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○麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律の施行について
(平成四年六月一六日)
(厚生省発薬第一六三号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律(平成三年法律第九三号)及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九四号)が平成三年一月五日に公布され、麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成四年政令第一七五号)及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律の施行期日を定める政令(平成四年政令第一七七号)により、本年七月一日から施行されるところである。
これに伴い、麻薬及び向精神薬取締法施行令及び風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成四年政令第一七六号)、不法収益等に係る疑わしい取引の届出及び記録に関する政令(平成四年政令第一七八号)、没収保全と滞納処分との手続の調整に関する政令(平成四年政令第一七九号)、麻薬及び向精神薬取締法施行規則等の一部を改正する省令(平成四年厚生省令第三〇号)、大麻取締法施行規則の一部を改正する省令(平成四年厚生省令・農林水産省令第一号)が公布され、本年七月一日から施行されるところである。
近年麻薬、向精神薬等の薬物乱用問題は世界的に深刻な社会問題となっており、国際的な協力の下に薬物の不正取引を防止する体制を整備していくことが不可欠である。今回の麻薬二法は、麻薬向精神薬原料に関する規制、国外犯の処罰、マネーローンダリング等の処罰、不法収益の没収、その保全手続及び国際共助手続等を定めることにより、薬物の不正取引の防止を図るとともに、「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」を批准し、国際的な薬物乱用の取締り体制に参画することを主眼とするものである。
したがって、麻薬二法の施行は、国民の保健衛生上の危害の防止に大きく関係するとともに、国際的にも重要な意義を有するものであることから、次の改正要旨に十分留意の上、その施行に万全を期されたく、命により通知する。
記
第一 麻薬及び向精神薬取締法等の一部改正
1 麻薬及び向精神薬取締法の一部改正
(1) 麻薬向精神薬原料の指定
規制の対象となる麻薬向精神薬原料として、八物質を定めることとしたこと。
(2) 麻薬に関する取締り
① 麻薬輸出業者は、麻薬を輸出するときは、その品名及び数量について虚偽の表示をしてはならないこととしたこと。
② 麻薬卸売業者は、麻薬卸売業者に麻薬を譲り渡すことができることとしたこと。
(3) 向精神薬に関する取締り
向精神薬輸出業者は、向精神薬を輸出するときは、その品名及び数量について虚偽の表示をしてはならないこととしたこと。
(4) 麻薬向精神薬原料に関する届出等
① 業務の届出
麻薬向精神薬原料の輸入若しくは輸出又は特定麻薬向精神薬原料の製造、小分け若しくは譲渡しを業として行う者について届出制度を設けたこと。
なお、麻薬等原料輸入業者、麻薬等原料輸出業者及び特定麻薬等原料製造業者については、厚生大臣への届出とし、特定麻薬等原料卸小売業者については、都道府県知事への届出としたこと。
② 輸出入の届出
麻薬等原料輸入業者又は麻薬等原料輸出業者が行う特定の麻薬向精神薬原料の輸入又は輸出について、輸出入ごとの厚生大臣への届出制度を設けたこと。
また、麻薬等原料輸入業者以外の者又は麻薬等原料輸出業者以外の者が行う一定量以上の麻薬向精神薬原料の輸入又は輸出について、輸出入ごとの厚生大臣への届出制度を設けたこと。
③ 事故等の届出
麻薬等原料営業者は、その所有する麻薬向精神薬原料に事故が生じたときは、届け出なければならないこととするとともに、その取り扱う麻薬向精神薬原料の輸入等が麻薬及び向精神薬取締法の規定により禁止される麻薬又は向精神薬の製造に関連する疑いがあるときは、届け出なければならないこととしたこと。
なお、麻薬等原料輸入業者、麻薬等原料輸出業者及び麻薬等原料製造業者については、厚生大臣への届出とし、麻薬等原料卸小売業者については、都道府県知事への届出としたこと。
④ 業務に関する記録
麻薬等原料輸入業者、麻薬等原料輸出業者、特定麻薬等原料製造業者又は特定麻薬等原料卸小売業者は、輸入、輸出、製造、小分け、譲渡し又は譲受けを行った麻薬向精神薬原料の品名及び数量等を記録するとともに、これを二年間保存しなければならないこととしたこと。
⑤ 輸出の際の表示
麻薬等原料輸出業者は、麻薬向精神薬原料を輸出しようとするときは、その品名及び数量について虚偽の表示をしてはならないこととしたこと。
⑥ 適用除外
組成、性状等に照らして麻薬又は向精神薬の製造に使用することが著しく困難である麻薬向精神薬原料について、この法律の適用を除外することができることとしたこと。
(5) 麻薬取締官等の職務の追加
麻薬取締官及び麻薬取締員について、司法警察員としての職務として国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律に違反する罪についての職務を追加したこと。
(6) 罰則
麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し、譲受け、所持等の罪について刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従うものとし、国外犯についても処罰することとしたこと。
(7) その他
報告の徴収等に関する規定を整備したほか、所要の規定を整備したこと。
2 大麻取締法の一部改正
(1) 定義
大麻の定義から、大麻の種子及びその製品を除いたほか、所要の規定を整備したこと。
(2) 罰則
大麻の輸入、輸出、栽培、譲渡し、譲受け、所持等の罪について、刑法第二条の例に従うものとし、国外犯についても処罰できることとしたこと。
(3) その他
報告の徴収等に関する規定を整備したほか、所要の規定を整備したこと。
3 覚せい剤取締法の一部改正
(1) 覚せい剤原料の取締り
覚せい剤原料輸出業者は、覚せい剤原料を輸出するときは、その品名及び数量について虚偽の表示をしてはならないこととしたこと。
(2) 帳簿
覚せい剤原料輸入業者又は覚せい剤原料輸出業者が保存すべき帳簿に記入すべき事項を追加したこと。
(3) 罰則
覚せい剤の輸入、輸出、製造、譲渡し、譲受け、所持等の罪について、刑法第二条の例に従うものとし、国外犯についても処罰することとしたこと。
(4) その他
報告の徴収等に関する規定を整備したほか、所要の規定を整備したこと。
4 あへん法の一部改正
(1) 罰則
けし、あへん又はけしがらの輸入、輸出、栽培、譲渡し、譲受け、所持等の罪について、刑法第二条の例に従うものとし、国外犯についても処罰することとしたこと。
(2) その他
報告の徴収等に関する規定を整備したほか、所要の規定を整備したこと。
第二 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律の制定
1 趣旨
この法律の趣旨を、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を除去し、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及び国際約束等の適確な実施を確保するため、麻薬及び向精神薬取締法等の特例等を定めるものとしたこと。
2 定義
規制薬物、薬物犯罪、不法収益、不法収益に由来する財産及び不法収益等の定義を設けたこと。
3 上陸の手続の特例
入国審査官は、規制薬物を所持する疑いのある外国人について、法務大臣から、薬物犯罪の捜査に関し当該外国人を上陸させることが必要であるとの検察官からの通報等を受けており、かつ薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されている旨の連絡を受けているときは、当該外国人の上陸を許可することができることとしたこと。
4 税関手続の特例
税関長は、規制薬物が隠匿されている貨物について、検察官等から薬物犯罪の捜査に関し、当該貨物を通関させることが必要である旨の要請を受けており、かつ薬物の散逸を防止するための十分な監視体制が確保されていると認める場合は、申告に従い輸出入の許可を行うことができるものとしたこと。
なお、郵便物中にある信書以外の物に規制薬物が隠匿されていた場合にも同様の措置をとることができることとしたこと。
5 疑わしい取引の届出等
(1) 金融機関等は、その業務において収受した財産が不法収益等である疑いがある場合等には、主務大臣に届け出なければならないこととしたこと。
(2) 郵政大臣は、郵便貯金等の業務において収受した財産が不法収益等である疑いがある場合等には、帳簿に記録することとしたこと。
(3) 検察官、司法警察職員等は届け出られた文書又は帳簿を閲覧することができることとしたこと。
6 罰則
(1) 業として行う不法輸入等、不法収益等隠匿、不法収益等収受、規制薬物としての物品の輸入等及びあおり又は唆しに係る処罰規定を設けたこと。なお、規制薬物としての物品の輸入等以外の罪については、刑法第二条の例に従うものとし、国外犯についても処罰することとしたこと。
(2) 不法収益等である財産は没収することとしたこと。
(3) 不法収益等である財産を没収することができないとき、又は没収することが相当でないと認められることにより没収をしないときは、その価額を追徴することができることとしたこと。
(4) 業として行う不法輸入等の罪に係る不法収益については、当該罪を犯した期間内に犯人が取得した財産のうち、不相当に高額であるものは、不法収益と推定することとしたこと。
7 没収に関する手続等の特例
不法財産等である債券等が第三者に帰属する場合において、当該第三者が被告事件への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができないこととしたこと。
8 保全手続
(1) 裁判所又は裁判官は、薬物犯罪等に係る被告事件に関し、没収保全命令を発して没収対象財産の処分を禁止することができることとしたこと。
(2) 裁判所又は裁判官は、薬物犯罪等に係る被告事件に関し、追徴保全命令を発して被告人の一般財産の処分を禁止することができることとしたこと。
9 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続
薬物犯罪等に当たる行為に係る外国の刑事事件に関して、当該外国から条約に基づき、共助の要請があったときは、制限事由が存する場合を除き、没収若しくは追徴の確定裁判の執行等の共助を行うこととしたこと。
10 その他
没収保全と滞納処分との手続の調整その他この法律の実施のため必要な事項は政令及び最高裁判所規則で定めることとしたほか、所要の規定を整備したこと。