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○グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて

(昭和五三年二月一三日)

(薬発第一五八号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)

最近、グリチルリチン酸等を含有する医薬品の長期大量使用により、偽アルドステロン症が発現した症例が報告されている。

これらの情報について、中央薬事審議会の副作用調査会において検討した結果、グリチルリチン酸、その塩類、甘草又はそのエキス剤(以下「グリチルリチン酸等」という。)を含有する医薬品については、今後、左記のとおり取り扱うこととしたので、御了知のうえ、貴管下関係業者に対し周知徹底方よろしく御配慮願いたい。

なお、左記1に該当する医薬品については、速やかに当該製造(輸入販売)業者から使用上の注意事項の追加記載措置に関する報告を徴し、その措置状況の把握確認を行うこととされたい。

おつて本件副作用情報の概要は、別添2のとおりであるので、参考とされたい。

1 今後製造(輸入)するグリチルリチン酸等を含有する医薬品(経口剤、注射剤)については、別添1の使用上の注意事項を追加記載した文書を添付して販売させること。なお、一日最大配合量がグリチルリチン酸として四〇mg未満、甘草として一g未満(エキス剤については原生薬に換算して一g未満)の場合は記載する必要はない。

2 今後製造(輸入)承認を与える一般用医薬品(経口剤)については、グリチルリチン酸等の一日最大配合量を次のとおりとしたこと。ただし、漢方生薬製剤であつて、甘草湯、芍薬甘草湯等のように使用期間のごく短いものについてはこの限りでない。

成分名

一日最大配合量

グリチルリチン酸

二〇〇mg

グリチルリチン酸の塩類

グリチルリチン酸として二〇〇mg

甘草

五g

甘草のエキス剤

原生薬に換算して五g

注) 前記成分を二種以上配合する場合には、当該成分ごとに配合する分量をそれぞれの一日最大配合量で除して得た数値の和が一を越えないこと。

3 既に製造(輸入)承認及び許可を受けているグリチルリチン酸等を含有する一般用医薬品のうち、グリチルリチン酸等の配合量が前記2の基準に適合しない品目については、遅くとも一年以内に、処方若しくは用法用量の変更を行わせるか又は当該品目の承認整理届及び製造(輸入)品目の廃止届を提出させること。

(別添1)

グリチルリチン酸等を含有する医薬品の使用上の注意事項

1 一日最大配合量がグリチルリチン酸として一〇〇mg以上又は甘草として二・五g以上(エキス剤については原生薬に換算して二・五g以上)の医療用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

(1) 次の患者には投与しないこと。

1) アルドステロン症の患者

2) ミオパチーのある患者

3) 低カリウム血症のある患者

(2) 副作用

1) 電解質代謝…低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察(血清カリウム値の測定など)を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。

2) 神経・筋肉…低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、脱力感、四肢痙れん・麻痺等の異常が認められた場合には投与を中止すること。

(3) 相互作用

フロセミド、エタクリン酸又はチアジド系利尿剤との併用により血清カリウム値の低下があらわれやすくなるので、注意すること。

2 一日最大配合量がグリチルリチン酸として四〇mg以上一〇〇mg未満又は甘草として一g以上二・五g未満(エキス剤については原生薬に換算して一g以上二・五g未満)の医療用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

副作用

電解質代謝…長期連用により低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加等の偽アルドステロン症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。

また、低カリウム血症の結果としてミオパチーがあらわれるおそれがある。

3 一日最大配合量がグリチルリチン酸として四・〇mg以上又は甘草として一g以上(エキス剤については原生薬に換算して一g以上)の一般用医薬品の使用上の注意に追加記載する事項

(1) 次の人は服用前に医師、薬剤師に相談すること。

1) 血圧の高い人又は高齢者

2) 心臓又は腎臓に障害のある人

3) むくみのある人

4) 医師の治療を受けている人

(2) 服用中又は服用後は次のことに注意すること。

1) 本剤を服用することにより、尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、血圧が高くなる、頭痛等の症状があらわれた場合には服用を中止し、医師、薬剤師に相談すること。

2) 数日間服用しても症状の改善がみられない場合は服用を中止し、医師、薬剤師に相談すること。

(漢方生薬製剤以外の製剤に追加記載すること。)

3) 長期連用しないこと。

(漢方生薬製剤以外の製剤に追加記載すること。)

3)′短期間の服用にとどめ、連用は避けること。

(短期服用に限られる漢方生薬製剤に記載すること。)

3)″長期連用する場合には、医師、薬剤師に相談すること。

(3)′以外の漢方生薬製剤に追加記載すること。)

(別添2)

副作用情報の概要

グリチルリチン酸、その塩類、甘草又はそのエキス剤は抗アレルギー剤、肝疾患用剤、胃腸薬、鎮咳去痰薬等に配合されており、甘草は漢方生薬製剤の一成分としても広く用いられている。また、これらの成分は、矯味剤としても用いられており、この場合は比較的少量が添加されている。

グリチルリチン酸、甘草等は、大量に使用するとナトリウム貯留、カリウム排泄促進が起こり、浮腫、高血圧、四肢麻痺、低カリウム血症等の症状があらわれ、これらは偽アルドステロン症1)として報告されている。

最近、我が国でグリチルリチン酸の長期(一か月以上)使用による偽アルドステロン症の発現が報告されている2)~7)。これらの症例では大部分が一日五〇〇mg以上の投与を受けているが、この半量程度で発現したとしている例もある6)。

甘草についても、一日五~一〇g(煎剤)を一年以上使用した例で偽アルドステロン症8)が、また、芍薬甘草湯及びその類方(一日量中に甘草九gを含む煎剤)で一時的な浮腫、シビレの発現が報告されている9)。

これらのグリチルリチン酸等によると思われる偽アルドステロン症の症例は、いずれもグリチルリチン酸等の投与中止後緩解しているが、グリチルリチン酸等を含有する医薬品の使用に当たつては、これらの副作用症状に注意する必要がある。

参考文献 略