アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○非臨床薬物動態試験ガイドラインについて

(平成一〇年六月二六日)

(医薬審第四九六号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知)

医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき資料のうち、吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料(ただし、動物及びin vitro試験系を用いるものに限る。)を作成するための試験法については、平成三年一月二九日薬新薬第六号薬務局新医薬品課長通知に規定する「薬物動態試験ガイドライン」(以下、「旧ガイドライン」という。)に従い、試験の実施を行うこととしたところであるが、今般、別添のとおり「非臨床薬物動態試験ガイドライン」(以下、「新ガイドライン」という。)をとりまとめたので、左記の事項にご留意の上貴管下関係業者に対し、周知徹底方御配慮願いたい。

新ガイドラインの取扱いについて

一 この通知の施行の日より、新ガイドラインに基づいて実施された試験による資料を医薬品の製造(輸入)承認申請に際し、添付すべき吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料とすることができること。

二 この通知の施行の日以降、平成一一年九月三〇日以前に申請される医薬品に添付される吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料は、新ガイドライン又は旧ガイドラインのいずれに基づいたものであっても差し支えないこと。

三 平成一一年一〇月一日以降申請される医薬品に添付される吸収、分布、代謝及び排泄に関する資料は、新ガイドラインに基づいたものであること。

〔別添〕

非臨床薬物動態試験ガイドライン

本試験の目的は、動物及びin vitro試験系を用いた非臨床試験で被験物質の体内動態(吸収、分布、代謝及び排泄)を明確にすることにある。体内動態に関するデータは、トキシコキネティクス(注一)のデータと併せて評価することにより、動物における毒性及び薬理試験の設定及び結果の解釈に役立つ。更に、それらの結果を体内動態の種差と関連して評価することは、ヒトにおける体内動態を予測し、有効性及び安全性の考察に役立つ。また、併用される可能性のある薬物との相互作用を検討する上でも重要な情報を与える。

本試験を実施するに当たっては、被験物質の性質に応じて適切な方法を考慮し、試験の目的に沿うよう、以下に述べる原則を参考にして、適宜、取捨選択する。新しく開発された方法が科学的に妥当であるならば、それを用いても良い。

また、他の試験、例えばトキシコキネティクス等から本試験の目的に合う適切なデータが得られる場合には、それを利用しても良い。

試験の実施時期についてはICH M3「医薬品の臨床試験のための非臨床安全性試験の実施時期についてのガイドライン」を参照されたい。

Ⅰ 試験方法

一 被験物質

原薬、また、必要に応じて同位元素標識体(注二)や目的とする製剤を使用する。

二 試験系

毒性、薬理及び臨床試験との対応を考えて適切な動物種及びin vitro試験系を使用する。

三 投与経路

原則として、臨床適用経路とする(注三)。

四 投与量

毒性、薬理及び臨床用量との対応を考えて適切な投与量を選択する。

五 投与期間、投与間隔

単回投与並びに必要に応じて反復投与を行う。反復投与の期間と間隔は試験の目的に応じて設定する。

六 定量法

定量の方法及びその真度、精度、特異性、定量限界等を明確にする。

Ⅱ 検討項目

被験物質の体内動態を検討する。この際、通常、最高血中濃度(Cmax)、最高血中濃度到達時間(Tmax)、血中濃度時間曲線下面積(AUC)、消失半減期(又はこれに準じた定数)、クリアランス、分布容積、生物学的利用性等のパラメータを求めるとともに、体内動態の非線形性の有無を検討する。また、必要に応じ、代謝物についても検討する。

一 吸収

本試験は、被験物質の吸収の程度と速度を推定するために行う。通常、これらに関する情報は血中濃度時間曲線から求められる(注四)。

二 分布

本試験は、被験物質の各種臓器及び組織への分布、経時的変化並びに必要に応じて蓄積性を明確にするために行う(注五)。

次の項目を検討する。

(一) 臓器内及び組織内濃度(注六)

(二) 胎盤・胎児移行性

(三) 血漿中の蛋白結合、血球への分配

三 代謝

本試験は、被験物質の主たる代謝経路を示し、代謝の程度と速度を明らかにするために行う。適切な試験系を用いてヒトでの代謝に関与する主たる酵素を明らかにすることも本試験の目的に含まれる。また、ヒトと動物の類似点と相違点の特徴を把握することも重要である。

本試験においては、通常、血液、尿、胆汁及び糞等の生体試料、並びにin vitro試験で得られた試料中の未変化体と代謝物を定量する(注七)。

また、必要に応じ、代謝過程に影響する要因も検討する(注八)。

四 排泄

本試験は、被験物質及びその主要な代謝物の排泄経路及び排泄の程度と速度を明らかにするために行う。

次の項目を検討する。

(一) 尿、糞、呼気(注九)

(二) 胆汁(注一〇)

(三) 乳汁

五 その他の検討項目及び留意点

薬物代謝酵素への影響、また、必要に応じて薬物相互作用、初回通過効果等を検討する。

なお、被験物質がラセミ体である場合には、それぞれの光学異性体について分別定量し、体内動態の相違を検討する。

(注)

注一:トキシコキネティクス(毒性試験における全身的暴露の評価)に関するガイダンス

(平成八年七月二日、薬審第四四三号通知)参照。

注二:同位元素標識体を使用する場合は、純度、標識核種、標識位置、比放射能、安定性等を明確にする。

注三:静脈内投与又は吸収過程を無視し得る投与方法による検討は、被験物質の体内動態を理解する上での基礎的データを提供する。

注四:初回通過効果が小さい場合は、その吸収の程度と速度は、投与後の最高血中濃度(血清中濃度、血漿中濃度又は全血中濃度のCmax)、そのときの時間(Tmax)、血中濃度時間曲線下面積(AUC)等から推定できる。また、これらのパラメータと静脈内投与又はその他基準となる投与方法により得た同様のパラメータとを比較することにより、吸収の程度と速度をより明らかにすることができる。一方、尿、糞、胆汁、呼気等への未変化体及び代謝物の排泄量は、吸収量を推定する上での有力な情報となることがある。

初回通過効果が大きい場合は、未変化体及び代謝物、又は総放射能の血中濃度を経時的に求めることで、その吸収の程度と速度を推定できる。

注五:原則として、単回投与とする。反復投与を考慮すべき状況については反復投与組織分布試験ガイダンス(平成八年七月二日、薬審第四四二号通知)を参照する。体内動態を適切に反映する数時点での測定が望ましい。

注六:全身オートラジオグラフィーは被験物質の全身的分布を定性的に把握するのに有用である。

定量的全身オートラジオグラフィー等、新しい技法も適切にバリデートされたものであるならば、臓器内及び組織内濃度を測定する方法として利用しても良い。高濃度分布又は蓄積の見られた臓器及び組織並びに毒性及び薬理作用にかかわる臓器及び組織については、化学的存在形態につき検討することが望ましい。

注七:代謝に関与する臓器の切片、細胞、ホモジェネート、細胞画分、分子生物学的手法による発現系等を用いたin vitro試験は、in vivo試験とともに代謝試験として有用である。

注八:代謝過程は動物種により異なる。酵素誘導、酵素阻害によっても変化する。また、代謝過程は被験物質の投与量、投与間隔及び投与速度に依存して非線形となる場合がある。

注九:放射性同位元素標識体を単回投与した場合には、投与した放射能の少なくとも九五%が回収されるか、又は七日間のいずれか短い方の期間にわたり測定することが望ましい。

注一〇:主要排泄経路が胆汁であり、かつ腸肝循環が薬物動態に重要な影響を与えると考えられる場合は、それについても検討する。