添付一覧
○新医薬品等の再審査の申請のための市販後調査の実施に関する基準について
(平成三年六月一八日)
(薬発第六四六号)
(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)
新医薬品等の再審査の申請の際に添付すべき資料の収集のために市販後に行われる調査(以下「再審査のための市販後調査」という。)の適正な実施と、再審査申請資料の信頼性の確保を図るため、今般、別添のとおり「新医薬品等の再審査の申請のための市販後調査の実施に関する基準」(以下「本基準」という。)を定めたので、左記事項に御留意のうえ、貴管下関係業者に対し、指導方御配慮煩わしたい。
記
1 本基準が適用される調査範囲及び適用時期について
本基準が適用される調査範囲及び適用時期は、次の(1)及び(2)のとおりとする。したがって、新医薬品等の再審査の申請に際し添付すべき資料のうち、(1)及び(2)に該当する調査(以下「本基準適用市販後調査」という。)に係る調査結果(以下「本基準適用市販後調査結果」という。)については、原則として、本基準に従って調査され、まとめられた結果を再審査資料として受け入れる方針としているので、本基準に適合する調査結果を提出するよう指導すること。
(1) 適用される調査範囲
本基準は、再審査のための市販後調査(再審査の申請のために行われる非臨床試験及び臨床試験を含む。)を対象とする。
(2) 適用時期
本基準は、平成五年四月一日以降に実施される再審査のための市販後調査(同日の前に開始される調査の同日以降に実施される部分を含む。)について適用する。
なお、本通知後平成五年三月三一日までの間に実施される再審査のための市販後調査については、本基準の遵守事項のうち実行可能なものから順次実施するよう指導されたいこと。
2 資料及び施設の調査、確認について
提出された本基準適用市販後調査結果の信頼性又は本基準適用市販後調査を行った施設の本基準への適合性を確保するため、必要に応じ、本基準により保管が義務づけられている資料及び本基準適用市販後調査を行った施設に対し、本基準第一四条の規定に基づく調査、確認を行うものであること。
3 本基準の一部に適合しない調査結果の取扱いについて
(1) 本基準適用市販後調査であって、本基準の一部に適合していない方法・手順等で実施された調査から得られた結果が再審査資料として提出された場合には、新医薬品等の再審査申請者に対し、本基準への不適合部分が調査から得られた結果の信頼性に影響していないこと又はその影響が許容し得るものであることを立証する資料の提出を求めるとともに、必要に応じ本基準第一四条の規定に基づく調査、確認を行い、審査資料としての受入れの可否を検討するものであること。
(2) 本基準適用市販後調査であって、次の各号のいずれかに該当するため、調査結果の信頼性が確認できないか又は損なわれていると判断される場合には、当該調査結果を当該調査に係る新医薬品等の再審査資料から除外することがあること。
(ア) 前記(1)の立証資料が新医薬品等の再審査申請者より提出されないか又は不十分なものと認められる場合
(イ) 本基準第一四条の規定に基づく調査、確認を新医薬品等の再審査申請者が拒否した場合、又は調査、確認の結果から判断して、調査結果の信頼性が損なわれていると認められる場合
〔別添〕
新医薬品等の再審査の申請のための市販後調査の実施に関する基準
第一章 総則
(目的)
第一条 この基準は、製造業者等が再審査の申請のために行う市販後調査の実施に関する遵守事項を定め、その適正な実施を確保し、もって再審査申請資料の信頼性の確保を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この基準において用いられる主な用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 製造業者等とは、薬事法第一四条の二(第一九条の四において準用する場合を含む)により再審査を受けなければならないとされた新医薬品等の製造又は輸入の承認を有する者(外国製造承認取得者にあっては、国内管理人)をいう。
二 市販後調査とは、製造業者等が、承認を有している医薬品についての有効性及び安全性に関する情報を医師、歯科医師、薬剤師その他の医薬関係者(以下「医師等」という)から収集し、これらを評価・分析し、その結果に基づく対応を決定し、必要に応じ評価・分析の結果を医師等に伝達することをいう。
三 生データとは、調査票等、調査結果に基づく再審査申請資料の再構成と評価に必要なものをいう。
四 再審査対象医薬品に関する情報とは、再審査対象医薬品の有効性及び安全性に関する情報で、再審査の申請に必要な情報をいう。
五 調査票とは、使用成績調査の対象となった症例等、医師等が直接製造業者等に報告する症例を記録するための用紙をいう。
六 使用成績調査とは、薬事法第一四条の二第三項に規定される使用成績に関する資料の作成のために行われる調査をいう。
七 副作用自発報告とは、医薬品による副作用と疑われる症例で使用成績調査の対象となっていない症例について、医師等が自発的に製造業者等又は医学・薬学専門誌等に行う報告をいう。
八 特別調査とは、使用成績調査、副作用自発報告その他再審査対象医薬品に関する試験・調査により得られた情報の評価・分析の結果に基づき、再審査の申請のために必要な追加の情報を入手するために実施する調査をいう。
九 医薬情報担当者とは、製造業者等に雇用される者であって、医師等から医薬品の有効性及び安全性に関する情報を収集し、これを市販後調査管理部門に伝え、また、市販後調査管理部門の決定に従い医師等に評価・分析の結果を伝達する者をいう。
第二章 職員及び組織
(職員)
第三条 再審査の申請のための市販後調査に従事する者は、その職務を遂行するために必要な教育若しくは訓練を受けた者又は実務経験を有する者であって、自己の担当する業務を遂行しうる能力を有する者でなければならない。
2 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査に従事する者についての市販後調査に係る教育・訓練及び実務経験に関する記録並びに職務分掌を明らかにする文書を作成し、保管しなければならない。
(市販後調査管理部門)
第四条 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査を実施するため、医薬品の研究・開発・営業に係る部門から独立した市販後調査管理部門を設け、その責任者として市販後調査管理責任者を置かなければならない。
2 市販後調査管理部門は、次の各号に定める事項を行わなければならない。
一 再審査対象医薬品について、再審査の申請のための市販後調査を企画・立案し、自ら実施するか又は社内関係各部門に対しその実施を依頼し、実施を依頼した場合にあってはその実施状況を管理すること。
二 市販後調査管理部門が入手した再審査対象医薬品に関する情報を統括管理し、評価・分析し、その結果に基づく対応を検討すること。
三 市販後調査管理部門が入手した再審査対象医薬品に関する情報のうち、法律又は通知等により厚生省に報告することが求められているものについては、定められた期間内に厚生省に報告されるよう取り計らうこと。
3 製造業者等は、社内関係各部門が収集したすべての再審査対象医薬品に関する情報を速やかに市販後調査管理部門に伝えさせなければならない。
4 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査を適正かつ円滑に実施するために十分な人員を、市販後調査管理部門に確保しなければならない。
(市販後調査管理責任者)
第五条 市販後調査管理責任者は、次の各号に定める事項を行わなければならない。
一 市販後調査管理部門の入手した再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析の結果に基づく対応若しくは厚生省からの指示に基づく対応又は必要な情報の伝達が社内関係各部門で実施される場合には、その対応・伝達が適切に行われるよう、当該部門に対し文書で依頼すること。
二 社内関係各部門に対し、再審査の申請のための市販後調査によって得られた生データその他の資料の適正な保管又は市販後調査管理部門への移管を依頼すること。
三 使用成績調査の実施に当たって、使用成績調査実施計画書を作成すること。
四 市販後調査に従事する者に対する、市販後調査に係る教育・訓練の計画を策定すること。
五 再審査の申請のための市販後調査業務が、市販後調査業務手順書に従い適正かつ円滑に実施されていることを確認すること。
六 市販後調査業務手順書の指示に従い、市販後調査業務手順書の細部について定め、運営すること。
七 市販後調査管理部門に属する者の中から、必要に応じ、業務毎に担当責任者を定めること。
2 製造業者等は、市販後調査管理責任者が業務を遂行するに当たり支障を来すことがないよう、取り計らわなければならない。
第三章 再審査の申請のための市販後調査
(市販後調査業務手順書)
第六条 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査を適正かつ円滑に行うため、調査方法・調査手順等を具体的に記載した市販後調査業務手順書を作成しなければならない。
2 市販後調査業務手順書には、次の事項が定められなければならない。
一 再審査対象医薬品に関する情報の収集
二 再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析及びその結果に基づく対応
三 再審査対象医薬品に関する情報の伝達
四 再審査対象医薬品に関する情報等の保管
五 使用成績調査
六 必要に応じ実施する特別調査
七 市販後調査に従事する者に対する教育・訓練
八 その他必要な事項
3 製造業者等は、市販後調査業務手順書を前項各号に掲げる業務が実施される各部門に備えなければならない。
4 製造業者等は、市販後調査業務手順書の作成又は改訂の都度その日付を明記し、保管しなければならない。
(再審査対象医薬品に関する情報の収集)
第七条 前条第二項第一号に掲げる再審査対象医薬品に関する情報の収集については、市販後調査業務手順書に、少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 医師等から製造業者等に対して行われる副作用自発報告に関すること。
イ 調査票の様式及び調査票に盛りこむべき必須事項
ロ 調査依頼の手順
ハ 調査票に必要事項が記載されていることの確認
二 文献・学会情報の収集に関すること。
イ 収集対象とする医学・薬学専門誌名及び学会名
ロ 調査の手順
2 製造業者等は、再審査対象医薬品に関する情報の収集に当たっては、医師等に対し、必要に応じ薬事法第七七条の二第二項の内容を説明し、情報収集への協力を求めなければならない。
(再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析及びその結果に基づく対応)
第八条 第六条第二項第二号に掲げる再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析及びその結果に基づく対応については、市販後調査業務手順書に少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 評価・分析を行う際の基準
二 評価・分析の結果に基づく対応又は厚生省からの指示に基づく対応についての基準
三 収集された情報が、自社の取り扱う医薬品に関するものでなかった場合の対応
2 製造業者等は、再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析及びその結果に基づく対応に当たっては、次の事項に留意しなければならない。
一 収集した情報を評価・分析するために必要な事項が調査されているか否かを検討すること。
二 収集した情報の不備な点又は不明な点を明らかにするための再調査を行うこと。
三 評価・分析の結果及びそれに基づく対応の内容を記録し、保管すること。
四 最終評価は、市販後調査管理責任者により署名又は捺印されること。
(再審査対象医薬品に関する情報の伝達)
第九条 第六条第二項第三号に掲げる再審査対象医薬品に関する情報の伝達については、市販後調査業務手順書に少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 伝達する情報の内容に応じた伝達の対象、媒体、手段
二 伝達を完了すべき期限
三 伝達が期限内に行われたことを確認するための方策
2 製造業者等は、再審査対象医薬品に関する情報の伝達に当たっては、適正に行われるよう配慮しなければならない。
(再審査対象医薬品に関する情報等の保管)
第一〇条 第六条第二項第四号に掲げる再審査対象医薬品に関する情報等の保管については、市販後調査業務手順書に少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 次の資料を保管しなければならないこと。
イ 市販後調査業務手順書及び使用成績調査実施計画書
ロ 生データ及び再審査申請資料の根拠となったその他の資料
ハ 使用成績調査の依頼文書
ニ 市販後調査管理部門が、情報の評価・分析の結果に基づく対応又は厚生省からの指示に基づく対応及び必要な情報の伝達を社内関係各部門に依頼した場合の依頼文書
ホ 再審査対象医薬品に関する情報の収集・評価・分析・対応・伝達の行われた日を記録したもの
二 前号の資料の保管期間及び保管部門に関すること。
2 製造業者等は、再審査対象医薬品に関する情報の保管に当たっては、収集した情報が、必要に応じて速やかに検索及び集計・解析できるよう留意しなければならない。
(使用成績調査)
第一一条 第六条第二項第五号に掲げる使用成績調査については、市販後調査業務手順書に少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 使用成績調査実施計画書の作成
二 調査票の様式及び調査票に盛りこむべき必須事項
三 調査依頼の手順
四 調査票に必要事項が記載されていることの確認
2 製造業者等は、使用成績調査の実施に当たっては、次の事項に留意しなければならない。
一 調査の目的を十分に果たしうる医療機関で行うこと。
二 調査の依頼は、文書で行うこと。
3 市販後調査管理責任者は、使用成績調査実施計画書の作成に当たっては次の事項に留意しなければならない。
一 使用成績調査を実施する品目毎に作成すること。
二 次に掲げる事項が記載されていること。
イ 調査予定症例数
ロ 調査予定施設数及び主な調査予定施設名
ハ 調査実施のための社内体制
ニ 調査事項及び重点調査事項
ホ 解析項目及び解析方法
ヘ 調査票の様式
ト その他必要な事項
4 市販後調査管理責任者は、再審査対象医薬品に関する情報の評価・分析の結果を踏まえ、必要に応じ使用成績調査実施計画書の改訂を検討しなければならない。
5 市販後調査管理責任者は、使用成績調査実施計画書の作成又は改訂の都度その日付を明記し、保管しなければならない。
(必要に応じ実施する特別調査)
第一二条 第六条第二項第六号に掲げる必要に応じ実施する特別調査については、市販後調査業務手順書に少なくとも次の事項が定められなければならない。
一 調査実施計画書の作成
二 調査依頼の手順
2 再審査の申請のために行われる非臨床試験のうち安全性に関する試験は、「医薬品の安全性試験の実施に関する基準」に従って実施されなければならない。
3 再審査の申請のために行われる臨床試験は、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」を踏まえて実施されなければならない。
(市販後調査に従事する者に対する教育・訓練)
第一三条 第六条第二項第七号に掲げる再審査の申請のための市販後調査に従事する者に対する教育・訓練については、市販後調査業務手順書に少なくとも医薬情報担当者に対する市販後調査に係る教育・訓練に関することが定められなければならない。
2 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査に従事する者に対する教育・訓練が円滑に行われるよう配慮しなければならない。
(資料及び施設の調査、確認)
第一四条 新医薬品等の再審査に際し、この基準により保管することが義務づけられている資料及び製造業者等が市販後調査を実施した施設について、必要に応じ調査、確認を行う。
(再審査の申請のための市販後調査の販売業者等への委託)
第一五条 製造業者等は、再審査の申請のための市販後調査の全部又は一部を、販売業者等へ委託することができる。
2 製造業者等が再審査の申請のための市販後調査を販売業者等に委託する場合は、契約書等により、販売業者等が本基準により市販後調査を実施することを確保しなければならない。