添付一覧
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輸血前検査 |
輸血後検査 |
B型肝炎 |
HBs抗原 HBs抗体 HBc抗体 |
核酸増幅検査(NAT) (輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合、輸血の3か月後に実施) |
C型肝炎 |
HCV抗体 HCVコア抗原 |
HCVコア抗原検査 (輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合又は感染既往と判断された場合、輸血の1~3か月後に実施。) |
5 ヒト免疫不全ウイルス感染
後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では、感染後2~8週で、一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状が現れることがあるが、多くは無症状に経過して、以後年余にわたり無症候性に経過する。特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。受血者(患者)の感染の有無を確認するために、医師が感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、輸血前にHIV抗体検査を行い、その結果が陰性であれば、輸血後2~3か月以降に抗体検査を行う必要がある。
6 その他
輸血によるヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV―I)などの感染の有無や免疫抗体産生の有無などについても、問診や必要に応じた検査により追跡することが望ましい。
Ⅸ 血液製剤の有効性、安全性と品質の評価
輸血療法を行った場合には、輸血用血液の品質を含め、投与量に対する効果と安全性を客観的に評価できるよう、輸血前後に必要な検査を行い、さらに臨床的な評価を行った上で、診療録に記載する。
Ⅹ 血液製剤に関する記録の保管・管理
血液製剤(輸血用血液製剤及び分画製剤)であって薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第2条第6項に規定する特定生物由来製品に指定されたものについては、将来、当該血液製剤の使用により患者へのウイルス感染などのおそれが生じた場合に対処するため、法第68条の9及び薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第62条の11の規定に基づき、診療録とは別に、当該血液製剤に関する記録を作成し、少なくとも使用日から20年を下回らない期間、保存すること。記録すべき事項は、当該血液製剤の使用の対象者の氏名及び住所、当該血液製剤の名称及び製造番号又は製造記号、使用年月日等であること。
[注:平成15年5月15日付け医薬発第0515011号「特定生物由来製品に係る使用の対象者への説明並びに特定生物由来製品に関する記録及び保存について」(各都道府県知事宛て厚生労働省医薬局長通知)]
XI 院内で輸血用血液を採取する場合の留意事項
院内で採血された血液(以下「院内血」という。)の輸血については、供血者の問診や採血した血液の検査が不十分になりやすく、また供血者を集めるために患者や家族などに精神的・経済的負担をかけることから、日本赤十字社の血液センターからの供給体制が確立されている現状においては、特別な事情のない限り行うべきではない。
院内血による輸血療法を行う場合には、Ⅲ~Ⅹで述べた各事項に加え、その適応の選択や実施体制の在り方について以下の点に留意する。
1 説明と同意
I―1―3)を参照し、輸血に関する説明と同意を得た上、院内血輸血が必要な場合について、患者又はその家族に理解しやすい言葉でよく説明し、同意を得る。その旨を診療録に記録しておく。
2 必要となる場合
院内血輸血が必要となる場合は次のとおりである。
1) 成分採血
顆粒球やリンパ球などの輸血を必要とするが、日本赤十字社の血液センターからは供給されていないため、院内で成分採血を行う場合。
2) 緊急時
離島や僻地などで日本赤十字社の血液センターから遠く、血液の搬送が間に合わない緊急事態の場合。
3 不適切な使用
採血した当日に使用する血液(以下「当日新鮮血」という。)の輸血が望ましいと考えられてきた場合も、その絶対的適応はない。
特に、以下の場合は院内血としての当日新鮮血を必要とする特別な事情のある場合とは考えられない。
1) 出血時の止血
ある程度以上の量の動脈あるいは静脈血管の損傷による出血は、輸血によって止血することはできない。
出血が血小板の不足によるものであれば血小板輸血が、また凝固障害によるものであれば凝固因子製剤や新鮮凍結血漿(あるいは新鮮血漿)の輸血が適応となる。
2) 赤血球の酸素運搬能
通常の赤血球成分や全血中の赤血球の輸血で十分目的を達成することができる。
3) 高カリウム血症
採血後1週間以内の赤血球成分や全血の輸血により発症することはまれである。
4) 根拠が不明確な効果
当日新鮮血液中に想定される未知の因子による臨床効果を期待することは、実証的データのない以上、現状では原則的に不適切である。
4 採血基準
院内採血でも、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律施行規則」に従って採血することを原則とする。問診に際しては、特にⅢ―1の事項に留意しつつ、聞き漏らしのないように、予め問診票を用意しておくべきである。
なお、平成11年4月1日より、献血者の採血対象年齢が、200mLについては16歳から69歳、400mL全血採血及び血漿成分採血については18歳から69歳までにそれぞれ引き上げられた。(平成11年2月22日厚生省令第11号)
5 供血者への注意
採血に伴う供血者への事故や副作用をできるだけ避けるため、以下の点に注意する必要がある。
1) 供血者への説明
採血された血液について行う検査内容を、あらかじめ供血者に説明しておく。
なお、供血者が検査結果の通知を希望する場合には、個人情報の秘密保持に留意する。
2) 消毒
採血針を刺入する部位の清拭と消毒は入念に行う。
3) 正中神経損傷
極めてまれではあるが、正中神経損傷を起こすことがあり得るので、針の刺入部位及び深さに注意する。
4) 血管迷走神経反射
血管迷走神経反射などの反応が認められる場合があるので、採血中及び採血後も供血者の様子をよく観察する。採血後には15分程度の休憩をとらせる。
[注:血管迷走神経反射は供血者の1%以下に認められるが、若い女性では比較的多く認められる。]
5) 止血
採血後の圧迫による止血が不十分であると血腫ができやすいので、適正な圧力で十分な時間圧迫する。
6 採血の実施体制
1) 担当医師との連携
採血に携わる者は、指示を出した医師と緊急度や検査の優先順位などについて十分連携をとる。
2) 採血場所
院内採血を行う場所は、清潔さ、採血を行うために十分な広さ、明るさ、静けさと適切な温度を確保する必要がある。
7 採血された輸血用血液の安全性及び適合性の確認
1) 検査事項
院内血の検査もⅢ~Ⅴの輸血用血液の安全性及び適合性の確認の項と同様に行う。
2) 緊急時の事後検査
緊急時などで輸血前に検査を行うことができなかった場合でも、輸血後の患者の経過観察と治療が必要になる場合に備えて、事後に輸血に用いた血液について上述の検査を行う。
8 記録の保管・管理
院内血を輸血された患者についてもⅩと同様の記録を作成して保管する。
ⅩⅡ 自己血輸血
自己血輸血は現在最も安全な輸血方法であると考えられていることから、待機的手術患者では積極的に行うことが推奨される。
1 術式
術式としては、術前に自己の血液をあらかじめ採血して保存しておく方法(貯血式)と手術開始直前に採血し、人工膠質液を輸注する方法(希釈式)又は術中・術後に出血した血液を回収する方法(回収式)がある。
2 利点と不利な点
1) 利点
(1) ウイルスなどの感染症の予防
(2) 同種免疫の予防
(3) 免疫抑制作用の予防
2) 不利な点
(1) 確保量の限界
貯血又は回収できる量に限界がある。ただし、貯血式ではエリスロポエチンの使用により比較的短期間に必要量を確保することも可能である。
(2) 循環動態への影響
採血により循環動態などに対して悪影響を与える可能性がある。
(3) 細菌汚染の危険性
同種血と同様に細菌による汚染が起こり得る。特に回収式および貯血式では注意が必要である。
(4) 過誤輸血の危険性
同種血と同様に血液の取り違いによる過誤輸血が起こり得る。特に貯血式では注意を必要とする。
(5) 人手と技術
採血、保存、管理あるいは希釈・回収などに通常の輸血実施時以上の人手や技術が必要である。
3 自己血輸血の適応と方法
全ての手術患者において、輸血の選択肢の一つとして自己血輸血の適応となる場合を積極的に検討し、推進することが推奨される。自己血輸血の方法としては、患者の病状、術式などを考慮して術前の貯血式、術直前の希釈式、術中・術後の回収式などの各方法を適切に選択し、又は組合わせて行うことを検討するべきである。
[注:液状貯血式自己血輸血の実施に当たっては、「自己血輸血:採血及び保管管理マニュアル」(厚生省薬務局、平成6年12月2日)を参照。ただし、今後改されることもあるので最新のマニュアルを参照する必要がある。]
[Ⅲ]おわりに
輸血療法は、現代医学において最も確実な効果の期待できる必須な治療法の一つであるが、その実施にはさまざまな危険性を伴うことから、そのような危険性を最小限にしてより安全かつ効果的に行うために、輸血療法に携わるすべての職員はこの指針に則ってその適正な推進を図られたい。
今後、輸血療法の医学的進歩に対応するばかりではなく、輸血用血液が製造物責任法の対象となったことに象徴されるような社会的環境の変化にも応じて、本指針は時期を失することなく随時改正していく予定である。
(別添3)
血液製剤の使用指針(概要)
近年、血液製剤の安全性は格段に向上しているが、ウイルス感染症の伝播あるいは免疫学的な副作用などの危険は内在している。また、血液製剤のすべてを自国内の献血血液でまかなうことが国際的な原則である。
血液製剤を用いた療法は、血液成分の欠乏あるいは機能不全による臨床的異常を軽減するための補充療法である。投与前に各成分の到達すべき目標値を臨床症状や臨床検査値から予め設定し、現在値より補充すべき血液成分量を計算する。さらに生体内における血管内外の分布や代謝速度を考慮して補充量を補正し、補充間隔を決める。投与後には、臨床症状と臨床検査値から、所期の目的が達成されたかを評価するとともに、副作用の発生の有無を観察し、診療録に記録する。また、待機手術では、自己血を使用するように努める。
この概要版は、医療機関および臨床医各位が血液製剤の使用指針を利用しやすいようにするとともに、血液製剤に対する認識を新たにすることを目的として、特に重要な原則を要約したものである。
I 赤血球濃厚液の投与について
1 目的:急性あるいは慢性の出血に対する治療及び貧血の急速な補正。
末梢循環系への十分な酸素の供給と循環血液量の維持。
2 使用指針
1) 内科的適応
慢性貧血の場合にはHb値7g/dLを目安にして輸血を行う。ただし、7g/dL未満であっても輸血を必要としない場合もある。輸血量は、臨床症状の改善が得られる最少量。
検査値のみならず循環系の臨床症状(労作時の息切れなど)を注意深く観察し、さらに日常生活の状況も勘案して適応を決定。
輸血後のHb値を10g/dL以上にする必要はない。
鉄剤やエリスロポエチンなどが有効な貧血は適応外。
2) 外科的適応
(1) 術前投与
慣習的な術前の10/30ルール(Hb10g/dL、Ht30%以上)には根拠がない。
外科手術患者では、全身状態を把握し、心肺機能、原疾患(良性または悪性)、年齢などを考慮して必要の有無を決定する。
慢性貧血には内科的適応と同様に対処。
持続する出血をコントロールできない場合又はそのおそれがある場合のみ必要。栄養障害による低蛋白血症は、術前の積極的栄養管理(中心静脈栄養法、経腸栄養法)により是正。
(2) 術中投与
(ⅰ) 全身状態良好な患者で、循環血液量の15~20%の出血:細胞外液系輸液薬を出血量の2~3倍投与。
(ⅱ) 循環血液量の20~50%の出血:細胞外液系輸液薬と共に赤血球濃厚液を投与。
膠質浸透圧を維持する必要があれば、まず人工膠質液(HES、デキストランなど)を投与。
(ⅲ) 循環血液量の50~100%の出血:細胞外液系輸液と赤血球濃厚液に加え、適宜等張アルブミン製剤を投与。
(ⅳ) 循環血液量以上の出血(24時間以内に100%以上):上記の他、凝固系や血小板数の検査値および臨床的な出血傾向を参考に、新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の投与も考慮。血圧・脈拍数や尿量・心電図・血算、血液ガスなどを判断。
収縮期血圧90mmHg以上、平均血圧60~70mmHg以上、尿量0.5~1mL/kg/時を確保。
(3) 術後投与
バイタルサインが安定していれば、原則として細胞外液系輸液薬のみを投与。
急激に貧血が進行する場合、輸血は外科的処置と共に早急に行う。
3 投与量の算定
赤血球濃厚液1単位(200mL由来)の投与により改善されるHb値:
予測上昇Hb値(g/dL)=投与Hb量(g)/循環血液量(dL)
循環血液量:70mL/kg{循環血液量(dL)=体重(kg)×70mL/100}
4 不適切な使用
新鮮凍結血漿との併用による全血の代替としての使用
Ⅱ 新鮮凍結血漿の投与について
1 目的
凝固因子、特に複数の凝固因子の欠乏による出血傾向の是正。
他に安全な代替医薬品(リコンビナント製剤など)のない場合にのみ適応。
2 使用指針
PT・APTT・フィブリノゲン値の投与前測定が原則。
凝固因子欠乏による出血傾向のある患者の観血的処置時を除き、予防的投与は不可。
1) 凝固因子の補充
(1) PT・APTTの延長(PTの凝固因子活性は%表示したとき30%以下に低下、APTTはそれぞれの医療機関における基準の1.5倍以上とする。)
ⅰ 複合型凝固障害
○肝障害:重症肝障害時の複数の凝固因子活性低下による出血傾向のある場合。急性肝不全では、消費性凝固障害合併の可能性も考慮。
容量の過負荷が懸念される場合、血漿交換療法を併用。
○播種性血管内凝固(DIC):治療の原則は、原因の除去(基礎疾患の治療)とヘパリンなどの抗凝固療法。その上で必要な場合、凝固因子と凝固線溶阻害因子(アンチトロンビンⅢ、プロテインC、α2―プラスミンインヒビターなど)の両者を同時に補充。フィブリノゲン値が100mg/dL以下、血中凝固因子活性が30%以下あるいはアンチトロンビンⅢ活性が70%以下の場合に適応。
○大量輸血時(循環血液量70mL/kg以上の24時間以内の輸血):希釈性凝固障害(凝固因子活性が30%以下)に適応。
外傷などの救急患者では、消費性凝固障害を合併し、凝固因子欠乏による出血傾向のある場合のみFFPの適応。予防的投与は不可。
ⅱ 濃縮製剤のない凝固因子欠乏症
○第Ⅴ、第XI因子の単独あるいはこれらのいずれかを含む複合型凝固因子欠乏症が適応。
予防的投与は観血的処置時に限定。
投与量、投与間隔は止血に必要な各凝固因子のレベル、生体内半減期や回収率などを考慮して決定(表4)。
効果判定は臨床所見とPT・APTT検査値による。
ⅲ クマリン系薬剤(ワルファリンなど)による出血傾向の緊急是正
○ビタミンK補給による数時間以内の改善が待てない緊急出血又は緊急手術時。
(2) 低フィブリノゲン血症(100mg/dL以下)の場合
○L―アスパラギナーゼ投与後:フィブリノゲンなどの凝固因子の減少に起因する出血傾向、又はアンチトロンビンⅢなどの抗凝固・線溶因子の産生低下による血栓症の場合、諸因子を同時に補充。
2) 血漿因子の補充(PT・APTTが正常な場合)
○血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)・溶血性尿毒症症候群(HUS):FFPを置換液とする血漿交換療法(通常、40~60mL/kg/回)が最も有効。FFPの単独投与が有効な場合がある。
3 投与量の算定
生理的止血効果を期待し得る凝固因子の最低レベルは、正常値の20~30%。
投与量は、補充凝固因子の血中回収率を100%とすれば、循環血漿量の40mL/kgに0.2~0.3を乗じた8~12mL/kg。
生体内への回収率や半減期あるいは消費性凝固障害の有無などを考慮して、投与量や投与間隔を決定。
4 不適切な使用
1) 循環血漿量減少の改善と補充
2) 蛋白質源としての栄養補給
3) 創傷治癒の促進
4) その他
重症感染症の治療、DICを伴わない熱傷の治療、人工心肺使用時の出血の予防、非代償性肝硬変での出血予防など。
Ⅲ アルブミン製剤の投与について
1 目的
血漿膠質浸透圧の維持・循環血漿量の確保、治療抵抗性の重度浮腫の治療。
2 使用指針
1) 出血性ショック
(1) 循環血液量の30%以上の喪失時:細胞外液系輸液薬が第一選択。膠質浸透圧の維持には、まず人工膠質液を併用。
(2) 循環血液量の50%以上の多量の出血、血清アルブミン濃度3.0g/dL未満の場合、等張アルブミン製剤の併用を検討。
補充量は、バイタルサイン、尿量、中心静脈圧や肺動脈閉塞圧(楔入圧)、血清アルブミン濃度などにより判断。
人工膠質液を1L以上必要とする場合も適応を考慮。
腎機能障害などで人工膠質液の使用が不適切と考えられる場合。
2) 人工心肺を使用する心臓手術
人工心肺の充填には、原則として細胞外液系輸液薬を使用。
術前より血清アルブミン濃度または膠質浸透圧の高度な低下のある場合あるいは体重10Kg未満の小児の場合などには適応を検討。
人工心肺に伴う血液希釈で起こった術後の低アルブミン血症の補正は不要。
3) 難治性腹水を伴う肝硬変あるいは大量の腹水穿刺時
治療抵抗性の腹水に対し、利尿を誘導するために短期間(1週間を限度とする)投与。
大量(4L以上)の腹水穿刺時に循環血漿量維持のための投与を検討。
4) 難治性の浮腫、肺水腫を伴うネフローゼ症候群
急性かつ重症の末梢性浮腫あるいは肺水腫に対して利尿薬に加えて短期間(1週間を限度とする)投与の検討。
5) 血行動態が不安定な血液透析時
糖尿病合併例や術後低アルブミン血症例での透析時に、循環血漿量増加の目的で予防的投与を検討。
6) 凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換療法
FFPに比してアルブミン製剤がより安全な置換液。
7) 重症熱傷
熱傷後、通常24時間以内は細胞外液系輸液薬で対応。
それ以降、細胞外液系輸液では循環血漿量不足の是正が困難な場合には人工膠質液又は等張アルブミン製剤で対処。
8) 低蛋白血症に起因する肺水腫あるいは著明な浮腫が認められる場合
術前・術後あるいは経口摂取不能な重症の下痢などの低蛋白血症で、治療抵抗性の肺水腫又は著明な浮腫が認められる場合、利尿薬とともに高張アルブミン製剤の投与を検討。
9) 循環血漿量の著明な減少を伴う急性膵炎など
急性膵炎、腸閉塞などで循環血漿量の著明な減少を伴うショック時、等張アルブミン製剤の使用を検討。
3 投与量の算定
下記の計算式から得られたアルブミン量を患者の病状に応じて分割投与:
必要量=血清アルブミンの期待上昇濃度(g/dL)×循環血漿量(dL)×2.5
期待上昇濃度:期待値と実測値の差、循環血漿量:0.4dL/kg
投与アルブミンの血管内回収率:4/10(40%)
投与後の血清アルブミン濃度は、急性の場合3.0g/dL以上、慢性の場合2.5g/dL以上を目安。
4 不適切な使用
1) 蛋白質源としての栄養補給
2) 脳虚血時の血管攣縮に対する脳組織の障害防止目的
3) 単なる血清アルブミン濃度の維持
4) 末期患者への延命措置としてのアルブミン投与
Ⅳ 小児に対する赤血球製剤の投与について
(未熟児早期貧血に注目して)
未熟児早期貧血は、鉄剤には反応しないが、エリスロポエチン投与により改善のみられる症例も多い。高度の貧血には、赤血球輸血が必要。
1 使用指針
1) 呼吸障害が認められない未熟児
(1) Hb値が8g/dL未満の場合:通常は輸血の適応。輸血を必要としない場合もある。
(2) Hb値が8~10g/dLの場合:貧血によると考えられる下記の症状が認められる場合は適応。
持続性の頻脈、持続性の多呼吸、無呼吸・周期性呼吸、不活発、哺乳時の易疲労、体重増加不良など。
2) 呼吸障害を合併している未熟児
障害の程度に応じて別途考慮。
2 投与方法
1) 使用血液製剤
採血後2週間以内の赤血球濃厚液(RCC)あるいはMAP加赤血球濃厚液(MAP加RCC)を使用。
2) 投与の量と速度
(1) うっ血性心不全が認められない未熟児:1回の輸血量は10~20mL/kg。1~2mL/kg/時間の速度で投与。
(2) うっ血性心不全が認められる未熟児:心不全の程度に応じて別途考慮。
3 使用上の注意
1) 輸血後移植片対宿主病(TA‐GVHD)の防止
必ず15Gy~50Gyの照射血を使用。照射後の血中K+上昇に注意。
2) 溶血の防止
(1) 白血球除去フィルター使用時には加圧、強い陰圧での吸引をしない。
(2) 細いサイズの注射針を使用しない。