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○覚せい剤乱用対策の充実強化について
(昭和五六年四月三〇日)
(総審第一三四号)
(各都道府県知事あて薬物乱用対策推進本部長総理府総務長官通達)
覚せい剤乱用の防止については、昭和四八年六月二一日薬物乱用対策推進本部において、政府の防止対策の基本方針として「覚せい剤乱用対策実施要綱」を策定し、対策を進めてきたところであるが、その後においても乱用者の増加がやまないばかりか、一般市民層への浸透や乱用者による事件事故の多発など、覚せい剤を巡る弊害が増大しつつあり、看過できない状況にある。
政府においては、このような情勢に対処するため、薬物乱用対策推進本部において覚せい剤乱用防止対策について再検討を行い、今般新たに別紙のとおり「覚せい剤乱用対策実施要綱」を決定し、もつて覚せい剤の乱用及びその弊害の根絶を期することとした。
貴職におかれては、この要綱にのつとり、関係行政機関及び関係団体等と緊密な連携を図り、対策の一層の推進を願いたい。
なお、「覚せい剤乱用対策の強化について」(昭和四八年六月二一日付総審第一二二号)の別紙一「覚せい剤乱用対策実施要綱」は廃止されるので念のため申し添える。
別紙一
覚せい剤乱用対策実施要綱
(昭和五六年四月二四日)
(薬物乱用対策推進本部決定)
第一 趣旨
覚せい剤は、昭和二○年代の後半を中心に終戦後の混乱した社会の中でいわゆる「ヒロポン」の名で人々に乱用されたが、昭和二六年六月覚せい剤取締法が制定され、また、昭和三十年一月閣議決定により覚せい剤問題対策推進中央本部を内閣に設置し、防止諸対策を強力に推進するなど、乱用防止に努めた結果、昭和三三年ころには乱用はほぼ終息した。
ところが、昭和四五年ころから乱用者が再び増加する傾向を示したため、昭和四八年一○月覚せい剤取締法が改正され罰則の強化等が行われるとともに、昭和四五年六月五日の閣議決定により設置された薬物乱用対策推進本部において、昭和四八年六月二一日、政府の基本方針として「覚せい剤乱用対策実施要綱」を、全国的な組織の整備のため「薬物乱用対策推進地方本部設置要綱」をそれぞれ策定し、中央と地方の関係行政機関が相互に協力しながら乱用防止に鋭意努力してきた。
しかしながら、その後も乱用者の増加がやまないばかりか、一般市民層へのまん延、青少年層への浸透といつた憂慮すべき傾向が表われ、また、これに伴い覚せい剤の乱用者による事件事故も多発している。更に、最近では、その大部分が韓国等近隣諸国から密輸入されており、また、覚せい剤の密輸・密売は格好の資金源となるため暴力団が積極的に関与するなど、覚せい剤を巡る弊害が増大の途にある。
この実施要綱は、このような現状に対処するための覚せい剤乱用防止対策の見直しの結果に基づき策定するものであり、覚せい剤乱用防止対策について、関係行政機関等が緊密な連携を保ちながら、その総合的かつ強力な実施を図り、もつて覚せい剤の乱用及びその弊害の根絶を期することを目的とするものである。
第二 主唱及び実施機関
一 薬物乱用対策推進本部が主唱し、これを構成する関係行政機関がこの要綱の実施を推進するものとする。
二 各都道府県に対しても、薬物乱用対策推進地方本部を設け、関係行政機関等の協力によりこの要綱に沿つた措置を推進するよう要請するものとする。
第三 実施方針
一 国民に対する啓発活動の推進
覚せい剤の乱用及びその弊害を防止するために、次の事項を推進する。
(一) 乱用の実態及びその弊害についての周知徹底
(二) 乱用を許さない生活環境及び社会環境作りに対する関心の高揚
(三) 医療保護及び更生指導に関する制度等の周知徹底
(四) 覚せい剤管理者に対する取扱上の注意の喚起
二 取締りの強化と厳正な処分
覚せい剤の乱用及びその弊害を根絶するために、次の事項を推進する。
(一) 密輸及び密造者に対する取締り
(二) 密売組織に対する取締り
(三) 乱用者に対する取締り
(四) 覚せい剤事犯に対する厳正な処分
三 乱用者等に対する対策の推進
覚せい剤の乱用者等に対する対策を促進するために、次の事項を推進する。
(一) 乱用を助長するような社会環境の浄化
(二) 中毒者に対する医療保護の充実
(三) 乱用者等に対する更生指導の充実
(四) 乱用者の実態調査及び研究の実施
第四 実施事項
一 国民に対する啓発活動の推進
(一) 薬物乱用対策推進本部として実施する事項
ア パンフレット、リーフレット、ポスター、標語等の作成
イ スライドの作成及び映画等の活用
ウ 新聞、ラジオ、テレビ等による広報
エ 官報(資料版)その他関係機関等の広報紙(誌)等による広報
オ 各種会議、講習会、座談会等に対する関係者の派遣
(二) 薬物乱用対策推進地方本部に対し実施を要請する事項
ア 一般的に推進する事項
(ア) パンフレット、リーフレット等の作成及び頒布
(イ) ポスター、標語、懸垂幕等の作成及び提示
(ウ) 新聞、ラジオ、テレビ等の報道機関の協力による広報
(エ) 都道府県その他関係機関の広報紙(誌)等による広報
(オ) 広報車の巡回及び移動展、移動相談室等の実施
(カ) 講演会、座談会等の開催及びスライド、映画等の上映
イ 重点的に推進する事項
(ア) 指導者層に対して推進する事項
a 教職員、民生(児童)委員、児童福祉司、保護司、青少年関係指導者、防犯関係指導者、労働関係指導者、その他各種団体の指導者に対する啓発と指導
b 各種団体の自発的な組織活動の促進
(イ) 土木建築業、交通運輸業等の関係の事業主等に対して推進する事項
a 事業主、労働組合等に対する啓発と指導
b 事業所の自発的な活動の促進
c 従業者に対する保健衛生教育の徹底及び中毒者等の発見
(ウ) 風俗営業等関係者に対して推進する事項
a 各種飲食店、風俗営業等の関係団体に対する自発的な活動と協力要請
b 特に深夜に営業をする飲食店、興行場、トルコ風呂等の営業者に対する啓発と指導
c 従業員に対する保健衛生教育の徹底及び身体検査の実施による中毒者等の発見
(エ) 特定の地域に対して推進する事項
a 覚せい剤乱用のおそれのある地域の覚せい剤追放モデル地区としての指定
b モデル地区に対する啓発と指導及び地区関係団体に対する協力要請
c モデル地区の自発的な活動の促進
d モデル地区内の中毒者等の発見
(三) 市区町村に対し実施を要請する事項
覚せい剤の乱用及びその弊害を根絶するためには、各都道府県に設置された薬物乱用対策推進地方本部と市区町村とが積極的に協力してその対策を実施する必要があるので、市区町村においても、関係行政機関等の協力を得て、この要綱に沿つた措置を推進するよう要請するものとする。
(四) 他の運動との関係
この要綱の実施に当たつては、不正大麻・けし撲滅運動、麻薬禍撲滅運動、社会を明るくする運動等関連のある各種運動と密接に連携して推進するものとする。
二 取締りの強化と厳正な処分
(一) 密輸及び密造者に対する取締り
ア 覚せい剤の情報に関する関係取締機関の情報収集体制の強化
イ 韓国、東南アジア諸国等関係国との国際協力の緊密化
ウ 容疑船舶及び航空機の監視並びにその乗客及び乗組員に対する取締り活動の強化
エ 覚せい剤原料の取扱者に対する指導監督及び取締りの強化
オ 密輸及び密造者に対する追及捜査の徹底
(二) 密売組織に対する取締り
ア 暴力団の密売組織の実態の解明及び継続的かつ徹底的な取締りの実施
イ 末端密売人の入手ルートの徹底的追及
ウ 関係取締機関の連絡協議会の開催
(三) 乱用者に対する取締り
ア 潜在的乱用者の積極的発見と前歴者に対する実態は握の徹底
イ 乱用者に対する検挙の徹底
(四) 覚せい剤事犯の早期かつ徹底した捜査と厳正な処分の実現
三 乱用者等に対する対策の推進
(一) 乱用を助長するような社会環境の浄化の促進
(二) 中毒者に対する医療保護の充実
(三) 乱用者等に対する更正指導の充実
(四) 乱用者の実態調査及び研究の実施
第五 強化月間運動の実施
第四の事項を集中的に実施するため、毎年度、全国一斉の覚せい剤乱用の防止広報及び取締りの強化月間運動を実施するものとする。
第六 連絡
一 この要綱の推進に当たつては、薬物乱用対策推進本部、薬物乱用対策推進地方本部及び市区町村は、関係行政機関及び関係団体と相互に緊密な連絡を保持するものとする。
二 薬物乱用対策推進地方本部は、この要綱に基づく毎年度の計画及びその実施結果を薬物乱用対策推進本部に報告するものとする。
第七 その他
従前の覚せい剤乱用対策実施要綱(昭和四八年六月二一日薬物乱用対策推進本部決定)は、これを廃止する。