アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○病院会計準則適用ガイドラインについて

(平成16年9月10日)

(医政発第0910002号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)

「病院会計準則の改正について」(平成16年8月19日医政発第0819001号厚生労働省医政局長通知)を先般通知し、貴管内の医療機関に対してその活用につき御指導願いたい旨お示ししたところであるが、今般、病院の開設主体が当該病院の財政状態及び運営状況を適正に把握し、比較可能な会計情報を作成するため、開設主体の会計基準の適用を前提とし、病院会計準則に準拠した財務情報を提供する観点から、公的医療機関をはじめとする開設主体としての会計基準を有する医療機関に向けて、別添のとおり病院会計準則適用ガイドラインを策定したので、御了知の上、貴管内の医療機関に対して、その活用につき御指導願いたい。

病院会計準則適用ガイドライン

平成16年9月

厚生労働省医政局

目次

1.病院会計準則適用ガイドラインの基本的考え方

2.病院会計準則適用ガイドライン

第1章 総則

第2章 一般原則

第3章 貸借対照表原則

第4章 損益計算書原則

第5章 キャッシュ・フロー計算書原則

第6章 附属明細表原則

1.病院会計準則適用ガイドラインの基本的考え方

本ガイドラインは、公的病院等の開設主体が病院の財政状態及び運営状況を適正に把握し、比較可能な会計情報を作成するため、開設主体の会計基準を前提とし、病院会計準則に準拠した財務情報を提供することを目的とするものである。

第1 病院会計準則等と本ガイドラインの関係

1.病院会計準則

病院会計準則は、開設主体の異なる各種の病院の財政状態及び運営状況を体系的、統一的に捉えるための「施設会計」として、また、病院の開設主体が病院の経営実態を把握し、その改善向上に役立てるため、それぞれの病院の経営に有用な会計情報を提供するための「管理会計」としての準則であり、病院を単位とし個々の病院毎に財務諸表を作成するためのものである。

2.開設主体の会計基準

病院の開設主体の会計基準は、それぞれ開設主体の設立根拠、運営に対する考え方等を基礎として、それらの特性を踏まえた財務的な適正運営、業績評価など、開設主体全体の財政状態、運営状況の把握のために制定されているものであり、それぞれの関係者の利用目的に適合した有用な財務諸表を作成するためのものである。

また、開設主体の会計基準は、開設主体毎に異なった内容を有することがあり、病院も開設主体の運営する全体事業の一部分であることから、開設主体の財務諸表作成に当たっては、病院については、開設主体の会計基準が適用されることとなる。

3.財務諸表の位置付け

病院会計準則に基づく開設主体の一部を構成する病院単位の財務諸表と、開設主体の会計基準に基づく開設主体全体の財務諸表とは、主従の関係にあるものではなく、それぞれ異なった目的と機能を有するものである。

4.病院会計準則適用ガイドライン

開設主体の異なる各種の病院の財政状態及び運営状況を統一的に捉え、病院相互に比較可能な会計情報とするためには、病院会計準則を具体的に適用する場合、又は、そのまま適用することができない場合についての統一的、現実的な対応を図ることが必要である。

このため、病院会計準則適用ガイドラインは、病院を開設する開設主体が病院会計準則を適用して病院の財務諸表を作成する指針として、開設主体の会計基準との関係で開設主体が病院会計準則の各条項をどのように適用すべきかなど異なる開設主体における病院の会計情報の比較可能性を担保するために策定するものである。

なお、病院会計準則適用ガイドラインは、病院会計準則の条項に対応する形で構成されており、それぞれの開設主体における実際の適用に当たっては、病院会計準則適用ガイドラインのすべての条項が必要とするものではなく、開設主体の会計基準と一致する項目については、不要となる点に留意することとする。

第2 病院会計準則と開設主体の会計基準等に相違がある場合の基本的取扱い

1.財務諸表の取扱い

病院会計準則は、開設主体の異なる各種の病院の経営に有用な会計情報を提供し、会計情報の比較可能性を担保することとしている。このため、開設主体の会計基準において、病院会計準則に規定された財務諸表の一部の作成を要しないなど財務諸表の範囲が異なる場合には、開設主体の会計基準で作成が求められていないものであっても、病院会計準則に規定された財務諸表について、別途作成することとする。

2.会計処理等の取扱い

開設主体の会計基準において、病院会計準則と異なる会計処理となる場合(会計方針の選択適用が認められている場合における病院会計準則と異なる会計処理を選択した場合を含む。)、又は、異なる財務諸表の名称や様式等が定められている場合などについては、下記のいずれかにより取り扱うこととする。

(1) 病院会計準則に準拠した財務諸表を別途作成するものとする。

(2) 一組の帳簿組織において認識された取引記録を前提として、異なる会計基準等に準拠した財務諸表を作成するための手法である財務諸表の組替を行うこととし、一つの会計基準に準拠した帳簿記録又は財務諸表から精算表を利用して別の会計基準に準拠した財務諸表を作成するものとする。

(3) 開設主体の会計基準に従った財務諸表に、病院会計準則との違いを明らかにした情報を「比較のための情報」として注記することとする。

第3 今後の取扱い

本ガイドラインについては、病院を巡る社会、経済環境の変化に伴い、今後、病院会計準則が改正された場合、また、各開設主体の会計基準が改正された場合、必要に応じて、随時、見直しをすることとする。

2.病院会計準則適用ガイドライン

第1章 総則

第4 会計単位

病院の開設主体は、それぞれの病院を会計単位として財務諸表を作成しなければならない。

第5 財務諸表の範囲

病院の財務諸表は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書及び附属明細表とする。

<ガイドライン1―1 会計単位または財務諸表の範囲が異なる場合>

病院の財務諸表は、病院会計準則の規定に従って、病院を一つの会計単位として貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書及び附属明細表を作成するのが原則であり、これと異なる場合には、以下のいずれかの方法により、病院の会計情報を記載する。

① 病院ごとに病院会計準則の財務諸表に組み替える。

② 病院ごとに組替えに必要な情報を「比較のための情報」として注記する。

第2章 一般原則

(注5)重要な会計方針について

財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。会計方針とは、病院が貸借対照表、損益計算書及びキャッシュ・フロー計算書の作成に当たって、その財政状態及び運営状況を正しく示すために使用した会計処理の原則及び手続き並びに表示の方法をいう。会計方針の例としては、次のようなものがある。

① 有価証券の評価基準及び評価方法

② たな卸資産の評価基準及び評価方法

③ 固定資産の減価償却の方法

④ 引当金の計上基準

⑤ 収益及び費用の計上基準

⑥ リース取引の処理方法

⑦ キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲

⑧ 消費税等の会計処理方法

⑨ その他重要な会計方針

<ガイドライン2―1 会計方針に差異がある場合>

病院会計準則に規定する以外の会計方針を採用している場合には、その旨、内容又は病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を記載する。

<ガイドライン2―2 重要な会計方針記載の留意点>

重要な会計方針の注記は、「比較のための情報」と同様の意味を有するので、たとえば、固定資産の減価償却の方法の記載には、重要性の原則を適用して償却資産を固定資産に計上しない場合の判断基準(金額)、耐用年数の決定方法等の情報が含まれる点に留意する。

第3章 貸借対照表原則

第15 貸借対照表の表示区分

貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部の三区分に分け、さらに資産の部を流動資産及び固定資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分しなければならない。

<ガイドライン3―1 資産の区分の取扱い>

病院会計準則においては、流動資産及び固定資産以外の、いわゆる繰延資産の計上は認められない。開設主体の会計基準に基づき繰延資産を計上する場合には、その旨及び損益計算書に与える影響額を「比較のための情報」として記載する。

第16 資産、負債の表示方法

資産、負債は、適切な区分、配列、分類及び評価の基準に従って記載しなければならない。

<ガイドライン3―2 資産、負債の区分、名称が異なる場合>

開設主体の会計基準により、資産、負債の区分又は科目名称について、病院会計準則と異なる場合には、その内容を「比較のための情報」として記載する。

第18 貸借対照表の配列

資産及び負債の項目の配列は、流動性配列法によるものとする。

<ガイドライン3―3 固定性配列法の取扱い>

貸借対照表において流動資産と固定資産、流動負債と固定負債が区別されている限り、項目の配列が病院会計準則と異なっても利用者が病院の財政状態及び運営状況を判断することは困難ではない。開設主体の会計基準により、固定性配列法を採用している場合であっても、組替え又は「比較のための情報」記載は要しないものとする。

第19 貸借対照表科目の分類

3.負債

(2) 長期借入金その他経常の活動以外の原因から生じた支払手形、未払金のうち、期間が1年を超えるものは、固定負債に属するものとする。

<ガイドライン3―4 負債と純資産の区分の取扱い>

開設主体の会計基準により、病院会計準則で負債に該当するものを純資産の部に計上している場合には、その旨、内容及び金額を「比較のための情報」として記載する。

第19 貸借対照表科目の分類

3.負債

(4) 補助金については、非償却資産の取得に充てられるものを除き、これを負債の部に記載し、業務の進行に応じて収益に計上しなければならない。設備の取得に対して補助金が交付された場合は、当該設備の耐用年数にわたってこれを配分する。(注15)

なお、非償却資産の取得に充てられた補助金については、これを純資産の部に記載するものとする。

(注15)補助金の収益化について

補助金については、非償却資産の取得に充てられるものを除き、これを負債の部に記載し、業務の進行に応じて収益に計上する。収益化を行った補助金は、医業外収益の区分に記載する。

<ガイドライン3―5 補助金の会計処理に相違がある場合>

補助金の会計処理について、病院会計準則と異なる会計処理を行っている場合には、その旨、採用した会計処理方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第22 有価証券の評価基準及び評価方法

1.有価証券については、購入代価に手数料等の付随費用を加算し、これに移動平均法等の方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。

2.有価証券については、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、その他有価証券に区分し、それぞれの区分ごとの評価額をもって貸借対照表価額とする。(注17)(注18)

(注17)有価証券の評価基準について

有価証券については、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、その他有価証券に区分し、次のように評価を行う。

1.売買目的有価証券 時価で評価し、評価差額は損益計算書上、損益として計上する。

2.満期保有目的の債券は、取得原価をもって貸借対照価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合においては、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。償却原価法とは、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。

3.その他有価証券は時価で評価し、評価差額は、貸借対照表上、純資産の部に計上するとともに、翌期首に取得原価に洗い替えなければならない。

なお、満期保有目的の債券及びその他有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の費用として計上しなければならない。

(注18)満期保有目的の債券とその他有価証券との区分について

1.その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券以外の有価証券であり、長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券や、政策的な目的から保有する有価証券が含まれることになる。

2.余裕資金等の運用として、利息収入を得ることを主たる目的として保有する国債、地方債、政府保証債、その他の債券であって、長期保有の意思をもって取得した債券は、資金繰り等から長期的には売却の可能性が見込まれる債券であっても、満期保有目的の債券に含めるものとする。

<ガイドライン3―6 有価証券の評価基準等に相違がある場合>

有価証券の評価基準及び評価方法について、病院会計準則と異なる会計処理を行っている場合には、その旨、採用した評価基準及び評価方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第23 たな卸資産の評価基準及び評価方法

医薬品、診療材料、給食用材料、貯蔵品等のたな卸資産については、原則として、購入代価に引取費用等の付随費用を加算し、これに移動平均法等あらかじめ定めた方法を適用して算定した取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、時価が取得原価よりも下落した場合には、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。

<ガイドライン3―7 たな卸資産の評価基準等に相違がある場合>

たな卸資産の評価基準及び評価方法について、病院会計準則と異なる会計処理を行っている場合には、その旨、採用した評価基準及び評価方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第26 無形固定資産の評価

無形固定資産については、当該資産の取得原価から減価償却累計額を控除した未償却残高を貸借対照表価額とする。(注11)

(注11)ソフトウェアについて

1.当該病院が開発し販売するソフトウェアの制作費のうち、研究開発が終了する時点までの原価は期間費用としなければならない。

2.当該病院が開発し利用するソフトウェアについては、適正な原価を計上した上、その制作費を無形固定資産として計上しなければならない。

3.医療用器械備品等に組み込まれているソフトウェアの取得に要した費用については、当該医療用器械備品等の取得原価に含める。

<ガイドライン3―8 ソフトウエアの会計処理に相違がある場合>

病院が利用する目的で購入するソフトウエア(継続的な利用によって業務を効率的又は効果的に行うことによる費用削減が明確な場合の制作ソフトウエアを含む)は、無形固定資産に計上し、減価償却手続によって、各期の費用に計上しなければならないが、資産計上を行わない会計処理を採用している場合には、その旨、会計処理方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第27 負債の貸借対照表価額

4.退職給付引当金については、将来の退職給付総額のうち、貸借対照表日までに発生していると認められる額を算定し、貸借対照表価額とする。なお、退職給付総額には、退職一時金のほか年金給付が含まれる。(注14)

(注14)退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額について

退職給付の総額のうち期末までに発生していると認められる額は、退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法その他従業員の勤務の対価を合理的に反映する方法を用いて計算しなければならない。

<ガイドライン3―9 退職給付債務の会計処理等に相違がある場合>

退職給付債務に関する会計処理を病院会計準則と異なる方法で行っている場合には、その旨、採用した引当金の計上基準、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

病院の従事者に係る退職給付債務のうち、当該病院外で負担するため、病院の財務諸表には計上されないものが存在する場合には、その旨及び概要を「比較のための情報」に記載する。

(注12)リース資産の会計処理について

リース取引はファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分し、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

<ガイドライン3―10 リース資産の会計処理に相違がある場合>

リース資産に関する会計処理を病院会計準則と異なる方法で行っている場合には、その旨、会計処理方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

(注13)引当金について

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

<ガイドライン3―11 引当金の取扱い>

病院会計準則における引当金の設定要件を満たしながら、当該事象において引当金を計上していない場合には、その旨、会計処理方法、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

病院会計準則の引当金の定義に該当しない引当金を計上している場合も同様とする。

第4章 損益計算書原則

第30 費用の定義

費用とは、施設としての病院における医業サービスの提供、医業サービスの提供に伴う財貨の引渡し等の病院の業務に関連して資産の減少又は負債の増加をもたらす経済的便益の減少である。(注19)

(注19)資本取引について

資本取引には、開設主体外部又は同一開設主体の他の施設からの資金等の授受のうち負債の増加又は減少を伴わない取引、その他有価証券の評価替え等が含まれる。

<ガイドライン4―1 費用の範囲が異なる場合>

病院会計準則の費用の定義に該当するもので、損益計算書に計上されていないものがある場合には、その旨及び損益計算書に与える影響額を「比較のための情報」として記載する。

病院会計準則の費用の定義に該当しないもので、損益計算書に計上されているものがある場合も同様とする。

<ガイドライン4―2 内部取引の会計処理に相違がある場合>

同一開設主体の他の施設からの資金等の授受について、病院会計準則の費用又は収益の定義に該当しないものを損益計算書に計上している場合には、その旨、内容及び金額並びに病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第31 損益計算書の区分

損益計算書には、医業損益計算、経常損益計算及び純損益計算の区分を設けなければならない。

1.医業損益計算の区分は、医業活動から生ずる費用及び収益を記載して、医業利益を計算する。(注20)(注22)

2.経常損益計算の区分は、医業損益計算の結果を受けて、受取利息、有価証券売却益、運営費補助金収益、施設設備補助金収益、患者外給食収益、支払利息、有価証券売却損、患者外給食用材料費、診療費減免額等、医業活動以外の原因から生ずる収益及び費用であって経常的に発生するものを記載し、経常利益を計算する。

3.純損益計算の区分は、経常損益計算の結果を受けて、固定資産売却損益、災害損失等の臨時損益を記載し、当期純利益を計算する。

<ガイドライン4―3 損益計算書の区分・分類が異なる場合>

損益計算書の区分について、病院会計準則と異なる様式を採用している場合には、その旨、病院会計準則に定める区分との対応関係について、「比較のための情報」として記載する。

(注22)控除対象外消費税等負担額について

消費税等の納付額の計算は、開設主体全体で計算される。病院施設においては開設主体全体で計算された控除対象外消費税等のうち、当該病院の費用等部分から発生した金額を医業費用の控除対象外消費税等負担額とし、当該病院の資産取得部分から発生した金額のうち多額な部分を臨時費用の資産に係る控除対象外消費税等負担額として計上するものとする。

<ガイドライン4―4 消費税の会計処理に相違がある場合>

消費税の会計処理を病院会計準則と異なる方法で行っている場合には、その旨、会計処理方法及び病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。この場合の影響額とは、医業収益及び医業費用の各区分別に含まれている消費税相当額、控除対象外消費税等(資産に係るものとその他に区分する)と、その結果としての損益計算書の医業利益、経常利益及び税引前当期純利益に与える影響額とする。

(注23)本部費の配賦について

病院が本部を独立の会計単位として設置するか否かは、各病院の裁量によるが、本部会計を設置している場合には、医業利益を適正に算定するため、医業費用に係る本部費について適切な基準によって配賦を行うことが不可欠である。したがって、この場合には、医業費用の性質に応じて適切な配賦基準を用いて本部費の配賦を行い、その内容を附属明細表に記載しなければならない。

<ガイドライン4―5 本部費の配賦の取扱い>

本部会計を設置し、本部費を配賦していない場合は、その旨、病院会計準則に定める方法によった場合と比較した影響額を「比較のための情報」として記載する。

第5章 キャッシュ・フロー計算書原則

第42 資金の範囲

キャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、現金及び要求払預金並びに現金同等物とする。(注25)(注26)

(注25)要求払預金について

要求払預金には、例えば、当座預金、普通預金、通知預金及びこれらの預金の相当する郵便貯金が含まれる。

(注26)現金同等物について

現金同等物とは、容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資であり、例えば、取得日から満期日又は償還日までの期間が三ヶ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が含まれる。

<ガイドライン5―1 資金の範囲が異なる場合>

キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲が、病院会計準則と異なる場合には、その旨及びキャッシュ・フロー計算書の各区分(現金等の期首残高及び期末残高を含む)に与える影響額を「比較のための情報」として記載する。

第43 キャッシュ・フロー計算書の区分

キャッシュ・フロー計算書には、「業務活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分を設けなければならない。(注27)

1.「業務活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、医業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載する。

2.「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、固定資産の取得及び売却、施設設備補助金の受入による収入、現金同等物に含まれない短期投資の取得及び売却等によるキャッシュ・フローを記載する。

3.「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローを記載する。

<ガイドライン5―2 キャッシュ・フロー計算書の区分が異なる場合>

キャッシュ・フロー計算書が、病院会計準則の区分、すなわち、「業務活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」に区分されていない場合には、その旨、病院会計準則によった場合の業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローを「比較のための情報」として記載する。

第44 受取利息、受取配当金及び支払利息に係るキャッシュ・フロー

受取利息、受取配当金及び支払利息に係るキャッシュ・フローは、「業務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載しなければならない。(注28)

<ガイドライン5―3 キャッシュ・フローの計上区分に相違がある場合>

キャッシュ・フロー計算書が、病院会計準則の区分、すなわち、「業務活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」に区分されている場合であって、病院会計準則と異なる区分に計上されている項目がある場合には、その旨、病院会計準則によった場合の業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローを「比較のための情報」として記載する。

第6章 附属明細表原則

第50 附属明細表の種類

附属明細表の種類は、次に掲げるとおりとする。

1.純資産明細表

2.固定資産明細表

3.貸付金明細表

4.借入金明細表

5.引当金明細表

6.補助金明細表

7.資産につき設定している担保権の明細表

8.給与費明細表

9.本部費明細表

<ガイドライン6―1 附属明細表作成の留意点>

附属明細表に関連する項目について、病院会計準則と異なる処理を行っている場合には、以下のいずれかの方法により、附属明細表を作成する。

① 附属明細表は、病院会計準則の処理方法に従ったものを作成し、損益計算書及び貸借対照表との関係について必要に応じて注記する。

② 附属明細表は、開設主体の会計基準に従った損益計算書及び貸借対照表を基礎に作成し、「比較のための情報」に係る附属明細書の項目について注記する。

<ガイドライン6―2 類似の明細表等が存在する場合>

開設主体の会計基準に定められた類似の附属明細表又は明細書が存在する場合は、病院会計準則で規定している内容を「比較のための情報」として当該明細表又は明細書に注記することにより、代替することができる。