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○毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律、毒物及び劇物取締法施行令及び毒物及び劇物取締法施行規則の一部を改正する省令の施行について

(昭和三〇年九月二三日)

(発薬第一三四号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律(昭和三○年法律第一六二号)の制定に伴う毒物及び劇物取締法施行令及び同法施行規則の一部を改正する省令は、それぞれ別紙一及び別紙二の通り近く公布され、同法とともに一○月一日から施行される運びに至つている。

今回の法律改正は、毒性の特に強烈な数種の毒物については、従来も政令で主としてその使用の面において一般の毒物よりも強い規制を加えていたのであるが、法律で定める比較的簡単な手続を経ることによつて、何人も容易に入手し得る仕組になつていたために、適正な使用能力を期待し得ない者にも所持、使用される可能性があり、このため保健衛生上不測の危害の発生を避け難いおそれもあり、また、今後この種の新規毒物の増加する傾向に鑑み、これらについては、毒物劇物営業者、研究者又は適当なる使用者に限り、特定毒物の製造、輸入、使用、譲渡、譲受、所持等を認め、かつ、保健衛生上必要があるときは、一定の品質、着色、表示等従来とほぼ同様の基準を設け、その基準に適合するもののみについて生産、流通を認めることとしたこと、及び毒物、劇物の廃棄については、従来何らの規制も行われていなかつたが、およそ毒物、劇物を廃棄する場合には、一定の適正な方法に基いて行われないときは、これまた保健衛生上種々の事故を発生するおそれがあるので、政令で定める廃棄の方法に関する技術上の基準に従つて行わせる等の措置を講じて、保健衛生上の危害を防止しようとすること等を骨子とするものである。

これが施行に当つて必要な事項のうち、緊急を要するものについては、すでにそのつど、関係部局から通知したところであるが、一○月一日からの施行に当つては、更に右の趣旨を十分理解せられ、特に左記の点に留意し、改正の目的達成万遺憾のないようにされたく命によつて通知する。

第一 法律の主な改正事項

一 特定毒物として法別表第三に掲げる品目には、改正前の法第一六条の規定に基いて特別の規制を受けていた六品目のほか、あらたに同表第七号のオクタメチルピロホスホルアミド及びこれを含有する製剤が加えられたこと。本製剤は、現在商品名ペストツクス―3として販売され、殺虫剤として使用されるものであること。

二 毒物劇物営業者、厚生大臣の許可を受けた特定毒物研究者又は政令で指定された特定毒物使用者以外の特定毒物の取扱(製造、輸入、使用、譲渡、譲受又は所持)を禁止し、特定毒物の品質、着色及び表示並びに運搬、貯蔵その他の取扱に関する技術上の基礎に関する政令委任事項の範囲等を明確にしたこと。

(第三条の二第一項、第二項、第五項、第九項、第一六条第一項)

三 特定毒物を含有する物又は特定毒物が附着している物については、保健衛生上特に必要があると認めるときは、その運搬、貯蔵その他の取扱又は品質、着色及び表示について技術上の基準を政令で定めることができる旨の根拠を明確にしたこと。

(第一六条第二項)

四 従来三種の取扱基準令に基いて、厚生大臣の承認を得て特定毒物について試験研究を行う場合の基準適用除外の制度に代えて、厚生大臣の許可を受けてなる特定毒物研究者の制度を設けたこと。(第三条の二第一項、第六条の二)

五 登録基準の物的要件のほかに、あらたに登録を取り消されて二年を経過していないことを事由とする絶対的欠格事由を定め、また、製造業については、製造所の作業場の構造についても登録基準を定めたこと。(第五条、同条第六号)

六 事業管理人の絶対的欠格事由のうち犯罪経歴に関する事由を調製し、かつ、従来の農業上必要な毒物又は劇物を取り扱う者のほか、厚生大臣が指定する毒物又は劇物を取扱う者に対する毒物劇物取扱者試験についても試験課目の限定を行い得るようにしたこと。(第八条第二項、第五項)

七 毒物劇物営業者が、登録品目以外の毒物又は劇物を製造、輸入又は販売するときは、登録事項変更を受けなければならない旨を明確にしたこと。(第九条第一項)

八 毒物又は劇物は、政令で定める技術上の基準に従わなければ廃棄してはならないこととしたこと。(第一五条の二)

九 毒物劇物営業者が設置改善措置命令に違反したときは、その登録を取り消さねばならないが、その場合も聴聞を行うこととしたこと。(第二○条第一項)

一○ 聴聞に際し、正当な理由がなくて出頭しないときは、聴聞を行わないで、登録の取消等の処分を行うことができることとしたこと。(第二○条第四項)

一一 毒物劇物営業者が、その登録を取り消された場合、営業を廃止した場合等の毒物劇物及び設備の処置業務を止め、営業者、研究者、使用者の失効等の場合における特定毒物の処理義務も課したこと。(第二一条)

一二 毒物劇物営業者及び特定毒物研究者以外の者であつて厚生省令で定める毒物、劇物を取扱う者について、毒物又は厚生省令で定める劇物の容器には、飲食物の容器として通常使用される物を使用してはならない旨規定(第一一条第二項)を準用することとし、また、この者が毒物又は劇物の取扱に関する第一一条の規定に違反していると認められるときは措置命令を出すことができることとし、この命令に違反したときは、二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとしたこと。(第二四条の二)

一三 特定毒物の取扱、特定毒物を含有する者の取扱、品質、着色及び表示並びに特定毒物が附着している物の取扱に関する技術上の基準を定める政令には、その政令に違反した者に対して二年以下の懲役若しくは五万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人等についても両罰規定を設けることができることとしたこと。(第二七条)

一四 毒物及び劇物を指定する政令(昭和二七年政令第二六号)で指定されていた毒物及び劇物をそれぞれ別表第一及び第二に規定したこと。

第二 毒物及び劇物取締法施行令について

この政令は、毒物及び劇物取締法に基いて、特定毒物の使用者並びに用途、品質、着色及び表示の基準、運搬、貯蔵その他取扱についての基準、特定毒物が附着している物及び特定毒物を含有する物の品質、着色及び表示の基準並びに毒物、劇物の廃棄の基準について定めたもので、廃棄の基準のほかは、改正前の法第一六条第一項の規定に基く各種取扱基準令の内容とほぼ同様のものである。

一 四エチル鉛に関する基準について

(一) 四エチル鉛取扱基準令との相違点

一 四エチル鉛の着色義務は輸入業者、販売業者及び特定毒物研究者にも課せられること。(第二条第一号)

二 着色には従来の赤色のほかに、青色、黄色及び緑色が加えられたこと。(第二条第一号)

三 運搬の規定(第三条)は、鉄道、自動車以外にも適用されること。ただし、船舶による運搬の場合は、船舶安全法(昭和八年法律第一一号)第二八条の規定に基く危険物船舶運送及貯蔵規則(昭和九年逓信省令第一四号)第四条に規定する別表第二号表の四エチル鉛類の規定による。この場合の罰則は、政令第一○条の規定による。(第三条第三項、第一○条)

四 四エチル鉛をガソリンに混入する場合の割合の最高限は、ガソリン一ガロンにつき四エチル鉛三立方センチメートルから四・九二立方センチメートルに引き上げられたこと。(第五条、第七条)

五 空容器を運搬する場合の混載禁止規定がなくなつたこと。(取扱基準令第六条第二項)

六 加鉛ガソリンの着色は、従来の赤色のほか、青色、緑色、茶色及び紫色が加えられたこと。(第八条)

七 加鉛ガソリンの着色及び表示の義務が、加鉛ガソリンの輸入業者にも課せられること。(第八条、第九条)

(二) 施行に当つての注意事項

一 運搬に関する規定(第三条)は、四エチル鉛の営業者、特定毒物研究者又は石油精製業者が自ら運搬する場合は勿論、運送業者等が四エチル鉛の所有者の委託を受けて運搬を行う場合にも適用される旨を周知すること。

二 貯蔵に関する規定(第四条)は、一の場合と同様に、倉庫業者等が他の委託を受けて貯蔵する場合にも適用される旨を周知すること。

三 四エチル鉛及び加鉛ガソリンの表示は、必ず日本語でなければならないこと。

四 四エチル鉛の混入量がガソリン一ガロンにつき三立方センチメートルをこえる加鉛ガソリンは、航空機の内燃機関以外には使用しないように指導すること。

五 加鉛ガソリンの販売業者の表示義務に関する規定(第九条)は、従来もあつたのであるが、これは必ずしも実行されていない憾があるので、今後必ず励行するよう関係業者に十分に指導すること。

二 モノフルオール酢酸の塩類を含有する製剤に関する基準について

(一) モノフルオールさく酸ナトリウム取扱基準令との相違点

一 旧基準令においては、モノフルオール酢酸ナトリウムの製剤のみが対象となつていたが、ナトリウム以外の塩酸も含まれること。ただし、さし当つてはこれ以外のものは市販されない見込である。(第一一条以下)

二 駆除を行う場合の指導員について、あらたに厚生省、都道府県の薬事関係技術職員、事業管理人の資格を有する者のうち都道府県知事の指定を受けたもの及び農業協同組合又は農業共済組合の技術職員のうち都道府県知事の指定を受けたものが加わつたこと並びに農林省の技術職員のうち野ねずみの駆除関係の試験研究又は事務に従事する者について指定を要しないものとされたこと。(第一三条第一号)

三 製剤を水溶液の状態で用い、食糧倉庫内で野ねずみの駆除を行うことが認められたこと。(第一三条第三号)

四 えさを地表に仕掛けてはならないことに関して、厚生大臣が指定する地域において野ねずみを駆除する場合の例外が設けられたこと。この厚生大臣の指定する地域については、北海道ほか二、三の積雪地帯の県が予定されていること。(第一三条第二号ハただし書)

五 駆除の場合の指導は、実地指導でなければならないことが明確にされたこと。(第一三条第一号)

六 実地指導員には、第一三条第一号イ及びロに掲げる衛生関係技術者が加えられたこと。

(二) 施行に当つての注意事項

一 モノフルオール酢酸、モノフルオール酢酸の塩類及びモノフルオール酢酸を含有する製剤についてはその使用者は指定されていないので、これらの物は営業者及び特定毒物研究者の間にのみ流通を認められるものであることも関係者に認識させること。

二 第一三条第一号ロ及びチの都道府県知事の指定は、モノフルオール酢酸を含有する製剤の取扱について十分な知識を有する者について指定すること。

なおロの指定を受けた者は、同時に第一八条第一号ロによつて有機りん製剤の使用についても指導することができることになるので、これらの者については、有機りん製剤についても十分な知識を要求すること。

三 有機りん製剤に関する基準について

(一) ヂエチルパラニトロフエニールチオホスフエイト及びヂメチルパラニトロフエニールチオホスフエイト取扱基準令との相違点

一 森林の害虫の防除が認められなくなり、従つて使用者のうちから森林組合が除かれたこと。(第一六条第一号)

二 農業者の組織する団体(農業実行組合)については都道府県知事の指定を受けたものに限られたこと。(第一六条第一号)

三 病害虫防除員、専門技術員、改良普及員及び都道府県の技術職員が指導員になるには都道府県知事の指定を必要とすることになつたこと。(第一八条第一号ニ、ホ、ヘ)

四 防除終了後は、従来散布器だけの保健衛生上の処置義務があつたが、防除に使用した器具及び被服についても右の義務が課せられること。(第一九条)

(二) 施行に当つての注意事項

一 オクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤を用いて行うかんきつ類の害虫の防除は、薬剤散布以外の方法は、認められないので、樹幹塗布、樹幹捲布、樹根潅注等の方法を行つてはならない旨を周知させること。

二 有機りん製剤を使用して防除を行つた農作物やかんきつ類は、果実等に毒性が残留したまま販売したり、販売の用に供するために採取したりすると食品衛生法(昭和二二年法律第二三二号)第四条(不衛生食品等の販売等の禁止)の規定に違反することとなるのであり、パラチオン及びメチルパラチオンは三週間、オクタメチルピロホスホルアミドを含有する製剤は三○日間は概ね毒性があると認められるので、この期間中は採取しないよう関係者への周知、指導図ること。

四 廃棄に関する基準について

第第一五条の二(廃棄)の規定は、毒物劇物営業者及び特定毒物研究者、特定毒物使用者その他毒物又は劇物を業務上取り扱う者はもとより、一般にも適用されるのであるが、これらの者が取り扱う毒物又は劇物の量の大であること。また、機会の多いことなどに鑑み、廃棄の方法に関する基準は、特にこれらの者に対して十分な周知徹底と指導を行うこと。

第三 毒物及び劇物取締法施行規則の一部改正について

一 特定毒物研究者の許可申請書の進達は可及的すみやかに行うこと。なお、従来各基準令によつて試験研究の承認を受けた者も、改めて改正法による許可を必要とするので、これらの者のうち引き続き研究を行おうとする者は、一○月一日附をもつてすみやかに申請するよう指導すること。

二 申請書(別記第五号様式の二)の参考事項欄には、毒物劇物の貯蔵、運搬に関する設備の概要図を記載させ(添付してもよい。)、研究所の実地調査を行つて、その設備が法第一一条に規定する毒物又は劇物の取扱に関する事項に十分適合するか否かを審査の上厚生大臣あて副申すること。

三 申請書は、正副二通提出させ、副本は都道府県の控とすること。

四 都道府県に管内所在の特定毒物研究者の名簿を備えること。