添付一覧
○注射剤に溶解液等を組み合わせたキット製品等の取扱いについて
(昭和六一年三月一二日)
(薬審二第九八号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局審査第一・審査第二・生物製剤課長連名通知)
最近、用時溶解して用いる注射剤等に関し、医療機関での投薬調製時の負担軽減、細菌汚染・異物混入の防止等を目的として、医薬品と医療用具(容器を含む)又は二以上の医薬品を一つの投与体系として組み合わせた製品(いわゆるキット。以下「キット製品」という。)を製造(輸入販売)したいとする照会が内外の企業より寄せられている。
そこで、今般、これらの照会事例等を参考にして、キット製品の承認・許可申請上の取扱いについて、左記の通りとすることとしたので貴管下関係業者に対し指導方御配慮願いたい。
記
1 医薬品(単品、A)を注射筒等の医療用具(B)内に充填したキット製品(別紙事例1)
(1) 注射筒、輸液用セット等医療用具に該当するものの中に医薬品を充填してキット製品とするものについては、製品全体を当該医療用具を容器とする医薬品として、その製造(輸入)承認許可申請を行うこと。この場合、医療用具Bが既承認のものであるときにはキット製品たる医薬品の承認申請書の「製造方法」欄に既承認の医療用具Bを用いてキット製品とする旨並びに当該医療用具の製造(輸入販売)業者名、品目名、承認番号及び承認年月日を記載することとし、医療用具Bが未承認のものであるときには、別途、医療用具Bの承認・許可申請を行うとともに、キット製品の承認申請書の「製造方法」欄に、当該医療用具の品目名、申請業者の氏名及び申請年月日を記載すること。
(2) なお、医薬品Aの承認・許可を既に受けている者が、この種のキット製品を製造(輸入)しようとする場合には、医薬品Aの承認事項一部変更承認申請により、当該キット製品の承認を得ることが可能であること。
2 医薬品(複数、A~C)を組み合わせて単一の容器内にセットし、用時コネクターを介して混合できるようにしたキット製品(別紙事例2)
(1) このような製品については、製品全体を医薬品として承認許可申請することとし、使用される容器類が医療用具に該当する場合(体内に注入できる装置があらかじめセットされた場合)には、以下の他、前記1―(1)を準用するものとすること。この種のキット製品については、複数の医薬品の組合せが固定処方とみなされることから、医療用配合剤に準じた審査方針で承認審査が行われるものであること。ただし、用時溶解型注射剤(単品)に単に溶解又は希釈を目的とした医薬品(注射用蒸留水、注射用生理食塩液等)が組み合わされたものについてはこの限りではない。(事例2の①、②)
なお、使用できる溶解液又は希釈液が複数存するものにあつては、それぞれ別品目として申請する必要はなく、同一品目として申請可能であること。
(2) 別紙事例2で示した製品図のうち、①又は②のキット製品を製造しようとする場合であつて、医薬品Aの承認を既に受けている者にあつては、医薬品Aの承認事項一部変更承認申請により、当該キット製品の承認を得ることが可能であること。
(3) これらキット製品の製造に当たつては、医薬品Aを製造する者又は医薬品C及び医療用具(容器)を製造する者が密封容器に収められた無菌製剤たる医薬品の製造を他に委託し、当該医薬品を開封することなく、自社で製造した医薬品と組み合わせることも認められるものであること。
3 二種以上の医薬品(A~C)をあらかじめ溶解又は混合し単一容器内に充填したキット製品(別紙事例3)
(1) このような製品については、製品全体を医薬品として承認・許可申請することとし、使用する容器類が医療用具に該当する場合(体内に注入できる装置があらかじめセットされた場合)には以下の他前記1―(1)を準用するものであること。この種の製品は、二種以上の医薬品が溶解又は混合しているものであるので、医療用配合剤として承認審査が行われるものであること。ただし、2と同様、注射剤(単品、抗生物質等)と単に溶解又は希釈を目的とした医薬品(注射用蒸留水、注射用生理食塩液等)とが混合されたものについては、配合剤とはみなさない。(事例3の①)
(2) 抗生物質等の注射剤の承認を既に受けている者が、別紙事例3の製品を製造(輸入)しようとする場合には、当該注射用医薬品の承認事項一部変更承認申請により、当該製品の承認を得ることが可能であること。
4 用時溶解型注射剤(A)と他の注射剤(C)を使用時に接続して使用できるようにあらかじめ特定の容器に充填したキット製品(別紙事例4)
このような製品については、当該容器が医療用具に該当する場合(体内に注入できる装置があらかじめセットされた場合)には、以下の他、前記1―(1)を準用するものであるが、それ以外の場合には単なる容器として取り扱うこととするので、該当する医薬品(別紙事例4の製品図における医薬品A及び医薬品C)の承認申請書に当該容器を使用する旨を記載して承認を受ければ製造(輸入)は可能であること(既承認の医薬品にあつては、承認事項一部変更承認申請により、容器の追加又は変更が可能である。)。なお、医薬品Aと組み合わされる溶解液等は、個々に特定される必要はないが、医薬品Aについての特定容器の使用は、当該医薬品の用法として静注(点滴静注を含む。)の用法が認められているものに限り承認されること。
なお、他の輸液製剤と混合したときに配合変化等がおこる場合にあつては、「使用上の注意」中、適用上の注意の項にその旨記載しておくこと。
5 別紙事例1~4の製品の承認申請を行う場合の添付資料については、原則として、昭和五五年五月三〇日薬発第六九八号薬務局長通知に示すもの(同通知により、新医薬品以外の医療用の後発医薬品の承認申請にあつては、原則として、規格及び試験方法に関する資料、安定性に関する資料及び生物学的同等性に関する資料の添付が必要とされているが、静脈内注射のみを投与経路とする医薬品にあつては、生物学的同等性に関する資料の添付は必要としない。)のほか、キット製品とすることによる医療上の利点を裏付ける説明資料(同種のキット製品が既に承認されている場合には、既承認キツト製品と機能・形態及び組み合わされた医薬品の有効成分が同等であることを説明する資料)を添付すること。
なお、別紙事例1~4の製品の承認申請を行う場合の添付資料の作成に当たつては、以上の他、次の(1)及び(2)によるものとすること。
(1) 別紙事例1~4のような場合、注射剤の容器として従来認められていたものと異なる材質、形状のものを使用することが多いと思われるが、その場合には容器の規格を定めるとともに容器成分の注射液等への溶出性の検討とともに、用時混合して使用するもの(事例4を除く)については、混合した際の混合変化についても、併せて検討すること。
(2) 別紙事例2及び事例3の医療用配合剤又は医療用配合剤に準ずるものについては、昭和五五年六月二五日薬審第八〇四号通知「医療用配合剤の取扱いについて」で定める配合理由に関する資料を添付すること。
6 本通知による取扱いは、昭和六一年四月一日以降の申請に係る医薬品について適用するが、キット製品の承認申請に当たっては、承認申請書の備考欄に「キット製品」である旨を記載すること。また、進達書にはキットを朱書の上進達すること。
7 本通知においては、照会のあった別紙事例1~4の製品について、承認許可申請の取扱い方針を示しているが、このような製品分野は諸外国においても登場して間もないところであるので、キット製品の形態の異なるものも今後開発されてくる可能性があり、また、別紙事例2以外においても委受託製造の申請が行われてくることが考えられる。そのような事例については、事前に申請方法等につき行政当局と相談することが望ましい。
別紙 略