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○「医療機関債」発行等のガイドラインについて

(平成16年10月25日)

(医政発第1025003号)

(各都道府県知事・各地方厚生局長あて厚生労働省医政局長通知)

「これからの医業経営の在り方に関する検討会」最終報告書(平成15年3月)において、「医業経営の安定性を高める方策の一つとして、資金調達手段の多様化を図るため、直接金融の一手法としての医療機関債の発行を円滑化するとともに、自己責任の下での適正な発行を可能とする観点から、医療機関債発行のためのルール等を明確化するガイドライン等の制定が必要である」との提言がなされたことを受け、医療機関を開設する医療法人が債券を発行するに当たり、遵守すべきルール及び留意点を明らかにした「医療機関債」発行のガイドラインを取りまとめたところである。

さらに、平成23年4月8日に閣議決定された「規制・制度改革に係る方針」において、「医療法人の再生支援・合併における諸規制の見直し」として、医療法人が他の医療法人に融資又は与信を行うことを認めることの必要性について検討することとされたことを受け、医療機関債の購入により、剰余金配当禁止の趣旨に反することなく医療法人が他の医療法人に融資を行うことができる場合のルールを定めることとし、前記ガイドラインと合わせて、「「医療機関債」発行等のガイドライン」として別添のとおり取りまとめたので、主な関連規定(参考)とあわせ、貴管下に主たる事務所を有する医療法人に対して周知いただくとともに、御指導方よろしくお願いする。

[別添]

「医療機関債」発行等のガイドライン

このガイドラインは、医療機関を開設する医療法人が、資金調達のため債券を発行するに当たり、適切なリスクマネジメントの下、関係法令に照らし適正かつ円滑になされることに資する観点から、債券の発行から償還に至るまでの各種手続き等に関し、購入者の自主的な判断のための情報の開示を始め医療法人が遵守すべきルール及び留意点を明らかにするとともに、医療機関債を購入することができる医療法人の条件等を定めるものであること。

また、医療法人がこのガイドラインを遵守しないときは、都道府県知事から当該医療法人に対し、医療法(昭和23年法律第205号)第64条第1項の規定に基づく医療機関債発行停止などの改善命令が行われる場合があること。

第1 医療機関債の定義

1 このガイドラインにおいて、医療機関債とは、医療機関を開設する医療法人(医療法第39条の医療法人をいう。以下同じ。)が、民法上の消費貸借として行う金銭の借入れに際し、金銭を借入れたことを証する目的で作成する証拠証券をいうものであること。

2 医療機関債は、借入金の返還請求等の権利を表象している点で講学上の有価証券に該当し得るが、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条に規定する同法の有価証券には該当しないものであること。

第2 医療機関債を発行するに当たって遵守すべき事項等

1 医療機関債を発行できる医療法人

① 医療法人は、医療機関債の発行に当たっては、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(昭和29年法律第195号。以下「出資法」という。)及び医療法その他法令に抵触しないようにしなければならないものであること。その際、当該医療法人が医療機関債を発行する年度の前年度から遡って3年度以上税引前純損益が黒字であるなど経営成績が堅実であることが望ましいものであること。

② 医療法人運営管理指導要綱(平成2年3月1日付健政発第110号「病院又は老人保健施設等を開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」の別添。以下「運営管理指導要綱」という。)の「Ⅰ 組織運営 2 役員 (6) 監事」においては、医療法第51条第2項の医療法人については、公認会計士又は監査法人による監査を受けることとされており、医療機関債を発行する医療法人は、医療機関債の発行により負債総額が100億円以上となる場合を含め負債総額が100億円以上である場合又は一会計年度における発行総額が1億円以上(ただし、銀行がその全額を引き受ける場合は除く。)若しくは一会計年度における購入人数が50人以上である場合には、公認会計士又は監査法人による監査を受けるものとすること。なお、これらの場合のほかも、医療法人が医療機関債を発行するときは、公認会計士又は監査法人による監査を受けることが望ましいものであることに留意すること。

2 借入金たる性格の明確化

① 医療機関債は、資金を借り入れる医療法人の資産の取得の利便のために発行するものとし、資産の取得以外の目的のためには発行しないものとすること。その発行に当たっては、金銭消費貸借契約に基づく医療法人の借入金を証するものである旨を、発行の目的、対象等とあわせて後記4①の発行要項等に明確に定めるとともに、発行対象者に周知する手段を講ずるものとすること。

② 医療法人が医療機関債の発行により資金調達を行うに当たっては、出資法第1条(出資金の受入の制限)及び第2条(預り金の禁止)に抵触しないよう留意するものとし、その際、出資法第2条に関しては、金融庁の「事務ガイドライン」(金融庁ホームページ:http://www.fsa.go.jp)第三分冊金融会社関係の「2 預かり金関係」を参考にすること。

3 医療法人の内部手続

① 医療法人が、医療機関債を発行して行う金銭の借入れは、運営管理指導要綱の「Ⅲ 管理 3 会計管理 (3) 債権債務の状況」にいう借入金に該当することから、社団の形態をとる医療法人にあっては理事会及び社員総会の議決(評議員会を有するものは、その同意)を経て行うものとし、財団の形態をとる医療法人にあっては理事会及び評議員会の議決を経て行うものとすること。

② 医療法人は、医療法第41条及び医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号。以下「規則」という。)第30条の34の規定を常時満たすことが必要であり、医療機関債の発行により資金調達をした場合においても、同様であること。

③ 医療機関債の発行前の勧誘を行う1か月前までに後記4①の発行要項等及び直近の3会計年度の財務状況を記載した書類を監督庁に届けること。

④ 医療機関債を発行した場合には、当該発行した医療機関債に関する情報を事業報告書に記載すること。

4 発行要項等の策定等による情報開示

① 医療機関債を発行するに当たって、医療法人は、次のものを作成するものとすること。

ア 発行要項(発行総額、申込単位、申込期間、利率、払込期日、申込取扱場所、申込みの取扱方法、資金使途、償還の方法及び期限、利息支払の方法及び期限、中途換金、第三者への譲渡制限、担保、財務情報の開示など財務上の特約、期限の利益喪失に関する特約、債権者集会に関する事項、その他医療機関債の購入申込者に必要な事項について記載したもの。)

イ 発行説明書(医療機関債のリスク、購入者が支払うべき手数料等がある場合にはその額又は計算方法、その他医療機関債に関する説明に必要な事項について記載したもの。)

ウ 事業計画書及び償還資金の調達方法(中長期的な事業計画との関連での資金の償還に係る計画を含む。)を記した購入申込者向けの説明書

なお、発行要項等において、医療機関債は金融商品取引法の適用がなく、その定める手続によらないものであること、また、公認会計士又は監査法人の監査を受けていない場合にはその旨をそれぞれ明記するものとすること。

② 医療法人は、発行前の勧誘時点において、前記①の発行要項等の他、法定の事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び監事の監査報告書を購入対象者に対して開示するものとすること。

5 発行条件等

(1) 利率等

① 利率等の条件は、一回の発行に当たり同一であるものとすることとし、一般の購入者と医療法人の役員及び当該役員の同族関係者との間で、差異を設けてはならないこと。

なお、医療法人の役員及び当該役員の同族関係者について利率等に差異を設けることは、医療機関債の発行主体が、社会医療法人又は特定医療法人であるときは規則第30条の35の2第1項第1号ヘ又は租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第39条の25第1項第3号にいう「特別の利益の付与」に該当する可能性があることに留意すること。

② 利率の決定に当たっては、発行予定日2カ月前発表の新発長期国債利回りに1%を上乗せしたものを標準利率とし、その標準利率の2倍に相当する率又は標準利率に2%を上乗せした率のいずれか低い方の率を限度とすることが適当であることに留意すること。

(2) 購入対象者及び勧誘方法等

① 医療機関債の購入対象者は、当該法人の役職員やその縁者、地域住民、銀行、その他後記第3で示す条件に該当する医療法人等が考えられること。

ただし、医療機関債を発行する医療法人の役員及び当該役員の同族関係者を始めとする相互に特殊な関係をもつ特定の同族グループに限定しないものとすること。

② 医療機関債購入の勧誘については、医療法人自らが行うこととし、委託してはならないこと。ただし、銀行に対する勧誘は除く。

③ 医療機関債購入の勧誘については、購入対象者に対して誠実かつ公正に、遂行しなければならないこと。

④ 医療機関債の購入又はその勧誘に関して、購入対象者に対して虚偽のことを告げる行為を行ってはならないこと。

⑤ 購入対象者に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解をさせるおそれのあることを告げて医療機関債の購入を勧誘する行為をしてはならないこと。

⑥ 医療機関債の購入の勧誘を受けた者が医療機関債を購入しない旨の意思(当該債権の勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為をしてはならないこと。

⑦ 医療機関債の購入について、購入対象者の知識、経験、財産の状況及び医療機関債を購入する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って購入者の保護に欠けること、又は欠けるおそれがあることをしないこと。

(3) 譲渡制限

① 購入人数が49人以下の医療機関債については、譲渡(贈与・寄付による名義の変更を含む。)を原則禁止とすること。ただし、購入者が自らの保有する医療機関債を一人に対し一括して譲渡する場合は除く。なお、この場合、譲渡しようとする購入者は、医療法人に協議し、理事会の承認を得ていることが望ましいこと。

② 医療機関債の譲渡を制限する場合は、民法等関係法令を踏まえ、その制限の内容、制限下において譲渡する際に必要な手続等について、あらかじめ定めた上で発行要項及び債券面に譲渡制限の事実及び譲渡承認方法について記載するものとすること。

6 債券購入者等との関係

(1) 診療差別の排除

① 医療法人が、開設する医療機関の施設内に前記4①の発行要項等を掲示することは差し支えないが、当該医療機関の患者・家族等に対し、医療機関債の購入を強制したり、又は強制しているとの誤解を受けることがないようにするものとすること。

② 医療法人が、医療機関債の購入者に対して、利子の支払の他に経済的利益を付与する際には、当該経済的利益は健康保険法(大正11年法律第70号)その他法令の規定に基づく医療に係るものであってはならないものであること。

(2) 経営介入の排除

① 医療機関債の購入者は、設定された金利等を受け取り、償還期日が到達した際、表示された債務の償還を受ける権利があるのみであり、その購入をもって法的に医療法人の経営に影響を及ぼす立場に立つものではないこと。

② 購入者1人当たりの購入口数又は購入額に上限を設けることは、差し支えないものであること。

(3) 決算期ごとの情報の開示

① 医療法第51条の2の規定により、医療法人は、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び監事の監査報告書等を各事務所に備えて置き、請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないものであること。その際、医療法人は、これらに加え、医療機関債の資金の使途又は取得した資産の状況、直近の3会計年度の財務状況を記載した書類についても、法定の書類と同様に毎年作成し、決算期ごと、債権者に対して情報提供を行うものとすること。

② 前記①の開示の方法については、ホームページ等で公開することによることとしても差し支えないものであること。

(4) 条件の変更

医療機関債の発行の際に明示した条件(利率、償還期日等)を変更するときは、医療法人は、購入者全員による集会の開催等により購入者の同意を得るものとし、その同意を得る方法については、これをあらかじめ定めた上、前記4①の発行要項に明示するものとすること。

7 償還

(1) 繰上償還

医療法人が、満期日前に医療機関債の償還をしようとする場合は、あらかじめ購入者全員に対する説明と同意を得るものとし、その同意を得る方法については、これをあらかじめ定めた上、前記4①の発行要項に明示するものとすること。

(2) 期中償還

満期日前に、次に掲げる理由により、購入者又はその相続人からの医療機関債の償還の申出があった場合には、医療法人が買入れ償還することができるものであること。

ア 購入者が死亡したため

イ 購入者が破産宣告を受けたため

ウ 購入者が疾病又は障害により生計を維持できなくなったため

エ その他アからウまでに準ずる理由として発行者が認めたもの

第3 医療機関債を購入する医療法人について

医療法人が他の医療法人に融資を行うことは原則として認められないが、次のいずれも満たす場合に限り、医療機関債を購入することができる。

1 保有することができる医療機関債は償還期間が10年以内のものであって、かつ、一つの医療法人が発行するものであること。

2 同一の医療法人が発行する新たな医療機関債については、保有する医療機関債の償還が終了してから1年が経過するまでの間は購入することができないものであること。

3 医療機関債を購入する医療法人は、医療機関債の発行により資産の取得が行われる医療機関と同一の二次医療圏内に自らの医療機関を有しており、これらの医療機関が地域における医療機能の分化・連携に資する医療連携を行っており、かつ、当該医療連携を継続することが自らの医療機関の機能を維持・向上するために必要なものであること。

4 医療機関債を購入する前年度の貸借対照表上の総資産額に占める純資産額の割合が20%以上であること。

5 医療機関債の購入額は、前記4の純資産額を超えず、かつ1億円未満であること。

6 医療機関債の購入に当たっては、社団医療法人にあっては、理事会及び社員総会の議決(評議員会を有するものは、さらにその同意)を経て行うものとし、財団医療法人にあっては、理事会及び評議員会の議決を経て行うものとすること。

7 医療機関債を保有する医療法人は、当該保有する医療機関債に関する情報を事業報告書に記載すること。

(参考)

主な関連規定

○医療法(昭和23年法律第205号)

(医療法人)

第39条 病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。

2 前項の規定による法人は、医療法人と称する。

(施設又は資金)

第41条 医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。

2 前項の資産に関し必要な事項は、医療法人の開設する医療機関の規模等に応じ、厚生労働省令で定める。

(業務の範囲)

第42条 医療法人は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。

一 医療関係者の養成又は再教育

二 医学又は歯学に関する研究所の設置

三 第39条第1項に規定する診療所以外の診療所の開設

四 疾病予防のために有酸素運動(継続的に酸素を摂取して全身持久力に関する生理機能の維持又は回復のために行う身体の運動をいう。次号において同じ。)を行わせる施設であつて、診療所が附置され、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置

五 疾病予防のために温泉を利用させる施設であつて、有酸素運動を行う場所を有し、かつ、その職員、設備及び運営方法が厚生労働大臣の定める基準に適合するものの設置

六 前各号に掲げるもののほか、保健衛生に関する業務

七 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第3項第2号から第6号までに掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるもの又は同項第7号に掲げる事業の実施

2 医療法人のうち、次に掲げる要件に該当するもの(以下「特別医療法人」という。)は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、その収益を当該特別医療法人が開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の経営に充てることを目的として、厚生労働大臣が定める業務を行うことができる。

一 役員のうちには、各役員について、その役員、その配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の二分の一を超えて含まれることがないことその他公的な運営に関する厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

二 定款又は寄附行為において解散時の残余財産を国、地方公共団体又は厚生労働省令で定める者に帰属させる旨を定めていること。

3 前項に規定する厚生労働大臣が定める業務(第64条の2において「収益業務」という。)に関する会計は、当該特別医療法人が開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務及び第1項各号に掲げる業務に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。

(書類の整備、閲覧)

第52条 医療法人は、毎会計年度終了後二月以内に、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を作り、常にこれを各事務所に備えて置かなければならない。

2 医療法人の債権者は、医療法人の執務時間内はいつでも、前項の書類の閲覧を求めることができる。

○医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)

(医療法人の自己資本額)

第30条の34 病院又は介護老人保健施設を開設する医療法人は、その資産の総額の百分の二十(法第42条第2項に規定する特別医療法人にあつては、百分の三十)に相当する額以上の自己資本を有しなければならない。ただし、厚生労働大臣の定める基準に適合する場合は、この限りでない。

2 前項に規定する自己資本とは、資本金及び剰余金の合計額(繰越損失金がある場合にはその額を控除した額)をいう。

(特別医療法人とされる公的な運営に関する要件)

第30条の35 法第42条第2項第1号の規定による要件は、次のとおりとする。

一 財団である医療法人又は社団である医療法人で持分の定めのないものであること。

二 当該医療法人が開設する医療提供施設のうち、一以上のものが次に掲げる病床のいずれかを含み、又は厚生労働大臣が定める基準に該当する病院又は診療所であること及び四十人以上の患者を入院させるための施設を有するものであること、救急病院等を定める省令(昭和39年厚生省令第8号)第2条の規定に基づき救急病院である旨を告示されたものであることその他公益の増進に著しく寄与する事業を営むに足りる施設を有するものであること。

イ 専らがんその他の悪性新生物、小児疾患若しくは周産期疾患又は循環器疾患に関し、診断及び治療、調査研究並びに医療関係者の研修を行う病院又は診療所並びにこれに準ずる機能及び性格を有する病院又は診療所の病床

ロ 専らリハビリテーションに関し、診断及び治療、調査研究並びに医療関係者の研修を行う病院又は診療所並びにこれに準ずる機能及び性格を有する病院又は診療所の病床

ハ 救急医療体制において不可欠な診療機能を有する病院又は診療所の当該機能に係る病床

ニ 精神病質、アルコールその他の薬物による中毒性精神疾患、老人性精神疾患、小児精神疾患、頭部外傷による精神疾患又は合併症を伴う精神疾患に関し、特殊の診療機能を有する病院又は診療所の当該機能に係る病床

ホ 治療方法の確立していない疾病にり患している者を入院させ当該疾病に関し、診断及び治療並びに調査研究を行う病院又は診療所の当該機能に係る病床

ヘ 小児慢性疾患に関し、診断及び治療を行う病院又は診療所であつて、療養中の児童又は生徒に対して学校教育を行う施設が設置されているものの当該機能に係る病床

ト 専ら末期のがんその他の悪性新生物の患者を入院させ、緩和ケアを行う病院又は診療所の当該機能に係る病床

チ 専ら結核後遺症に起因する慢性呼吸不全の患者を入院させ、診断及び治療を行う病院又は診療所の当該機能に係る病床

リ 病院又は診療所の建物の全部又は一部、設備、器械及び器具を当該病院又は診療所に勤務しない医師又は歯科医師の診療、研究又は研修のために利用させる病院又は診療所の当該機能に係る病床

三 当該医療法人の業務について、次に掲げる要件を満たすものであること。

イ 社会保険診療に係る収入金額(労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に係る患者の診療報酬(当該診療報酬が社会保険診療報酬と同一の基準によつている場合又は当該診療報酬が少額(全収入金額の概ね百分の十以下の場合をいう。)の場合に限る。)を含む。)及び健康増進法(平成14年法律第103号)第6条各号に掲げる健康増進事業実施者が行う同法第四条に規定する健康増進事業(健康診査に係るものに限る。)に係る収入金額の合計額が、全収入金額の百分の八十を超えるものであること。

ロ 自費患者(社会保険診療に係る患者又は労働者災害補償保険法に係る患者以外の患者をいう。)に対し請求する金額は、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されるものであること。

ハ 医療診療(社会保険診療、労働者災害補償保険法に係る診療及び自費患者に係る診療をいう。)により収入する金額は、医師、看護師等の給与、医療の提供に要する費用(投薬費を含む。)等患者のために直接必要な経費の額に百分の百五十を乗じて得た額の範囲内であること。

四 当該医療法人につき医療に関する法令に違反する事実その他公益に反する事実がないこと。

五 当該医療法人の設立者、役員等(その理事、幹事、評議員その他これらの者に準ずるものをいう。以下同じ。)若しくは社員又はこれらの者の親族等(これらの者と親族関係を有する者及び次に掲げる特殊の関係がある者をいう。)に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないものであること。

イ これらの者とまだ婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ロ これらの者の使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持しているもの

ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

2 法第42条第2項第2号に規定する厚生労働省令で定める者は、他の特別医療法人とする。

○医療法人運営管理指導要綱(平成2年3月1日付健政発第110号「病院又は老人保健施設等を開設する医療法人の運営管理指導要綱の制定について」別添)

Ⅰ組織運営 2役員 (6)監事

1 理事、評議員及び法人の職員を兼任していないこと。また、他の役員と親族等の特殊の関係がある者ではないこと。(備考:医療法第48条)

2 理事の業務執行の状況、当該法人の財産の状況特に当該法人の事業報告書、財産目録、貸借対照表及び損益計算書について十分な監査が行われていることが望ましいこと。

3 監査を行った場合には、監査報告書が作成され、社員総会、理事会及び評議員会に報告後、法人において保存されていることが望ましこと。

4 法人の適正な会計管理等を行う観点からも内部監査機構の確立を図ることが重要である。

また、病院又は介護老人保健施設等を開設する医療法人の監査については外部監査が行われることが望ましい。(備考:特に負債100億円以上の医療法人については、公認会計士又は監査法人による監査あるいは指導を受けることが望ましいこと。)

5 実際に法人監査業務を実施できない者が名目的に選任されていることは適当でなく財務諸表を監査しうる者を選任すること。

Ⅲ管理 3会計 (3)債権債務の状況

1 借入金は、事業運営上の必要によりなされたものであること。

2 借入金は社員総会、理事会の議決を経て行われること。(備考:モデル定款・寄附行為)

3 借入金は全て証書で行われていること。

4 債権又は債務が財政規模に比し過大になっていないこと。(備考:病院又は介護老人保健施設を開設する医療法人の自己資本比率についてはⅢの2の8を参照)

○証券取引法(昭和23年法律第25号)

第2条第1項 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。

一 国債証券

二 地方債証券

三 特別の法律により法人の発行する債券(次号及び第7号の2に掲げるものを除く。)

三の二 資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)に規定する特定社債券

四 社債券(相互会社の社債券を含む。以下同じ。)

五 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券(次号、第5号の3及び第七号の二に掲げるものを除く。)

五の二 協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成5年法律第44号。以下「優先出資法」という。)に規定する優先出資証券(第166条第6項において「優先出資証券」という。)又は優先出資引受権を表示する証書

五の三 資産の流動化に関する法律に規定する優先出資証券(単位未満優先出資証券を含む。以下同じ。)又は新優先出資引受権を表示する証券

六 株券、新株引受権証書又は新株予約権証券

七 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券

七の二 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券

七の三 貸付信託の受益証券

七の四 資産の流動化に関する法律に規定する特定目的信託の受益証券

八 法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形のうち、内閣府令で定めるもの

九 外国又は外国法人の発行する証券又は証書で第1号から第6号まで又は前三号の証券又は証書の性質を有するもの

十 外国法人の発行する証券又は証書で銀行業を営む者その他の金銭の貸付けを業として行う者の貸付債権を信託する信託の受益権又はこれに類する権利を表示するもののうち、内閣府令で定めるもの

十の二 前各号、次号若しくは第11号に掲げる証券若しくは証書又は次項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利に係る第22項又は第26項各号に規定する権利(当該権利を表示する証券又は証書に係る第22項又は第26項各号に規定する権利を含む。以下「オプション」という。)を表示する証券又は証書

十の三 前各号に掲げる証券又は証書の預託を受けた者が当該証券又は証書の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券又は証書に係る権利を表示するもの

十一 前各号に掲げるもののほか、流通性その他の事情を勘案し、公益又は投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定める証券又は証書

○出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(昭和29年法律第195号)

(出資金の受入の制限)

第1条 何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。

(預り金の禁止)

第2条 業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。

2 前項の「預り金」とは、不特定かつ多数の者からの金銭の受入れであつて、次に掲げるものをいう。

一 預金、貯金又は定期積金の受入れ

二 社債、借入金その他何らの名義をもつてするを問わず、前号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの

○租税特別措置法(昭和32年法律第26号)

(特定の医療法人の法人税率の特例)

第67条の2 財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないもの(清算中のものを除く。)のうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき政令で定める要件を満たすものとして、政令で定めるところにより国税庁長官の承認を受けたものの当該承認を受けた後に終了した各事業年度の所得については、法人税法第66条第1項又は第2項の規定(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(第68条第1項において「法人税等負担軽減措置法」という。)第16条第1項の規定を含む。)にかかわらず、百分の二十二の税率により、法人税を課する。

2 国税庁長官は、前項の承認を受けた医療法人について同項に規定する政令で定める要件を満たさないこととなつたと認められる場合には、その満たさないこととなつたと認められる時までさかのぼつてその承認を取り消すものとする。この場合においては、その満たさないこととなつたと認められる時以後に終了した当該医療法人の各事業年度の所得については、同項の規定は、適用しない。

3 国税庁長官は、第1項の承認をしたとき、若しくは当該承認をしないことを決定したとき、又は当該承認を取り消したときは、その旨を当該承認を申請した医療法人又は当該承認を受けていた医療法人に通知しなければならない。

4 第1項の規定の適用がある場合において、法人税法第69条第1項の規定の適用については、同項中「第66条第1項から第3項まで(各事業年度の所得に対する法人税の税率)」とあるのは「租税特別措置法第67条の2第1項(特定の医療法人の法人税率の特例)」と、同法第72条第1項又は第74条第1項の規定の適用については、同法第72条第1項第2号又は第74条第1項第2号中「前節(税額の計算)」とあるのは「租税特別措置法第67条の2第1項(特定の医療法人の法人税率の特例)及び前節第2款(税額控除)」とする。

5 第2項及び第3項に定めるもののほか、第1項の承認を受けた法人が、当該承認を受けた後に終了した各事業年度の所得について、同項の規定の適用を受けることをやめようとする場合の手続その他同項及び前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

○租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)

(法人税率の特例の適用を受ける医療法人の要件等)

第39条の25 法第67条の2第1項に規定する政令で定める要件は、次に掲げる要件とする。

一 各事業年度においてその事業及び医療施設が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすものである旨の厚生労働大臣の当該各事業年度に係る証明書の交付を受けること。

二 その運営組織が適正であるとともに、その理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(以下この項において「役員等」という。)のうち親族関係を有する者及びこれらと次に掲げる特殊の関係がある者(以下次号において「親族等」という。)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合が、いずれも三分の一以下であること。

イ 当該親族関係を有する役員等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ロ 当該親族関係を有する役員等の使用人及び使用人以外の者で当該役員等から受ける金銭その他の財産によつて生計を維持しているもの

ハ イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの

三 その設立者、役員等若しくは社員又はこれらの者の親族等に対し、施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。

四 その寄附行為又は定款において、当該法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は他の医療法人(財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないものに限る。)に帰属する旨の定めがあること。

五 当該法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記録又は記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。

2 法第67条の2第1項の承認を受けようとする医療法人は、次に掲げる事項を記載した申請書を、納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければならない。

一 申請者の名称及び納税地

二 代表者の氏名

三 その設立の年月日

四 申請者が現に行つている事業の概要

五 その他参考となるべき事項

3 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 その寄附行為又は定款の写し

二 その申請時の直近に終了した事業年度に係る第1項第1号に規定する証明書

三 第1項第2号、第3号及び第5号に掲げる要件を満たす旨を説明する書類

4 次の各号に掲げる医療法人は、当該各号に定める日の翌日から三年を経過した日以後でなければ、第2項の申請書を提出することができない。

一 法第67条の2第2項の規定に基づく承認の取消しを受けた医療法人 当該取消しの日

二 第六項に規定する届出書を提出した医療法人 当該届出書を提出した日

5 法第67条の2第1項の承認を受けた医療法人は、各事業年度終了の日の翌日から三月以内に、当該各事業年度に係る第1項第1号に規定する証明書を、納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければならない。

6 法第67条の2第1項の承認を受けた医療法人は、当該承認に係る税率の適用をやめようとする場合には、その旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を、納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければならない。この場合において、その届出書の提出があつたときは、その提出の日以後に終了する各事業年度の所得については、その承認は、その効力を失うものとする。

○民法(明治29年法律第89号)

第363条 債権ニシテ之ヲ譲渡スニハ其証書ヲ交付スルコトヲ要スルモノヲ以テ質権ノ目的ト為ストキハ質権ノ設定ハ其証書ノ交付ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ズ

第364条 指名債権ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ第467条ノ規定ニ従ヒ第三債務者ニ質権ノ設定ヲ通知シ又ハ第三債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ第三債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

2 前項ノ規定ハ株式ニハ之ヲ適用セス

第466条 債権ハ之ヲ譲渡スコトヲ得但其性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス

2 前項ノ規定ハ当事者カ反対ノ意思ヲ表示シタル場合ニハ之ヲ適用セス但其意思表示ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

第467条 指名債権ノ譲渡ハ譲渡人カ之ヲ債務者ニ通知シ又ハ債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

2 前項ノ通知又ハ承諾ハ確定日附アル証書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ以テ債務者以外ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

第468条 債務者カ異議ヲ留メスシテ前条ノ承諾ヲ為シタルトキハ譲渡人ニ対抗スルコトヲ得ヘカリシ事由アルモ之ヲ以テ譲受人ニ対抗スルコトヲ得ス但債務者カ其債務ヲ消滅セシムル為メ譲渡人ニ払渡シタルモノアルトキハ之ヲ取返シ又譲渡人ニ対シテ負担シタル債務アルトキハ之ヲ成立セサルモノト看做スコトヲ妨ケス

2 譲渡人カ譲渡ノ通知ヲ為シタルニ止マルトキハ債務者ハ其通知ヲ受クルマテニ譲渡人ニ対シテ生シタル事由ヲ以テ譲受人ニ対抗スルコトヲ得

第587条 消費貸借ハ当事者ノ一方カ種類、品等及ヒ数量ノ同シキ物ヲ以テ返還ヲ為スコトヲ約シテ相手方ヨリ金銭其他ノ物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス

第588条 消費貸借ニ因ラスシテ金銭其他ノ物ヲ給付スル義務ヲ負フ者アル場合ニ於テ当事者カ其物ヲ以テ消費貸借ノ目的ト為スコトヲ約シタルトキハ消費貸借ハ之ニ因リテ成立シタルモノト看做ス

第589条 消費貸借ノ予約ハ爾後当事者ノ一方カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ其効力ヲ失フ

第590条 利息附ノ消費貸借ニ於テ物ニ隠レタル瑕疵アリタルトキハ貸主ハ瑕疵ナキ物ヲ以テ之ニ代フルコトヲ要ス但損害賠償ノ請求ヲ妨ケス

2 無利息ノ消費貸借ニ於テハ借主ハ瑕疵アル物ノ価額ヲ返還スルコトヲ得但貸主カ其瑕疵ヲ知リテ之ヲ借主ニ告ケサリシトキハ前項ノ規定ヲ準用ス

第591条 当事者カ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ貸主ハ相当ノ期間ヲ定メテ返還ノ催告ヲ為スコトヲ得

2 借主ハ何時ニテモ返還ヲ為スコトヲ得

第592条 借主カ第587条ノ規定ニ依リテ返還ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ其時ニ於ケル物ノ価額ヲ償還スルコトヲ要ス但第402条第2項ノ場合ハ此限ニ在ラス