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○麻薬事犯の取扱いについて
(昭和三六年九月八日)
(薬発第三五七号)
(各都道府県知事・各地区麻薬取締官事務所長あて厚生省薬務局長通知)
麻薬事犯の取扱いについては、平素格別の配意を煩わしているところであるが、そのことに関し、特に留意を願いたいと考える諸点を別添のとおりとりまとめたので、お知らせするから、今後ともこの種事犯の取締りにあたり、遺憾のないようにされたい。
記
1 麻薬取締法第五三条の規定に基づく立入検査と犯罪捜査との関係について
(イ) 麻薬取締法第五三条の規定により報告を徴する等の権限は、もつぱら行政取締上の目的のために認められたものであり、このことは同条第三項に明記されているところである。
(ロ) しかしながら、麻薬取締員が同条の規定に基づき立入検査を行なつたところ、麻薬取締法違反の被疑事実を発見し、直ちに犯罪捜査を開始する要があると判断される場合には、爾後の手続は犯罪捜査として行なわれるものであることを相手方に了知せしめ、手続的にも両者の境界を明確にし、以後は刑事訴訟法に従つて捜査を進め、もつて行政調査と犯罪捜査とを混同しないようにすべきはもちろん、いやしくも前者が後者の手段として行なわれたかの如き非難を招くことのないよう、慎重に配意する要がある。
2 けし不正栽培事犯の防止のための指導とこの種事犯の取締りについて
(イ) けしの不正栽培防止については、あへん法施行以来関係各機関の協力を得てその趣旨の普及に努めて来たが、今なお違反があとを絶たず、各地においてこの種事犯の発生をみていることは遺憾にたえない。よつて、今後この種事犯の防遏のため、さらに一段と指導と取締りに努められたい。
(ロ) この種事犯の捜査に当たつては、栽培現場の写真、けしの花、けし坊主、葉、等の写真を作成し、麻薬取締員又はあへん監視員の認定書によつて栽培を禁止されているけしであることを明確にするほか、必要に応じ国又は都道府県の衛生試験所等に鑑定を依頼する等証拠の保全に十分配意されたい。
また、被疑者の取調べに当たつては、特に栽培の目的、栽培を禁止されているけしであることの認識の有無等についての供述を得るよう留意されたい。
(ハ) この種事犯については、単に栽培本数の多少のみに拘泥することなく、あへん採取の目的が認められるもの、以前に注意を受けながら再び栽培を行なつた者等悪質な違反者については、必ず検挙する方針で処理されたい。
(ニ) 押収したけしがらについては、できるかぎりその所有者から所有権放棄書を徴するようにするとともに、その検察官への送致の具体的方法については、検察官の指示を受けるようにされたい。
3 麻薬取締法違反事件の送致について
一般に麻薬取締員の取り扱つた事件中には、当然犯罪として検挙捜査して然るべきものと思料される事案が、単に行政処分又は説諭処分のみで処理されている向もあるやに窺われるので、今後その処理に関しては、部内においては十分の検討を加えるはもちろん、事前に検察官とも協議してその指示を受ける等その処理を適正ならしめるように努められたい。