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○医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドラインについて

(平成九年三月二七日)

(薬安第三四号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局安全課長通知)

新医薬品等の再審査の申請の目的で実施される使用の成績等に関する調査の実施方法については、平成五年六月二八日薬安第五四号厚生省薬務局安全課長通知「新医薬品等の再審査の申請のために行う使用の成績等に関する調査の実施方法に関するガイドラインについて」により定めてきたところである。

今般、「医薬品の市販後調査の基準に関する省令」(平成九年厚生省令第一〇号)が平成九年三月一〇日公布され、同年四月一日から施行されることとなったことから、医療用医薬品の市販後の使用成績調査、特別調査及び市販後臨床試験の実施方法に関し、その標準的手法を別添のとおりまとめたので、貴管下関係業者に対し周知方よろしくご配慮願いたい。

なお、本通知は、使用成績調査実施計画書、特別調査実施計画書又は市販後臨床試験実施計画書の作成された日が平成九年四月一日以降の調査・試験に適用する。また、学問の進歩等を反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしも本ガイドラインに示した方法を固守するよう求めるものではない。

おって、本通知の施行に伴い、平成五年六月二八日薬安第五四号厚生省薬務局安全課長通知は廃止する。

(別添)

医療用医薬品の使用成績調査等の実施方法に関するガイドライン

医薬品の治験は、一般に小児、高齢者、妊産婦等を除外した限られた数の症例で、投与期間も限って行われるが、市販後には、これら除外対象も含めて様々な多くの患者に、医薬品によっては長期間にわたって用いられることになる。

従って、市販後においては、日常の診療における医薬品の使用実態下での様々な患者における有効性、安全性等に関する情報その他の適正使用情報の把握のために行う使用成績調査、小児、高齢者等医薬品を使用する条件が定められた患者における有効性、安全性等に関する情報その他の適正使用情報の検出又は確認を行う特別調査、治験又は市販後の調査の成績その他の適正使用情報に関する検討を行った結果得られた推定等を検証し、或いは診療においては得られない適正使用情報を収集するための市販後臨床試験を行うことが重要である。

本ガイドラインは、このような市販後の調査・試験の目的を踏まえ、現段階での使用成績調査、特別調査及び市販後臨床試験の標準的な方法等を述べたものである。

一 調査・試験の基本的な考え方

(一) 市販後に実施する調査・試験は次の通り。

ア 使用成績調査

イ 承認条件又は承認時に指示された特別調査、市販後臨床試験

ウ 治験、使用成績調査、副作用・感染症症例報告等により疑問点が生じた場合、必要に応じ実施する特別調査、市販後臨床試験(なお、その調査・試験により新たな疑問点が生じた場合は、さらに新たな調査・試験の実施を検討すること。)

エ 適正使用情報の検出又は確認するための特別調査、適正使用情報の検証のための市販後臨床試験(なお、その調査・試験により新たな疑問点が生じた場合は、さらに新たな調査・試験の実施を検討すること。)

(二) 一つの調査・試験で様々な情報を得ようとすると、結果が曖昧になってしまう可能性があるので、調査・試験は目的を明らかにし、目的ごとに行うこと。

二 使用成績調査について

(一) 使用成績調査の定義

「医薬品の市販後調査の基準」第二条第二項に定めるもの。

(二) 使用成績調査の方法

使用成績調査の方法は、医薬品毎に検討されるべきであるが、比較的多くの医薬品に用い得ると思われる標準的な調査方法を以下に示した。

① 対象医薬品

薬事法第一四条の四第四項に係る新医療用医薬品

② 目的

以下の事項等を把握するとともに、特別調査、市販後臨床試験の必要性の有無を検討する。

ア 未知の副作用(特に重要な副作用について)

イ 医薬品の使用実態下における副作用の発生状況の把握

ウ 安全性、有効性等に影響を与えると考えられる要因

③ 要点

ア 主として安全性に焦点をあてた調査を行う。ただし、希少疾病用医薬品等必要な場合は、日常の診療における医薬品の使用実態下において有効性、安全性等の把握を目的とした調査を行う。

イ 調査症例数は医薬品の特性等に応じて設定するが、〇・一%以上の頻度で発現する未知の副作用を九五%以上の信頼度で検出できるよう、通常、最低三、〇〇〇例とする。

ウ 中央登録方式、連続調査方式、全例調査方式等、無作為に症例を抽出できる方法により調査を行う。

エ 市販後早期に調査を開始し、原則、三年以内に調査を終了する。

オ 副作用の発現状況等の経年的な比較が必要と考えられる医薬品については、同一の調査票を用い一定期間少なくとも三回繰り返す等の調査を行う。

カ 未知の副作用を確実に拾い上げることを目的に、投与中または投与後に発現した有害事象(副作用を含む。以下同じ。)について調査し、必要な場合、追跡調査を行う。

キ 逸脱(違反)例についても、別途集計し解析する。

ク 調査対象から脱落した症例についても、可能な限り調査を行う。

ケ 薬剤の併用などが、安全性等の評価に影響を与える可能性について検討する。

コ 臨床検査値異常をできるだけ把握できるようにする。

サ 調査票は以下の点に留意して設定する。

(ア) 承認時に把握されている副作用及び類薬で知られている副作用等を調査票の欄外等に目につくように一覧表などにして示し、副作用の検出率を高めるようにする。

(イ) 調査票の有害事象記入欄には、注目する必要のあると思われる副作用(例えば、重篤な副作用のうち、本薬では知られていないが類薬では知られている副作用、少数例出ているが因果関係がわからず使用上の注意に記載のない副作用、既知であるが追跡調査する必要がある副作用等)の項目を予め記入して、その発現の有無を確認できるようにする。特にこのような副作用がない場合は空欄とする。

(ウ) 調査票は、原則、安全性に関する要因分析に必要な情報を収集することを基本とし、有効性については、改善度等簡単な調査項目とする。ただし、希少疾病用医薬品等必要な医薬品にあっては、有効性も把握できるような調査票とし、臨床検査値等客観的に有効性を評価できる項目等についても調査する。

一般的には、患者のイニシャル、カルテ番号、性別、生年月日・年齢、入院・外来の別、使用理由、投与開始日、既往歴、合併症、アレルギー歴の有無、妊娠の有無、一日投与量、投与期間、投与期間中の併用薬剤などが調査項目として考えられる。ただし、医薬品によって必要な項目は異なるので、各々適切な項目を定めることとする。

三 特別調査について

(一) 特別調査の定義

「医薬品の市販後調査の基準」第二条第三項に定めるもの。

次のような調査が特別調査に該当する。

① 小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者等特別な背景を有する患者における有効性、安全性等に係る調査

② 長期使用の患者における有効性、安全性等に係る調査

③ 注目すべき副作用の発生等、有効性、安全性等に影響を与えると思われる要因の検出又は確認のための調査

④ 症例報告が少ない等の理由により因果関係が特定できない副作用を集中的に収集し、当該医薬品との因果関係を確認するための調査

(二) 主な特別調査の方法

① 小児、高齢者、妊産婦等特別な背景を有する患者における調査

ア 対象医薬品

全ての医療用医薬品

イ 目的

承認前の臨床試験において十分な検討が行われていない小児、高齢者、妊産婦、腎機能障害又は肝機能障害を有する患者等特別な背景を有する患者における有効性、安全性等の適正使用情報の検出又は確認を行うことを主な目的とする。

ウ 要点

(ア) 特別な背景を有する患者に対する使用例が少ない医薬品にあっては、当該使用例をできるだけ把握するように努める。

(イ) 使用成績調査、他の特別調査でこれらの特別な背景を有する患者の使用例がある場合には、本調査に組み込むことは可能であるが、組み込みに必要な事項の調査を行うこと。なお、本調査を中央登録方式等の無作為に症例を抽出できる方法で実施する場合には、組み込む症例も同様な方法で収集する必要があること。

(ウ) 投与中または投与後に発現した有害事象について調査し、必要な場合、追跡調査を行う。

(エ) 妊婦等、プロスペクティブに調査を実施することが困難な場合については、レトロスペクティブに当該使用例の患者、投与の状況、有害事象の有無等について詳細に調査する。

② 長期使用の患者における調査

ア 対象医薬品

長期に使用することが予想される医薬品のうち、新医薬品の臨床評価方法に関するガイドライン等で市販後の長期使用に関する調査の必要性が示唆されているもの。

イ 目的

長期使用例での有効性、安全性等の適正使用情報の検出又は確認を行うことを目的とする。

ウ 要点

(ア) 中央登録方式等、無作為に症例を抽出できる方法により調査を行う。

(イ) 承認時に有効性、安全性等が検討されている期間を上回る期間で調査を行う。また、新医薬品の臨床評価ガイドライン等で使用期間が設定されている場合はその期間を参考とする。

(ウ) 投与中または投与後に発現した有害事象について調査し、必要な場合、追跡調査を行う。

(エ) 調査症例数は、脱落・中止例を見込んで、必要な解析が最終的に可能な症例数を設定する。

(オ) 使用成績調査、他の特別調査で長期使用の患者の使用例がある場合は、本調査に組み込むことも可能であるが、組み込む症例も、本調査と同様の中央登録方式等の無作為に症例を抽出できる方法で収集するとともに、組み込みに必要な事項の調査を行うこと。

(カ) 長期使用が予想される症例を投与開始より登録し、定めた期間に達するまで定期的に評価を行い、脱落・中止例についてはそれらの理由を明らかにし、脱落・中止例に問題がないか検討する。

(キ) 本調査の評価対象とする症例は、特別調査実施計画書に定めた一定期間以上使用した症例とする。なお、調査期間がそれまでに達しなかった症例についても、安全性の評価に含めること。

四 市販後臨床試験について

(一) 市販後臨床試験の定義

「医薬品の市販後調査の基準」第二条第四項に定めるもの。

次のような試験が市販後臨床試験に該当する。

① 腎機能障害を有する患者等特別な背景を有する患者での適正な使用方法を確立するための試験(例:腎機能障害患者における体内動態に関する試験)

② 長期使用による延命効果、QOLの改善等について薬剤疫学的手法により検証するための試験

③ 新医薬品の臨床評価ガイドライン等に基づいて有効性、安全性を検証するための試験

④ 有効性又は安全性に影響を与えると考えられる要因が見い出された場合に、その要因が実際に有効性又は安全性に影響していることを検証するための試験

(二) 市販後臨床試験の方法

市販後臨床試験の方法は、医薬品の特性や試験の目的によって異なるが、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成九年三月二七日厚生省令第二八号)を遵守して実施する。