添付一覧
○ダニ防除剤の取扱いについて
(昭和六三年二月一八日)
(薬審二第八四号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局審査第二・監視指導課長連名通知)
イエダニの駆除を標ぼうするものについては、従来より薬事法(昭和三五年法律第一四五号)第二条第一項に規定する医薬品又は同条第二項に規定する医薬部外品として、その製造(輸入)の承認及び許可を受けなければならないとされてきたところである。最近、屋内の塵等に生息するダニ類の防除を標ぼうするものが一般雑貨品として市販されている実情がみうけられるが、この屋内塵性ダニ類については、皮膚炎やアレルギー等の原因のひとつとして認識されており、今後、屋内塵性ダニ類の防除を標ぼうするものの取扱いについては、左記によることとしたので、貴管下関係業者の指導方、御配慮煩わしたい。
記
1 屋内塵性ダニ類の防除を標ぼうするエアゾール剤、シート剤等については、医薬品又は医薬部外品として取り扱うものであること。
なお、ダニ防除加工された家具(タンス、ソファー等)、畳等については、医薬品又は医薬部外品の範囲に含まれないものであること。
2 現在、一般雑貨品として製造(輸入)及び販売されているダニ防除剤であつて前記1により医薬品又は医薬部外品に該当するものは、速やかに医薬品又は医薬部外品として製造(輸入)承認及び許可を受けるよう指導されたいこと。
なお、当該申請書の進達書の右肩に(ダニ)の表示を朱書きされたいこと。
3 医薬品又は医薬部外品の製造又は輸入の承認申請に際し、添付すべき資料の範囲については昭和五五年五月三○日薬発第六九八号薬務局長通知別表2―(4)及び昭和五五年五月三○日薬発第七○○号薬務局長通知別表1により示しているところであるが、同表のホに関しては、今般別添のとおり殺ダニ効力を評価するための標準的試験法(「屋内塵性ダニ類に対する薬剤の効力試験法」)を作成したので、承認申請に際し添付される資料は、原則として本試験法に基づいたものであること。
別添
「屋内塵性ダニ類に対する薬剤の効力試験法」
この試験法は、屋内塵性ダニ類の増殖抑制及び駆除を目的とする殺虫原体もしくは製剤の殺ダニ効力を評価するために策定された標準的試験法である。
1 試験の概要
1) 効力評価のために、基礎試験と実地試験を行う。ただし、実地試験については、実地が困難な場合には準実地試験にかえることができる。
2) 致死効果および増殖抑制効果によつて評価することを原則とする。空間処理薬剤(燻煙剤、加熱蒸散剤等)にあつては、致死効果による評価のみでよい。
2 供試虫
左記の種について、ケナガコナダニ及び二種のヒョウヒダニのうちの何れか一種の、二種を用いる。
ケナガコナダニ Tyrophagus putrescentiae
コナヒョウヒダニ Dermatophagoides farinae
ヤケヒョウヒダニ Dermatophagoides pteronyssinus
それぞれの種について、成虫、幼虫及び雌雄を区別しなくてよいが、累代飼育コロニーを用い、その出所・由来を明確にする。
3 試験の方法
<基礎試験>
原体及び製剤は次に示す試験法で実施する。
イ 原体…培地混入法及び残渣接触法のドライフイルム法、クリップ法のうち少なくとも一つ
ロ 製剤
・乳剤、油剤、エアゾール剤
培地混入法、残渣接触法、噴霧降下法のうち、用法・用量に応じて適当な評価ができる方法二つ
・燻煙剤、加熱蒸散剤
ピートグラデイ法または箱型装置法のうち一つ
・粉剤、粒剤
培地混入法
・シート剤
残渣接触法(なお、培地混入法も行うことが望ましい。)
① 培地混入法
含水量をケナガコナダニでは一五%程度、ヒョウヒダニでは一二%程度に調整した粉(※)末飼料の培地をつくる。検体を所定の濃度になるようこれに加え、均一に混合する。この一定量を容器にとつて、別にダニのよく繁殖した培地を小量これに投入する。投入後の培地中の密度の目安としては、ケナガコナダニでは一○○~二○○匹/g、ヒョウヒダニでは二○○~五○○匹/gになるようにする。これを二五℃、六○~八○%RHの環境下に保存する。一定期間後、処理した培地の全部または一部をとり、サンプリング法(付1)、視野法(付2)、食塩水浮遊法(付3)などで生ダニ数を数える。
処理区のダニ数を無処理区のダニ数と比較し、増殖抑制率を求める。
ケナガコナダニでは処理後二~三週間まで、ヒョウヒダニでは六~八週間まで数回観察することが望ましいが、それ以前に効果が明らかになる結果が得られれば、一~二週間程度でもよい。
増殖抑制率が八○%~九○%以上になる濃度を示すほか、各区についての一グラムあたりのダニの観察値も表示する。試験は、最低三回の繰り返しとする。
※メーカー及び商品名を明記する。
② 残渣接触法
i) ドライフイルム法:バイアル(直径二・○cm、高さ四・五cm、容量一○ml)に、アセトンで所定濃度に希釈した薬剤をマイクロピペットにより所定量(○・一ml)入れる。容器内面に均一に付着させ、アセトンが揮散するまで室内に放置する。乾燥後、薬剤残渣面にダニを一定数接触させ、一定時間後に死亡数(仰転も含む)を観察する。一薬剤について数濃度段階をとり、二四(必要に応じ四八)時間の限定時間接触の致死率を観察する。
ii) クリップ法…ろ紙(例えば東洋ろ紙№五C)またはラシャ紙などの黒紙を長さ一○cm、幅五cmに切り、アセトンで希釈した各濃度の薬液○・五ml(一○○ml/m2)を均一に滴下処理し、室内に数時間放置し、完全にアセトンを揮散させる。この10cm×5cmのろ紙を二つ折りにして5cm×5cmの大きさにする。この折つた中に生ダニのみを二○~三○匹程度入れ、折り目以外の三方を紙クリップで完全に密封する。各時間経過後この紙クリップをはずし、ダニの仰転率を観察する。通常は、一たん開封したものは、そのまま捨ててしまうので、各観察時間ごとに同じ濃度のものを何枚も用意しておく必要がある。観察は実体顕微鏡下で行い、歩行できないものを仰転虫とみなす。別に薬剤を処理しない区を設けコントロールとする。残効性をみる場合には、薬剤残渣を一定時間室内に保存したのち、同様の手順で試験を行う。
③ 噴霧降下法についてはイエバエ、アカイエカなどの殺虫剤指針に示す試験に準ずる。
④ ピートグラデイ法
ダニを腰高シャーレ(直径九cm、高さ六cm)に入れ、供試する。
一シャーレあたりの供試ダニ数はデータの安定性、取扱い及び観察のしやすさを考慮して一○○~三○○匹とする。
供試ダニは、ピートグラディ装置(1.8×1.8×1.8m)床面上の四隅に配置する。供試薬剤を床面中央で発散させる。なお、供試ダニをシャーレに移した後、すみやかに薬剤処理を行うことで、ダニ逃亡数を少なくすることができる。
発煙蒸散開始から一時間後に腰高シャーレを取り出し、通気孔付きパラフイルムでふたをし、飽和食塩水を入れたコンテナ中に保存する。
二四時間後に洗剤と水でシャーレ及びパラフイルムの内面を洗い、五mm目盛り付きのろ紙(直径五cm)上に吸引ろ過してダニを集める。
ろ紙上の、総ダニ数及び死亡ダニ数を調べる。
⑤ 箱型装置法
シャーレに供試ダニを入れ、これを○・五m3の箱型装置の底面の対角線上四分の一の位置三―四か所に配置する。発煙開始から一時間後にシャーレを装置内からとり出し、飽和食塩水等で湿度を調整したコンテナ中に保存する。二四時間後に、生ダニ、死亡ダニを調べる。その他は、ピートグラデイ法に準ずる。
<注意>
粒剤 粒剤はこまかく砕いて供試する。
シート剤 残渣接触法は製剤を10cm×10cmに切つて、二つ折りにし、以下、方法に従つて行う。又、培地混入法は製剤を混入するかわりにシートを一cm角の細片とし、これを培地に混合する。混合する枚数は培地五○gあたり一○○枚を標準とし、この前後数段階をとる。以下、方法に従つて行う。
<実地試験>
実使用時の用法・用量に従つて、ダニの発生がみられる家屋内の畳又はカーペットを用いて行う。
処理前と処理後に電気掃除機法(壁面のみに有用)(付4)、黒紙法(付5)、目視法(付6)等によつて生ダニ数の変化をみる。
実地試験が困難な場合、以下のような準実地試験法によつて効果の判定を行う。
(1) 畳やカーペットの内部に処理する製剤
材料を適当な大きさに裁断したのち、飼育ダニを植えつけて、ダニの増殖の開始を確認したのち、所定の用法・用量に従つて薬剤を処理し、適当な温度条件下に保存して、一定期間後にダニ数を無処理区のそれと比較する。
ダニ数の観察は、黒紙法(付5)又は熱追い出し法(付7)等による。
(2) 室内表面のダニを対象とした製剤(直接噴霧、空間処理等を目的とするもの)
前記(1)と同様の操作によつてダニの増殖が確認された材料を、室内またはピートグラデイ装置などに置き、所定の用法・用量に従つて薬剤処理する。
処理後、黒紙法(付5)又は熱追い出し法(付7)等によつて、無処理区のダニ数と比較し、効果を評価する。
(3) シート剤
所定の用法・用量に従つてシート剤を処理した畳やカーペットに飼育ダニを植えつけ、(1)と同様の方法で観察を行う。
(付) ダニ類密度の測定法
1) サンプリング法
培地の一部をとりだし、一○○mgを秤量し、これを実体顕微鏡下で観察し、有柄針の先を水で濡らして、生ダニを一匹ずつ除去しながら、全数カウントする。
2) 視野法
粉末培地をよく撹拌し、容器の底に広げ、直接、実体顕微鏡下(×20)で、一視野内に見える生ダニを数える。
視野を変えるごとに培地を撹拌し、一観察当たり六視野を見る。
3) 食塩水浮遊法
粉末培地○・五gをとり出し、ワイルドマンフラスコ中に入れ、二○%食塩水を用いてダニを浮遊させ、ダニが浮遊している上層の水を吸引装置をつけたろ紙上に移し、ろ過する。ろ紙を○・一%メチレンブルー水溶液で染色した後、実体顕微鏡(×20)を用いて、生きているダニをかぞえる。浮遊時間は、原則として二○分とする。カウントは、一観察当たり三回の繰り返しを行う。
4) 電機掃除機法
新しい集塵袋をつけるか、あるいは、手元の吸引口の付近に、専用の紙袋をつける。ゆつくりと室内の床面の塵を集める。集めた塵は、一六メッシュと二○○メッシュのふるいで、一五分間振とうし、二○○メッシュ上の細塵をとり、重量を量る。この細塵をダーリング液(飽和食塩水一:グリセリン一)および小量の中性洗剤液と一緒によく撹拌して遠心分離し、上澄液をろ紙上にろ過する。遠心分離機内の沈殿物に再びダーリング液を加え、前記の手順を繰り返しダニ回収率を高くする。その後ろ紙上のダニを実体顕微鏡でカウントする。
5) 黒紙法
黒紙(ラシャ紙のようなもの、10×10cmくらい)を、ダニのいる床面、壁面におく。まもなくダニがこの上にはい上がつてくる。
一○分経過後に、この時点でのダニ数をカウントする。場所を変えて、数回繰り返す。
6) 目視法
床、壁、家具などの暗色部分で、ダニの存在が目立つ場所を一定部分きめて、ここでダニの生息数をカウントする。
7) 熱追い出し法
裁断したカーペットやわらの破片を、ろう斗に入れる。ろう斗の下の口の真下に水盤をおく。検体から約六cm離して、上から一○○W電球で六時間照射する。熱で追い出されたダニは、下の水盤上におちる。
4 評価の基準
原則として次によること。
<基礎試験> 倍地混入法では、八○%以上の増殖抑制効果(一g中のダニの絶対数が一○○○未満であり無処理は一g中に五○○○以上に増加している)が認められること。
その他の方法では、ほぼ一○○%の死亡率が得られること。なお、試験は、二種以上の供試ダニで実施すること。
<実地試験> 増殖抑制効果の場合は数週間後までに少なくとも七○%以上の効果が得られること。また、直接殺ダニ効果の場合は九○%以上の効果が得られること。
試験は、一種以上の供試ダニで実施すること。
なお、基礎、実地(準実地)とも、試験結果のダニ数は、平均値のみでなく、繰り返しごとの実数を記載し、実地試験においても増殖抑制率はグラフのみでなく、表として具体的な数値を記載すること。
5 その他
効能又は効果の表現については次によること。
・増殖抑制 実地試験結果を増殖抑制で評価している場合
・駆除 実地試験結果で直接殺ダニ効果が評価できる場合
なお、増殖抑制及び直接殺ダニ効果の両方で評価している場合には、「増殖抑制及び駆除」を標ぼうすることが出来る。