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○麻薬中毒者の取扱いについて

(昭和三八年七月一一日)

(薬発第三五三号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通達)

昭和三八年六月二一日をもつて麻薬取締法の一部が改正され、新たに麻薬中毒者に対する措置についての規定が設けられたところであるが、これについては、さきに七月一一日厚生省発表第九一号をもつて事務次官より通達せられたところによるほか、その運用については、更に次の諸点に御留意のうえ遺憾のないように努められたい。

なお、貴管下関係者に対しても関係事項に関し周知徹底方を煩わしたくお願いする。

一 医師の届出

麻薬取締法(以下「法」という。)第五八条の二の規定による医師の都道府県知事に対する届出は、別記様式第一号によることとすること。

なお本規定は実質的には改正前の法第五○条に既に規定されていたところであるが、今般麻薬中毒者に対する措置の一環として第六章の二に規定されたものであること。

二 麻薬取締官等の通報

法第五八条の三の規定による麻薬取締官、麻薬取締員、警察官及び海上保安官の都道府県知事に対する通報は、別記様式第二号によるものであること。ただし、緊急を要する場合には電話連絡等により通報し、その後において文書により所定の通報をするものであること。

三 検察官の通報

法第五八条の四の規定による検察官の都道府県知事に対する通報は、法務省事件事務規定の定めによつて行なわれるものであること。

四 矯正施設の長の通報

法第五八条の五の規定による矯正施設の長の都道府県知事に対する通報は、別記様式第三号によるものであること。

五 当該職員による調査

都道府県知事は、麻薬中毒者又はその疑いのある者について法第五八条の二から法第五八条の五までの規定による届出若しくは通報又は本人若しくはその者の家族その他一般人より申出又は届出があつた場合は、法第五八条の六の規定による精神衛生鑑定医の診察を行なう必要がある者であるかどうかを明らかにするため、直ちに当該職員をして実地にこれらの者の症状、性行、環境を調査させることとすること。この場合において、当該調査にかかる者が診察を必要とする者であると認められたときは、別記様式第四号による調査表を作成することとすること。

六 麻薬中毒者等の診察

(一) 都道府県知事は、五により作成された調査表を添えて法第五八条の六第一項の規定により精神衛生鑑定医に診察をさせることとなるが、この場合においては同条第四項の規定により当該職員を診察に立ち会わせ、診察の適正かつ円滑な実施を図らなければならないこと。

(二) 法第五八条の六第一項及び第三項の規定による診察など拒否した場合は、直接強制はできないが、罰則が設けられているものであること。

(三) 精神衛生鑑定医は、その診察を行なう場合には法第五八条の六第七項の規定により受診者に麻薬中毒の有無及び入院措置の要否に関し意見を求めるとともに、いやしくも、その者を劣等視したり、犯罪人的扱い、非人道的取扱い又は冷淡な言動をなすことのないよう特に注意しなければならないこと。

七 刑事手続との関係

麻薬取締法による入院措置の手続と刑事訴訟法による刑事手続との関係については、別途通知するところによることとすること。

八 診察報告

(一) 精神衛生鑑定医の都道府県知事に対する診断結果の報告は、別記様式第五号によることとすること。

(二) 法第五八条の二第二項及び法第五八条の六第八項の規定による都道府県知事の厚生大臣に対する報告は、別記様式第六号によることとすること。

九 入院措置

都道府県知事は、精神衛生鑑定医の診察の結果、当該麻薬中毒者が法第五八条の八第一項に規定する入院措置の要件に該当する者であると認めるときは、当該精神衛生鑑定医の定めた入院期間、その中毒者を麻薬中毒者医療施設に入院させて必要な医療を行なうこととなるのである。この規定は、その違反に対しては、直接強制を認めたものであるが、いたずらに強制力を用いることなく円滑に入院せしめるよう特に留意すること。

一○ 結果の通知

都道府県知事は、法第五八条の三から法第五八条の五までの規定による通報があつた麻薬中毒者又はその疑いのある者についての措置入院の結果を別記様式第七号により当該官署あて通知すること。

一一 入院期間の継続、延長の手続

法第五八条の八第二項及び第六項(法第五八条の九第二項において準用する場合を含む。)の規定による麻薬中毒者医療施設の管理者の都道府県知事に対する通知は、別記様式第八号によることとすること。

この場合において、入院期間の継続延長の手続は、すみやかに行ない、手続完了前に入院期間が終了する等のことがあつてはならないこと。特に当初の措置入院は、いわば仮入院ともいうべきものであつて、麻薬中毒審査会は、この仮入院の期間内に措置入院の継続の要否及び継続すべき期間を審査決定しなければならないのであるから、麻薬中毒者医療施設の管理者は、措置入院後七日乃至一○日の経過をみて(七日乃至一○日あれば措置入院の要否及び継続すべき期間を十分決定しうるものと思われる)爾後、直ちに都道府県知事に通知すること。

なお、本法による措置入院は、麻薬取締法施行令第四条に規定する麻薬に対する精神的身体的依存の程度により行なわれるものであるから、単に禁断症状の消滅したことのみをもつて直ちに措置入院を要しないものとしてはならないこと。

一二 麻薬中毒審査会

審査会は、必要の都度すみやかにこれを開催しうるよう配意し、特に麻薬禍濃厚地区等を有し、措置入院が頻繁に行なわれる都道府県にあつては、精神衛生鑑定医が定める当初の措置入院期間との関係から最低月二回程度の開催を要するものと考えられること。

一三 措置入院者の取扱上の注意

麻薬中毒者医療施設の管理者は、措置入院者についてその症状を常に適確に把握し、不当に入院を継続させ人権侵害問題を惹起することのないように留意するとともに、行動の制限を行なう場合は、外出の制限、保護室への収容等医療のため欠くことのできない最小限度にとどめ、手錠の類は絶対に使用してはならないこと。また、措置入院者の発受にかかる信書の取扱いについては、人権擁護上微妙な問題のおこるおそれがあるので、麻薬中毒者医療施設関係者が開封することのないように留意し、特に必要がある場合には当該施設の管理者あてに通信をさせる等の配慮を払うこと。

なお、措置入院者が医療の妨げとなる物を所持するときは、その者の入院中当該職員がその物を保管するのであるが、この場合、その物が麻薬等法令で所持を禁止する物であるときは、刑事訴訟法に定める手続により直ちに処置すること。

一四 退院後のアフター・ケア

(一) 麻薬中毒者は、医療の結果、麻薬に対する精神的身体的依存がなくても、再び中毒に陥る危険性を多少とも有しており、退院後のアフター・ケアが重要であることから、都道府県知事は、法第五八条の一二の規定により措置入院者を退院させるときは、あらかじめその者の家族、麻薬中毒者相談員等に連絡すること。この場合において当該職員は、麻薬中毒者相談員に対し、その参考資料としてその措置入院者の環境、措置入院の経過等を別記様式第九号による調査表に記載し、これを交付すること。

(二) 麻薬中毒者相談員は、麻薬中毒者又はその家族等の相談に応ずるにあたつては、中毒者の人格を尊重するとともに相手方からも信頼されるように留意すること。また、地方麻薬対策推進本部、民生委員等の関係機関と常時密接な連絡をとり、麻薬中毒者の相談、指導を円滑に行なえるようにしておくこと。

一五 麻薬中毒者医療施設

(一) 麻薬中毒者医療施設は、麻薬取締法施行規則第一七条に規定しているところであるが、その運用は次により行なわれたいこと。

(イ) 麻薬中毒者の医療のための専門施設を有する精神病院が存するときは、原則として当該病院を使用すること。

(ロ) (イ)の病院が存しないとき、又はこれが存する場合であつても満床のため使用することができないときは、これ以外の国又は都道府県が設置した精神病院(精神病院以外の病院に存する精神病室を含む。)を使用すること。

(ハ) 前記(イ)及び(ロ)によることが著るしく困難な事情があつて止むを得ない場合には、精神衛生法第五条第一項の規定により都道府県知事が指定した精神病室を有する病院を使用すること。

(二) 都道府県知事は、(一)のいずれの施設に措置入院させる場合であつても、当該施設の同意を要するものであるから、あらかじめ麻薬中毒者医療施設と協議し、いつでも措置入院を行なえるようにしておくとともに、当該施設の管理者に法所定の手続を十分了知せしめておくこと。

一六 精神衛生法との関係

麻薬中毒者の措置入院は、その診察には精神衛生鑑定医を、その医療施設には精神病院を使用する等精神衛生行政と密接な関連を有しているので、この二つの行政を行なうについては十分なる連絡調整を行なうこと。

一七 措置費の請求及び支払い

措置費の請求等については、精神衛生法の例と同様であつて、別添契約書(案)、覚書(案)によること。

別添一

別添二

第1号様式

第2号様式

第3号様式

第4号様式

第5号様式

第6号様式 削除

第7号様式

第8号様式

第9号様式