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○毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(その5)の制定及び基準改正について

(平成三年三月六日)

(薬発第二五七号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)

毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(以下「基準」という。)については、昭和五二年二月一四日薬発第一六三号、昭和五六年三月三一日薬発第三三二号、昭和六〇年四月五日薬発第三七五号及び昭和六二年九月一二日薬発第七八四号をもって通知したところであるが、今般、別添1のとおり毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準(その5)を定めるとともに、別添2のとおり五塩化アンチモンについて従来の基準を改正したので、左記事項に留意のうえ、関係各方面に対し周知徹底を図られたい。

昭和五二年二月一四日薬発第一六三号通知の記の第一「毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準」制定の趣旨等について(ただし、1のなお書きを除く。)及び第二運用上留意すべき点について(ただし、3のウのなお書きを除く。)、昭和五六年三月三一日薬発第三三二号通知の記の3のなお書き並びに昭和六二年九月一二日薬発第七八四号通知の記のただし書きは、別添1の基準及び別添2の改正による改正後の基準についても適用されるものであること。

別添1

毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準

(その5)

本基準は、毒物及び劇物取締法(昭和二五年法律第三〇三号)第一六条の二第一項に規定する毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置の方法を品目ごとに具体的に定めたものである。

本基準は、次に掲げる方針に従つてまとめられている。

1 毒物又は劇物の運搬に当たつて、毒物又は劇物が飛散し、漏れ又は流れ出るなどの結果、保健衛生上の危害が不特定又は多数の者に及ぶことのないよう、早期に採るべき措置を考慮したものであること。

2 タンクローリー、タンクコンテナ等による運搬事故を想定したものであるが、運搬時以外の漏えい事故等についても適用し得るものであること。

3 なお、基準中に用いられている用語で「DSC法」とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry‥示差走査熱量計)を用い、数mgの試料を入れたセルと標準の不活性物質を入れたセルとを加熱炉内で一定昇温速度で加熱し、試料と不活性物質との熱量変化の差を検出することにより、試料の発熱、吸熱などの熱挙動を調べるものである。

本法には試料の蒸発を抑えた密封セルを用いたDSC試験や加圧DSC試験があるが、これらにより物質の熱分解時の分解開始温度(TDSC)や発熱量などに関する情報が得られる。そのため、DSC法は熱分解の起こり易さや熱分解の危険性の大きさを知るためのスクリーニング試験として用いられている。

なお、TDSCは断熱下での熱分解開始温度(TAD)と相関関係にあるが、TDSCはTADに比べて五〇~一〇〇℃高い値を示すため、実際の熱分解はTDSCより五〇~一〇〇℃低い温度で開始することに注意する必要があること。

目次

毒物

1 EPN(ただし、1.5%以下を含有する製剤は劇物

2 エチルチオメトン(ただし、5%以下を含有する製剤は劇

物)

3 パラコート

4 六弗化セレン

5 ヘキサフルオロ砒酸リチウム

劇物

6 五弗化アンチモン

7 ヘキサフルオロアンチモン酸カリウム

8 ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム

9 硼弗化アンチモン

10 MIPC

11 ダイアジノン

12 EDDP

13 硅弗化錫

14 硅弗化鉛

15 フェンバレレート

16 カルタップ

17 DCIP

18 ジクワット

19 DDVP

20 PAP

21 MPP

22 DEP

23 トリフルオロメタンスルホン酸

24 硼弗化テトラエチルアンモニウム

25 NAC

26 MTMC

27 BPMC

28 メトミル

別名:エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト

毒物:(エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト及びこれを含有する製剤。1.5%を超えるもの。)

劇物:(エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト1.5%以下を含有する製剤。)

(性状) 淡黄色結晶、融点36℃。蒸気圧9.5×10^-7mmHg(25℃)。

水にほとんど溶けない。有機溶剤に溶けやすい。工業品は暗褐色液体。

別名:ジスルホトン、ジエチル―S―(エチルチオエチル)―ジチオホスフェイト

S

C2H5O\∥

P―S―CH2―CH2―S―C2H5

C2H5O/

毒物:(ジエチル―S―(エチルチオエチル)―ジチオホスフェイト及びこれを含有する製剤。5%を超えるもの。)

劇物:(ジエチル―S―(エチルチオエチル)―ジチオホスフェイト5%以下を含有する製剤。)

(性状) 無色~淡黄色の特異臭のある液体。引火点156℃。沸点62℃(0.01mmHg)。比重(d4^20)1.14。蒸気圧1.8×10^-4mmHg(20℃)。水にほとんど溶けない(22℃で水100mlに2.5mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:パラコートジクロリド、1,1’―ジメチル―4,4’―ジピリジニウムジクロリド

毒物:(1,1’―ジメチル―4,4’―ジピリジニウムヒドロキシド、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤)

(性状) 無色の吸湿性結晶。約300℃で分解する。比重(d4^20)1.24~1.26。中性、酸性下で安定。アルカリ性で不安定。水溶液中紫外線で分解。水に溶けやすい(20℃で水100mlに70g溶ける)。工業品は、暗褐色又は暗青色の特異臭のある水溶液。

別名:ヘキサフルオロセレン

SeF6

毒物:(セレン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 無色の気体。比重6.7(空気1として)。-47℃で昇華する。臨界温度72℃。水及び有機溶剤にほとんど溶けない。空気中で発煙する。

別名:

Li[AsF6]

毒物:(砒素化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 白色の粉末。融点280℃(分解)。水に溶けやすい(25℃で水100mlに39g溶ける。)。エチレングリコール、テトラヒドロフランに可溶。

別名:弗化アンチモン(V)

SbF5

劇物:(アンチモン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 無色、刺激性の油状液体。比重(d4^23)2.99。融点6℃。沸点150℃。水により激しく加水分解する。空気中で発煙(弗化水素ガス)し、刺激性が強い。ガラスを腐食する。

別名:

K[SbF6]

劇物:(アンチモン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 白色の結晶性粉末。350℃で分解する。水に可溶。有機溶剤にほとんど溶けない。

別名:

Na[SbF6]

毒物:(アンチモン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 白色の結晶性粉末。250℃で分解する。水に可溶。有機溶剤にほとんど溶けない。

別名:テトラフルオロホウ酸アンチモン

Sb[BF4]3

劇物:(アンチモン化合物及びこれを含有する製剤、硼弗化水素酸塩類)

(性状) 市販品は無色の水溶液。比重1.44(34%)。エタノールにほとんど溶けない。

別名:イソプロカルブ、2―イソプロピルフェニル―N―メチルカルバメート

劇物:(2―イソプロピルフェニル―N―メチルカルバメート及びこれを含有する製剤。1.5%を超えるもの。)

(性状) 類白色のフレーク状個体。融点89~91℃。180℃で分解する。蒸気圧2.1×10^-5mmHg(20℃)。水に極めて溶けにくい(20℃で水100mlに26.5mg溶ける)。アセトン、メタノールに溶けやすく、ベンゼン、キシレンに溶けにくい。

別名:2―イソプロビル―4―メチルピリミジル―6―ジエチルチオホスフェイト

劇物:(2―イソプロビル―4―メチルピリミジル―6―ジエチルチオホスフェイト及びこれを含有する製剤。1%を超えるもの。)

(性状) 淡褐色の特異臭のある透明液体。沸点83~84℃(0.002mmHg)。比重(d4^20)1.12。引火点166℃。蒸気圧1.4×10^-4mmHg(20℃)。水にほとんど溶けない(20℃で水100mlに4mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:エジフェンホス、エチルジフェニルジチオホスフェイト

劇物:(エチルジフェニルジチオホスフェイト及びこれを含有する製剤。2%を超えるもの。)

(性状) 無色~淡褐色の特異臭のある液体。引火点210℃。沸点154℃(0.01mmHg)。比重(d4^20)1.23。水にほとんど溶けない(20℃で水100mlに5.6mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:ヘキサフルオロケイ酸錫

Sn[SiF6]・nH2O

劇物:(無機錫塩類、硅弗化水素酸塩類及びこれを含有する製剤)

(性状) 白色の結晶性粉末。300℃で分解する。水に可溶。エタノールにほとんど溶けない。

別名:ヘキサフルオロケイ酸鉛

Pb[SiF6]・4H2O

劇物:(鉛化合物、硅弗化水素酸塩類及びこれを含有する製剤)

(性状) 白色の結晶性粉末。320℃で分解する。水にやや溶けにくい(水100mlに2.11g(Pb[SiF6]として)溶ける。)。エタノールにほとんど溶けない。

別名:(RS)-α-シアノ-3-フェノキシベンジル=(RS)-2-(4-クロロフェニル)-3-メチルブタノアート

劇物:(有機シアン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 淡黄褐色のわずかに特異臭のある粘稠な液体。引火点256℃。沸点250℃(5.5mmHg)。比重(d4^25)1.18。蒸気圧1.1×10^-8mmHg(25℃)。水にほとんど溶けない(20℃で水100mlに0.1mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩

CH2SCONH2

CH3\    |

N――CH      ・HCl

CH3/    |

CH2SCONH2

劇物:(1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン、その塩類及びこれらのいずれかを含有する製剤。1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパンとして2%を超えるもの。)

(性状) 白色粉末、融点179~181℃(分解)。水に溶けやすい(25℃で水100mlに20g溶ける)。メタノール、エタノールに極めて溶けにくい。アセトン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン、n-ヘキサンにほとんど溶けない。

別名:ジ(2-クロルイソプロピル)エーテル、2,2’-ジクロルジイソプロピルエーテル

Cl-CH2-CH-O-CH-CH2-Cl

|    |

CH3   CH3

劇物:(ジ(2-クロルイソプロピル)エーテル及びこれを含有する製剤)

(性状) 淡黄色の特有の刺激臭のある透明液体。沸点187℃。引火点85℃。比重(d4^20)1.11。蒸気圧0.56mmHg(20℃)。水に極めて溶けにくい(20℃で水100mlに12g溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:ジクワットジブロミド、2,2’-ジピリジリウム-1,1’-エチレンジブロミド

劇物:(2,2’-ジピリジリウム-1,1’エチレンジブロミド及びこれを含有する製剤。)

(性状) 淡黄色の吸湿性結晶。約300℃で分解する。比重(d4^20)1.20。水に溶けやすい(20℃で水100mlに70g溶ける)。中性、酸性下で安定。アルカリ性で不安定。水溶液中紫外線で分解。工業品は、暗褐色の水溶液。

別名:ジクロルボス、ジメチル-2,2-ジクロルビニルホスフェイト

O   H

CH3O \ ∥   |  / Cl

P-O-C=C

CH3O /        \ Cl

劇物:(ジメチル-2,2-ジクロルビニルホスフェイト及びこれを含有する製剤)

(性状) 無色又はごく薄い黄色のエーテル様臭気のある透明な液体。沸点140℃(20mmHg)。比重(d4^20)1.42。蒸気圧1.2×10^-2mmHg(20℃)。水にやや溶けにくい(20℃で水100mlに1g溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。水中で徐々に加水分解する。

別名:フェントエート、ジメチルジチオホスホリルフェニル酢酸エチル

劇物:(ジメチルジチオホスホリルフェニル酢酸エチル及びこれを含有する製剤。3%を超えるもの。)

(性状) 無色結晶又は液体。融点17.5℃。蒸気圧3.75×10^-5mmHg(40℃)。水にほとんど溶けない(20℃で水100mlに1.1mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。工業品は赤褐色の芳香性刺激臭のある油状液体。

別名:フェンチオン、ジメチル-4-メチルメルカプト-3-メチルフェニルチオホスフェイト

劇物:(ジメチル-4-メチルメルカプト-3-メチルフェニルチオホスフェイト及びこれを含有する製剤、2%を超えるもの。)

(性状) 無色又は淡褐色の弱い特異臭のある液体。引火点176℃。沸点87℃(0.01mmHg)。比重(d4^20)1.25。蒸気圧3.0×10^-5mmHg(20℃)。水にほとんど溶けない(20℃で水100mlに5.4~5.6mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:トリクロルホン、トリクロルヒドロキシエチルジメチルホスホネイト

O

CH3O\ ∥

P-CH-CCl3

CH3O/   |

OH

劇物:(トリクロルヒドロキシエチルジメチルホスホネイト及びこれを含有する製剤10%を超えるもの。)

(性状) 白色の弱い特異臭のある結晶。融点76~81℃。沸点100℃(0.1mmHg)。蒸気圧7.5×10^-6mmHg(20℃)。水に溶けやすい(25℃で水100mlに15.4g溶ける)。脂肪族炭化水素以外の有機溶剤に溶けやすい。

別名:

CF3SO3H

劇物:(トリフルオロメタンスルホン酸及びこれを含有する製剤。10%を超えるもの。)

(性状) 無色、強い刺激臭の液体。比重(d4^25)1.698。融点-40℃。沸点162℃。蒸気圧57.5mmHg(91℃)。水に接触すると発熱する。空気中で発煙する。吸湿性が強い。水に可溶。アルコール、アセトンに可溶。

別名:テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム

(C2H5)4N[BF4]

劇物:(硼弗化水素酸及びその塩類)

(性状) 白色の結晶性粉末。385℃で分解する(DSC法)。水に溶けやすい(25℃で水100mlに29.1g溶ける。)。メタノールに可溶。

別名:カルバリル、N-メチル-1-ナフチルカルバメート

劇物:(N-メチル-1-ナフチルカルバメート及びこれを含有する製剤。5%を超えるもの。)

(性状) 白色~淡黄褐色粉末。融点140℃。蒸気圧5×10^-3mmHg(26℃)。水に極めて溶けにくい(30℃で水100mlに12mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:メトルカルブ、3-メチルフェニル-N-メチルカルバメート

劇物:(3-メチルフェニル-N-メチルカルバメート及びこれを含有する製剤。2%を超えるもの。)

(性状) 白色又は淡紅色の特異臭のあるフレーク状固体。融点76~77℃。蒸気圧1.1×10^-3mmHg(20℃)。水に溶けにくい(30℃で水100mlに0.26g溶ける)。アセトン、メタノールに溶けやすく、ベンゼン、キシレンに溶けにくい。

別名:フェノブカルブ、2-(1-メチルプロピル)-フェニル-N-メチルカルバメート

劇物:(2-(1-メチルプロピル)-フェニル-N-メチルカルバメート及びこれを含有する製剤。2%を超えるもの。)

(性状) 白色又は淡褐色の固体。融点31~32℃。蒸気圧7.4×10^-5mmHg(20℃)。水に極めて溶けにくい(20℃で水100mlに42mg溶ける)。有機溶剤に溶けやすい。

別名:メソミル、S-メチル-N-[(メチルカルバモイル)-オキシ]-チオアセトイミデート

O

CH3-C=NOC-NHCH3

S-CH3

劇物:(S-メチル-N-[(メチルカルバモイル)-オキシ]-チオアセトイミデート及びこれを含有する製剤。)

(性状) 白色粉末。融点78~79℃。5×10^-5mmHg(25℃)。水にやや溶けやすい(25℃で水100mlに5.8g溶ける)。アセトン、エタノール、メタノールに溶けやすい。

別添2

毒物及び劇物の運搬事故時における応急措置に関する基準の改正

昭和六十年四月五日薬発第三七五号通知の別添1の目次中「45 五塩化アンチモン」を「45 削除」に改め、同通知の別添1の五塩化アンチモンの基準を削り、新たな基準を次のように定める。なお、別添1の基準の前文については、新たな基準についても適用する。

目次

劇物

1 五塩化アンチモン

[ 五 塩 化 ア ン チ モ ン ]

別名:塩化アンチモン(Ⅴ)

SbCl5

劇物:(アンチモン化合物及びこれを含有する製剤)

(性状) 淡黄色液体。比重(d4^20)2.346。融点2.8℃。沸点79℃(22mmHg)。加熱すると分解して塩素ガスを発生し、塩化アンチモン(Ⅲ)になる。水により加水分解し、白煙(塩化水素ガス)を発生して酸化アンチモン(Ⅴ)(Sb2O5)になる。塩酸、クロロホルムに可溶。