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○毒物及び劇物指定令、毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令及び毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令の施行について

(昭和三一年六月一二日)

(薬発第二二七号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)

毒物及び劇物取締法の規定に基いて、毒物及び劇物指定令及び毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令が、昭和三一年六月一二日政令第一七九号及び同日政令第一七八号をもつてそれぞれ別紙第一及び別紙第二のとおり公布され、また、これに伴つて、毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令が同日厚生省令第二○号をもつて別紙第三のとおり公布され、それぞれ、従来市販されていなかつた物については即日、市販されていた物については公布の日から六○日を経過した日、すなわち昭和三一年八月一一日から施行されることになつた。

今回あらたに制定、公布された毒物及び劇物指定令は、最近農業用等に用いられるようになつた薬品中に危険性の多い物があるので、特定毒物、毒物、劇物又は着色すべき農業用劇物として指定し、その取扱に慎重を期するための法的措置を講ずることとなつたものであり、これに伴つて一定の農業用劇物について毒物及び劇物取締法施行規則を改正して着色せしめることとしている。また毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令は毒物及び劇物指定令によりあらたに指定された特定毒物について使用者、用途等の基準を定めるとともに、その他の特定毒物の使用に関する制限を一切緩和するためのものである。

これが施行については、特に左記の点に留意し、保健衛生上の危害防止に万遺憾のないようにされたい。

第一 毒物及び劇物指定令の主な内容

一 毒物及び劇物取締法(以下「法」という。)別表第一第一九号及び別表第三第八号の規定に基き、毒物及び特定毒物として次の物が指定されたこと。(第一条第一号、第二号、第三条)

一 ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイト及びこれを含有する製剤商品名メタシストツクスといわれているもので、滲透性殺虫剤として使用される。

二 モノフルオール酢酸アミド及びこれを含有する製剤

商品名フツソールといわれているもので、滲透性殺虫剤として使用される。

二 法別表第一第一九号の規定に基き、毒物として次の物が指定されたこと。(第一条第三号)

燐酸ナトリウムを主たる成分とする物であつて、砒素又は砒素化合物を含有するもの(砒素として○・一%以下を含有すものを除く。)

現在これに該当する物としては、アルミナ製造の際副産物として生ずる燐酸ナトリウムを主成分とする物のみであると考えられる。

三 法別表第二第五八号の規定に基き、劇物として次の物が指定されたこと。(第二条)

一 ヘキサクロロエポキシオクタヒドロエンドエンドジメタノナフタリン及びこれを含有する製剤

商品名エンドリンといわれているものであつて、接触性殺虫剤として使用される。

二 ヘキサクロロヘキサヒドロジメタノナフタリン及びこれを含有する製剤(ヘキサクロロヘキサヒドロジメタノナフタリン五%以下を含有するものを除く。)

商品名アルドリンといわれているものであつて、接触性殺虫剤として使用される。

三 ヘキサクロロエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン及びこれを含有する製剤(ヘキサクロロエポキシオクタヒドロエンドエキソジメタノナフタリン五%以下を含有するものを除く。)

商品名デイールドリンといわれているものであつて、接触性殺虫剤として使用される。

四 硝酸タリウム及びこれを含有する製剤、硫酸タリウム及びこれを含有する製剤、燐化亜鉛及びこれを含有する製剤

いずれも殺鼠剤として使用される物であるが、硝酸タリウムを含有する製剤については硝酸タリウム○・三%以下、硫酸タリウムを含有する製剤については硫酸タリウム○・三%以下、燐化亜鉛を含有する製剤については燐化亜鉛一%以下をそれぞれ含有しているもので、かつ、それぞれ黒色に着色され、トウガラシエキスで著しくからく着味されているものは、劇物から除外されている。

市販される剤型としては、この除外に該当する物であつて、小麦粒を被覆した形のものになると考えられる。

四 法第一三条第六号の規定に基き、厚生省令で定める方法により着色すべき劇物として、次の物が指定されたこと。(第四条)

一 硝酸タリウムを含有する製剤たる劇物

二 硫酸タリウムを含有する製剤たる劇物

三 燐化亜鉛を含有する製剤たる劇物

第二 毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正する政令の主な内容

一 特定毒物の使用に関する制限が一部緩和されたこと。

一 モノフルオール酢酸の塩類を含有する製剤(商品名フラトール)の使用者として、あらたに三○○町歩以上の森林を経営する者であつて都道府県知事の指定を受けたもの、主として食糧を貯蔵するための倉庫を経営する者であつて都道府県知事の指定を受けたもの及び食糧を貯蔵するための倉庫を有しかつ食糧の製造若しくは加工を業とする者であつて、都道府県知事の指定を受けたものが加えられたこと。(第一一条第一号)

二 モノフルオール酢酸の塩類を含有する製剤の使用の場合における実地指導員に森林組合の技術職員であつて、都道府県知事の指定を受けたものが加えられたこと。(第一三条第一号チ)

三 オクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤(商品名ペストツクス3)の用途として、りんご、なし及びホツプの害虫の防除が加えられたこと。(第一六条第二項第二号)

二 あらたに特定毒物として指定された物の使用者、用途等の基準が定められたこと。

一 ジメチチルエルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤は、その性状及び用途がオクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤に近似しているので、使用者、用途、着色、表示、使用方法等については、使用方法についてホツプの害虫の防除は塗布に限ることとされたほかは、すべてオクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤と同様とされたこと。

二 モノフルオール酢酸アミドを含有する製剤については、第四章としてあらたに一章を設け、使用者、用途等について規制することとされたが、その内容は用途をかんきつ類の害虫の防除に限ること、色を青色とすること、指導員のうち地方公共団体、農業共済組合の技術職員が除外されていることの三点以外はすべてオクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤と同様とされたこと。

第三 施行に当つて注意すべき事項

一 ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤及びモノフルオール酢酸アミドを含有する製剤については、特に危険性が強いものとして特定毒物に指定され、施行令で使用者、用途、取扱の基準等が定められたのであるから、従来から指定されていた特定毒物と同様に、所持の制限、使用及び取扱上の注意等について厳格に守らせ、危害防止に万全を期するよう指導監督すること。

二 毒物に指定された燐酸ナトリウムを主たる成分とする物であつて、砒素又は砒素化合物を含有するものについては、アルミナ製造の際の副産物がこれに該当すると思われるが、これが指定されたことによつて直ちにアルミナ製造業者が毒物劇物製造業の登録を要するわけでなく、これを販売又は授与しようとする場合に始めて登録を必要とするものであるが、ただ、販売又は授与しない物であつても、廃棄については施行令第五章の規定によることを必要とするものであるから、遺漏のないよう指導すること。なお、これに該当する物は、現在は殆ど市販されていないと思われるが、もし市販されている物を発見した場合には、この物が森永乳業のドライミルクに混入して事故を惹起した事例にもかんがみ、その取締には特に慎重を期すること。

三 施行令第一一条第一号に規定するモノフルオール酢酸の塩類を含有する製剤の使用者として、三○○町歩以上の森林を経営する者、主として食糧を貯蔵するための倉庫を経営する者及び食糧を貯蔵するための倉庫を有しかつ食糧の製造若しくは加工を業とする者であつて、都道府県知事の指定を受けたものがあらたに追加されたが、これらの者を使用者として指定する場合には左に留意されたいこと。

一 原則として、会社等の法人を指定することとし、例外的に相当な規模の企業を営んでいる個人を指定しても差し支えないが、法人でない団体を指定することはできないこと。

二 食糧を貯蔵するための倉庫を経営する者については、当該倉庫の床面積が五○坪以上のものであり、かつ、管理者が常置されている場合に、指定することとすること。

三 食糧の製造若しくは加工を業とする者については、食糧を製造又は加工する場所と、これを貯蔵する倉庫とが同一敷地内にあり、かつ、当該倉庫の床面積が二○坪以上のものである場合に指定を行うこととすること。

四 指定を受けようとする場合には、別記様式による申請書に、申請者の定款(これに準ずるものを含み、個人の場合には履歴書とする。)並びに森林経営者にあつては当該森林の区域の、倉庫を経営する者及び食糧の製造又は加工を業とする者にあつては当該施設の概要図を添えて提出させること。

四 施行令第一八条第一号に掲げる者はすべてジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤の使用に当つての指導員としての資格を有することとなり、また、これらの者のうち、への地方公共団体の技術職員及び農業共済組合の技術職員以外の者は、モノフルオール酢酸アミドを含有する製剤の使用に当つての指導員としての資格を有することになるので、これらの者については、あらたに指定された特定毒物に関する知識を習得するよう指導するとともに、今後指定する場合には、これらの特定毒物に関する知識をも有することを条件とすること。

五 ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤又はモノフルオート酢酸アミドを含有する製剤を使用して害虫の防除を行つたかんきつ類、りんご、なし又はホツプについては、その果実等に毒性が残留したまま販売したり、販売の用に供するため採取したりすると、食品衛生法(昭和二二年法律第二三二号)第四条(不衛生食品等の販売等の禁止)の規定に違反することになるのであり、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフエイトを含有する製剤については三○日間、モノフルオール酢酸アミドを含有する製剤については五○日間は、概ね毒性があると認められるので、この期間中は採取しないよう関係者への周知、指導を図ること。

別記様式