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○毒物及び劇物取締法等の一部を改正する法律等の施行について

(昭和四七年七月二一日)

(発薬第六九四号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通達)

先般の第六八回通常国会において成立した毒物及び劇物取締法等の一部を改正する法律(昭和四七年法律第一○三号―別添一)は、毒物及び劇物取締法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和四七年政令第二五一号―別添二)によつて本年八月一日を施行期日と定められ、毒物及び劇物指定令の一部を改正する政令(昭和四七年政令第二五三号―別添三)、毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令(昭和四七年政令第二五二号―別添四)及び毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令(昭和四七年厚生省令第三九号―別添五)とともに同日から施行されることとなつたので、左記の諸点にご留意のうえ、その適正な運用を図られたい。

第一 毒物及び劇物指定令及び毒物及び劇物取締法施行規則の一部改正について

一 改正の要旨

今回の毒物及び劇物指定令(以下「指定令」という。)の改正においては、一品目が毒物に、五品目が劇物に指定され、また、二品目について毒物から劇物に指定換えが行なわれた。

また、これに伴い毒物及び劇物取締法施行規則(以下「施行規則」という。)の別表第一及び別表第二が改正され、今回指定された品目のすべてが農業用品目または特定品目のいずれかに指定された。以上の内容は、次表のとおりであるが、各品目の性状等に関しては、参考資料1(別添六)のとおりである。

 

指定令

品目

施行規則

種類

毒物に指定されたもの

一条―一三の二

ジメチル―(イソプロピルチオエチル)―ジチオホスフエイト及びこれを含有する製剤。ただし、ジメチル―(イソプロピルチオエチル)―ジチオホスフエイト四%以下を含有するものを除く。

別表第一毒物一○の二

農業用品目

劇物に指定されたもの

二条―一―三○の二

酢酸エチル

別表第二―九の二

特定品目

二条―一―三七の四

ジエチル―(五―フエニル―三―イソキサゾリル)―チオホスフエイト及びこれを含有する製剤

別表第一劇物一七の四

農業用品目

二条―一―五○の二

ジメチル―(イソプロピルチオエチル)―ジチオホスフエイト四%以下を含有する製剤

別表第一劇物二八の二

二条―一―七六の二

トルエン

別表第二―一七の二

特定品目

二条―一―八三の二

二―(フエニルパラクロルフエニルアセチル)―一・三―インダンジオン及びこれを含有する製剤。ただし、二―(フエニルパラクロルフエニルアセチル)―一・三インダンジオン○・○二五%以下を含有するものを除く。

別表第一劇物四九の二

農業用品目

二条―一―九八の四

三―メチル―五―イソプロピルフエニル―N―メチルカルバメート及びこれを含有する製剤

別表第一劇物五八の四

毒物から劇物に指定換えとなつたもの

二条―一―九八の二

メタンアルソン酸カルシウム及びこれを含有する製剤

別表第一劇物五八の二

農業用品目

二条―一―九八の三

メタンアルソン酸鉄及びこれを含有する製剤

別表第一劇物五八の三

二 経過規定

(一) 今回指定された酢酸エチルとトルエンに関しては、すでに大量に製造・輸入・販売されている実情にかんがみ、昭和四七年一二月三一日までは、昭和四七年八月一日(施行日)現在、現にその製造業・輸入業又は販売業を営んでいる者が引き続き当該営業を営む場合は、毒物及び劇物取締法(以下「法」という。)第三条(禁止規定)、第七条(毒物劇物取扱責任者)及び第九条(登録の変更)の規定は適用されず、また、同日現在現に存する物に関しては、法第一二条(毒物または劇物の表示)第一項及び第二項の規定は適用されないこととされた(附則第一項及び第二項)。したがつて、現にこれらの物の製造業等を営んでいる者は本年中はそのまま営業を続けても罰則の適用は受けないが、これはあくまでも経過的な措置であるので、できるだけ早く登録を受け、取扱責任者を設置するよう指導することが法の趣旨にそうものである。また、現に存する物に関しては、法第一二条第三項、第一四条、第一五条、第一五条の二、第一六条等の規定の経過措置は定められていないので、これらの規定は昭和四七年八月一日から適用されるものである。

(二) 今回の指定令改正で毒物から劇物に指定換えとなつたメタンアルソン酸カルシウムおよびこれを含有する製剤並びにメタンアルソン酸鉄およびこれを含有する製剤に関しては、昭和四七年八月一日現在に存し、かつ従来の「毒物」の表示がなされているものについては、引き続きその表示がなされている限り、「劇物」の表示に改める必要はないものとされた(附則第三項)。

第二 毒物及び劇物取締法、同法施行令及び同法施行規則の一部改正について

一 興奮、幻覚または麻酔の作用を有する物に関する規則

(1) 改正の要旨

イ 最近、シンナー等有機溶剤製品の乱用が全国的に青少年の間にまんえんし、国民の保健衛生上ゆゆしい問題が生じている現状にかんがみ、法第三条の三の規定が加えられて、興奮、幻覚または麻酔の作用を有する毒物または劇物(これらを含有する物を含む。)であつて政令で定めるものを、みだりに摂取しまたは吸入する行為およびみだりに摂取しまたは吸入する目的でこれらの物を所持する行為が禁止され、これに違反した者には三万円以下の罰金が科せられることとなつた(法第二四条の四)ほか、これらの行為が行なわれることの情を知つてこれらの物を販売しまたは授与した者も二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処されまたはこれを併科されることとなつた(法第二四条の二第一号)。

ロ 法第三条の三に規定する政令で定める物として、酢酸エチル、トルエンまたはメタノールのいずれかを含有するシンナー(塗料の粘度を減少させるために使用される有機溶剤をいう。)および接着剤が指定された(毒物及び劇物取締法施行令(以下、「施行令」という。)第三二条の二)。

(二) 運用上留意すべき事項

イ 法第三条の三でいう「みだりに摂取し、吸入」するとは、その目的、態様等から判断して社会通念上正当とは認められない場合をいうものであり、シンナー等を用いる工場、事業所等で労働者が作業中その蒸気を含んだ空気を呼吸する場合、学術研究上必要な実験のために摂取・吸入する場合等は含まれない。また、同条にいう「摂取」とは口から液体状のものを流入させること等をいい、「吸入」とは口または鼻から気体状のものを吸い込むことをいう。さらに、「所持」とは対象たる物を自己の支配下に置くことの意であり、必ずしも携帯していることを要するものではない。

ロ 法第二四条の二第一号では、法第三条の三に規定する政令で定める物のいわゆる知情販売に対してきびしい罰則がかけられたが、これはシンナー等有機溶剤製品の乱用が主として青少年の間で行なわれていることにかんがみ、これらの有害な物の乱用を助長するような悪質な販売者等をきびしく規制してこれらの物が乱用者の手にわたることを未然に防止しようというものである。したがつて、法第二四条の二第一号の規定により罰則が科せられる者は、塗料販売業者、文房具販売業者等だけでなく、シンナー接着剤を販売・授与する者のすべてを含むものであり、また販売・授与は、登録の前提としての禁止規定である法第三条でいう販売・授与とは異なり、業として行なうものに限られるものではなく、一回限りの行為をも含むものである。なお、ここでいう「……情を知つて」とは、交付を受ける者がこれらの物を摂取・吸入することを確信している場合は勿論具体的な裏づけに基づいて「たぶん摂取・吸入するであろう」との未必的な認識を持つている場合も含むが、具体的な裏付けを欠いた単純な可能性の認識だけでは足りないものである。

ハ 施行令第三二条の二で指定された酢酸エチル、トルエンまたはメタノールを含有するシンナーおよび接着剤とは、酢酸エチル、トルエン、メタノールのいずれか一つを含有していればよく、また、これら劇物の含量について限度は設けられていない。この指定にあたつては、有機溶剤の乱用防止という見地から、いわゆるシンナー遊びに実際に使用されているものに限定されたものであり、酢酸エチル、トルエン、メタノールの原体は指定されていない。なお、シンナー・接着剤は、それ自体毒物、劇物ではないので、シンナー・接着剤の製造業者、販売業者等は、法第二二条第五項の業務上取扱者になることがある場合は、格別、毒物劇物営業者として登録等の規制をうけることはないものである。

(三) その他

イ 現在、いくつかの県で青少年保護育成条例等によつて、シンナー・接着剤等に関する規制が行なわれているが、これらの条例とこの法律とは目的とするところに違いがあるので、法第三条の三の規定の新設により、条例の規定が無効になるものではない。ただし、法律および条例の両方の構成要件に該当する行為に関しては、観念的競合となつて重い罰則を規定しているこの法律によつて処断されることとなる。

ロ シンナー・接着剤の乱用行為の実態、シンナー・接着剤の組成、シンナー・接着剤の乱用による保健衛生上の危害およびシンナー・接着剤の薬理作用に関しては、参考資料二(別添七)のとおりである。

二 引火性、発火性または爆発性のある毒物・劇物に関する規制

(一) 改正の要旨

イ 最近、発火性または爆発性のある劇物を不法な目的に使用する事例が相次いで発生し、ひいてはその使用の過程における保健衛生上の危害の発生も憂慮されるところから、法第三条の四の規定が加えられて、業務その他正当な理由によることなく引火性・発火性または爆発性のある毒物または劇物であつて政令で定めるものを所持する行為が禁止され、これに違反した者は、六月以下の懲役若しくは三万円以下の罰金に処し、または併科されることとなつた(法第二四条の三)。

ロ また、これらの危険な毒物または劇物が、これらを不法な目的に使用するおそれがある者の手に渡ることを未然に防止するために、法第二四条の二第二号の規定により、業務その他正当な理由によることなく所持することの情を知つてこれらの物を販売または授与する行為もあわせて禁止され、これに違反した者は、二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処され、またはこれを併科されることとなつたほか、法第一五条に三項が加えられて、これらの物を交付する場合には、厚生省令の定めるところにより交付を受ける者の氏名および住所を確認し、厚生省令の定めるところによりその確認に関する事項を帳簿に記載しなければならないこととされ、さらにこの帳簿を五年間保存する義務が課せられ、これらの規定に違反した者は、法第二五条第二号の二の規定により、一万円以下の罰金に処されることとなつた。

ハ 法第三条の四に規定する政令で定める物として塩素酸塩類、ナトリウムおよびピクリン酸が指定された(施行令第三二条の三)。

ニ 法第一五条第二項に規定する交付を受ける者の確認は、施行規則第一二条の二の規定により、交付を受ける者から身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等交付を受ける者の氏名及び住所を確かめるに足りる資料の提示を受けて行なうものとされたが、ただし次の場合は例外的にこの資料の提示は必要ないこととされた。

(イ) 毒物劇物営業者と常時取引関係にある者、毒物劇物営業者が農業協同組合その他の協同組織体である場合におけるその構成員等その氏名および住所を毒物劇物営業者が知しつしている者に交付する場合

(ロ) 前記(イ)の代理人、使用人その他の従事者であることが明らかな者にその者の業務に関し交付する場合

(ハ) 毒物劇物営業者と常時取引関係にある法人または毒物劇物営業者が農業協同組合その他の協同組織体である場合におけるその構成員たる法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者であることが明らかな者にその者の業務に関し交付する場合

(ニ) 官公署の職員であることが明らかな者にその者の業務に関し交付する場合

ホ 法第一五条第三項に規定する確認に関して帳簿に記載すべき事項は、施行規則第一二条の三の規定により、交付した劇物の名称、交付の年月日および交付を受けた者の氏名および住所とされた。

(二) 運用上留意すべき事項

イ 法第三条の四でいう「業務その他正当な理由」によるものではない所持とは、社会通念上正当とは認められない目的に使用するために所持する場合をいうものであり、引火性・発火性または爆発性を利用すると否とにはかかわらない。ここでの構成要件該当の認定は、「いかなる目的をもつた所持であるか」という見地から行なわれるものであり、その所持自体がこの法律その他の法令に違反しているからといつて直ちに「業務その他の正当な理由」によらない所持になるものではない。

ロ 法第二四条の二第二号でいう「……情を知つて」は、「業務その他正当な理由によらない」ことを未必的に認識している場合も含むことは同条第一号の場合と同様である。

ハ 法第一五条第二項の交付を受ける者の確認に関する規定は、法第一四条の譲渡手続が所有権移転の相手方としての譲受人をチェックする機能しか果たしていないため、事実行為としての「交付」を受ける者がこれらの毒劇物を不法目的に使用することを抑止できないことを考慮して加えられた規定である。したがつて、実際に毒劇物を受けとる者であれば、譲受人本人、その代理人、使用人その他の従業者に限らず、委託運送する場合の運転者、郵送する場合の郵便局の係員等も確認の対象に含まれる。また、この確認業務の主体は毒物劇物営業者に限られているため、営業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者であれば確認義務は課せられるが、委託運送する場合の運転者、郵送する場合の配達人等には、この義務はない。なお、この確認手続は、法第一四条の譲渡手続とは、そのねらいとするところが異なるものであるから、譲受人と交付を受ける者が一致する場合にも省略することは認められない。

ニ 施行令第三二条の三で指定された劇物のうち、塩素酸塩類およびピクリン酸は爆発性のある劇物として、ナトリウムは発火性のある劇物として指定されたものである。ここでの指定も不法目的に使用されている実例があるものについて行なわれた。

塩素酸塩類には、大量に流通しているものとして農薬(除草剤)があるが、市販品目のうちこれに該当するものは、次のとおりである。

(昭)クロレートソーダ 昭和電工(塩素酸ナトリウム九七%以上)

デゾレート 日本カーリツト(塩素酸ナトリウム九八%以上)

ダイカル 大日本インキ化学工業(塩素酸ナトリウム九八%以上)

クロレートソーダ 昭和電工(塩素酸ナトリウム九八・五%以上)

クサトール 保土谷化学工業(塩素酸ナトリウム九八・五%以上)

ダイソレート 大阪曹達(塩素酸ナトリウム九八・五%以上)

ポロクロール水溶剤 北海道曹達(塩素酸ナトリウム九八・五%以上)

ホ 施行規則第一二条の二柱書にいう交付を受ける者の氏名および住所を確かめるに足りる資料とは、同条に例示されているもののように、氏名および住所の記載があつて一定の公証力があることを要するものである。

同条ただし書は、氏名および住所を知しつしている場合を例外としているが、店舗の付近に居住し、住所・氏名が明らかな場合、過去に確認したことがあり、その旨帳簿に記載がある場合は、これに該当する。また、ここでいう協同組織体とは農業協同組合のほか、民法上の組合等法令上の根拠を有するものをいう。同条ただし書では氏名、住所を知しつしている者の代理人、使用人その他の従業者等または官公署の職員であることが明らかな者にその者の業務に関し交付する場合も例外とされているが、この場合、これらの者の代理関係、雇傭関係等の関係および業務に関するという事実については、営業者がこれを知しつしている場合のほか、その者の持参する法第一四条に規定する譲受証の記載等からみて明らかな場合、氏名、住所を知しつしている本人またはその者の勤務先への問合せにより明らかな場合等が含まれるものである。

(三) その他

爆発性等のある劇物の性状および劇物を利用した爆発物使用事例等については、参考資料三(別添八)のとおりである。

三 事故の際の措置の強化

(一) 改正の要旨

法第一六条の二に規定する事故の際に届出をすべき官公署として従来の保健所、警察署のほかに、あらたに消防機関が加えられたほか、同条に第二項が加えられて、毒物劇物営業者および特定毒物研究者に対してその取扱いに係る毒物劇物が盗難にあい、紛失したときの警察署に対する届出義務が課せられた。この届出を怠つた者は、一万円以下の罰金に処せられることとされた(法第二五条第三号)。

(二) 運用上留意すべき事項

消防機関については、毒物劇物の事故の際、応急措置を講ずる等実際の事故対策にあたるのは消防機関が大部分である現状にかんがみ、届出先として追加されたものである。ここでいう消防機関とは、消防本部、消防署および消防団をいう。なお、海上および沿岸における毒物劇物の事故の際は、保健所、警察署または消防機関のほかに、海上保安署等の海上保安庁の機関にも届出ることが事故の処理上適切と考えられる。

盗難または紛失の場合の届出に関しては、従来格別の規定はなかつたが、近時、とくに爆発性等のある劇物を中心として盗難、紛失の事例が相次いでおり、これらの物が不法の目的に使用されていることも考えられるところから、警察署に対する届出があらたに義務づけられたものである。なお、この規定は、法第二二条第五項の規定により一般の業務上取扱者にも準用されるので、これらの者のうちとくに最近、毒劇物の盗難、紛失が相次いでいる大学の研究室等に対する周知徹底を図る必要がある。なお、文部省に対しては学校における毒劇物の管理の強化についてすでに本職から依頼済である。

(三) その他

爆発性等のある劇物の盗難、紛失状況および前記文部省に対する依頼内容については、参考資料四(別添九)のとおりである。(別添九略)

四 その他

(一) 手数料に関する改正

この法律による登録等の手数料の額は、従来法第二三条に規定されていたが、最近の立法例からみて、手数料の額は政令に委任することが通常であることにかんがみ、今回、法第二三条が改正され、手数料の額は申請に対する審査または毒物劇物取扱者試験の実施に要する実費を勘案して政令で定める額とされた。施行令では、従来の法定額と同一の額が定められたが、実費を勘案しその改訂を検討中である。

(二) 罰金の引上げ

最近の物価、人件費の高騰にかんがみ、先の通常国会で罰金等臨時措置法の一部が改正され罰金の最低額が引き上げられたが、これと同一の方針により、今回の法改正の中で法第二五条の罰金について、五、○○○円から一万円への引上げが行なわれた。

別添一~九略