(M3)」及び「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価(S6)」の議題中に最初に現れた(1,2)。定義や目的を含む安全性薬理試験の詳細は将来の検討課題として残された。
1.3 ガイドラインの範囲
本ガイドラインは一般にヒトに用いる新規化学物質及びバイオテクノロジー由来産物に適用される。本ガイドラインは場合によっては(例えば、有害臨床事象、新たな患者集団もしくは投与経路であって、それまで検討されていなかった懸念を引き起こす場合)上市医薬品にも適用される。
1.4 一般理念
安全性薬理試験を選択並びに実施する時には、論理的な取組み方法を採用することが重要である。実施すべき特別な試験、その計画は医薬品の個々の特性及び使用目的により異なるであろう。科学的に妥当な方法が用いられるべきであり、また、医薬品に適用しうる国際的に認められた方法がある場合には、これらの方法の方が望ましい。
さらに正しい科学理論に従った新しい技術および手法の使用が強く推奨される。
あるエンドポイントに関しては安全性薬理試験として別個に評価する必要がない場合があるし、別のケースでは、安全性薬理エンドポイントを他の試験計画(例えば、毒性試験、動態試験もしくは臨床試験)に取り入れることも出来るであろう。被験物質の有害作用は適切に計画された安全性薬理試験における治療用量の範囲内の曝露で検出しうる場合があるが、通常の動物毒性試験中で明らかな毒性を検出するために用いている観察や方法では明らかにならない場合もある。
1.5 安全性薬理の定義
薬理学的試験は効力を裏づける薬力学的試験、副次的薬力学的試験及び安全性薬理試験の3つに分類出来る。(効力を裏づける及び副次的薬力学試験の定義についてはNote2に記載した)
本ガイドラインの目的からすると、安全性薬理試験とは曝露に関連した生理機能における被験物質の望ましくない薬力学的作用を検討する試験として定義される。
ある場合には、被験物質の効力を裏づける及び副次的薬力学特性に関する情報はヒトに起こりうる有害作用の安全性評価に役立つ場合があり、安全性薬理試験の知見と一緒に考察すべきである。
2 ガイドライン
2.1 試験の目的
安全性薬理試験の目的は1)ヒトの安全性に関連のある被験物質の望ましくない薬理学的特性を特定すること、2)毒性試験もしくは臨床試験で認められた被験物質の有害な薬力学的もしくは病態生理学的作用を評価すること、3)これまで認められたもしくは危惧される薬力学的有害作用の機序を検討することである。これらの目的に合うような研究計画を明確にし、詳述すべきである。
2.2 安全性薬理試験の選択および計画における一般的配慮
薬理作用は各被験物質の特性により様々であるので、試験は相応に選択、計画されるべきである。次のような要素を配慮すべきである。(列記するもので全てが包括されるものではない)
(1) 被験物質の治療別分類に関連する作用:作用機序から特定の有害効果が予想されることがあるので(例として、催不整脈作用は抗不整脈薬に共通した性質である)
(2) 化学構造もしくは治療別分類のメンバーに関連した有害作用であるが、第一義的薬力学的効果とは関連のないもの(例として抗精神病薬とQT延長)
(3) 有害作用の可能性を示唆するリガンド結合あるいは酵素活性についての情報
(4) 既に実施された安全性薬理試験、副次的薬力学試験、毒性試験もしくはヒト使用からのデータで、追加調査をすることの根拠となり、かつヒトで生じうる有害反応との関連性を立証し、特徴付けるためのさらなる試験を必要とさせるもの
開発の初期には、試験を合理的に選択あるいは立案するのに十分な情報(例えば代謝比較)が必ずしも得られていない場合がある。そのような状況では、より一般的なスクリーニングによるアプローチが適用されることがある。
器官系の格付けは生命維持機能に関する重要度に従って展開することができる。生命に直結して必要な器官あるいは系、すなわち心血管系、呼吸及び中枢神経系は安全性薬理試験を評価する上で最も重要であると見なされる。他の器官系、不可逆的な傷害を生じることのない有害薬力学的作用により一時的に混乱されるような機能は、直ちに検討すべき懸念は小さい。
上記の生命維持系以外の系における作用についての安全性薬理評価も、臨床試験あるいは患者群で起こりうる要因(例えばクローン病における胃腸管、免疫異常患者における免疫系)が考えられる場合に特に重要となることがある。
2.3試験系
2.3.1 試験系についての一般的配慮
科学的に妥当な情報が引き出されるためには有効な動物モデルあるいは他の試験系の選択について注意深い配慮が払われるべきである。選択基準にはモデルの薬力学的反応性、薬物動態プロファイル、実験動物の種、系統、性並びに年齢、試験系の反応性、感受性並びに再現性および被験物質に関して得られろ背景データを含む。入手可能な場合にはヒトデータ(例えばインビトロ代謝)も試験系の選択において考慮すべきである。測定時点に関しては、薬力学的および薬動態学的配慮に基づくべきである。特別な動物モデルあるいは試験系を選択する場合には正当な理由を示すべきである。
2.3.2 インビボおよびインビトロ試験の使用
動物モデルもしくはエクスビボ/インビトロ試料、摘出器官及び組織が用いられる。インビトロ系には、さらに培養細胞、細胞断片/細胞内小器官、受容体、チヤンネル、トランスポーター及び酵素を含むが、これらに限定するものでもない。インビトロ系は補足試験(例えば、被験物質の活性プロファイルを得るあるいはインビボで観察された作用機序を検討する場合)として利用される場合がある。
生命維持機能についてのインビボ試験を行う場合、無麻酔動物を用いることが望ましい。意識のある動物あるいは実験環境に馴化させた動物に持続的テレメトリーあるいは他の適切な装着方法で装着した無拘束動物から得たデータの方が拘束、無馴化動物から得たデータよりも望ましい。無麻酔動物の使用に際して、何よりも配慮することは不快感や苦痛を避けることである。
2.3.3 実験計画
2.3.3.1 例数と対照の使用
動物数または摘出標本数は被験物質の効果の有無を明確に示せるように適切に設定するべきである。このためには懸念の対象となる生物学的効果の大きさを考慮すべきである。実験計画には適切な陰性及び陽性対照群を含めるべきである。インビボ試験系で特性がはっきりしている場合には、陽性対照が必要ない場合がある。試験から対照群を除く場合には正当性を示すべきである。
2.3.3.2 投与経路
一般に予想される臨床投与経路を可能なかぎり用いるべきである。投与経路と関係なく、情報が得られる場合には、親化合物及び主要代謝物の曝露量は少なくとも、ヒトで到達する曝露量と同程度かそれ以上とすべきである。もし被験物質が複数の投与経路(例えば経口と非経口)で臨床に用いられる予定である場合、もしくは全身あるいは局所的曝露において質的にも量的にも有意に異なることが認められるあるいは予想される場合には、複数の経路による作用の評価を行うことが適切であろう。
2.4 被験物質の用量もしくは濃度
2.4.1 インビボ試験
安全性薬理試験は有害作用の用量反応曲線を明確にすべく計画すべきである。作用の経時変化(例えば反応の開始と持続時間)も出来るだけ検討すべきである。一般に有害作用に対する用量反応は試験系に用いた動物種において効力を裏づける薬力学的反応を起こすのに必要な用量、あるいは可能であるならばヒトで目的とする治療効果を得るために必要な用量と比較すべきである。薬力学的感受性に種差が存在することが認識されている。それ故、用量は効力を裏づける薬力学的反応用量あるいは治療用量範囲を含み、かつそれ以上とすべきである。安全性薬理パラメーターに有害反応が認められない場合には、最高試験用量は同様の経路及び期間の試験において何らかの有害反応を生じる用量と同量あるいはそれ以上であるべきである。これらの有害作用は用量限界のある薬力学効果あるいはその他の毒性作用も含み得る。実際には毒性用量内での作用(例、心電図記録中の振戦もしくは筋肉の攣縮)が安全性薬理作用の解釈に干渉することがあるので、用量範囲が限られることもある。試験動物種において特異的有害反応がない場合には、単一用量投与群の試験が適切であろう。
2.4.2 インビトロ試験
インビトロ試験は濃度・作用相関性を確立するように計画すべきである。その試験系における作用を検出する公算を上げるために、ある範囲の濃度が探索されるべきである。
2.5 投与期間
安全性薬理試験は一般に単回投与で実施される。反復投与非臨床試験もしくはヒトでの使用の結果、安全性薬理作用について懸念を生ずる場合には、これらの作用を検討するために必要な安全性薬理試験の期間は合理性に基づくべきである。
2.6 代謝物、異性体および最終製剤についての試験
一般的にヒトで全身曝露もしくは全身循環に達すると予想される全ての親化合物及び主代謝物は安全性薬理試験で評価されるべきである。主代謝物の作用の評価は動物での親化合物の試験で達成されている場合が多い。もしヒトの主代謝物が動物では存在していないか、存在していても比較的低濃度であることが見いだされている場合には、そのような代謝物の安全性薬理機能に対する作用の評価を考慮すべきである。ヒトに認められる主代謝物が親化合物の薬理作用に十分に寄与していることが知られている場合には、そのような活性代謝物を試験することは重要である。親化合物のインビボ試験において代謝物を十分に評価していない場合には、実質的な考えに基づき、代謝物の試験にインビトロの系を用いることが多い。
製剤が混合物を含有する場合には、個々の異性体のインビトロもしくはインビボ試験が考慮されるべきである。
最終製剤の剤形を用いた安全性薬理試験は、それまでの試験と比較して活性物質の薬力学並びに薬物動態が本質的に変化するような剤形(すなわち、吸収促進剤やリポソームのような活性賦形剤、結晶多形のような他の変化による)に対してのみ必要である。
2.7 安全性薬理コアバッテリー
安全性薬理コアバッテリーの目的は生命機能における被験物質の作用を検討することにある。この点について、心血管系、呼吸系および中枢神経系が通常コアバッテリーで試験すべき生命維持を司る器官系と考えられている。ある場合には、科学的妥当性に基づいて、コアバッテリーを補足する必要があり(2.8節)、もしくは追加実施する必要がない(2.9節)場合がある。
ある器官、系もしくは機能についてのある試験あるいは検査を除外する場合には科学的正当性を示すべきである。
2.7.1 中枢神経系
被験物質の中枢神経系に及ぼす作用を適切に評価すべきである。運動性、行動変化、協調性、感覚/運動反射反応および体温について評価すべきである。例えば機能観察総合評価法(FOB)(3)、lrwinの変法(4)もしくは他の適切な試験(5)が用いられうる。
2.7.2 心血管系
被験物質の心血管系に及ぼす作用を適切に評価すべきである。血圧、心拍数、心電図について評価すべきである。電気生理学を含むインビトロあるいはエキスビボ手法も考慮すべきである。(注3)
2.7.3 呼吸系
被験物質の呼吸系に及ぼす作用を適切に評価すべきである。呼吸数及び深度について評価すべきである。ほとんどの場合、これらのパラメータを評価するために動物の臨床観察が適切とすべきであるが、一方、他の場合には(例えば呼吸系に直接作用するあるいは標的とする医薬品)機器を用いた方法の方がよいであろう。
2.8 必要に応じて実施される安全性薬理試験
有害反応は被験物質の薬理学的特性に基づき予測されることがある。さらに安全性薬理コアバッテリー、臨床試験、医薬品安全性調査、インビトロ及びインビボ試験あるいは文献的報告から懸念が生じることがある。ヒトに対する安全性にそのような有害反応の可能性が懸念される場合、出来るだけ適切にFollow up試験もしくは補足的安全性薬理試験で探索すべきである。
2.8.1 安全性薬理コアバッテリーに対するFollow―up試験
Follow―up試験というのは生命維持機能についてのコアバッテリーにより得られた結果よりもより深い理解もしくはそれに追加知識を提供することを意味する。以下の項目は包括的あるいは規定的であることを意味しているのではなく、試験系は存在する非臨床試験もしくはヒトのデータのような要因を考慮した後にケースバイケースで決定する。場合によっては、他の非臨床および/もしくは臨床試験の実施の中でこれらの作用を検討することがより適切である場合がある。
2.8.1.1 中枢神経系
行動薬理、学習及び記憶、特異的リガンド結合、神経化学、視聴覚あるいは電気生理学的検討など。
2.8.1.2 心血管系
心拍出量、心室収縮性、血管抵抗、内因的に放出されたあるいは外因的に投与された神経伝達物質の心血管反応に対する影響など。
2.8.1.3 呼吸系
一回換気量、気管抵抗、コンプライアンス、肺動脈圧、血液ガスなど。
2.8.2 追補的安全性薬理試験
追補的試験とは、懸念される理由がある場合で、コアバッテリーあるいは反復投与毒性試験で検討されていなかった器官系の機能について評価することを意味する。
2.8.2.1 腎/尿系
適切な腎パラメーターにおける被験物質の作用を評価すべきである。例えば尿量、比重、浸透圧、pH、水/電解質バランス、蛋白、細胞についてのデータを含む尿検査、血中尿素窒素、クレアチニン及び血漿蛋白のような血液化学検査が用いられうる。
2.8.2.2 自律神経系
自律神経系に及ぼす被験物質の作用を評価すべきである。例えば自律神経系に関与する受容体結合、インビボもしくはインビトロでの作動薬もしくは拮抗薬の反応性、自律神経系の直接刺激、心血管系の反応の測定、圧反射試験並びに心拍数変動性が用いられうる。
2.8.2.3 胃腸管系
胃腸管系に及ぼす被験物質の作用を評価すべきである。例えば胃液分泌、胃腸管障害能、胆汁分泌、インビボでの輸送時間、インビトロでの回腸収縮、胃pH測定並びに貯留性が用いられうる。
2.8.2.4 他の器官系
他の項目で検討されていない器官系についても懸念する理由がある場合には、被験物質の作用を検討すべきである。例えば依存性、骨格筋、免疫及び内分泌機能が検討されうる。
2.9 試験が不必要な条件
被験物質の薬理の特性が十分に明らかにされており、全身曝露もしくは生体維持器官への分布が低いことが認められている局所適用剤(例として経皮もしくは点眼)には安全性薬理試験は不要である。
末期癌患者の治療のための細胞毒性薬剤に対してヒトに最初に投与する前に行う安全性薬理試験は不要である。新しい作用機序の細胞毒性薬剤に対しては安全性薬理試験を実施する価値がある場合がある。
高度に特異的な受容体の標的化を達成したバイオテクノロジー由来製剤に対しては安全性薬理コアバッテリー試験を削減または省略することが出来る。この場合、関連する安全性薬理エンドポイントについて毒性試験および/または薬力学的試験で評価を行うべきである。
以上に加えて、安全性薬理試験が不要とされる例外がある。例えば薬力学及び薬物動態が類似している新規塩化合物の場合が挙げられる。
2.10 臨床開発に関連した安全性薬理試険の時期
安全性薬理プログラムを計画する場合には、特殊な試験が必要かどうかを決定するために2.9節について精査するべきである。
2.10.1 初めてヒトに投与する以前
安全性薬理コアバッテリーに記載された機能に対する被験物質の作用は、ヒトに初めて投与する前に検討すべきである。懸念の原因に基づき必要と認められればFollow―upもしくは補足試験についても実施すべきである。安全性薬理のエンドポイントを検討するために適切に計画され、実施された毒性試験からの情報があれば、独立した安全性薬理試験の必要性を縮小または省略することが可能である。
2.10.2 臨床開発中
臨床開発中に動物やヒトで確認された、あるいは疑われた有害作用を明らかにするため、追加試験が必要とされることがある。
2.10.3 承認前
2.8節に記載した系についての安全性薬理作用は、必要とされないことが妥当と判断された状況でない限り、承認前に評価すべきである。安全性薬理のエンドポイントを検討するために適切に計画され、実施された毒性試験からの情報もしくは臨床試験からの情報が得られていれば、評価に役立ち、安全性薬理試験の代わりになりうる。
2.11 GLPの適用
試験の質や信頼性を保証することは重要である。これは通常、試験をGLPに従って行うことで得られる。ある種の安全性薬理試験は試験デザインが特殊なためにGLPに従って行うことができない場合がある。たとえ、形式上GLPの原則に忠実でなくても、安全性薬理試験のデータの質と完全性は明確にされるべきである。試験がGLPに従って行われていない場合、試験の再構築はデータの保管を含む適切な試験実施の文書を通して保証されるべきである。GLPに従って行われない試験または試験部分はその正当な理由を十分に説明するべきであり、またエンドポイントの評価に及ぼしうる影響を説明しなくてはならない。
安全性薬理コアバッテリーは通常GLP下で行う。Follow―up試験および追補的試験はできる限りGLPに従って行う。安全性薬理の検討が毒性試験の一部として実施されている場合には、試験はGLPに従って実施されているものと考える。
効力を裏づける薬力学試験はGLPに従って実施する必要はない。
副次的薬力学試験は、その試験の目的が安全性薬理試験と異なる場合には、GLPに従って実施する必要はない。
特に懸念する原因がなく、一般スクリーニングとして実施する安全性薬理試験はGLPに従って実施する必要はない。
3 注
1 一般薬理試験は医薬品の安全性評価においてこれまで重要な構成要因と考えられてきた。一般薬理試験はもともと医薬品候補の主な治療効果とは別の作用を検討するために計画された試験に相当していた。安全性薬理試験は生理的機能における有害効果を同定することに焦点を置いていた。これまでも3極全てが医薬品申請の評価において一般薬理試験(日本とEC)あるいは安全性薬理試験(USA)からのデータを受け入れてきた。厚生省(MHW)は1991年に「一般薬理に関するガイドライン」を発出している。この厚生省ガイドラインでは、一般薬理試験には器官系の機能における予期しない効果を同定することおよび広範囲な薬理的特徴(薬理プロファイル)を得ることを計画した試験を含んでいる。しかしながら、“効力を裏づける薬力学”、“副次的薬力学”及び“安全性薬理”の用語に関して国際的に受け入れられた定義はこれまで存在していなかった。安全性薬理に対する用語の整合及び国際的なガイドラインの開発の必要性はこれまで認識されていた。
2 望ましい治療標的に関連した被験物質の作用もしくは効果の機序に関する試験が効力を裏づける薬力学的試験である。望ましい治療標的に関連しない被験物質の作用もしくは効果の機序に関する試験が副次的薬力学的試験である(これらはこれまで時として一般薬理試験と称されてきた。)
3 より特異的で詳細なガイダンスが、科学の進展に合わせ、今後本ガイドラインのAnnexとして付け加えられるであろう。これらの手法の使用を支持するデータの提出が奨励される。
4 参考文献
1) ICH Harmonized Tripartite Guideline (M3)“Timing of Non―clinical Safety Studies for the Conduct of Human Clinical Trials for Pharmaceuticals”(1997)
2) ICH Harmonized Tripartite Guideline (S6)“Preclinical Safety Evaluation of Biotechnology―derived Pharmaceuticals”(1997)
3) Mattsson,J.L.,Spencer,P.J. and Albee,R.R.: Aperformance standard for clinical and Functional Observational Battery examinations of rats. J.Am.Coll.Toxicol.15,239(1996).
4) Irwin,S.: Comprehensive observational assessment: la.A systematic,quantitative procedure for assessing the behavioural and physiologic state of the mouse. Psychopharmacologia(Berl.)13,222―257(1968).
Haggerty,G.C.: Strategies for and experience with neurotoxicity testing of new pharmaceuticals. J.Am.Coll.Toxicol.10:677―687(1991).