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○麻薬取締法の施行について

(昭和二八年四月一七日)

(発第八二号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

麻薬取締法(以下「法」という。)は、本年三月一七日法律第一四号をもつて、麻薬取締法施行令は、三月三一日政令第五七号をもつて公布され、いずれも四月一日より施行され、又麻薬取締法施行規則は、四月一八日厚生省令第一四号をもつて公布即日施行される予定である。

この法律は、麻薬が医療及び学術研究以外の用途に使用されることによつて生ずる保健衛生上の危害を防止するため、その取締の万全を期することを目的として制定されたものであつて、体系等についても旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号以下「旧法」という。)とは根本的に異なるものがある。従つて本法施行の適否如何は、国民の保健衛生上関係するところが大きいのみならず、国際的にも影響を及ぼすものであるから、法制定の趣旨を達成するため左記事項に留意の上その適切なる運用について遺憾のないようされたい。

第一 旧法との主な相違点

(一) この法律において取締を行う麻薬を具体的に列挙して定義したこと。

(二) 家庭麻薬を麻薬取締法に規定する「麻薬」から除外したこと。

(三) 麻薬の輸出を行い得ることとし、これに従い、麻薬取扱者の種類を調整したこと。

(四) 麻薬取締に関する事務の一部を都道府県知事に委任するとともに、各都道府県に麻薬取締官に対応する麻薬取締員を置き、もつて麻薬取締の強化を図つたこと。

(五) 麻薬取締者の帳簿の記載、届出事項等に関する義務を軽減したこと。

第二 法運用上の注意点

(一) 麻薬及び家庭麻薬に関すること。

一 旧法においては、阿片又はコカ葉から抽出される一切のアルカロイドを麻薬としていたのであるが、新法においては、これらのアルカロイドの中で中毒作用等を勘案して左の物を麻薬から除外したこと。

イ 阿片アルカロイド中「フエナントレン」グループ以外のアルカロイド及びこれらの塩類並びにこれを含有する物(例えば、アポモルヒネ、ナルコチン、ナルセイン、タコルニン、パパべリン、ヒドロコタルニン)

ロ トロパコカイン及びその塩類並びにこれらを含有する物

二 旧法においては、千分中二分以下のコデイン、ジヒドロコデイン又はこれらの塩類が検出され、これら以外の麻薬を検出されない物を「家庭麻薬」として、麻薬取締上簡易な取扱を受けていたが、新法においては、千分中十分以下のコデイン、ジヒドロコデイン又はこれらの塩類を含有しこれら以外の麻薬を検出しない物を「家庭麻薬」として麻薬取締法にいう「麻薬」の範囲から除外して一般医薬品としたこと。

(二) 手数料に関すること。

麻薬卸売業者、麻薬小売業者、麻薬施用者、麻薬管理者又は麻薬研究者の免許及び免許証再交付の申請の手数料は、法第一一条第二項の規定により都道府県の収入となるのであるが、昭和二八年度(会計年度)においては、附則第一九項の規定により国庫の収入となるから、手数料として収入印紙を必ず申請書にちよう❜❜❜付させること。

(三) 法律第二四条第一○項の規定による麻薬の譲渡及び法第二九条の規定による麻薬の廃棄に関すること。

法第二四条第一○項の規定により麻薬を譲渡しようとする場合及び法第二九条の規定により麻薬を廃棄しようとする場合は、麻薬卸売業者、麻薬小売業者、麻薬施用者、麻薬管理者、麻薬研究者その他麻薬取扱者以外の物といえども厚生大臣の許可を要するものであるから留意すること。

(四) 譲受証の記載に関すること。

国又は地方公共団体が開設者又は設置者の場合は、「譲受人の氏名又は名称」欄は、当該施設の長の氏名を記載し、公印又は公印に準ずるものを押印すること。

(五) 管理及び保管に関すること。

一 麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者が麻薬を譲り受けた場合は、すみやかに麻薬管理者(麻薬管理者のいない場合は、麻薬施用者)又は譲り受けた麻薬を使用する麻薬研究者に麻薬を管理させるよう指導すること。

二 法第三四条に規定する麻薬の保管は、麻薬以外の医薬品(覚せい剤を除く。)と区別し、かぎをかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならないのであるが、麻薬を本来の目的に使用している場合、例えば麻薬施用者が往診の際に所持する医師鞄に在中の麻薬、調剤中の麻薬は、本条の規定にてい❜❜触するものではないから差し支えないこと。

(六) 麻薬取締員の任命に関すること。

一 麻薬取締法施行令第二条に規定する資格を有する吏員が、法第五四条第四項の規定により麻薬取締員に任命された場合には、法務省より「司法警察員の証」を交付されるからその取扱に留意すること。

二 麻薬取締員に関して毎年四月一日現在においてあらためて、その者の主たる勤務地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検事正と協議するものであり、若し協議が整わないときは任命換えを行わなければならないからその点十分に留意すること。

(七) 麻薬取締員の携帯する小型武器に関すること。

法第五四条第七項の規定により、麻薬取締員は、司法警察員としての職務を行う場合に限り小型武器を携帯できるものであるから、立入検査等の如く司法警察員としての職務以外の職務を行うときは、小型武器を携帯しないように特に留意すること。

(八) 法第五八条の規定による麻薬取締員の麻薬の譲受に関すること。

一 法第五八条の規定により麻薬取締員が、麻薬を譲り受けようとする場合は、事前に許可を受け、許可を受けた麻薬取締員が直接これに当り、情報提供者等を使用しないように注意し、その購入量は、証拠として必要な最小限度に止めること。

二 譲受に当り急を要し、事前にその許可を受けることが困難な場合は、必ず電報又は電話によりその概要を連絡するとともに直ちに許可を申請すること。

(九) 都道府県知事が厚生大臣に提出する報告の様式については別途薬務局長通ちよう❜❜❜をもつて指示する。