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○麻薬取締法等の一部を改正する法律の施行について

(平成二年八月二二日)

(発薬第二三七号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

麻薬取締法等の一部を改正する法律(平成二年法律第三三号)は、平成二年六月一九日に公布され、麻薬取締法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成二年政令第二三六号)により、同年八月二五日(薬局開設の許可を受けた者又は医薬品の一般販売業の許可を受けた者の別段の申出に関する改正規定は同年八月二日)から施行されるところである。

これに伴い、麻薬取締法施行令の一部を改正する政令(平成二年政令第二三七号)、麻薬及び向精神薬を指定する政令(平成二年政令第二三八号)、麻薬取締法施行規則等の一部を改正する省令(平成二年厚生省令第四七号)及び大麻取締法施行規則の一部を改正する省令(平成二年厚生省・農林水産省令第二号)が同年八月一日に公布され、同年八月二五日(麻薬取締法施行規則等の一部を改正する省令中薬局開設の許可を受けた者又は医薬品の一般販売業の許可を受けた者の別段の申出に関する改正規定は同年八月二日)から施行されるところである。

この改正は、向精神薬の濫用が諸外国において拡大する一方、我が国においても近年、向精神薬の密売事件等が発生するようになり、濫用の拡大が懸念される状況にあることから、向精神薬の濫用によって生ずる保健衛生上の危害を防止するため、向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等を規制し、向精神薬の濫用の防止を図るとともに、併せて、向精神薬に関する条約を批准し、国際的な濫用防止体制に参画することを主眼とするものである。

したがって、本改正法の施行は、国民の保健衛生上の危害の防止に大きく関係するとともに、国際的にも重要な意義を有するものであることから、次の改正要旨に十分留意のうえ、その施行に万全を期されたく、命により通知する。

第一 麻薬取締法の改正

一 題名及び目的

この法律の題名を「麻薬及び向精神薬取締法」に改めるとともに、法律の目的に向精神薬について必要な取締りを行うことを加え、今回の改正の趣旨を明確にしたこと。

二 取締りの対象となる向精神薬

取締りの対象となる向精神薬として、一○種類の物質を定めるとともに、これらと同様の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物についても、向精神薬として政令で定めることとしたこと。

三 麻薬に関する取締り

(一) 免許の有効期間

麻薬輸入業者、麻薬輸出業者、麻薬製造業者、麻薬製剤業者、麻薬元卸売業者及び麻薬卸売業者の免許の有効期間を一年間延長したこと。

(二) 携帯輸出入

本邦に出入国する者が、厚生大臣の許可を受けて、自己の疾病の治療の目的で携帯して麻薬を輸出入することができることとしたこと。

(三) 譲渡し等

患者から麻薬診療施設の開設者又は麻薬小売業者への麻薬の譲渡し等、麻薬の譲渡し、所持に関する規定を整備したこと。

(四) 廃棄

麻薬診療施設の開設者又は麻薬小売業者が調剤された麻薬を廃棄する場合について、従来の事前許可制を事後の届出制に改めたこと。

(五) 広告

麻薬に関する広告は、何人も、主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行ってはならないこととしたこと。

(六) 犯罪鑑識用麻薬

厚生大臣は、犯罪鑑識の用に供する麻薬について、従来の製造、譲り受け、交付のほか、輸入し、又は外国政府からの要請に応じて当該外国政府に輸出することができることとしたこと。

(七) 罰則

罰金額の引上げその他所要の整備を行ったこと。

四 向精神薬に関する取締り

(一) 免許

向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、小分け若しくは譲渡し又は向精神薬に化学的変化を加えて向精神薬以外のものとすることを業として行う者について、免許制度を設けたこと。

なお、向精神薬輸入業者、向精神薬輸出業者、向精神薬製造製剤業者及び向精神薬使用業者については、厚生大臣の免許とし、向精神薬卸売業者及び向精神薬小売業者の免許については、都道府県知事の免許としたこと。

また、薬事法の規定により薬局開設の許可を受けた者については、別段の申出があった場合を除き、向精神薬卸売業者又は向精神薬小売業者の免許を受けた者とみなし、医薬品の一般販売業の許可を受けた者については、別段の申出があった場合を除き、向精神薬卸売業者とみなすこととしたこと。

(二) 登録

学術研究又は試験検査のため向精神薬を製造し、又は使用する施設の設置者について、登録制度を設けたこと。

なお、国の設置する施設にあっては厚生大臣の登録とし、その他の施設にあっては都道府県知事の登録としたこと。

(三) 輸出入

向精神薬を輸出又は輸入することができる者を特定するとともに、一部を向精神薬について、輸出入ごとの許可制度又は届出制度を設けたこと。

(四) 製造等

向精神薬を製造、製剤又は小分けすることができる者を特定したこと。

(五) 譲渡し等

向精神薬を譲り渡し、又は譲り渡す目的で所持することができる者を特定するとともに、向精神薬の譲渡先を免許業者、病院等の開設者、登録を受けた試験研究施設設置者、向精神薬を記載した処方せんを所持する者等に限定したこと。

(六) 広告

向精神薬に関する広告は、何人も、主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行ってはならないこととしたこと。

(七) 容器等の記載

向精神薬の容器等に「向」の記号等が記載されたものでなければ譲り渡してはならないこととしたこと。

(八) 向精神薬取扱責任者の設置

向精神薬営業者は、向精神薬営業所ごとに一定の資格を有する向精神薬取扱責任者を置かなければならないこととしたこと。

(九) 保管、廃棄等

向精神薬取扱者は、保管、廃棄等について必要な措置を講ずるとともに、事故が生じたときは届け出なければならないこととしたこと。

(一〇) 業務に関する記録

向精神薬取扱者は、向精神薬の種類、業態に応じ、製造、輸出、輸入、譲渡し、譲受け等を行った向精神薬の品名、数量等を記録をし、これを二年間保存しなければならないこととしたこと。

(一一) 業務に関する届出

向精神薬輸入業者、向精神薬輸出業者、向精神薬製造製剤業者、向精神薬使用業者及び向精神薬試験研究施設設置者は、前年中に輸入、輸出、製造した向精神薬の品名、数量等を届け出なければならないこととしたこと。

(一二) 監督

報告の徴収、措置命令、改善命令、向精神薬取扱責任者の変更命令、免許又は登録の取消し、聴聞等、監督に関する規定を整備したこと。

(一三) 向精神薬の濫用者に対する措置

都道府県に置かれた麻薬中毒者の相談に応ずるための職員が、向精神薬を濫用している者等の相談に応ずることができることとしたこと。

(一四) 犯罪鑑識用向精神薬

厚生大臣は、犯罪鑑識の用に供する向精神薬を輸入し、製造し、譲り受け、犯罪鑑識を行う国若しくは都道府県の機関に交付し、又は外国政府からの要請に応じて当該外国政府に輸出することができることとしたこと。

(一五) その他

向精神薬営業者の免許を申請する者、向精神薬試験研究施設設置者の登録を申請する者等は、手数料を納めなければならないこととしたほか、罰則の規定その他所要の規定を整備したこと。

第二 大麻取締法の改正

一 広告

大麻に関する広告は、何人も、主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行ってはならないものとしたこと。

二 譲渡し

大麻研究者は、厚生大臣の許可を受けて、他の大麻研究者に大麻を譲り渡すことができることとしたこと。

三 記録

大麻研究者は、帳簿に使用した大麻の品名、数量等を記録し、それを二年間保存しなければならないこととしたこと。

四 犯罪鑑識用大麻

厚生大臣は、犯罪鑑識の用に供する大麻を輸入し、製造し、譲り受け、犯罪鑑識を行う国若しくは都道府県の機関に交付し、又は外国政府からの要請に応じて当該外国政府に輸出することができることとしたこと。

五 その他

罰則について、営利犯の過重、未遂罪、予備罪、資金等の提供罪、周旋罪及び没収に関する規定を設けたほか、所要の規定を整備したこと。

第三 覚せい剤取締法の改正

一 譲渡し

覚せい剤研究者が厚生大臣の許可を受けて、他の覚せい剤研究者等に譲り渡すことができることとしたこと。

二 広告

覚せい剤に関する広告は、何人も、主として医薬関係者等を対象として行う場合のほか、行ってはならないものとしたこと。

三 犯罪鑑識用覚せい剤

厚生大臣は、犯罪鑑識の用に供する覚せい剤を輸入し、製造し、譲り受け、犯罪鑑識を行う国若しくは都道府県の機関に交付し、又は外国政府からの要請に応じて当該外国政府に輸出することができることとしたこと。

四 その他

罰則の規定その他所要の規定を整備したこと。