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○採血及び供血あつせん業取締法の施行について
(昭和三一年六月二六日)
(発薬第九〇号)
(各都道府県知事あて厚生事務官通達)
採血及び供血あつせん業取締法(以下「法」という。)は法律第一六〇号をもつて、採血業者の納める許可申請手数料の額を定める政令は、政令第二一一号をもつて、採血及び供血あつせん業取締法施行規則は、厚生省令第二二号をもつて、それぞれ別紙のとおり本年六月二五日公布即日施行された。
この法律は、採血及び人の血液の利用について薬事法(昭和二三年法律第一九七号)、医師会(昭和二三年法律第二〇一号)、歯科医師会(昭和二三年法律第二〇二号)等において、規制されていなかつた部分を規制し、血液の利用の適正、採血に伴う危害の防止及び供血者の保護をはかることを目的として制定されたものである。従つて、本法の円滑な施行を図ることにより、薬事法、医師法等関係法規の適正な施行と相まち、近時ますます需要の増大をきたしつつある血液製剤の適正な供給及び血液製剤製造業の妥当な運営並びに往々にして社会的問題を惹起している供血者の保護の万全が期せられるものと考えられるので、本法制定の趣旨を十分理解し、左記事項に留意のうえ、本法運用に関して遺漏なきを期されたく、命によつて通知する。
記
第一 法の要点
一 人の血液の利用の適正を期するとともに、血液製剤等の製造に伴う採血によつて生ずる保健衛生上の危害を防止し、及び供血者の保護を図ることを目的とすること。
二 疾病の治療、輸血、医学的検査又は学術研究のための採血以外は、血液製剤又は医学的検査、学術研究等のために必要があるとして政令で指定する物(以下「血液製剤等」という。)を製造する者が原料とする目的で採血する場合を除いては、何人も、業として、人体から採血してはならないこと。
三 何人も、業として、人体から採取された血液又はこれから得られた物を原料として、血液製剤等又はこれらの副次的製造物以外の物を製造してはならないこと。
四 血液製剤等を製造するために、業として人体から採血しようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならないこと。ただし、当該病院又は診療所の患者のためのみの血液製剤の製造に伴う採血については、この限りでないこと。
五 厚生大臣は、供血者の保護及び人の血液の利用の適正を期するため必要があると認めるときは、採血業者に対して、必要な指示をすることができること。
六 供血あつせん業者になろうとする者は、都道府県知事の許を受けなければならないこと。
七 供血あつせん業者は、都道府県知事の定める基準を越えて、あつせん手数料を請求し、又は受け取つてはならないこと。
八 血液製剤の原料とする目的又は輸血の目的で人体から採血しようとする者について、健康診断その他供血者の健康保護に関する義務を課すること。
第二 法運用上の注意点
一 法第三条第一項第二号に規定される医学的検査、学術研究等のために必要な物は、現在のところ実在しないと考えられるので、差し当つてはこれに基く政令は制定されないが、将来において、これに該当するものが出現することも予想されるので、その場合においてはすみやかにその旨を当省あて具申されたいこと。
二(二) 法第四条第一項の規定による業として採血を行う許可を申請しようとする者は、薬事法第二六条による医薬品製造業の登録を受け、かつ、医療法第七条又は第八条による診療所開設の手続を了している者でなければ実際上業務を行うことができないのであるから、登録を受けているものでない場合には、許可申請と同時に医薬品製造業の登録(公定書外医薬品である血液製剤の場合は、製造許可も必要とする。)申請を行わせ、かつ、これと平行して診療所開設の手続をとるよう指導すること。
(二) 法第四条第一項の規定による許可手数料については、昭和三一年六月二五日政令第二一一号で二〇〇〇円と定められたので、その納付は収入印紙をもつてするよう指導し、遺憾のないよう留意すること。
(三) 法第四条第二項に規定する許可要件のうち、第一号及び第二号については特に判定が困難と思料されるので、平素よりこれに関する事情について十分調査を行つておくようにされたいこと。
三 採血業者について法第五条の規定による指示を行う必要があると思料される場合は、すみやかに、その必要とする理由を当省に具申されたいこと。
なお、法第五条に規定する指示を必要とする場合としては、同条に例示されている事項のほか、次のような場合があると思われるので、これらの場合についてもあわせて考慮されたいこと。
(一) 採血場の清潔が保たれていない場合
(二) 供血者の募集区域が著しく不適当である場合
(三) 供血者の勧誘方法が著しく不適当である場合
(四) 供血代金の支払が不当に遅延している場合
四 法第六条の規定により供血あつせん業の許可の申請があつた場合に、同条第二項第二号、第三号及び第六号について記載事実に疑義を生じた場合は、直接所管公務所に照会する等により真偽を確認して遺憾のないよう措置すること。なお、許可手数料については、自治庁において、地方公共団体手数料令を近く改正して二〇〇〇円とする予定であるから念のため申し添える。
五 法第七条の規定により、都道府県知事はあつせん手数料の基準を定めるのであるが、その手数料は現在の状況においては、供血価格の一割以内が妥当と思料されるから、その範囲内において公示すること。なお、公示を行つた場合は、すみやかにその旨を厚生大臣に報告されたいこと。
六 法第八条に規定する供血あつせん業者の業務上の業務については、これが完全に遵守されているかどうかによつて、特に生血の輸血の場合における供血者の保護及び保健衛生上の危害防止に直接影響するものであるから、この規定の遵守については監督を厳にし、いやしくも違反の事実のないように指導すること。
七 法第一一条第一項の規定により、採血業者について、その許可を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずることが必要であると思料される場合は、すみやかに、その必要とする理由を当省に具申されたいこと。
八 法第一一条第二項の規定により、都道府県知事が、供血あつせん業者の許可を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命じたときは、すみやかに、その内容について、厚生大臣に報告されたいこと。
九 法第一三条に規定する採血者の義務については、その内容とする被採血者の保護に関して従来主として、医師法第二四条の二及び歯科医師法第二三条の二に基く「輸血に関し、医師又は歯科医師の準拠すべき基準」(昭和二七年厚生省告示第一三八号)及び薬事法第三二条第一項に基く生物学的製剤の基準中に部分的に規制されていたのであるが、今後はこれらの事項と相まつて本条によつて規制することとしたので、その運用については十分留意し、遺憾のないよう指導すること。
一〇 昭和三一年六月二五日現在において、薬事法第二六条の規定による医薬品の製造業の登録を受け、血液製剤の製造業を営んでいる者は、本法第四条第一項の規定により許可を受けたものとみなされるので、新たな許可は必要としないが、本法中の採血業者に関する規定はすべて当然に適用されることになるのであるから、これに該当する者に対してはその旨を周知せしめられたい。
一一 昭和三一年六月二五日現在において、有料で、人の血液の提供のあつせんを業としている者は、本法施行後三箇月間は、第六条第一項の規定にかかわらずその業を営むことができるのであるが、でき得る限りすみやかに、本法の規定による許可を受けるよう指導すること。これら既存の業者の許可に当つては、従来の業務の運営状況をも調査の上、法第六条各号に該当しないかどうかを十分検討して許否を決定すること。
なお、昭和三一年九月二五日現在における許可件数を、厚生大臣あて報告されたいこと。