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○「生物学的製剤等の製造管理及び品質管理基準」及び「生物学的製剤等の製造所の構造設備基準」(生物学的製剤等GMP)について

(平成九年四月一日)

(薬発第五〇六号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)

医薬品の品質確保については、製造所における品質管理及び製造管理の方法についての許可要件として、医薬品の製造管理及び品質管理規則(平成六年厚生省令第三号)が、また、構造設備の許可要件として、薬局等構造設備規則(昭和三六年厚生省令第二号)が定められているところであるが、生物学的製剤、バイオテクノロジーを応用する医薬品等の製造にあたっては、より高度な管理を必要とすることから、別添のとおり、「生物学的製剤等の製造管理及び品質管理基準」及び「生物学的製剤等の製造所の構造設備基準」(生物学的製剤等GMP)を定めたところである。

このうち、製造管理及び品質管理の基準については平成九年一〇月を、また構造設備基準については平成一一年四月を目途に許可の要件とすることについて検討しているところであるので、本基準の趣旨に御配意のうえ、貴管下関係業者に対する周知徹底及び指導方お願いする。

なお、本通知の写しについて、別記あて送付することとしているので申し添える。

(別記)

日本製薬団体連合会会長

日本医薬品原薬工業会会長

細菌製剤協会会長

日本血液製剤協会会長

日本赤十字社社長

在日米国商工会議所製薬小委員会委員長

欧州ビジネス協会医薬品委員会委員長

〔別添1〕

生物学的製剤等の製造管理及び品質管理基準

第一 目的

この基準は、生物学的製剤等の製造業者が遵守すべき事項を定めることにより、製品の特性に応じた製造管理及び品質管理の実施を図ることを目的とする。

第二 適用の範囲

この基準は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(平成六年厚生省令第三号。以下「管理規則」という。)が適用されるものであって、生物学的製剤、遺伝子組換え技術を応用して製造される医薬品、細胞培養技術を応用して製造される医薬品及び生物又はその成分を原料又は材料として使用する医薬品(以下「生物学的製剤等」という。)の製造所について適用する。ただし、製造しようとする医薬品が薬事法施行令(昭和三六年政令第一一号)第一五条の四第二項第二号イに掲げる生物学的製剤、薬事法(昭和三五年法律第一四五号)第四三条第一項の規定により厚生大臣の指定した医薬品、遺伝子組換え技術を応用して製造される医薬品、遺伝子組換え技術を応用して製造される医薬品を原料として使用する医薬品、人若しくは動物の細胞を培養する技術を応用して製造される医薬品又は人若しくは動物の細胞を培養する技術を応用して製造される医薬品を原料として使用する医薬品である場合には、第四、第七の第一号ロからホ、ヘの(1)、(2)及び(4)、トの(2)及び(3)及びチからル、第二号、第九の第一号イ、ロ、ニからヘ及び第二号、並びに第一一については適用しない。

第三 定義

この基準において、用語の定義は次のとおりとする。

1 この基準で「ロット」とは、一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品(製造の中間工程で造られたものであって、以後の製造工程を経ることによって製品となるものを含む。以下同じ。)及び原料の一群をいう。

2 この基準で「バリデーション」とは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう。

3 この基準で「無菌区域」とは、無菌化された薬液、滅菌済みの容器及び栓が直接環境に曝露される場所及び充てん、閉そく作業を行う場所をいう。また、品質管理においては、無菌試験等の無菌操作を行う場所又は区画をいう。

4 この基準で「清浄区域」とは、無菌区域と隣接する原料秤量作業及び薬剤の調製作業を行う場所並びに最終洗浄後の容器や栓等が環境に曝露される場所をいう。

5 この基準で「製造区域」とは、培養、抽出、精製、原料の秤量、容器及び栓等の洗浄及び乾燥作業、薬剤の調製、充てん、閉そく並びに包装を行う作業場所並びに更衣を行う場所をいう。

6 この基準で「連続式培養方式」とは、培養槽中に連続的に培地を供給し、かつ、連続的に培養液を摘出させる培養方式をいう。

7 この基準で「病原体」とは、製造工程で扱うヒトに感染性及び病原性があると一般に知られている細菌、ウイルス等をいう。

第四 製品標準書

生物学的製剤等である医薬品の品目の製品標準書には、次の各号に掲げる事項について記載されていなければならない。

一 原料及び材料として使用する生体成分の規格(当該原料の起源、性状、成分及び含有量並びに製造管理及び品質管理の方法を含む。)

二 製造又は試験検査に使用する動物の規格(飼育及び管理の方法を含む。)

第五 製造管理基準書

生物学的製剤等である医薬品の品目の製造管理基準書には、次の各号に掲げる事項について記載されていなければならない。

一 製造工程及び製品の特性に応じた製造工程の管理に関する事項

二 微生物等による製品の汚染防止措置に関する事項

三 製造所で使用する動物及び微生物(試験検査に用いるものを除く。)の管理に関する事項

四 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録の管理に関する事項

第六 製造衛生管理基準書

生物学的製剤等である医薬品の品目の製造衛生管理基準書には、次の各号に掲げる事項について記載されていなければならない。

一 微生物等による構造設備(試験検査に関するものを除く。)の汚染防止措置に関する事項

二 病原体等による作業員の感染防止措置に関する事項

第七 製造管理責任者の業務

製造業者は、管理規則第六条に規定する業務のほか、製造管理責任者に、製品標準書、製造管理基準書又は製造衛生管理基準書に基づき次の各号に掲げる生物学的製剤等の製造管理に係る業務を適切に行わせなければならない。

一 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせること。

イ 製造作業を行う直前には、作業室内を十分に消毒すること。

ロ 製造工程において、目的物自体を不活化する場合、若しくはそれ以外の微生物等を不活化又は除去する場合には、処理済みの製品と未処理の製品との間の交叉汚染の防止法を講じること。

ハ 製造工程において発酵等の生物化学的な反応を用いる場合には、温度、PH等の製造工程管理に必要な事項について、継続的な測定を行うこと。

ニ 製造工程においてカラムクロマトグラフ装置等を用いる場合には、当該装置の微生物汚染に注意し、必要な場合にはエンドトキシンのモニタリングを行うこと。

ホ 連続式培養方式を用いる場合には、培養期間中の品質維持に関して特別の配慮をすること。

ヘ 作業員の衛生管理について次の事項を行うこと。

(1) 製造作業に従事する者以外の者の作業所への立入りはできる限り制限すること。

(2) 製造作業に従事する者に、消毒した作業用のはき物、作業衣、作業帽及び作業マスクを着用させること。

(3) 作業員が、生菌又は動物を扱っている区域から、他の製品又は微生物を扱っている区域に入る場合について、着衣及びはき物の交換を含む汚染防止について明確に定めた手順を定め、当該作業員に遵守させること。

(4) 製造工程に従事する者に、動物の管理をさせないこと。

(5) 病原体による感染のおそれがある製造、保守及び動物の管理に従事することにより病原体による感染のおそれがある作業員に、適切なワクチンの接種を受けさせること。また、必要な場合には、これらの者に定期的検査を受けさせるほか、ワクチンの追加接種等の適切な感染防御措置を講じること。

(6) 人の血液又は血漿を原料とする製品を製造する場合には、作業員に必要に応じてB型肝炎ワクチン等の接種を受けさせること。

(7) 製品の品質に悪影響を及ぼすような身体状態の変化があった者を、製造区域での作業から除外すること。

ト 無菌区域又は清浄区域で作業する作業員の衛生管理について次の事項を行うこと。

(1) 作業員が、微生物による汚染又はその他の理由により製品の品質を損なうおそれのある病気又は危険な状態にないことを確認すること。

(2) 作業員に対し、作業に従事する場合及びその後六か月をこえない期間ごとに健康診断を行うこと。

(3) 作業員が、製造環境を異常な数又は種類の微生物で汚染するおそれのある身体状態(下痢、風邪、皮膚又は髪の感染症、傷、原因不明の発熱などを含む。)にある場合には、申告させること。

チ 作業が行われている無菌区域又は清浄区域には、作業員の立ち入りを必要最小限に制限し、検査及び管理は、できる限りこれらの区域の外から行うようにすること。

リ 製造所で使用する動物(試験検査に用いるものを除く。)を常時適正な管理のもとに飼育するとともに、その使用にあたっては、健康観察を行うことにより、伝染性疾患にかかっている動物その他当該製造所で使用するに適しない動物を使用することのないようにすること。

ヌ 微生物により汚染された全ての物品及び動物の死体(試験検査の過程において汚染されたものを除く。)を、製造所の構内において焼却すること。ただし、消毒等によって保健衛生上支障を生ずるおそれのないように処置された器具機械等については、この限りでない。

ル 製造に使用する微生物の株の取扱いについて、次に掲げる事項の記録を作成し、その作成の日から五年間保存すること。

(1) 株の名称及びその容器ごとに付された番号

(2) 譲受年月日並びに譲受の相手方の氏名及び住所(法人にあっては名称及び所在地)

(3) 生物学的性状及びその検査年月日

(4) 継代培養の状況

二 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録を製造する生物学的製剤等のロットごとに、製造の全ての段階を追跡できるように管理すること。

三 製造、保管及び出納並びに製造衛生管理に関する記録については、管理規則第六条第四号の規定にかかわらず、当該製品の使用により患者等に健康被害が発生した場合に原因究明を行うために必要な記録を保存すること。

第八 品質管理基準書

生物学的製剤等である医薬品の品目の品質管理基準書には、次の各号に掲げる事項について記載されていなければならない。

一 検体の識別及び区分の方法に関する事項

二 試験検査に従事する作業員の衛生管理に関する事項

三 試験検査に用いる動物及び微生物の管理に関する事項

四 試験検査に関する記録の管理に関する事項

第九 品質管理責任者の業務

製造業者は、管理規則第八条に規定する業務のほかに、品質管理責任者に、製品標準書又は品質管理基準書に基づき、次の各号に掲げる医薬品の品質管理に係る業務を計画的かつ適切に行わせなければならない。

一 次に掲げる業務を自ら行い、又は業務の内容に応じてあらかじめ指定した者に行わせること。

イ 検体の混同及び交叉汚染を防止するため、適切な識別表示を行い、区分すること。

ロ 品質管理上極めて重要であり、かつ、最終製品では実施できない試験検査は、製造の適切な段階で実施すること。

ハ 試験検査及び試験検査に使用する動物の管理に従事することにより病原体による感染のおそれがある作業員に、適切なワクチンの接種を受けさせること。また、必要な場合にはこれらの者に定期的検査を受けさせるほか、ワクチンの追加接種等の適切な感染防御処置を講じること。

ニ 試験検査に使用する動物を常時適正な管理のもとに飼育するとともに、その使用にあたっては、健康観察を行うことにより、伝染性疾患にかかっている動物その他当該医薬品の試験検査に使用するに適しない動物を使用することのないようにすること。

ホ 試験検査の過程において微生物により汚染された全ての物品及び動物の死体を、製造所の構内において焼却すること。ただし、消毒等によって保健衛生上支障を生ずるおそれのないように処置された器具機械等については、この限りでない。

ヘ 試験検査に使用する微生物の株の取扱いについて、次に掲げる事項の記録を作成し、その作成の日から五年間保存すること。

(1) 株の名称及びその容器ごとに付された番号

(2) 譲受年月日並びに譲受の相手方の氏名及び住所(法人にあっては名称及び所在地)

(3) 生物学的性状及びその検査年月日

(4) 継代培養の状況

二 試験結果に関する記録を製造する生物学的製剤等のロットごとに、試験検査の全ての段階を追跡できるように管理すること。

三 試験結果に関する記録については、管理規則第八条第三号の規定にかかわらず、当該製品の使用により患者等の健康被害が発生した場合に原因究明を行うために必要な記録を保存すること。

第一〇 教育訓練の手順書

生物学的製剤等である医薬品の製造所の教育訓練の手順書には、生物学的製剤等の製造管理及び品質管理の実施のために必要な教育訓練に関する事項について記載されていなければならない。

第一一 教育訓練

製造業者は、あらかじめ指定した者に、手順に関する文書に基づき、次の各号に掲げる業務を行わせなければならない。

一 作業員に対して、細菌学、ウイルス学、生物検定法、化学、医学、免疫学、獣医学等の生物学的製剤等の製造管理及び品質管理を適正に実施するために必要な教育訓練を計画的に実施すること。

二 無菌区域並びに感染性又は感作性の高い材料を扱う区域等、汚染に対する注意が必要となる区域で働く作業員に対して、バイオハザード等についての特別な教育訓練を行うこと。

〔別添2〕

生物学的製剤等の製造所の構造設備基準

第一 目的

この基準は、生物学的製剤等の製造所の構造設備について必要な事項を定めることにより、製品の特性に応じた製造管理及び品質管理の実施を図ることを目的とする。

第二 適用の範囲

この基準は、医薬品の製造管理及び品質管理規則(平成六年厚生省令第三号。以下「管理規則」という。)が適用されるものであって、生物学的製剤、遺伝子組換え技術を応用して製造される医薬品、細胞培養技術を応用して製造される医薬品及び生物又はその成分を原料又は材料として使用する医薬品(以下「生物学的製剤等」という。)の製造所について適用する。ただし、添加物としてのみ生物の成分を使用する医薬品、アミノ酸及び抗生物質の製造所については適用しない。

第三 生物学的製剤等の製造所の構造設備

生物学的製剤等の製造所の構造設備の基準は、薬局等構造設備規則(昭和三六年厚生省令第二号)第五条の二から第六条の二まで及び第八条並びに本基準第一に定めるもののほか、次のとおりとする。

一 試験検査室は、空調を含め、他の製造区域から明確に分離されていること。ただし、動物や微生物を用いる試験を行わないなど支障がないと認められるときは、この限りでない。

二 無菌区域及び清浄区域においては、室内の壁、床及び天井は滑らかでひび割れがなく、じんあいを発生しないものであること。

三 清浄区域においては、室内排水口の設置はできるだけ避け、やむを得ず設置する場合には次によること。

イ 排水口を設置する場合には、有効かつ清掃しやすい排水トラップと逆流防止装置を設置すること。

ロ トラップは、消毒できる構造とすること。

ハ 床の溝は開放系で、浅く、清掃しやすいもので、微生物汚染を防ぐ構造を有し、製造区域の外へ排水口を通じて接続されていること。

四 無菌区域には原則として排水口を設置しないこと。

五 無菌区域には、流しを設置しないこと。

六 無菌区域及び清浄区域では、排水系は有害な廃液による汚染を防止するために適切な構造を有していること。

七 当該製造工程に必要のない動物組織や微生物を扱う区域及び動物や微生物を用いる試験を行う区域は、無菌の生物学的製剤等を製造する施設と区分されており、また換気系は完全に区別されていること。

八 人の血液又は血漿を原料とする医薬品の製造を行う作業室、設備及び機器は、当該医薬品の製造に専用のものであること。ただし、ウイルス不活化又は除去工程以降の工程に使用する作業室、設備及び機器については、この限りではない。

九 無菌製品の製造において無菌操作を伴う工程を行う区域は、陽圧であること。ただし、必要に応じて病原体を扱う特定の区域は陰圧とすること。

一〇 病原性があると考えられる微生物を取り扱う区域は、関係する封じ込め要件に従って、陰圧管理を行うよう特別に設計されたものであること。

一一 空調設備は、次に定めるところに適合するものであること。

イ 微生物その他の物質による汚染(作業員からのものを含む。)に対する防護措置が講じられていること。

ロ 病原体を製造に用いる場合には、製造に用いられる病原体の空気拡散を防ぐための措置が講じられていること。

ハ 必要に応じて、各作業室ごとに専用のものとしなければならない。

ニ 病原体が漏出する可能性のある作業を行う作業室においては、原則として空気を再循環させないものであること。

ホ 病原体等を取り扱う区域から出る空気は、当該病原体等の危険度に応じて、性能を定期的に検査している高性能フィルターを通して当該病原体等を除去した後に排出する構造であること。

一二 感染症があるか、又はその可能性がある微生物及び材料を製造に使用する区域にあっては、当該製造に用いた器具の滅菌、消毒及び洗浄のための設備並びに廃液の処理のための設備を有すること。

一三 配管、バルブ及びベント・フィルターは、使用の目的に応じて容易に清掃及び滅菌できるように適切に設計されたものであること。

一四 製造及び試験検査に使用する動物の管理施設は、次に定めるところに適合するものであること。

イ 搬入される動物の検査のための隔離区域を備えていること。

ロ 害虫の侵入のおそれのない飼料貯蔵設備を備えていること。

ハ 閉鎖独立した換気系を備え、他の区域から明確に分離された飼育室を備えていること。ただし、野外での飼育が必要な大型動物等を飼育する場合であって、適正な飼育を行うのに支障がないと認められるときは、この限りでない。

ニ 必要な場合には、動物に抗原等を接種するための接種室を備えていること。この場合には、接種室と剖検室は分離されていること。

ホ 製造に使用する動物の飼育室と試験検査に使用する動物の飼育室は、分離されていること。

一五 製造に使用する痘そう病原体、急性灰白髄炎病原体、有芽胞病原菌又は結核菌を取り扱う器具機械は、標識を付して製剤の種類ごとに専用とすること。