添付一覧
○医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について
(平成16年8月1日)
(医政発第0801001号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生労働省医政局長通知)
医療法施行規則の一部を改正する省令(平成16年厚生労働省令第119号。以下「改正省令」という。別添1)は平成16年7月30日に公布され、これに関係して、医療法施行規則第30条の11第1項第6号の規定に基づき、厚生労働大臣の定める陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の種類及び数量並びに陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の原子の数が一を下回ることが確実な期間(平成16年厚生労働省告示第306号。以下「種類及び数量等告示」という。別添2)が同日告示されたところである。
改正省令は、本日より施行されるとともに、種類及び数量等告示は本日から適用されるが、本改正の趣旨及び施行に当たり留意すべき事項は下記の通りであるので、御了知いただくとともに、管下関係団体及び管下医療機関に周知方お願いする。
なお、このたびの医療法施行規則及び関係告示の改正に当たっては、医療法施行規則及び関連告示に係る放射線障害防止の技術的基準に関して、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第62号)第6条の規定に基づき放射線審議会に諮問し、妥当である旨の答申を得ているので、申し添える。
記
第1 改正の趣旨
放射性同位元素(それ自体が放射線を発する元素。18F、15O等)を用いてがん等の診断をおこなう陽電子放射断層撮影装置を用いた検査(以下「PET検査」という。)が、新しい画像検査として近年急速に普及してきているところである。
このため、PET検査の安全性を確保し、適切な実施を確保するため、PET検査の特殊性に配慮した医療機関における安全管理のあり方等基本となるべき事項について、平成16年度厚生労働科学研究費補助金(医療技術評価総合研究)による「PET検査施設における放射線安全の確保に関する研究」(主任研究者:井上登美夫・横浜市立大学大学院医学研究科教授)において、医療機関におけるPET検査に伴う放射線の安全管理のあり方についての専門的な検討を行い、平成16年7月7日、中間報告(別添3)が取りまとめられたところである。
今般、本中間報告の趣旨を踏まえ、放射性同位元素(医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第24条第3号に規定するものをいう。)のうち、PET検査薬として用いられるものを医薬品に該当するものも含めて「陽電子断層撮影診療用放射性同位元素」として医療法施行規則に規定するとともに、これを医療機関に備える場合には、医療法(昭和23年法律第205号)第15条第3項に基づき都道府県知事に届け出なければならないことを明らかにするとともに、届け出る事項及び手続きを定めること、使用、貯蔵、運搬及び廃棄等に関し管理者の責務に係る規定を定めること等を目的に、改正省令及び種類及び数量等告示を制定したものであること。
第2 改正の要点と留意すべき事項
1 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号。以下「障防法」という。)との関係について
(1) 医療機関に設置したサイクロトロン装置により、放射性同位元素を精製及び放射性同位元素から陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を合成する作業については、従前のとおり障防法の規定の適用を受けるものであり、その使用、貯蔵、運搬及び廃棄等に関する諸規定を遵守しなければならないこと。この点については、改正省令による改正後の医療法施行規則(以下「新規則」という。)の規定の適用後も変更ないものであること。
(2) 医療機関に設置されるサイクロトロン装置については、従前のとおり障防法の規定の適用を受けるものであるが、最終的に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等医療の用に供する放射性同位元素を製造する目的のものである場合には、これらの行程は一連のものであることから、従前のとおり診療用放射線に準じた取扱いをお願いするものであること。医療機関より当サイクロトロン装置について、医療法第15条第3項に準ずる届出が行われる場合には、障防法第3条第2項の申請書の写等により以下の内容について確認するとともに、関連する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等の届出と齟齬なきことを確認されたいこと。
① 病院又は診療所の名称及び所在地
② サイクロトロン装置の制作者名、型式及び台数
③ サイクロトロン装置の定格出量
④ サイクロトロン装置及びサイクロトロン装置を設置する室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要
⑤ サイクロトロン装置の精製する放射性同位元素の種類、形状及びベクレル単位で表した1日の最大精製予定数量
2 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の定義等(新規則第24条第8号関係)
新規則第24条第3号の放射性同位元素のうち、陽電子放射断層撮影装置による画像診断(以下「陽電子断層撮影診療」という。)に用いるものは、医薬品であるか否かに関わらず、薬事法第2条第15項に規定する治験の対象とされる薬物も含め、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素とすること。
3 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る届出
(1) 届け出るべき場合
放射性同位元素であって、病院又は診療所に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えようとする場合(新規則第24条第8号)及び病院又は診療所に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えている場合(新規則第24条第9号)にあっては、管理者は、医療法第15条第3項の規定により、病院又は診療所所在地の都道府県知事に届け出なければならないものとされたこと。
なお、病院又は診療所に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えなくなった場合(新規則第24条第13号)についても、同様であること。
(2) 届出事項等
陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を病院又は診療所に備えようとする場合には、新規則第28条第1項各号に掲げる事項を記載した届出書を提出することにより行うこと。
その際、次の事項に留意すること。
① 新規則第28条第1項第4号に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線障害の防止に関する「予防措置」には、以下に掲げる内容が含まれるものであること。なお、都道府県知事への届出に当たっては、予防措置を講じていることを証する書類を添付すること。また、本号の趣旨に鑑み、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の取扱いに関し、陽電子断層撮影診療を担当する医師又は歯科医師と薬剤師との連携が十分に図られるように努めることが望ましいこと。
(ア) 陽電子断層撮影診療に関する所定の研修を修了し、専門の知識及び経験を有する診療放射線技師を、陽電子断層撮影診療に関する安全管理に専ら従事させること。
(イ) 放射線の防護を含めた安全管理の体制の確立を目的とした委員会等を設けること。
② 新規則第28条第1項第5号の規定により、その氏名及び放射線診療に関する経歴を届け出るものとされている陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用する医師又は歯科医師のうち1名以上については、以下に掲げるすべての項目に該当する者とすること。なお、都道府県知事への届出に当たっては、その事実を証する書類を添付すること。
(ア) 当該病院又は診療所の常勤職員であること。
(イ) 陽電子断層撮影診療に関する安全管理の責任者であること。
(ウ) 核医学診断の経験を3年以上有していること。
(エ) 陽電子断層撮影診療全般に関する所定の研修を修了していること。
③ ①(ア)及び②(エ)でいう「所定の研修」とは、放射線関係学会等団体が主催する医療放射線の安全管理に関する研修であって、概ね次の事項に該当する内容を含む講義又は実習を内容とするものをいうこと。
(ア) 陽電子断層撮影診療に係る施設の概要に関する事項
(イ) サイクロトロン装置の原理と安全管理に関する事項
(ウ) FDG製剤(放射性2―deoxy―2―[F―18]fluoro―D―glucose製剤)を含めた陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の製造方法、精度管理及び安全管理に関する事項
(エ) 陽電子断層撮影診療の測定原理に関する事項
(オ) 陽電子放射断層撮影装置の性能点検と校正に関する事項
(カ) FDG製剤を用いた陽電子断層撮影診療の臨床使用に関するガイドラインに関する事項
(キ) 放射線の安全管理、放射性同位元素の取扱い及び陽電子断層撮影診療に関わる医療従事者の被ばく管理に関する事項
(ク) 医療法、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等放射線の安全管理に関する各種法令及び放射線の安全管理に係る関係府省庁の通知等に関する事項
以上のほか、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る届出については、新規則第28条の診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
4 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の構造設備基準(新規則第30条の8の2)
病院又は診療所の管理者は、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の使用を、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室において行うものとされたところ(新規則第30条の14)、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の構造及び基準については、新規則第30条の8の2によること。
その際、次の事項に留意すること。
(1) 新規則第30条の8の2第2号では、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室を、陽電子準備室、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を用いて診療を行う室(以下「陽電子診療室」という。)及び陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等が待機する室(以下「陽電子待機室」という。)に、区画することとしているが、これら以外の用途(目的)の室を設けることを妨げるものではなく、病院又は診療所の機能に応じて、これら以外の用途(目的)の室を設けることは差し支えないこと。
(2) 新規則第30条の8の2第2号に規定する陽電子準備室は、以下に掲げる行為又は作業が行われる室とすること。
(ア) サイクロトロン装置によって合成された陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を小分け又は分注を行う等、陽電子断層撮影診療を受ける患者等に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与可能な状態にする行為又は作業。
(イ) 医薬品である陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を小分け又は分注を行う等、陽電子断層撮影診療を受ける患者等に陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与可能な状態にする行為又は作業。
(ウ) その他、(ア)又は(イ)に付随する一連の行為又は作業。
医療機関に設置したサイクロトロン装置を設置により、放射性同位元素を精製及び放射性同位元素から陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を合成する作業が行われる室については、これまでどおり、障防法の規制を受けることとなること。この場合、同室が(ア)、(イ)及び(ウ)の行為又は作業が行われるようなものとしている場合には、新規則に定める陽電子準備室を別に設置することを要しないこと。
(3) 新規則第30条の8の2第2号に規定する陽電子診療室は、以下に掲げる行為又は作業が行われる室とすること。ただし、病院又は診療所の機能に応じて、これらの行為又は作業を複数の室において個々に行うものとすることは差し支えないこと。
(ア) 陽電子準備室において調剤された陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を陽電子断層撮影診療を受ける患者等に投与する行為又は作業。
(イ) 陽電子放射断層撮影装置を設置し、陽電子放射断層撮影装置による画像撮影を行う行為又は作業。
(ウ) その他、(ア)又は(イ)に付随する一連の行為又は作業。
なお、区分した1つの室に複数の陽電子放射断層撮影装置を設置することは認められないこと。
(4) 新規則第30条の8の2第2号に規定する陽電子待機室とは、陽電子診療室において陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等を、陽電子放射断層撮影装置による画像撮影を開始するまでの間、当該患者等に投与された当該陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の種類及び数量に応じて、当該患者等の体内に当該陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が分布するのに十分な時間待機させることを用途とするものであること。
この陽電子待機室を設けることにより、放射線診療従事者、投与前の患者等が、当該薬剤を投与された直後の患者等と至近距離において接する時間を可能な限り少なくし、放射線診療従事者、投与前の患者等の放射線被ばくを可能な限り少なくすることを目的とするものであること。
ただし、陽電子断層撮影診療に係る患者等の取扱い数が極めて少ない医療機関においては、陽電子診療室において陽電子待機室を設けた場合と同等の機能を確保できる場合においては、陽電子待機室を設置しなくとも差し支えないこと。
(5) 新規則第30条の8の2第6号の趣旨は、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等と放射線診療従事者とが、至近距離において接する時間を可能な限り少なくし、放射線診療従事者の放射線被ばくを可能な限り少なくすることを目的とするものであること。なお、この場合の操作とは、陽電子放射断層撮影装置に患者等を横たわらせる等を行った後、同装置によって撮影することであり、操作する場所とは、陽電子放射断層撮影装置と画壁等で区画された室であること。
(6) 以上のほか、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に係る構造設備基準については、新規則第30条の8の診療用放射性同位元素使用室に係るものと同様であること。
5 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る貯蔵施設の構造設備基準及び運搬容器の構造基準(新規則第30条の9及び第30条の10)
(1) 新規則第30条の9に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る貯蔵施設の構造設備基準については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
(2) 新規則第30条の10に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る運搬容器の構造基準については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
6 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る廃棄施設の構造設備基準等(新規則第30条の11及び種類及び数量等告示)
(1) 新規則第30条の11第1項に規定する医療用放射性汚染物とは、診療用放射性同位元素、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物をいうものであること。
(2) 新規則第30条の11第1項に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を含む医療用放射性汚染物に係る廃棄施設の構造設備基準については、(3)以下に掲げる点を除き、診療用放射性同位元素を含む医療用放射性汚染物に係るもの(新規則第30条の26の濃度限度等に関する事項を含む。)と同様であること。
(3) 新規則第30条の11第1項第6号の規定により、厚生労働大臣の定める種類ごとにその一日最大使用数量が厚生労働大臣の定める数量以下である陽電子断層撮影診療用放射性同位元素(6において同じ)又は陽電子断層撮影診療用放射性同位元素によって汚染された物(以下「陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等」という。)に関しては、平成16年3月に一部改正された放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則(昭和35年総理府令第56号)に定める陽電子断層撮影用放射性同位元素の廃棄の基準と同様であるものとして、以下に掲げる取扱いを認めるものであること。
(ア) 種類及び数量等告示第1条に規定する厚生労働大臣が定める種類と数量の範囲(別添2)に係る、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等のみを管理区域内の廃棄施設内で保管管理する場合には、保管廃棄設備に関する技術的基準を課さないこと。ただし、この場合においても、新規則第30条の11第1項等に規定される廃棄施設としての構造設備の基準は課されるものであることに留意すること。
(イ) (ア)により保管管理する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等は、他の物の混入を防止し、又は付着しないように封及び表示をし、種類及び数量等告示第2条に規定するところにより7日を超えて管理区域内の廃棄施設内で保管すれば、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等とせず、管理区域から持ち出すことを可能とすること。
(4) 新規則第30条の11第4項の規定により陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の保管廃棄を行う病院又は診療所については、新規則第28条第4号に係る届出を行う際、その旨を併せて届け出る必要があり、また、保管廃棄の方法を変更する場合にはその旨を改めて届け出る必要があること。
なお、医療機関に設置したサイクロトロン装置等により作成された陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係るこれらの届出に際しては、届出の際に、当該廃棄方法に係る障防法上の申請書及び許可証の写が必要であること。
7 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線治療病室の構造設備基準(新規則第30条の12)
陽電子断層撮影診療用放射性同位元素により治療を受けている患者を入院させる室(新規則第30条の12に規定する放射線治療病室)の構造設備基準については、診療用放射性同位元素により治療を受けている患者に係るものと同様であること。なお、この放射線治療病室は、あくまで患者等を入院させる室であり、外来検査のみを受ける患者等を治療する室については本条の適用とならないものであること。
8 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素の使用の場所等の制限(新規則第30条の14)
(1) 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素は、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用率において使用することとし、その他の室において陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を使用することは認めないこととすること。
(2) 特別の理由による場合であって、かつ、適切な防護措置を講じたときにおいては、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室においてエックス線装置又は磁気共鳴画像診断装置(以下「MRI装置」という。)を用いることが認められるものであること。このうち、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室においてエックス線装置又はMRI装置を用いる場合を具体的に示せば、以下(ア)から(ウ)までに掲げるものであり、これに限定されること。なお、これらの場合であっても、同時に2人以上の患者等の診療を行うことは認められないこと。
(ア) 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等の画像診断の精度を高めるために、エックス線装置のうちCT装置であって、これに陽電子放射断層撮影装置が付加され一体となったもの(以下「陽電子―CT複合装置」という。)によるエックス線撮影を陽電子放射断層撮影装置の吸収補正用(画像診断の定量性を高め、精度の高い診断を可能とすることを目的とし、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素からの放射線の臓器や組織による吸収を補正すること。以下この通知において同じ。)として使用する場合。
(イ) 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等の陽電子断層撮影画像との重ね合わせのために、陽電子―CT複合装置によるエックス線撮影を行う場合又はMRI装置に陽電子放射断層撮影装置が付加され一体となったもの(以下「陽電子―MRI複合装置」という。)によるMRI撮影を行う場合。
(ウ) 陽電子断層撮影画像を得ることを目的とせず、CT撮影画像又はMRI撮影画像のみを得るために、陽電子―CT複合装置によるエックス線撮影(以下「CT単独撮影」という。)又は陽電子―MRI複合装置によるMRI撮影(以下「MRI単独撮影」という。)を行う場合。ただし、この場合において、3(2)②(イ)の陽電子断層撮影診療に関する安全管理の責任者たる医師又は歯科医師がCT単独撮影又はMRI単独撮影を含む陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室における安全管理の責任者となり、また、3(2)①(ア)の診療放射線技師がCT単独撮影又はMRI単独撮影を含む陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室における安全管理に専ら従事することによって、CT単独撮影又はMRI単独撮影を受ける患者等が、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素による不必要な被ばくを受けることのないよう、適切な放射線防護の体制を確立すること。
なお、これらの場合においては、以下に掲げる事項に留意すること。
(エ) (ア)から(ウ)のうち、エックス線装置を用いる場合においては、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の構造設備の基準を満たすのみならず、エックス線診療室の構造設備の基準を満たすことが必要であるとともに、当該陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の室内に陽電子―CT複合装置を操作する場所を設けないこととし、MRI装置を用いる場合においては、当該陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の室内に陽電子―MRI複合装置を操作する場所を設けないこととすること。
(オ) 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室にエックス線装置を備えたときは、新規則第24条の2の規定に基づき、エックス線装置の設置後10日以内に届出を行う必要があること。この場合において、新規則第28条第1項第4号の規定に関し、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該エックス線装置を使用する旨を記載し、新規則第29条第2項の規定により、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に変更の届出を行う必要があること。また、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に陽電子―MRI複合装置を備えようとするときは、新規則第28条第1項第4号の規定に関し、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該陽電子―MRI複合装置を使用する旨を記載し、新規則第29条第2項の規定により、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に変更の届出を行う必要があること。
(カ) 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に陽電子―MRI複合装置を備えた場合の安全確保及び放射線防護に関しては、関係学会等団体の作成するガイドラインを参考に行うこと。
(3) 特別の理由により陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室において診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する場合とは、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等の画像診断の精度を高めるために、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を陽電子放射断層撮影装置の吸収補正用として使用する場合に限定されること。
なお、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を備えるときは、新規則第26条又は新規則第27条の規定に基づき、あらかじめ届出を行う必要があること。この場合において、新規則第28条第1項第4号の規定に関し、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する旨を記載し、新規則第29条第2項の規定により、あらかじめ病院又は診療所の所在地の都道府県知事に変更の届出を行う必要があること。
また、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素と診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を同時に使用する場合があることから、当該陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室においては、放射線障害の防止に関する診療用放射線照射装置使用室又は診療用放射線照射器具使用室の構造設備の基準を満たしたものであること。
(4) 特別の理由による場合であって、かつ、適切な防護措置を講じたときにおいては、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室において診療用放射性同位元素を用いることが認められるものであること。このうち、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室において診療用放射性同位元素を用いる場合とは、具体的には、以下に掲げる場合であり、これに限定されること。なお、これらの場合であっても、同時に2人以上の患者等の診療を行うことは認められないこと。
(ア) 診療用放射性同位元素を用いた核医学検査を受ける患者等に当該診療用放射性同位元素が投与されることが、4(3)(ア)の機能を持つ室において行われる場合(一連となる作業が陽電子準備室で行われる場合を含む)。
(イ) 陽電子放射断層撮影装置であって、これに、診療用放射性同位元素を投与された患者等の撮影を行う装置が付加され一体となったもの(以下「陽電子―SPECT複合装置」という。)を陽電子診療室に設置し、当該陽電子―SPECT複合装置を用いて診療を行うために陽電子診療室において診療用放射性同位元素を使用する場合。ただし、この場合において、3(2)②(イ)の陽電子断層撮影診療に関する安全管理の責任者たる医師又は歯科医師が陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室における安全管理の責任者となり、また、3(2)①(ア)の診療放射線技師が陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室における安全管理に専ら従事することによって、診療用放射性同位元素によって核医学検査を受ける患者等が、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素による不必要な被ばくを受けることのないよう、適切な放射線防護の体制を確立すること。
この場合であっても、4(3)(ウ)は適用されるため、区分した一つの陽電子診療室に複数の陽電子―SPECT装置を設置することは認められないことに留意すること。
なお、この場合に限り、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室で診療用放射性同位元素とあわせてエックス線装置、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射機器を使用することについて、8(2)(ア)・(イ)又は8(3)と同様に認めるものであること。
陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室に診療用放射性同位元素を備えるときは、新規則第28条の規定に基づき、あらかじめ届出を行う必要があること。この場合において、新規則第28条第1項第4号の規定に関し、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該診療用放射性同位元素を使用する旨を記載し、新規則第29条第2項の規定により、あらかじめ病院又は診療所の所在地の都道県知事に変更の届出を行う必要があること。
9 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素等の廃棄の委託(新規則第30条の14の2)
新規則第30条の14の2に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る廃棄の委託については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
10 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等の入院制限(新規則第30条の15)
陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等の入院制限に係る第1項のただし書の規定については、管理区域内において、患者等の体内から発する放射線が減衰し、患者等を管理区域外に退出させても構わない程度十分な時間留め置いた場合を示していること。
11 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線診療従事者等の被ばく防止(新規則第30条の18)
新規則第30条の18に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線診療従事者の被ばく防止の規定については、診療用放射性同位元素に係るもの(新規則第30条の27の線量限度に関する事項を含む。)と同様であること。
12 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る取扱者の遵守事項(新規則第30条の20)
(1) 新規則第30条の20第2項第2号に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等に係る適当な標示については、管理区域内において、患者等の体内から発する放射線が減衰し、患者等を管理区域外に退出させても構わない程度十分な時間留め置いた場合は、不要であること。
(2) 以上のほか、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素が投与された患者等に係る管理者の遵守事項については、新規則第30条の20に規定する診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
13 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線障害が発生するおそれのある場合の測定(新規則第30条の22)
新規則第30条の22に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る放射線障害が発生するおそれのある場合の測定については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
14 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る記帳(新規則第30条の23)
新規則第30条の23に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る記帳については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
15 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る廃止後の措置(新規則第30条の24)
新規則第30条の24に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素に係る廃止後の措置については、診療用放射性同位元素に係るものと同様であること。
第3 施行期日等
(1) 新規則等は、平成16年8月1日から施行(適用)すること。
(2) 新規則の施行の際、新規則第24条第8号に規定する陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を現に備えている病院又は診療所の管理者は、この省令の施行後1か月以内に、新規則第28条第1項各号に掲げる事項を、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届け出なければならないこと。
なお、新規則第28号第1項第4号及び第5号に掲げる事項のうち、第2の3(2)①(ア)及び②(エ)に掲げた、医師若しくは歯科医師又は診療放射線技師が所定の研修を修了している事実を証明する書類については、平成17年3月31日までに届け出ることで差し支えないこと。この場合において、都道府県においては、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を備えている又は備えようとする病院又は診療所の管理者に対し、速やかに所定の研修を受けるよう指導されたいこと。
第3の2 平成17年6月1日の一部改正に係る経過措置
平成17年6月1日の時点で、薬事法第2条第15項に規定する治験の対象とされる薬物であって陽電子断層撮影診療に用いる放射性同位元素を現に備えている病院又は診療所の管理者は、平成17年7月1日までに、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素として新規則第28条第1項第1号から第5号までに掲げる事項を、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届け出なければならないこと。
第4 その他
この省令の施行の際、新規則第30条の8の2第2号に規定する陽電子待機室を現に有していない医療機関であって、以下に掲げるすべての項目を満たし、当該医療機関において陽電子待機室に患者を留め置くことと同等の防護措置が可能であると認められる場所(以下「陽電子待機室に準ずる場所」という。)を有するときは、当分の間、陽電子待機室を設置しなくとも差し支えないこととすること。ただし、この場合であっても、別添3の中間報告の趣旨に鑑み、陽電子待機室を可能な限り速やかに設置すること。
(1) 遮へいの機能を有する画壁等で他の場所と区分されていないが、第2の4(4)の規定と同等の機能を有する場所を、陽電子待機室に準ずる場所としてあらかじめ設定すること。
(2) 陽電子待機室に準ずる場所は、陽電子診療室に隣接した場所とすること。
(3) 放射線診療従事者、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を投与された患者等以外の者が、陽電子待機室に準ずる場所にみだりに立ち入り、また、近づくことがないよう、衝立等により区画化するとともに、その旨を示す標識を付すること。
別添1 略
別添2 略
平成16年度厚生労働科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)
「PET検査施設における放射線安全の確保に関する研究」
~PET検査における安全管理のあり方等に関する研究~
(中間報告書)
主任研究者 井上登美夫(横浜市立大学大学院医学研究科教授)
A.研究目的 |
Positron emission tomography(陽電子放出断層撮影、以下「PET検査」という)は陽電子放出核種を標識した薬剤(以下「PET検査薬」という)を用いた核医学画像診断法である。C―11、O―15、F―18などのPET検査に用いる放射性核種は、陽電子(β+)を放出し、陽電子が運動エネルギーを失い電子と結合し消滅する際に511keVの光子(以下「消滅光子」という)を180度反対方向に2本放出する。この消滅光子はPET画像を得るために使用される。PET検査は、これらの陽電子放出核種を標識した薬剤を体内に投与し、放射能を測定することで薬剤分布を画像化する。特に、放射性2―deoxy―2―[F―18]fluoro-D-glucose(以下「FDG」と略す)等のPET検査薬は、グルコース代謝が亢進する組織等への集積性を利用して、腫瘍等の診断に有用な画像情報をもたらす。
このFDGを用いたPET検査は、たとえば腫瘍の臨床においては、腫瘍の存在診断に始まり、悪性腫瘍の病期分類の決定、治療法の決定、放射線治療範囲の決定、治療効果の判定、再発診断、予後の推定等に適用できるなど、臨床的有用性の高い診断法の一つである。また、機能診断への応用も進められており、FDGを用いたてんかんの焦点検索と心筋生存能の評価は既に保険適応となっている。さらに、米国ではMedicareとMedicaidにおいて、アルツハイマー病と前頭側頭型痴呆の鑑別に保険適用が予定されるとともに、軽度認知障害と早期痴呆についても臨床試験が予定されているなど、今後の利用拡大も想定される。
わが国においてもPET検査は急速に普及してきているが、その安全性を担保し、適切な実施を確保するためには、医療機関におけるPET検査に関する安全管理体制の確立や従事者に対する放射線の安全管理に関する教育・研修の充実が必要である。また、PET検査に関する安全管理のあり方等を検討する際、患者、医療従事者に対する防護はもとより、一般公衆に対する放射線防護への配慮についても合わせて検討する必要がある。
このような状況の下、専門家や関係者からは、PET検査の特殊性を配慮した放射線防護の視点に立った安全管理のあり方等、基本となるべき事項を可及的すみやかに検討すべきと指摘されている。
また、PET検査薬は、現在ではサイクロトロンによって院内製造されたものだけが使用されているが、既に医薬品メーカーからPET検査薬の承認申請がなされている。これが承認を経て流通することになれば、サイクロトロンを有さない医療機関においてもPET検査が可能となり、PET検査施設がさらに増加すると考えられる。こうした観点からも、PET検査に関する安全管理のあり方等、基本となるべき事項の整理についても、これを急ぐ必要がある。
当研究班においては、こうした状況を踏まえ、医療機関におけるPET検査に関する安全管理のあり方等について研究・検討を行った。
今般、PET検査に関する安全管理のあり方等に関する基本的な事項のうち、早急に呈示すべきものについての検討・結果を取りまとめ、中間的に報告することとした。
B.研究方法・内容 |
PET検査に関する安全管理のあり方等について検討を行うにあたって、核医学、放射線医学、放射線防護等、各分野の学会関係者の参画を得て、学会横断的な議論を行うこととし、今年度は、次の事項について研究を行うこととした。
さらに、これらの事項のうち、下記の1項に掲げた事項については、PET検査の安全性・信頼性の確保のための基本的事項であり、早期に方向性を示すべき内容として位置づけ、研究・検討結果が集約されたものについては、今回、中間的に報告することとした。また、2項に掲げた事項については、今後引き続き検討を加え、今回中間的に報告した内容と合わせて、PET検査に関する安全管理のあり方等に関する具体的な指針として、年度内に取りまとめを行うこととする。
1.早期に方向性を示すべき内容について
(1) 医療機関内におけるPET検査薬の備え付けの届出、使用から廃棄に至る一連の安全管理のあり方等について
PET検査を実施する医療機関における、As low as reasonably achievableの原則(以下「ALARAの原則」と略す)(注1)の達成など適切な放射線の安全管理体制を確保するため、使用室の構造設備、放射線障害の防止に関する安全管理の体制を始めとした予防措置等のあり方について提言する。
(注1):放射線防護の三原則(時間、距離、遮蔽)を活用し、社会的及び経済的な要因を考慮に入れ合理的に達成できる限り医療被ばくのリスクを低く抑えること。
(2) PET検査薬の使用に伴う安全性・信頼性の確保のための医療従事者の研修のあり方について
PET検査を実施する医療機関における組織的な安全管理のあり方等を踏まえ、PET検査に関する安全管理等に従事する者に対して実施すべき放射線の防護と安全管理に関する教育・研修の内容について整理する。
2.今後取り組むべき内容
(1) 医療従事者の放射線被ばくに関すること
(2) 患者を介した公衆被ばくに関すること
(3) PET検査薬の運搬に対すること
(4) PET検査薬の精度管理に関すること
C.研究結果 |
1 医療機関内におけるPET検査薬の備え付けの届出、使用から廃棄に至る一連の安全管理のあり方等について
PET検査薬については、基本的に放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という)に則った取扱いをするとともに、診療用放射性同位元素(医療法施行規則の定義によると「医薬品である放射性同位元素で密封されていないもの」)に関し医療放射線防護の観点から定められている備え付けの届出、使用にあたっての室の構造設備の基準、最終的に廃棄に至る一連のルールに準じるべきことを明確にすべきである。
PET検査では、診療用高エネルギー発生装置と比較すると利用する光子のエネルギーは低いものの、核医学診療でよく使われるTc―99m(0.14MeV)よりも高いエネルギーの光子を用いている。エネルギーの違いは遮蔽効果に密接に関係し、例えば、鉛による遮蔽を考えた場合、Tc―99mから放出される光子による実効線量を1/100にするには、2mm程度で済むのに対し、消滅光子に対しては3cm以上の厚みが必要である。(コンクリートに換算するとTc―99mから放出される光子による実効線量を1/100にするには25cm程度で済むのに対し、消滅光子に対しては40cm以上の厚みが必要である。)
また、FDGを用いたPET検査の場合、I―131を用いた治療等と比べ、一日当たりの検査件数が多く、今後、保険診療とともに検診等での積極的な利用拡大も予想されることから、このような特性に応じた以下のような放射線防護を検討する必要がある。
(1) 使用室等の構造設備について
医療法施行規則に定められている「診療用放射性同位元素使用室」の構造設備を基本とし、加えて以下の①、②の要件を満たすことが必要と考える。
① PET検査薬の半減期はF―18でおよそ2時間と短時間であるが、PET検査薬を投与された検査待ち及び検査直後の患者等は、エネルギーの高い放射線を自ら発する。
したがって、PET検査薬を投与される前の患者、医療従事者、その他の職員等が、PET検査薬を投与された検査待ちの患者等と至近距離で長時間接するために生じる被ばくを防止する観点から、PET検査薬投与後の患者等を、検査までの間隔離して待機させる部屋を設けることとする。
なお、検査後の患者等が管理区域外に退出するまで十分な時間待機させる部屋を設けるべきとの意見があったが、ALARAの原則を踏まえ、PET検査取扱い患者数等の実態に応じ、各施設において、その必要性等について検討することが望まれる。
また、PET検査薬投与後の患者等が使用するトイレ等の設備を職員用とは別に設けることとする。
やむを得ない事情がある場合は、PET検査薬投与後の患者動線を工夫することや遮蔽物を設置する等の被ばく防止対策を講じることとする。
② 医療従事者に関して不必要な被ばくを防止する観点から、PET装置を操作する室を使用室とは別に設置する。
(2) 放射線障害の防止に関する安全管理の体制を始めとした予防措置について
PET検査による放射線障害の防止については、(1)で述べたハード面の整備に加えて、放射線の安全管理に関するソフト面の整備も必要であるとの意見を踏まえ、PET検査の安全性・信頼性の確保のための基本的考え方として、下記のとおり取りまとめた。
これらのソフト面の整備については、PET検査薬の使用に当たり、現行の診療用放射性同位元素の場合に準じて届出制度を整備する際、届出の具体的項目となる、「構造設備」の内容とともに、「予防措置」の内容として行政に届け出るものとすべきであると考える。
① 核医学診断の経験を3年以上有し、かつ、PET検査全般に関する所定の研修を修了した常勤医師(注2)を、PET検査に関する放射線安全管理の責任者とすること。 ② 核医学検査の経験を有し、かつ、PET検査に関する所定の研修を終了した専門の知識及び経験を有する診療放射線技師を、PET検査に関する安全管理に専ら従事させること。 ③ 放射線の防護を含めた安全管理の体制の確立を目的とした施設内組織又は委員会を設けること。 ④ PET検査薬の取扱いに関し、PET検査を担当する医師等と薬剤師・薬剤部門との連携が十分に図られるように努めること。 |
(注2):当中間報告でいう「医師」は「歯科医師」を含む。
なお、議論の際にあがった主な意見を次に示す。
<主な意見>
常勤医師の要件については、例えば125I密封小線源による前立腺癌治療を参考に「核医学専門医あるいは放射線科専門医で、学会が認定したPET検査に関する所定の研修を受けた常勤医師」との意見もあがった。しかし、1)放射線科専門医であっても核医学診療の実務的な経験が十分でない場合もあること、2)核医学専門医(認定医)又は放射線科専門医以外の医師でも核医学の診療経験を十分に積んでいる場合があることを考慮すると、これらの医師が所定の研修を受けた場合でも排除される基準となることは好ましくないとされた。
常勤医師の要件にある「所定の研修」については、関係学会等で認定を行い学会主導型とすることがより現実的であり、かつ臨床の現場の医療従事者の質の維持や、PET検査に関する安全管理の徹底が図りやすいとの意見が多数であった。
診療放射線技師についても医師同様に、「PET検査に関する所定の研修を修了し、専門の知識及び経験を有する専任の診療放射線技師」の配置が安全性を確保する上で必要と考えられた。「所定の研修」に関しても、医師同様に関係学会等が認証した研修であることが重要であるとの意見が多かった。なお、「専任」の定義についての明確な表記(例として「勤務時間の3分の2以上従事すること」等)を加えることが必要との意見もあり、少なくとも、PET検査に従事し、常時PET検査に関する安全管理に携わる特定(専任)の診療放射線技師が必要であると考えられた。
PET検査に関する安全管理や放射性同位元素であるPET検査薬の管理については、理想的には医学物理士が行うことが望ましく、医師が直接関与することではないとの意見があった。しかし、わが国では医師、診療放射線技師が行っている施設が大多数であるのが現状である。核医学専門医(認定医)、放射線科専門医は一般の医師より放射線安全管理に積極的に取り組んでいることから、これらの医師が所定の研修を受けることで、放射線の安全管理は担保されると考えられた。診療放射線技師の場合も同様であり、所定の研修の中で核医学の管理について充実させることで、放射線の安全管理を担保することができると考えられた。
これに関連して、従来のPET検査施設においては、放射線の安全管理や放射性同位元素の管理に関し対応しているのは放射線障害防止法に定められた放射線取扱主任者である。医薬品としてのPET検査薬が流通することとなった場合、放射線障害防止法の対象外となるPET検査施設が出現することが想定されるため、医療法の範疇で放射線取扱主任者に相当する放射線安全管理の責任者を設置することを検討すべきとの意見が多かった。
放射線の防護を含めた安全管理の体制の確立を目的とした施設内組織又は委員会を設けることとの要件に関しては次のような意見があった。
サイクロトロンを設置し院内製剤としてFDGを合成し、検診に使用する施設や、FDG以外のPET検査薬を使用する場合には、患者の安全を考慮し、倫理的視点及びPET検査薬の安全性・信頼性を担保するため、倫理委員会及びPET検査薬検討委員会の設置が必要であり、検査薬検討委員会は、当該施設で製造されたFDGが、日本核医学会、日本アイソトープ協会で作成された基準と合致しているかを検討し、倫理委員会は上記のFDGの安全性の確認を行うことをその役目とすべきであるとの趣旨の意見である。しかしながら、医薬品として流通するFDGのみを使用するPET施設に関しては、必ずしもこれらの委員会を必要としない場合もあることから、「所定の研修」の中あるいはガイドラインの中で周知徹底をすべきと思われた。
PET検査薬の取扱いについて薬剤師の位置づけに関しても検討された。今回の中間報告の中では「薬剤師・薬剤部門との連携を十分に図るよう努めること」としたが、「薬剤師・薬剤部門との連携を十分に図ること」のような、より積極的な薬剤師の関与の必要性を明言化すべきとの意見もあった。但し、法的には院内製剤については、薬剤師の配置義務がないことから上記によることが適切と考えた。
(3) 廃棄について
診療用放射性同位元素や放射性同位元素によって汚染された物の廃棄施設等の基準については医療法施行規則に定められている。PET検査薬についても、この規定に準じて行うことが安全管理上重要であり、この点を明確に示すべきである。
一方で、PET検査薬は半減期がおよそ2時間以下(18Fの場合)と非常に短いことから、廃棄物等がある一定量に満たないような小規模な施設においては、例えば、ある一定の期間、廃棄施設に適切な方法で貯蔵した後は、一般の医療廃棄物として処理できることとするなど、既に放射線障害防止法施行規則に定められているものと同様の簡便な取扱いを可能とすることが必要である。
2 PET検査薬の使用に伴う、安全性・信頼性の確保のための研修のあり方について
上記1(2)に取りまとめた基本的考え方に関連し、PET検査に関わる医療従事者に対する専門的知識に関する研修のあり方として、下記の項目を取りまとめた。なお、議論の際に上がった主な意見を併せて示す。
(1) 以下の項目を含む講義もしくは実習を含むこと ① PET検査に係る施設の概要に関する事項 ② 医療用加速器の原理と安全管理に関する事項 ③ FDGを含めたPET検査薬の製造方法、精度管理及び安全管理に関する事項 ④ PET検査の測定原理に関する事項 ⑤ PET装置の性能点検と校正に関する事項 ⑥ FDGを用いたPET検査の臨床使用に関するガイドラインに関する事項 ⑦ 放射線の安全管理、放射性同位元素の取扱い及びPET検査に関わる医療従事者の被ばく管理に関する事項 (2) 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律及び医療法等、関連する各種法令や、放射線の安全に係る通知等に関する講義を含むこと。 |
<主な意見>
PET検査の安全性・信頼性確保などの観点から、関係学会等による適切な講習会・セミナー等の開催が急務であり、関係学会間における連携を図り、(1)(2)の内容のさらなる具体化と、運用面での対応について早急に検討する必要がある。さらに、施設基準が遵守されていることを担保する仕組みを明示することが重要であり、これについても関係学会等が積極的に関与すべきと考えられた。
D.今後の検討に向けて |
今般、PET検査に関する安全管理のあり方等に関し、各般にわたる指針を検討するに当たっての内容や方向性に関する基本的考え方と、その具体的指針に盛り込むべき内容の一つとして、早期に方向性を示すべきものとして、C.研究結果に示した如く、PET検査に関する安全管理のあり方等を取りまとめた。
今後は、これらの基本的考え方をもとに、公衆被ばく、患者被ばく、医療従事者被ばく等についても検討を加え、PET検査に関する安全管理のあり方等に関する総合的な指針としての取りまとめに向けて、さらに検討を深めていくこととする。