アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○医薬品のがん原性試験に関するガイドラインについて

(平成一一年一一月一日)

(医薬審第一六〇七号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知)

医薬品の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき毒性に関する資料については、平成元年九月一一日薬審一第二四号「医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な毒性試験のガイドラインについて」別添「医薬品毒性試験法ガイドライン」により取り扱ってきたところであり、これに加え、がん原性試験については、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)における合意に基づいたガイダンスを公表してきたところである。

今般、これらICHガイダンスを踏まえて「医薬品毒性試験法ガイドライン」のがん原性試験に関する内容を見直し、平成一一年四月八日医薬発第四八一号医薬安全局長通知「医薬品の承認申請について」記の第二の三に規定する試験の指針として、新たに「がん原性試験ガイドライン」を別添のとおり定めたので、左記事項を御了知の上、貴管下医薬品製造(輸入販売)業者に対する周知方よろしく願いたい。

一 ガイドラインの要点

これまでのICHでの検討の結果、「医薬品毒性試験法ガイドライン」のがん原性試験に関する内容(以下「旧ガイドライン」という。)には規定されていない以下の事項に関するガイダンスが新たに追加されている。

(一) 「医薬品におけるがん原性試験の必要性に関するガイダンス」(平成九年四月一四日薬審第三一五号)

(二) 「医薬品のがん原性試験のための用量選択のガイダンス」(平成八年八月六日薬審第五四四号)、「医薬品のがん原性試験のための用量選択」補遺(平成一〇年七月九日医薬審第五五一号)

(三) 「医薬品のがん原性を検出するための試験に関するガイダンス」(平成一〇年七月九日医薬審第五四八号)

本ガイドラインは、旧ガイドラインに右記のガイダンスを各者間の整合性を考慮しながら組み入れたものであり、旧ガイドラインから以下の点が大きく変更されている。

(a) がん原性試験の必要性に関するガイダンス

以下のような場合に、がん原性試験が必要となる:①遺伝毒性試験の成績からがん原性が懸念される場合、②製品レベルの暴露によりヒトにがん原性を引き起こすおそれが前もって示されている場合、③構造活性相関から遺伝毒性又はがん原性が示唆される場合、④反復投与毒性試験において前腫瘍性変化等がみられる場合、⑤親化合物又は代謝物が長期間組織に停滞し局所の組織変化あるいは病的変化を引き起こす場合。

また、臨床での投薬期間が六カ月以上継続して用いられる医薬品や間欠的な方法でも繰り返し六カ月以上にわたって適用される医薬品についてはがん原性試験が必要である。

(b) がん原性試験のための用量選択のガイダンス

がん原性試験における高用量選択の基準として、①毒性学的指標(最大耐量)、②薬物動態学的指標(二五倍のAUC比)、③薬力学的作用、④吸収の飽和する量、⑤投与可能最大量を考慮すべきであり、高用量選択はこれらのいずれかに該当すべきである。薬力学的、薬物動態学的又は毒性学的指標を用いる場合にはその科学的根拠を明確にすべきである。

限界量については、その医薬品に遺伝毒性がなく、ヒトへの最大臨床用量が五〇〇mg/日を超えず、かつ、げっ歯類における暴露量がヒトの暴露量の一〇倍を満足する場合には、一五〇〇mg/kg/日を限界量としてよい。臨床用量が五〇〇mg/日を超えた場合には、高用量は投与可能最大量まで増加されるべきである。

(c) がん原性を検出するための試験に関するガイダンス

がん原性評価の必要な医薬品において通常実施されている従来の二種のげっ歯類による長期がん原性試験の代わりに、一種の長期がん原性試験に加えて、新たな短期・中期in vivoげっ歯類試験系(遺伝子改変動物を用いた短期がん原性試験、イニシエーション・プロモーションモデル、新生児動物モデル)をもう一つ実施することにより発がん潜在能を評価することが基本的な骨子となっている。なお、従来の二種のげっ歯類を用いた長期がん原性試験の実施も引き続き容認される。

一種の長期がん原性試験においては、動物種の選択が非常に重要であり、ヒトの代謝と類似した動物種を用いてがん原性試験を行うよう努力すべきである。動物種選択において他に明確な根拠がない場合は、通常ラットを用いる場合が多い。また、短期・中期 in vivo げっ歯類試験においては、用いたモデルについての科学的正当性を明確にすべきである。

がん原性試験において投与により腫瘍発生が有意に増加した場合等には、その発癌メカニズムを明確にするための追加実験を実施するなど、ヒトでのリスクアセスメントに有用な情報を得るべきである。

ヒトに対するがん原性評価の向上のため、「科学的根拠の重要度(weight of evidence)」に基づく評価法を採用すべきである。

二 今後の取扱い

平成一二年四月一日以降に申請される医薬品に添付されるがん原性に関する資料は、本ガイドラインに基づいたものであること。ただし、それ以前に開始されている試験は、旧ガイドラインに基づくものであっても差し支えない。

三 通知の改正

平成元年九月一一日薬審一第二四号「医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な毒性試験のガイドラインについて」別添「医薬品毒性試験法ガイドライン」の[5]がん原性試験を削る。

がん原性試験ガイドライン

目次

一 本ガイドラインの目的

二 がん原性試験の実施が必要な医薬品

二、一 臨床使用期間

二、二 がん原性が懸念される場合

二、三 遺伝毒性

二、四 用法・用途および適用患者集団

二、五 全身曝露

二、六 内因性ペプチドおよびタンパク製剤あるいはそのアナログ

三 がん原性を検索・評価する方法

三、一 げっ歯類を用いた長期がん原性試験

三、一、一 動物種の選択

三、一、二 動物数

三、一、三 動物への曝露経路

三、一、四 用量段階

三、一、五 試験方法

三、一、六 用量設定

三、二 がん原性検出のためのin vivo 追加試験

三、二、一 in vivo 追加試験の種類

三、二、二 短期・中期 in vivo げっ歯類試験系の選択上考慮すべき点

三、三 メカニズム研究

三、三、一 細胞レベルの変化

三、三、二 生化学的測定

三、三、三 追加の遺伝毒性試験の必要性

三、三、四 試験計画の工夫

四 がん原性の評価

一 本ガイドラインの目的

本ガイドラインの目的は、がん原性試験に必要以上の動物が使用されないよう、試験が必要とされる条件を規定すること、およびがん原性に関する行政評価を世界的に統一させることにある。これらの試験は、その時点の科学的水準を反映する方法で実施されることが望ましい。

従来、三極(日本、欧州、米国)の規制当局は、医薬品のがん原性を評価するために二種のげっ歯類(通常、ラットとマウス)を用いるがん原性試験を実施することを要求してきた。しかし、がん原性試験は費用がかかりすぎることや、使用される動物数が多いことから、ICHにおいて、ヒトへの安全性を損なうことなくがん原性試験に用いるげっ歯類を二種から一種にすることが検討された(注一)。

化学物質(医薬品を含む)のヒトにおけるがん原性を評価するために実施されるげっ歯類を用いる長期がん原性試験は、現在、批判され、改善を求められている。一九七〇年代の初めから、多くの研究によって、多種多様の実験的手法でげっ歯類に腫瘍を発生させることが可能であることが示されてきた。現在、それらの腫瘍発生のいくつかは、ヒトへのリスクアセスメントにおいて、ほとんど(あるいは全く)関係のないことが示されている。本ガイドラインでは、がん原性評価の必要な医薬品において従来実施されてきた二種のげっ歯類を用いる長期がん原性試験を実施せずに、がん原性を評価する実験的方法を概説した。

医薬品の用法・用途を考慮すると、長期がん原性試験におけるヒトへの外挿性のない陽性結果は、規制当局、製薬企業および社会全般のいずれもが苦慮しているところである。長期がん原性試験に用いる動物種を二種から一種にすることは、ヒトに対するがん原性を検索することができる新たな試験を実施する機会を与えることになろう。一つの長期がん原性試験と他の適切な実験的研究から得られたデータを総合的に評価した上で科学的に判断する「科学的根拠の重要度(weight of evidence)」に基づく評価法は、ヒトに対するがん原性評価を向上させるものである。

二 がん原性試験の実施が必要な医薬品

がん原性試験の必要性は、基本的には、臨床における最長の投薬期間ならびにがん原性に関する懸念の有無に基づいて考慮される。その他に、適用患者集団、がん原性に関する事前調査結果、患者における全身曝露の程度、内因性物質との類似(相異)点、試験計画の妥当性、臨床試験との関連における実施時期なども考慮する必要がある(注二)。

二、一 臨床使用期間

臨床での使用が少なくとも六カ月以上継続されるような医薬品においてはがん原性試験が実施されるべきである(注三)。

ある種の医薬品では六カ月を超えて連続的に使用されなくても、期間を置いて繰り返し用いられることがある。このような医薬品が頻回使用される場合、特に断続的に使用される場合には、臨床使用期間がどのくらいであればがん原性を評価すべきかを、科学的に判断することは困難なことが多い。慢性あるいは再発性の疾患の治療において、期間を置いて頻回使用される医薬品については、一般にがん原性試験が必要である。そのような病態の例として、アレルギー性鼻炎、うつ病、不安神経症などがある。また、曝露が長期間に及ぶようなある種のデリバリーシステムなどではがん原性試験が必要となる場合がある。あまり頻回使用されない医薬品や適用が短時間に限られる医薬品(例えば麻酔薬や放射性造影剤など)は、がん原性が懸念されなければがん原性試験を必要としない。

二、二 がん原性が懸念される場合

がん原性が懸念される医薬品には、がん原性試験の実施が推奨される。ほとんどすべての医薬品において、がん原性の懸念の有無はがん原性試験を実施する最も重要な根拠となることから、これらの事例を規定する基準については非常に注意深く考慮されるべきである。次のような要因を考慮すべきである。

(一) 同種同効の医薬品にヒトにも関連すると思われるがん原性が知られている

(二) がん原性の懸念が示唆されるような構造活性相関がある

(三) 反復投与毒性試験において前がん病変がみられる

(四) 未変化体あるいは代謝物が長期間組織に停滞し、局所的な組織の反応やその他の病態生理学的反応を引き起こしている

二、三 遺伝毒性

遺伝毒性が明らかな物質は、他のデータがなければ、動物種を越えたがん原性物質であることが推定され、ヒトに対する危険性があるものと見なされる。そのような医薬品については、長期がん原性試験を実施する必要はない。しかし、その医薬品がヒトに長期間投与されるものであれば、初期の腫瘍性変化を見つけるために慢性毒性試験(一年までの)が必要である。

医薬品の遺伝毒性の評価では、種々の所見を全体的に考慮し、in vitro および in vivo の両試験の本質的な意味と限界を認識する必要がある。in vitro と in vivo の試験の組み合わせは、遺伝毒性を示す化合物が偽陰性となる危険性を減少させるようにデザインされている。あるひとつの遺伝毒性で陽性になったとしても、必ずしもその化合物がヒトに対して遺伝毒性を持つことを意味するものではない5。

二、四 用法・用途および適用患者集団

がん原性試験が必要な場合、通常、承認申請までに終了する必要がある。なお、大規模な臨床試験を実施するような場合においては、患者集団に特に発がんの懸念がなければ、がん原性試験を終了している必要はない。

ある種の難治性疾患治療薬の場合、がん原性試験を承認申請前に実施する必要はない。むしろ、がん原性試験は承認後に実施すべきである。これは、生命を脅かすような疾患、あるいは重度の消耗性疾患に用いられる医薬品で、良い代替治療法がないような場合、その医薬品の早期入手を促進することになる。

対象の患者集団で長期の延命が望めないような場合(二~三年以内)には、がん原性試験は要求されない。例えば、進行がんの治療を目的とした抗悪性腫瘍剤などでは、通常、がん原性試験を必要としない。抗悪性腫瘍剤が広く著効を示し、延命効果が著しい場合は、二次発がんの懸念がある。そのような医薬品が、腫瘍摘出後の患者に対し補助療法として用いられたり、がん以外の適用に拡大される場合には、がん原性試験が通常必要となる。

二、五 全身曝露

局所(例えば皮膚や眼)に適用される医薬品においても、がん原性試験が必要な場合がある。ヒトに局所適用され、全身曝露が少ない医薬品では、内部の器官・組織に対するがん原性を評価するための経口投与による試験は必要ない。光がん原性が想定される場合は、経皮投与によるがん原性試験(一般にマウス)が必要な場合もある。眼に適用される医薬品では、がん原性の懸念がない場合や、全身曝露がほとんどない場合には、がん原性試験は必要ではない。

塩、酸、あるいは塩基のみが異なる同一の医薬品に関して、既にがん原性試験が実施されている場合には、これらが薬物動態学的、薬力学的、あるいは毒性学的に有意な差がないということを明らかにすべきである。曝露状態の変化やそれに伴う毒性の変化がみられる場合には、がん原性試験の必要性を判断するために、橋渡しとなる試験の追加が必要となる場合もある。

また、エステルや複合誘導体の場合においても、がん原性試験の必要性を評価するために同様なデータが有用な場合もあるが、このことはケースバイケースで考慮されるべきである。

二、六 内因性ペプチドおよびタンパク製剤あるいはそのアナログ化学的合成のほか、動物やヒト材料からの抽出・精製あるいは遺伝子組換え技術など遺伝子工学技術で作られる内因性ペプチドあるいはタンパク質およびそのアナログについては、特別の配慮が必要となることがある9。

内因性物質を補充療法(すなわち生理的レベル)として適用する場合、特に既に同様の医薬品(例えば、動物インシュリン、下垂体由来の成長ホルモン、カルシトニンなど)で臨床経験があるような場合には、がん原性試験は一般に必要ではない。

上記以外のバイオテクノロジー応用医薬品では、げっ歯類を用いた長期がん原性試験は必ずしも必要ではないが、治療期間、臨床適用、あるいは患者集団によっては考慮すべきである(反復投与の結果が意味を持たなくなるほどには中和抗体が産生されないことが条件となる)。がん原性試験は次のような状況の場合には必要となるであろう。

(一) 天然の生理活性物質の生物学的作用と著しく異なる医薬品

(二) 天然の生理活性物質と比較して明らかな構造変化が起こるような修飾を施した医薬品

(三) 生理的に存在する局所または全身濃度をはるかに超える濃度(すなわち薬理学的レベル)まで適用される医薬品

三 がん原性を検索・評価する方法

医薬品のがん原性の検索方法は、遺伝毒性 5、6、患者集団、臨床用量1、動物とヒトにおける薬力学(選択性、用量反応性)3および反復投与毒性試験から得られる知見を考慮し検討される(注四)。さらに、動物(非げっ歯類を含む)を用いた反復投与毒性試験において、被験物質に、ヒトへのリスク因子として考えられる免疫抑制作用、ホルモン活性などが示唆された場合、このような情報はがん原性評価のための試験を計画する際に考慮すべきである。

これらの情報を基に試験方法を選択する際には、柔軟性と判断力が必要である。発がん過程は複雑であることから、全ての医薬品について、ヒトに対するがん原性を検出できる単一の試験方法はない。

基本的な考え方は一種のげっ歯類を用いる長期がん原性試験に加えて、新たに短・中期 in vivo げっ歯類試験系の一つを実施することが骨子となる。この新たな試験系は長期がん原性試験を補足し、長期がん原性試験からは得ることが困難な新たな情報をもたらすものである。

三、一 げっ歯類を用いた長期がん原性試験

三、一、一 動物種の選択

種および系統の選択にあたっては、感染性疾患に対する抵抗性、寿命、自然発生腫瘍の発生頻度、既知がん原性物質に対する感受性等を考慮する。特に動物種については、次に示すような情報を考慮した上で、適切なものとすべきである。

(一) 薬理作用

(二) 反復投与毒性

(三) 代謝3、7

(四) トキシコキネティクス 3、 7、8

(五) 投与経路(例えば通常あまり用いられない経路、すなわち経皮、吸入など)

もしも一種を選ぶのに明らかな根拠がなければ、長期がん原性試験においてはラットを選択することが推奨される(注五)。

なお、同一週齢で、順調に発育した六週齢までの動物を用いることが望ましい。

三、一、二 動物数

雌雄各々について、一群五〇匹以上とする。各群への動物の割り付けには、体重層別等による適切な無作為抽出法を用いる。

三、一、三 動物への曝露経路

動物への曝露経路は、可能であれば臨床適用経路と同じであることが望ましい3(注六)。異なった投与経路においても、臨床適用経路の場合と類似の代謝および全身曝露が示されていれば、その経路によるがん原性試験を実施するのみでよいが、その際臨床適用経路に関連する器官・組織(例えば、吸入剤に対する肺)が被験物質に適切に曝露されていることが重要である。適切な曝露の証拠は薬物動態学的データから得られることがある8。

三、一、四 用量段階

雌雄各々について、三段階以上の試験群を設定するとともに、別に対照群を置く。

三、一、五 試験方法

(一) 対照群

① 陰性対照を置く。

② 陰性対照は、被験物質投与にあたり各種溶媒、乳化剤等を必要とする場合には、それのみを与える群とする。また、その他に無処置対照群を置くことが望ましい。

(二) 投与期間

ラットでは二四カ月以上三〇カ月以内、マウスおよびハムスターでは一八カ月以上二四カ月以内とし、投与は原則として週七日とする(注七、八)。

(三) 検査の詳細

① 各群の全例について、一般状態を毎日観察し、体重を投与開始後三カ月間は週一回以上、その後は四週に一回以上測定する。

② 試験期間中の死亡例については、速やかに剖検し、器官・組織の肉眼的観察および病理組織学的検査を行う。(注九、一〇、一一)。

③ 試験期間中に死期の迫った例については、速やかに隔離又は屠殺し、器官・組織の肉眼的観察および病理組織学的検査を行う(注八、九、一〇、一一)。なお、屠殺時、必要に応じて血液を採取し、赤血球数および白血球数を測定するとともに、塗抹標本を作製し、貧血、リンパ節・肝臓・脾臓の腫大等血液疾患を予想させる例については塗抹標本を検索する。

④ 試験終了時の生存例については、各群の全例について剖検し、器官・組織の肉眼的観察を行う(注九)。病理組織学的検査は、最高用量群および対照群の全例について行う(注一〇、一一)。ただし、最高用量群と対照群との間で腫瘍発生率に差のある器官・組織が認められた場合には、他の試験群の全例についても当該器官・組織の病理組織学的検査を行う(注一二)。なお、屠殺時、必要に応じて血液を採取し、末梢血の赤血球数および白血球数を測定するとともに、塗抹標本を作製し、貧血、リンパ節・肝臓・脾臓の腫大等血液疾患を予想させる例については塗抹標本を検索する。

三、一、六 用量設定

(一) はじめに

慣習的に、化学物質のがん原性試験においては、高用量選択の標準的な方法として最大耐量(Maximum Tolerated Dose; MTD)が用いられてきた(注一三、一四)。MTDは通常三カ月毒性試験から得られるデータを基にして設定される。

げっ歯類に対する毒性が弱い医薬品の場合、がん原性試験にMTDを用いると、極めて高用量を投与することになり、しばしば臨床用量からかけ離れた用量となってしまうことがある。このような用量設定は、遺伝毒性物質や放射線曝露のように発がん用量の閾値を設定できない場合には有用であるが、非遺伝毒性物質の場合には必ずしも適切な方法とは言えない(注一五)。非遺伝毒性物質では閾値が想定され、正常の生理状態を変えたために発がんが引き起こされることもあることから、高用量の作用を低用量に直線的に外挿することには疑問が持たれていた。すなわち、臨床適用時の曝露をはるかに上回るげっ歯類の曝露条件は、動物の生理機能への影響が著しく、得られる所見は臨床適用時における事象を反映していない可能性があり、ヒトでのリスク評価に不適切かも知れないと考えられるからである。

理想的には、遺伝毒性のない医薬品のがん原性試験における用量設定には、次のような曝露条件が必要である。

① 臨床用量における曝露量との間に十分な安全域を与えるものであること

② 明らかな慢性的な生理機能の異常がなく、また、生存率に影響がないこと

③ 被験物質の性質や動物の適切性を広く考慮に入れた動物実験や臨床に関する広範なデータから導かれること

④ 臨床適用に則したデータの解釈ができること

医薬品では、がん原性試験の開始前に、薬理、薬物動態、あるいはヒトでの代謝動態などから多くの知見が得られる。さらに、通常は、患者集団、予想される用法・用途、曝露量、ヒトでは認容されない毒性や副作用に関する情報も利用できる。医薬品の化学的あるいは薬理学的な性質の多様性や、遺伝毒性に関連しない発がんメカニズムの多様性により、用量設定においては柔軟性のある対応が求められる。具体的には、用量設定においては、下記の指標により用量を設定することが望ましい。

① 毒性学的指標

② 薬物動態学的指標

③ 吸収の飽和する量

④ 薬力学的指標

⑤ 投与可能最大量

⑥ その他の指標

あらゆる適切な動物実験や臨床から得られたデータを取り入れて考慮することは、がん原性試験の高用量設定に際し、最も適切な指標を決定する上で重要なことである。がん原性試験の用量設定においては、高用量選択の直接的な根拠となる指標が何であるかに係わらず、適切な薬物動態学的、薬力学的、および毒性学的なデータも常に考慮すべきである(注一六)。

(二) 用量設定試験の実施にあたっての一般的事項

上述のいずれの指標を用いる場合も、適切な用量設定試験を実施する必要がある。がん原性試験での用量ならびに種/系統の選択に際しては、あらゆる関連情報が考慮されるべきである。これらの情報の中には、臨床での用法・用途、曝露様式および代謝がある。容認されている複数の用量設定の基準を利用することにより、医薬品のがん原性試験の最適な計画の立案に柔軟性を持たせることができる。

最高用量を選択するための用量設定試験を計画する場合には、最終的にいずれの指標を用いるにせよ、下記の事項を考慮すべきである(注一七)。

① 現実には、がん原性試験は自然発生腫瘍の発生率に関する情報が明らかである限られた系統のラットやマウスが用いられる。理想的には、ヒトとなるべく類似した代謝様式を示すげっ歯類の種および系統が望ましい(注一八)。

② 用量設定試験では、がん原性試験に供される種および系統の雌雄両性を用いるべきである。

③ 用量設定は、通常、がん原性試験で用いられる投与経路と投与方法による三カ月毒性試験で行う。

④ 投与計画と投与方法は、臨床適用、曝露様式、薬物動態および実際面を考慮して選択する。

⑤ 理想的には、毒性プロフィールと投与限界を規定する毒性を明らかにすべきである。また、一般毒性、前がん病変ないしは組織特異的な増殖性作用や内分泌の恒常性(ホメオスターシス)に関する障害の有無を考慮すべきである。

⑥ 試験を適切に解釈するために、経時的な代謝プロフィールの変化や代謝酵素活性の変化(誘導または阻害)を明らかにすべきである。

(三) 高用量選択における毒性学的指標

次に示すMTD(注一九)の定義は、各国の行政機関が以前より公表しているものと矛盾しないものと考えられる(注一四)。高用量すなわちMTDとは、がん原性試験において軽度な毒性作用が現れることの予想される用量である。そのような作用は、三カ月用量設定試験においてみられた軽度な毒性作用から予知できる。その際、動物の正常な寿命に影響を与えたり、試験の解釈を損なうような生理機能の変化について考慮すべきである。すなわち、対照群と比較して体重増加抑制が一〇%以上でないこと、標的臓器毒性がみられること、臨床病理学的パラメーターに有意の変動がみられることなどが挙げられる。

(四) 高用量選択における薬物動態学的指標

遺伝毒性のない医薬品(注一五)がヒトとげっ歯類でよく似た代謝様式を有し、かつげっ歯類での臓器毒性が低い場合(げっ歯類では高用量まで耐薬能がある)には、臨床最大一日量における血中濃度時間曲線下面積(AUC)の高倍数(a large multiple of the human AUC)に達する全身曝露量が、がん原性試験における用量設定に適した指標と考えられる。がん原性試験の適切性を確保するためには、動物での全身曝露のレベルが、ヒトの場合に比べて十分に高くなければならない。

動物種が異なると代謝および排泄パターンの違いから、投与した薬物量と組織中の薬物濃度が対応しない場合がある。全身曝露における比較は、投与用量よりも未変化体およびその代謝物の血中濃度の方が、より良く評価できる。血漿中の非結合型薬物濃度は組織内の非結合型薬物濃度の最も適切な間接的指標と考えられる。AUCは化合物の血漿中濃度とin vivoでの滞留時間が考慮されているので、最も包括的な薬物動態学的な指標と考えられる。

ヒトにおける発がんリスク評価の際に、動物とヒトの血漿中薬物濃度を比較することの有用性は、今のところ、科学的な根拠として確認されていない。しかし、MTDで実施されたがん原性試験のデータベースの解析によれば、現時点では、がん原性試験での高用量選択には、げっ歯類における未変化体あるいは代謝物の血漿AUCがヒトの二五倍となるよう選択することが実際的であると考えられる(注二〇)。

高用量選択に際して、特に動物とヒトでのAUCを比較する場合、次のような基準が適用できる。

① げっ歯類の薬物動態データは、がん原性試験に使用する系統、同じ投与経路および用量範囲を用いて得られたものであること(注二一、二二、二三)。

② 薬物動態データは、用量設定試験において薬物動態学的パラメータの経時的変化が発生する可能性を考慮した十分な投与期間の試験から得られたものであること。

③ げっ歯類とヒトとの間で代謝の類似性に関する情報があること(注二四)。

④ 曝露量を評価する上で、AUCの比較を、未変化体のみ、未変化体と代謝物の両方、あるいは代謝物のみのいずれを基にするのかについては科学的に判断して決定し、その根拠を明示すること。

⑤ 相対的な曝露量を推定するとき、タンパク結合には種差のあることを考慮すること(注二五)。

⑥ ヒトの薬物動態データは、臨床最大一日量を含む試験から得られたものであること(注二六)。

(五) 高用量選択における吸収の飽和する量

被験物質あるいはその代謝物の全身性利用率(バイオアベイラビリティ)から求められた吸収の飽和量に基づいて高用量を選択することも容認される。

(六) 高用量選択における薬力学的指標

多くの医薬品において、その有用性と安全性は、受容体の薬力学的選択性に依存している。高用量選択のための薬力学的指標は、化合物に極めて特異的であるので、科学的正当性に基づいて個々の試験計画において検討すべきである。選択された高用量は、投与した動物に薬力学的投与限界量を投与した時と同等の薬力学的な反応を引き起こすものでなければならない。しかし、試験の妥当性を損なうような生理機能あるいは恒常性(ホメオスターシス)の障害を惹起してはならない。そのような例として、血圧低下や血液凝固阻害(自然発生の出血のリスクがある)などがある。

(七) 限界量

その医薬品に遺伝毒性がなく、かつ、最大臨床用量が五〇〇mg/man/日を超えない場合、がん原性試験の高用量は、一五〇〇mg/kg/日を必ずしも超える必要はない(注二七、二八)。

がん原性試験の用量設定と結果の解釈を支持するため、医薬品およびその代謝物に関するげっ歯類とヒトでの曝露量を比較する情報が示されなければならない。その情報、一五〇〇mg/kg/日の動物での曝露量がヒトにおける曝露量に比較して十分高いことが示されなければ、一五〇〇mg/kg/日の限界量が適用されない場合もある。げっ歯類における一五〇〇mg/kg/日の全身曝露量は、臨床用量における曝露量より少なくとも一〇倍以上高い必要がある(十分な曝露の差が得られない場合は、げっ歯類での曝露量が増加するよう工夫するか、あるいは、使用する動物モデルを再考すべきである)。臨床用量が五〇〇mg/man/日を超える場合は、高用量は次に示す投与可能最大量まで増加させることになろう。

(八) 投与可能最大量

現在、混餌投与による投与可能最大量は飼料中五%と考えられている。

混餌投与以外の投与経路の方が適切な場合、高用量は実験手技上の問題あるいは局所毒性などにより制約されるものと思われる。

(九) 高用量選択におけるその他の指標

がん原性試験の高用量選択において、本ガイドラインで明示されていない指標を用いることが良い場合もある。個々の試験計画において、その他の指標を用いる場合には、科学的な根拠に基づくものでなければならない。それら試験計画は、各々の正当性に基づいて評価される。

(一〇) がん原性試験における中および低用量の選択

高用量選択の指標に関わらず、がん原性試験の中および低用量は、その試験データをヒトへ外挿して評価する際に有用な情報が得られるよう選択する必要がある。その用量は、げっ歯類およびヒトでの薬物動態、薬力学的および毒性データを総合的に判断して選択し、これら用量を選択した根拠を明らかにすべきである。がん原性試験の中および低用量の選択においては、全ての条件を満足させる必要はないが次の点を考慮すべきである。

① 薬物動態の直線性と代謝経路の飽和

② 臨床用量とヒトにおける曝露量

③ げっ歯類での薬力学的反応

④ げっ歯類の正常な生理状態の変化

⑤ 作用メカニズムの情報および作用における閾値の存在の可能性

⑥ 短期試験で観察される毒性の進行が予測困難であること

三、二 がん原性検出のためのin vivo追加試験

三、二、一 in vivo追加試験の種類

追加試験としては、以下の(一)ないし(二)が挙げられる(注二九参照)。

(一) 短期・中期in vivoげっ歯類試験系

腫瘍発生を指標にしたin vivo試験系に注目すべきである。例として、げっ歯類の二段階発がんモデル(イニシエーション・プロモーションモデル)やトランスジェニックげっ歯類ないし新生児げっ歯類を用いた発がんモデルが挙げられる(注三〇)。

(二) もう一種のげっ歯類を用いる長期がん原性試験を実施することも引き続き容認される。

三、二、二 短期・中期in vivoげっ歯類試験系の選択上考慮すべき点

選択した試験系は、科学的根拠の重要度(weight of evidence)を考慮したがん原性に関する総合評価の有用な情報となるため、その選択には十分な配慮が必要である。試験法の選択理由は記録として残す必要がある。また、その選択は、その時点で利用できる被験物質についての薬力学やヒトとの曝露の違い等の情報あるいはその他の関連する情報に基づくべきである。この根拠には、選択された試験法の長所および短所についての科学的な考察も含む必要がある(注三一)。

三、三 メカニズム研究

メカニズム研究はがん原性試験において腫瘍発生を認めた場合、その説明としてしばしば有用であり、ヒトへのリスク評価に関する情報となる。メカニズム研究の必要性やその計画は、医薬品に特有な性質やそれぞれのがん原性試験の結果によって異なる。用量相関性やがん原性試験の実施条件との関連性は、これらのメカニズム研究において評価すべきである。以下にその例をあげる。

三、三、一 細胞レベルの変化

発がんに関連する組織について、細胞レベルの変化を形態学的、組織化学的あるいは機能的な指標を用いて検査することができる。時には、アポトーシス、細胞増殖活性、肝の細胞変異巣、細胞間連絡(intercellular communication)の変化などについての用量相関性に注目すべき場合もある。

三、三、二 生化学的測定

発がんについて想定される機序にもよるが、検討すべき検査指標としては以下のものがあげられる。

(一) 血漿中のホルモン量(例えばT3/T4、TSH、プロラクチン)

(二) 成長因子

(三) α 2u―グロブリンのようなタンパクへの結合

(四) 組織酵素活性等

例えば、ホルモン不均衡の仮説に対しては、ホルモン不均衡を少なくとも部分的に補う試験を実施することにより、その仮説を検証することができる。

三、三、三 追加の遺伝毒性試験の必要性5、6

標準的な遺伝毒性試験の組合わせにおいて陰性であった物質ががん原性試験で陽性になり、非遺伝毒性的な発がんメカニズムの実証が不十分な場合には、適切な遺伝毒性試験の追加が必要なこともある。追加試験には、in vitro試験の代謝活性化の条件を変えたり、腫瘍発生の標的臓器における遺伝毒性障害を計測するin vivo試験等が含まれる(例えば、DNA障害や修復試験、32Pポストラベリング法、導入遺伝子における変異の誘発等)。

三、三、四 試験計画の工夫

被験物質の腫瘍発現機序を明らかにするためには、試験計画の工夫が推奨される場合もある。例えば、間欠的投与の影響や休薬後の細胞変化の回復性を探索するための試験群の追加が含まれる。

四 がん原性の評価

げっ歯類における医薬品のがん原性は、腫瘍の発生頻度や発生時期、ヒトとげっ歯類における薬物動態の比較、およびげっ歯類での発がんがヒトと関連するか否かについての情報が得られるような補助的研究あるいはメカニズム研究を基に評価すべきである。

上記の試験から得られた成績は、その試験系の科学的見地からみた有用度を考慮し、総合的な科学的根拠の重要度(weight of evidence)に基づく評価の一部として考えるべきである。

注一

ラットやマウスを用いるがん原性試験のそれぞれがどのように評価に寄与していたか、またラットあるいはマウス一種のみを用いることがヒトのがん原性リスクアセスメントに必要な情報を欠くことにならないかが、六団体・規制当局の調査結果に基づいて検討された。これらの調査はInternational Agency for ResearchonCancer(IARC)、theU.S.FoodandDrugAdministration(FDA)、theU.S.Physicians’DeskReference、日本製薬工業協会、theEUEuropeanMedicinesEvaluationAgency(CommitteeforProprietaryMedicinalProducts;CPMP)およびUK Centre for Medicines Researchにより行われた。

注二

がん原性試験の目的は動物においてがん原性の有無を明らかにし、ヒトに対するリスクを評価することである。様々な実験的研究、毒性試験、あるいはヒトのデータなどからヒトにおけるがん原性が懸念される場合には、がん原性試験が必要となろう。げっ歯類を用いるがん原性試験は、患者の寿命の相当な期間にわたって規則的に投薬されることが予想される医薬品について必要とされてきた。これらの試験の計画と結果の解釈は、新しい遺伝毒性試験法や、全身曝露を評価する技術が進歩する以前から行われていた。また、これらの試験は、非遺伝毒性物質による腫瘍発生について現在の理解がなされる以前から実施されていた。遺伝毒性試験やトキシコキネティクス、メカニズム試験などの成果は、現在では、前臨床での安全性評価において日常的に適用されている。これら追補的データはがん原性試験を実施するか否かを判断するためだけでなく、試験成績をヒトでの安全性に関連づけて解釈するためにも重要である。がん原性試験は多大な時間と資源を必要とするため、ヒトにおける曝露から、がん原性を評価するために動物を用いる生涯試験からの情報が必要となった場合にのみ実施されるべきである。

日本(医薬品毒性試験法ガイドライン)では、臨床での使用期間が連続して六カ月あるいはそれ以上にわたる場合にはがん原性試験が要求されてきた。また、がん原性が懸念される場合は、使用期間が六カ月未満であってもがん原性試験が必要な場合もあった。米国では、ほとんどの医薬品についてヒトで広範囲に用いられる前に動物でのがん原性が試験されている。米国FDAによれば、通常三カ月あるいはそれ以上にわたって用いられる医薬品はがん原性試験が必要である。EUでは、医療用製品管理規則(the Rules Governing Medicinal Products in the European Committee)でがん原性試験が要求される場合を規定している。そのような場合とは、長期にわたって投薬される場合、すなわち連続して最低限六カ月、あるいは間欠的であっても頻度が高く総曝露量が類似していることなどである。

注三

適用期間が三カ月とされる医薬品の多くは、六カ月にわたって用いられることが多いと思われる。ICHでの調査では、三カ月だけ用いられるような医薬品を見いだすことはできなかった。

注四

細胞形質転換試験(Cell Transformation Assay)のようなin vitro試験のデータは、化合物のスクリーニングにおいて有用となり得る。

注五

長期がん原性試験に最適な動物種を選択する際の一般的な考え方

何らかの明確な根拠がない限り、通常の場合、長期がん原性試験で使用する動物種はラットとするいくつかの一般的な考え方がある。

(一) 医薬品のデータベース調査からの情報

ICHにおける日米欧のがん原性試験に関する六種の調査では、遺伝毒性、腫瘍発生率、動物の系統、投与経路および投与量、薬理活性または薬効、開発ないしは規制の状況、がん原性試験結果に関連した開発中止の理由等が収集された。各調査間では多くの重複例がみられたが、それは結論を導く障害にはならなかった。

解析による主な総合的結論は以下の通りである。

① 医薬品に関しては、マウスに腫瘍が発生したことを唯一の理由として規制の対象になったと判断された事例はほとんどないが、マウスのデータは科学的根拠の重要度(weight of evidence)を考慮する際、およびげっ歯類二種にがん原性を有する化合物の同定に役立っていた。

② 一種の動物のみに発がんがみられた医薬品のうち、「ラットのみ」の化合物の数は「マウスのみ」の化合物の数の約二倍であり、単純な意味で、ラットはマウスよりも発がん感受性が高いといえる。

③ 文献引用可能な他の調査と同様に、医薬品についての調査においてもげっ歯類の肝腫瘍が高い発生率を示すことが特徴的であった。マウスの肝臓が、非遺伝毒性物質に対して高い感受性を示すことは、多くのシンポジウムやワークショップで取り上げられている。マウスの肝腫瘍は必ずしもヒトの発がんリスクに関連するとは限らず、しばしば誤まった結論を導く可能性のあることが示されている。

(二) メカニズム研究の可能性

げっ歯類における非遺伝毒性物質の発がんには、種、系統および標的臓器についての高度な特異性が明らかで、用量反応関係において閾値が存在することが特徴である。近年のメカニズム研究により、げっ歯類モデルに特異的な反応とヒトにも生じる可能性のある変化を区別できるようになっている。種や組織特異性についての知見が増えることにより、これらの研究がしばしば進展する。例えば、レセプターの関与する発がんが重要であるとの認識が高くなってきている。これらの研究は、ほとんどの場合ラットでなされており、マウスを用いることは稀である。

(三) 代謝動態

代謝的観点からは、ラットおよびマウスのいずれも、がん原性試験に最適な動物種であるとは思われない。しかし、現在、薬物動態と薬力学の関係が注目されてきており、更に薬物代謝に関わるP―四五〇アイソザイムに関する知識も急速に進歩している。これらの研究のほとんどすべてがラットとヒトに限られて実施されている。したがって、少なくとも近い将来、代謝に関与するP―四五〇アイソザイムについての特定の情報が評価において重要である限り、メカニズム研究においてマウスが代謝に関する有用な情報をもたらすことはないであろう。

(四) 実用面

上述の二つの項目に関して、マウスを用いるメカニズム研究が実際的かという問題がある。大きさのみを考えても、同一個体からの一連の採血や顕微的手術(microsurgery)、カテーテルの挿入、あるいは器官重量測定の点でマウスは極めて不利である。採血のためには動物を屠殺しなければならない場合が多く、マウスをメカニズム研究に用いる場合にはより多くの動物が必要になる。

(五) 一種以上の動物による試験

現在使用可能な多くの短期・中期in vivoげっ歯類試験系はマウスを使用する。がん原性を一種以上の動物により検索する場合、そしてこのことが重要かつ適切と考えるならば、長期がん原性試験には、多くの場合、ラットが用いられるであろう。

(六) 例外

例外的に、メカニズム、代謝あるいはその他の背景から、ラットよりもマウスあるいはその他のげっ歯類の方がヒトにおけるリスク評価のためのがん原性試験に適切な場合もあり得る。そのような場合にも、短期・中期in vivoげっ歯類試験系としてマウスを用いることは容認される。

注六

経口投与の場合には、強制投与、飼料あるいは飲料水に混入して自由に摂取させる方法がある。被験物質を飼料又は飲料水に混入して投与する場合には、投与期間中、個別又は群ごとに摂餌量又は飲水量を投与開始後三カ月間は週一回以上、その後は三カ月に一回以上測定し、被験物質摂取量を算出する。なお、試験開始前および試験中に適宜被験物質の純度、安定性および夾雑物を可能な限り定性的又は定量的に分析する。

注七

腫瘍以外の原因による死亡率が、投与開始後ラットでは二四カ月、マウスおよびハムスターでは一八カ月の時点で五〇%以内であることが望ましい。

最低用量群又は対照群の動物の雌雄いずれか一方において累積死亡率が七五%になった場合には、その時点でその性の生存例を屠殺し、試験を終了する。

注八

いずれの群においても、動物の一〇%以上が、共食い又は飼育上の問題で失われないこと。したがって、試験期間中に衰弱動物や死期の迫った動物が見いだされた場合には、隔離又は屠殺解剖等の配慮が必要である。

注九

肉眼的観察は、全部の器官・組織について行う。

注一〇

病理組織学的検査は、次の器官・組織について行う。

皮膚、乳腺、リンパ節、唾液腺、胸骨、椎骨又は大腿骨(骨髄を含む。)、胸腺、気管、肺および気管支、心臓、甲状腺および上皮小体、舌、食道、胃および十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、脾臓、腎臓、副腎、膀胱、精嚢、前立腺、精巣、卵巣、子宮、膣、眼球、脳、下垂体、脊髄、その他肉眼で腫瘍性病変が認められた器官・組織

注一一

腫瘍性病変の記載に際しては、腫瘍発生に至る各種変化(前がん病変)の所見も付け加える必要がある。

注一二

全例について、病理組織学的検査を行うことは評価の助けとなる。

注一三

過去において、ヒトの医薬品におけるがん原性試験の高用量の選択基準は、各国の規制当局間で必ずしも一致していなかった。日本およびEUでは、用量設定において、毒性指標のほか、臨床一日最大量に比べはるかに高い用量〔体重あたりの投与量(mg/kg)で一〇〇倍以上〕が容認されていた。しかし、米国では、伝統的に、MTDによる用量選択のみが容認されていた。一方、投与可能最大量は各国・地域とも容認できる指標として用いられてきた。

注一四

以下に示すのは、最大耐量(MTD)の説明に用いられる毒性に基づく指標と同等の定義と考えられる。

米国(U.S. Interagency Staff Group on Carcinogens)ではMTDを次のように定義していた。「現在、推奨されている高用量は、がん原性試験の投与期間に発がん以外の作用によって動物の正常な寿命が著しく変化することなく、軽度な毒性徴候が現れる十分に高い量であるとされている。この量は、最大耐量(MTD)と呼ばれ、亜急性毒性試験(通常三カ月間)において、主として死亡率、毒性ならびに病理学的な変化に基づいて決定される。MTDでは、試験の解釈を損なうほどの著しい毒性による形態学的変化を生じてはならない。さらに、飼料中の被験物質の濃度は、飼料中の栄養成分が変化して栄養学的不均衡を来すほど、大きくしてはならない。」

「MTDは、当初は、亜急性毒性試験で観察される体重増加抑制、すなわち、一〇%以上の体重増加抑制を起こさない最大の用量に基づいて決定されていた。最近の研究や多くのがん原性試験に対する評価では、より広範囲の生物学的な情報に基づいたMTD選択の改良がなされている。通常は、毒性、病理および病理組織学的変化が明確な指標であるが、体重および器官重量の変化ならびに血液学的、尿、臨床化学的検査値の有意な変化も有用な指標である(Environmental Health Perspectives vol.67、pp.201―281、1986)。」

日本では次のように規定されていた。

「がん原性試験における最高用量は、本試験における対照群に比べ一〇%以内の体重増加の抑制にとどまり、中毒による死亡例がなく、かつ、一般状態又は検査所見に毒性を示唆する著しい変化を伴わない量とする。」(医薬品毒性試験法ガイドライン)

EU(CPMP)では次のように規定していた。

「高用量は軽度な毒性作用、例えば一〇%体重増加抑制や成長障害、あるいは軽度な標的臓器毒性を生ずる量とすべきである。標的臓器毒性は生理学的な機能障害の結果として、そして最終的には病理学的変化として示される。」(Rules Governing Medicinal Products in the European Community VOL.Ⅲ 1987)

注一五

全ての遺伝毒性メカニズムを標準的な試験の組み合わせで検討できるとは限らないが、用量設定の際に薬物動態学的指標を用いる場合には、医薬品の登録申請に際し課せられている標準的な試験の組み合わせで陰性であれば、その医薬品は遺伝毒性を持たないと考える。

注一六

このような柔軟性のある方法を採用する際には、基本的な発がんメカニズムが現時点でまだ解明されていないことを認識しなければならない。さらに、ヒトの発がんリスクを予測するのに、げっ歯類を用いることが現時点では最も良い方法であるが、それには自ずから限界があることを認識すべきである。したがって、被験物質に由来する物質の血漿中濃度を用量選択に用いることは、がん原性試験をより適切に計画するために重要であるが、この分野の進歩に応じて、これからもヒトでのリスクを検出するための最良の方法を検討し続ける必要がある。したがって、本ガイドラインはこのような困難で複雑な分野のガイドラインであることから、新しい知見が得られた際には、規定の一部を改訂することも重要であると認識している。

注一七

用量設定試験に関するその他の留意事項は以下のとおりである。

(一) 動物:同一週齢で、順調に発育した六週齢までの動物を用いることが望ましい。

(二) 動物数:雌雄各々について、一群約一〇匹とする。

(三) 用量段階:雌雄各々について、三段階以上の試験群を設定するとともに、別に対照群を置く。

(四) 投与期間:三カ月が基本となるが、遅延性毒性又は蓄積性効果のある被験物質の場合には、更に長期間の投与を要する場合もある。

(五) 検索方法:各群の全例について、一般状態を毎日観察し、体重を週一回以上測定する。死亡例についてはその都度、生存例については投与終了時に剖検し、器官・組織の肉眼的観察を行う。また、肉眼で変化が認められた器官・組織については、病理組織学的検査を行う。

注一八

このことは、あらゆるげっ歯類について、代謝のプロフィールを調べることを意味しない。がん原性試験に用いられる標準的な系統について調べるべきである。

注一九

ICH一において、日米欧の規制当局は、がん原性試験の高用量選択にMTD以外の他の指標を評価することに合意した。それらの指標は被験物質の薬理学的な性質や毒性学的な特徴に基づくものであるが、MTD以外に毒性指標を使用することに関して科学的な合意は得られていなかった。その後、ICH安全性専門家作業グループではがん原性試験の高用量選択に際し、MTDを毒性に基づいた指標として容認し、継続して使用することに合意した。

注二〇

ICHにおいて、がん原性試験の高用量設定としてヒトにおけるAUCの何倍が妥当かを検討するために、MTDで実施され、ヒトおよびげっ歯類のAUCの比較が可能な薬物動態学的データのある医薬品のがん原性試験について、レトロスペクティブな解析が行われた。

MTDで実施された医薬品のがん原性試験のうち、ラットおよびヒトで適切な薬物動態学的データが得られたものは三五件であり、それらの約一/三は相対的全身曝露比が一あるいはそれ以下で、他の一/三は一から一〇の間であった。

相対的全身曝露比、相対的用量比[ラット:mg/kg、ヒト:mg/kgMaximum Daily Recommended Dose(MRD、臨床最大一日量)]および体表面積に換算した用量比(ラット:mg/m2MTD、ヒト:mg/m2MRD)の相関性を上述のデータベースを用いて検討したところ、相対的全身曝露は、体重当たりよりも体表面積当たりで換算した用量比と良く対応した。さらにFDAデータベースで、一二三の化合物について同様の方法で調べたところ、相対的全身曝露に関する同様の相関性がみられた。

高用量選択における相対的全身曝露比(AUC比)を決定する際には、十分な安全域が確保できること、ヒトに対する既知のあるいは疑いのあるがん原性物質が検出できること、そして妥当な割合の化合物で達成できる数値となるよう考慮された。

ヒトに対するがん原性が既知のあるいは疑いのある化合物を検出するための条件を検討するために、ラットでがん原性が陽性のIARCのクラス一と二Aの医薬品について曝露あるいは用量比を分析した。フェナセチンについては、ラットとヒトに関する十分な薬物動態学的データがあり、相対的全身曝露比が少なくとも一五であれば、ラットを用いるがん原性試験で陽性所見を得られると推定された。ラットを用いたがん原性試験で陽性と評価され、IARCでクラス一と二Aと分類された一四の医薬品のほとんどは、解析に値する薬物動態学的データがなかった。これらの医薬品では、体表面積当たりの用量比を相対的全身曝露比に代用した。解析の結果、げっ歯類における体表面積比当たりの用量比が一〇あるいはそれ以上あれば、これらの医薬品のがん原性を確認できると考えられた。

上記の評価の結果、高用量選択の際に容認できる薬物動態学的な指標として、最小全身曝露比として二五が提案された。この値は、FDAデータベースに収集された化合物の約二五%において達成されており、ヒトに対するがん原性が既知のあるいは疑いのある医薬品(IARCの一、二A)を検出することが可能で、また十分な安全域を示している。高用量がAUC比として二五倍あるいはそれ以上で試験された医薬品は、過去にMTDによるがん原性試験が実施された医薬品のうち七五%以上に当たる。

注二一

げっ歯類のAUCや代謝物のプロフィールは、亜急性毒性試験あるいは用量設定試験の一部として行われる定常状態での薬物動態の検討から明らかにされる。

注二二

げっ歯類のAUC値は、投与経路や被験物質の薬物動態学的な性質にもよるが、通常、少数の動物を用いて求められる。

注二三

げっ歯類およびヒトの血漿中薬物濃度の測定は感度および精度において同等の分析方法で測定されるべきである。

注二四

可能であれば、ヒトおよびげっ歯類でin vivoにおける代謝の特性を明らかにしておくことが望ましい。しかし、in vivoでの適切な代謝データがない場合でも、in vitro代謝データ(例えば、肝スライスや非誘導のミクロソーム標本)が動物種間の代謝の類似性を示す成績となり得ることもある。

注二五

非結合型薬物をin vivoで測定するのが最も良い方法であるが、未変化体ないしは適切な代謝物のin vitroタンパク結合試験(in vivoにおけるげっ歯類とヒトの薬物濃度範囲を含む)は非結合薬物のAUCを推定する上で利用できるであろう。ヒトおよびげっ歯類で、共にタンパク結合が低い場合や、タンパク結合が高くそして薬物の非結合フラクションがヒトよりげっ歯類で大きい場合などは、薬物の総血漿濃度の比較でもよい。タンパク結合が高く、非結合フラクションがげっ歯類よりヒトで大きい場合は、タンパク非結合薬物の濃度で比較すべきである。

注二六

ヒトでの全身曝露データは、健常被験者あるいは患者の薬物動態学的モニタリングにより得られる。曝露量には個体間での差が大きい可能性を考慮すべきである。臨床最大一日量が不明な場合、薬物動態学的データを得るためには、最低限、臨床で期待する薬力学的作用を起こす用量を用いるべきである。

注二七

およそ九〇〇のがん原性試験からなるFDAのがん原性データベースでは、一〇〇〇mg/kg以上の用量を高用量とした試験がおよそ二〇実施されていた。これらの試験のうち、約一〇試験はがん原性陽性であった。それらの七試験では一〇〇〇mg/kg以上でのみ陽性であり、その中の二試験は二動物種において陽性であった(しかし、がん原性を検出するのに両動物種共に一〇〇〇mg/kg以上の用量が必要だったのではなく、一種の動物においてのみ一〇〇〇mg/kg以上の用量を要した)。

いずれか一方の動物種のみで陽性を示したいくつかの医薬品では、一〇〇〇mg/kg以上の用量のみにがん原性がみられた。一〇〇〇mg/kg以上の用量でのみ陽性を示した一つの医薬品では、標準的組合わせの遺伝毒性試験では陰性であったが、それ以外の遺伝毒性試験において陽性結果が得られていた。これらより、限界量を一〇〇〇mg/kgとした場合、遺伝毒性がん原性物質を検出できない可能性があることから、がん原性試験のための限界量は一五〇〇mg/kgとすべきである。

注二八

遺伝毒性のない医薬品が臨床曝露量の二五倍以上の用量でのみげっ歯類にがん原性陽性を示しても、それはヒトに対しても同様な発がんリスクを示唆するものではないことがICHにおいて既に同意されている。

げっ歯類とヒトとの全身曝露量の比較は、mg/kgよりmg/m2に基づいた用量により実施した方がより適切である(注二〇)。したがって、臨床用量はがん原性試験の高用量より少なくともmg/m2換算で二五倍低くなければならない。係数の六―七((六・五))はラットの用量をmg/kgからmg/m2に換算するために、また係数四〇はヒトの用量をmg/kgからmg/m2に変換するために使用される。すなわち、ヒトに対するげっ歯類の二五倍の全身曝露量比は、mg/m2換算でも二五倍であり、mg/kg換算で示すと一五〇倍(一五〇=二五×四〇/六・五)となる。したがって、臨床用量が一〇mg/kg/日以下(約五〇〇mg/man/日以下)の場合には、ラットでは高用量として一五〇〇mg/kg/日を用いて試験を実施することが容認される。

注二九

一種の短期・中期in vivoげっ歯類試験、長期がん原性試験あるいは遺伝毒性試験の所見やその他の試験成績から、その医薬品が明らかにヒトに対してがん原性を有することが示された場合には、第二のがん原性試験は必ずしも必要ないと思われる。

注三〇

現在、いくつかの試験法について、がん原性評価における有用性に関する研究が進められている。一般的には、これらの試験法は、ヒトに外挿でき、ヒトに対するリスク評価に応用できると考えられている発がんメカニズムに基づくべきである。さらに、これらは長期がん原性試験を補完し、かつ、がん原性試験から得られることができない新しい情報をもたらすものでなければならない。また、動物数、動物愛護やがん原性評価における全体的な経済性についても考慮されなければならない。これらの基準を満たす代表的な試験法を以下に示す。これらの試験法も今後の情報に基づき見直される可能性がある。

(一) げっ歯類を用いたイニシエーション・プロモーションモデル:肝がん原物質(および肝発がん修飾物質)を検索するためのラットのイニシエーション・プロモーションモデルは、イニシエーターを用い、その後、被験物質を数週間投与する。もう一つの多臓器発がんモデルは、最大五種類のイニシエーターを投与し、次いで被験物質を数カ月間投与する。

(二) p53+/-欠損モデル、Tg.ACモデル、TgrasH2モデル、XPA欠損モデル等を含むいくつかのトランスジェニックマウスの試験。

(三) 新生児げっ歯類試験。

注三一

追加in vivo試験を採用する場合、一般的に注三〇の基準に当てはまるin vivo試験法が複数あったとしても、それぞれの医薬品に対して全ての試験法が必ずしも同じように適しているとは限らない。以下の項目は、その選択理由として考慮され、示されるべき事項の例である。

(一) がん原性試験からは得られない有益な新しい知見(有害性の確認やリスク評価)が得られること。

(二) その医薬品や類薬(構造、作用メカニズム)についての従来の知見から導かれる発がん過程に関する疑問に答えられること。これには、例えば、遺伝毒性、細胞増殖性、プロモーター作用、あるいは受容体を介する作用などが含まれる。

(三) 採用される動物モデルにおける被験物質の代謝が、ヒトに対する発がんリスクの評価に影響を与えるか否かを検討すること。

(四) ヒトでの曝露に見合う適切な全身ないし局所曝露が可能であること。

(五) 採用される動物モデルが使用目的に対して広範に検証されていること。ヒトに対するがん原性を検索するための新しいin vivo試験法の採用にあたっては、その試験法により科学的根拠の重要度(weight of evidence)を考慮した総合評価が可能かどうかを検討することが重要である。多くの実験的研究が、これらの新しい短期・中期in vivo試験法の検証のため進行中である(一九九九年の時点)。これらの研究には、げっ歯類においてがん原性が知られており、その発がんメカニズムが解明されているいくつかの医薬品やヒトに対してはがん原性がないと考えられている物質が用いられている。これらの検証研究の結果が利用出来るようになれば、どの試験系がヒトでのがん原性評価に最も適切かについてのより明確なガイドラインを示すことが可能であろう。

参照すべきICHガイドライン

――――――――――――――

1 SIA:Guideline on the Need for Carcinogenicity Studies of Pharmaceuticals

2 SIB:Testing for Carcinogenicity of Pharmaceuticals

3 SIC:Dose Selection for Carcinogenicity Studies of Pharmaceuticals

4 SIC(R):Addendum to゛Dose Selection for Carcinogenicity Studies of Pharmaceuticals″:Addition of a Limit Dose and Related Notes

5 S2A:Notes for Guidance on Specific Aspects of Regulatory Genotoxicity Tests

6 S2B:A Standard Battery of Genotoxicity Testing of Pharmaceuticals

7 S3A:Notes for Guidance on Toxicokinetics.The assessment of Systemic Exposure in Toxicity Studies

8 S3B:Guidance on Repeat-Dose Tissue Distribution Studies

9 S6:Preclinical Testing of Biotechnology―derived Pharmaceuticals