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○救急医療対策事業実施要綱

(昭和52年7月6日)

(医発第692号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知)

目次

第1 小児救急電話相談事業

第2 初期救急医療体制

(休日夜間急患センター、小児初期救急センター)

第3 小児救急地域医師研修事業

第4 入院を要する(第二次)救急医療体制

(病院群輪番制病院、共同利用型病院、小児救急医療支援事業、小児救急医療拠点病院運営事業、管制塔機能を担う救急医療機関等運営事業、ヘリコプター等添乗医師等確保事業)

第5 救急医療専門領域医師研修事業

第6 救命救急センター

第7 高度救命救急センター

第8 ドクターヘリ導入促進事業(夜間搬送モデル事業を含む)

第9 救急救命士病院実習受入促進事業

第10 救急勤務医支援事業

第11 非医療従事者に対する自動体外式除細動器(AED)普及啓発事業

第12 救急医療情報センター

(広域災害・救急医療情報センター)

第13 救急患者受入コーディネーター事業

第14 中毒情報センター情報基盤整備事業

第15 救急医療支援センター運営事業

第16 救急医療トレーニングセンター運営事業

第1 小児救急電話相談事業

1.目的

この事業は、都道府県が地域の小児科医師による小児患者の保護者等向けの電話相談体制を整備することにより、地域の小児救急医療体制の補強と医療機関の機能分化を推進し、都道府県内における患者の症状に応じた適切な医療提供体制の構築を目的とする。

2.補助対象

都道府県(委託を含む。)が整備、実施する事業を補助対象とする。

3.実施方針

(1) 夜間等において、小児患者の保護者等(以下「相談者」という。)からの電話相談に、原則として地域の小児科医師(研修等により、小児科医師と同等の知識を有する小児科以外の医師を含む。)が対応し、適切な助言及び指示を行うものとする。なお、小児科医師は、対応に当たり、診断に必要な情報を得られないまま、相談者に対し処置方法などの指示をしてはならないこと(医師法第二十条及び平成9年12月24日付け健政発第1075号参照)に留意するとともに、指示を行った場合には、診療録へ記載し、保存するものとする。

また、地域の実情により、小児科医師以外の者が電話相談に一次的に対応する場合においては、小児科医師による支援体制を確立のうえ実施するものとする。

なお、この場合にあっては、診断に必要な情報が得られるときには、小児科医師以外の者に代わって小児科医師が相談者に対し適切に指示を行うなど、相談内容に応じて小児科医師が直接対応出来る体制を確保するものとする。

(2) 電話相談の開始に当たっては、相談者に対し、本事業における小児科医師の助言及び指示、または小児科医師以外の者が行う助言は、電話を通じた限られた情報に基づくものであって、相談者の判断の参考とするためのものであることを十分に説明し、理解を得た上で行うものとする。

(3) 相談者のプライバシー保護に努め、相談記録等の情報の管理には十分配慮を行うものとする。

(4) 相談者から、受診をするための医療機関の照会があった場合には、受入れ可能な医療機関を相談者に回答するものとする。なお、回答に当たっては、救急医療情報センターの活用や受入れ医療機関のリストの作成等、地域の実情に応じて実施するものとする。

(5) 都道府県において、地域の関係者からなる協議会を設置し、事業の実施計画の策定、事業実施のためのマニュアルの整備及び事業の評価等、事業の実施に必要な企画・調整等を行うものとする。

(6) 事故発生時を含め、本事業の実施の責任については、関係者間で十分に協議し、明確にするものとし、業務委託等の際は契約を適切に締結するものとする。

4.整備基準

(1) 相談者は、全国同一の短縮番号(#8000)により、相談を行う小児科医師等に架電することが可能であること。

なお、全国同一短縮番号が使用不可能な場合を考慮する観点から、当該短縮番号に加え、当事業の専用電話番号を設け、両番号を併用して実施することが望ましいものであること。

(2) 複数の小児科医師等が相談に当たる場合等においては、相談者が単一番号に架電すれば、転送機器等を使用することにより、担当する小児科医師等へ転送されるようにすること。

(3) 相談に当たる小児科医師等について複数名による当番制を採る場合等においては、相談記録等の逓送などにより、事業が円滑に実施されるようにすること。

第2 初期救急医療体制

1.目的

(1) 休日夜間急患センター事業は、休日及び夜間の診療を行う急患センターを整備し地域住民の急病患者の医療を確保することを目的とする。

(2) 小児初期救急センター事業は、小児の急病患者を受け入れるため、小児救急医療支援事業等の二次救急病院と連携し、小児患者の休日夜間の診療体制を確保することを目的とする。

2.補助対象

(1) 地方公共団体の長の要請を受けた診療所の開設者が実施する休日夜間急患センターの施設整備、設備整備を交付の対象とする。

(2) 地方公共団体が実施する小児初期救急センターの運営又は、地方公共団体の長の要請を受けた診療所の開設者が実施する小児初期救急センターの運営、施設整備又は設備整備を交付の対象とする。

3.整備基準

(1) 休日の診療とは、次のアからエに掲げる日の午前8時から午後6時までの間に診療を行うことをいい、夜間の診療とは午後6時から翌日午前8時までの間に診療を行うことをいう。

ア 日曜日

イ 国民の祝日に関する法律(昭和23年7月20日法律第178号)に定める祝日及び休日

ウ 年末年始の日(12月29日から1月3日まで)

エ 週休二日制に伴う土曜日又はその振替日

(2) 施設及び設備

ア 休日夜間急患センター

休日夜間急患センターとして必要な診療部門等及び医療機器等を備えるものとする。

イ 小児初期救急センター

小児初期救急センターとして必要な診療部門等及び医療機器等を備えるものとする。

(3) 地域住民に対して救急医療に関する情報提供を行う。

第3 小児救急地域医師研修事業

1.目的

この事業は、地域の小児科医師、内科医師等を対象として、小児救急医療及び児童虐待に関する研修を実施することにより、地域の小児救急医療体制の補強及び質の向上を図ることを目的とする。

2.補助対象

都道府県知事が設定する区域で厚生労働大臣が適当と認めた区域において、都道府県(委託を含む。)が、地域の病院、診療所等の小児科医師、内科医師等を対象として実施する下記研修とする。

(1) 内科系の小児救急医療に関する医師研修

(2) 外科系の小児救急医療に関する医師研修

(3) 児童虐待(行政機関との連携等を含む)に関する医師研修

3.実施基準

(1) 当該研修の実施区域を含む二次医療圏については、小児救急医療体制に係る関係者の協議が行われていること。(地域の実情により、都道府県単位など、広域的に協議が行われている場合を含む。)

(2) 地方公共団体が実施する在宅当番医制(休日夜間急患センター及び小児初期救急センターへの出務によるものを含む。)に参加する医師が主たる対象として研修が行われると確実に見込まれること。

(3) 研修の実施に当たっては、地域の関係者による研修のための協議会を都道府県単位で設置し、研修内容及び実施計画の策定等を行うこと。なお、研修内容等については、関係団体及び関係学会等と連携し策定することが望ましい。

第4 入院を要する(第二次)救急医療体制

1.目的

(1) 病院群輪番制病院、共同利用型病院及び小児救急医療支援事業(以下病院群輪番制病院等運営事業という。)は、地方公共団体が地域の実情に応じて病院群輪番制方式、共同利用型病院方式等による入院を要する(第二次)救急医療機関を整備し、休日夜間急患センター、小児初期救急センター、在宅当番医制等の初期救急医療施設及び救急患者の搬送機関との円滑な連携体制のもとに、休日及び夜間における入院治療を必要とする重症救急患者の医療を確保することを目的とする。

(2) 小児救急医療拠点病院運営事業は、都道府県が地域の実情に応じて小児救急医療拠点病院を整備し、休日夜間急患センター、小児初期救急センター、在宅当番医制等の初期救急医療施設及び小児救急患者の搬送機関との円滑な連携体制のもとに、休日及び夜間における入院治療を必要とする小児の重症救急患者の医療を確保することを目的とする。

(3) 管制塔機能を担う救急医療機関等運営事業は、都道府県が地域の実情に応じて管制塔機能を担う医療機関(以下「管制塔病院」という。)及び支援医療機関を設定し、症状に応じた適切な医療を提供できる医療機関・診療科へ患者を転送・紹介する体制を整備することにより、救急搬送患者が円滑に受け入れられる救急医療体制を構築することを目的とする。

(4) ヘリコプター等添乗医師等確保事業は、離島、山村において、発生した重症救急患者をヘリコプター等により搬送する際、地方公共団体の要請により、機内において早期に必要な救急処置を行うため、添乗する医師を確保することを目的とする。

2.補助対象

(1) 病院群輪番制病院等運営事業

ア 地域設定

地域設定は、原則として二次医療圏単位とする。ただし、二次医療圏単位によりがたい地域については都道府県知事が設定する地域で厚生労働大臣が適当と認めたものとする。

イ 病院

地方公共団体又は地方公共団体の長の要請を受けた病院の開設者が整備、運営する病院で相当数の病床を有し、医師等の医療従事者の確保及び救急専用病床の確保等、入院を要する(第二次)救急医療機関としての診療機能を有する病院とする。

ウ 交付

病院群輪番制病院の施設整備、設備整備及び共同利用型病院、小児救急医療支援事業の運営費、施設整備並びに設備整備を交付の対象とする。

(2) 小児救急医療拠点病院運営事業

ア 地域設定

地域設定は、原則として複数の二次医療圏単位とする。ただし、複数の二次医療圏単位によりがたい地域については都道府県知事が設定する地域で厚生労働大臣が適当と認めたものとする。

イ 病院

都道府県又は都道府県知事の要請を受けた病院の開設者が整備、運営する病院で相当数の病床を有し、小児科医師、看護師等の医療従事者の確保及び小児の救急専用病床の確保等、入院を要する(第二次)救急医療機関として診療機能を有する病院とする。

(3) 管制塔機能を担う救急医療機関等運営事業

ア 地域設定

地域設定は、原則として二次医療圏単位とする。ただし、二次医療圏単位によりがたい地域については都道府県知事が設定する地域で厚生労働大臣が適当と認めたものとする。

イ 医療機関

(ア) 管制塔病院

都道府県又は都道府県知事の要請を受けた病院の開設者が整備、運営する病院で相当数の病床を有し、支援医療機関、支援診療所と連携して常時休日夜間における救急患者受入体制を確保している第二次救急医療機関等とする。

(イ) 支援医療機関

管制塔病院と連携し、管制塔病院からの転送・紹介患者を受け入れるために必要な空床を確保し、必要に応じて管制塔病院への医師の応援派遣等を行う医療機関とする。

(ウ) 支援診療所

管制塔病院と連携し、必要に応じて管制塔病院への医師の応援派遣等を行う診療所とする。

(4) ヘリコプター等添乗医師等確保事業

救急患者の搬送にヘリコプター等を使用し、これに医師等を添乗させる事業を行っている地方公共団体とする。

3.運営方針

(1) 病院群輪番制病院等運営事業

ア 病院群輪番制病院及び共同利用型病院運営事業

地域の実情に応じた次の方式により休日夜間の診療体制を整えるものとし、原則として、初期救急医療施設からの転送患者を受け入れるものとする。

(ア) 病院群輪番制方式

地域内の病院群が共同連帯して、輪番制方式により実施するものとする。

(イ) 共同利用型病院方式

医師会立病院等が休日夜間に病院の一部を解放し、地域医師会の協力により実施するものとする。

イ 小児救急医療支援事業

地域の小児科を標榜する病院群又は病院が病院群輪番制方式又は共同利用型病院方式により、小児救急医療に係る休日夜間の診療体制を整えるものとし、原則として、初期救急医療施設からの転送患者を受け入れるものとする。

(2) 小児救急医療拠点病院運営事業

小児救急医療拠点病院は、小児救急医療に係る休日夜間の診療体制を常時整えるものとし、原則として、初期救急医療施設及び救急搬送機関から転送された小児重症救急患者を必ず受け入れるものとする。

(3) 管制塔機能を担う救急医療機関等運営事業

ア 管制塔病院

管制塔病院は、適切な受け入れ医療機関を紹介することも含め救急搬送患者を確実に受け入れ、重症度、緊急度等に基づく診療の優先順位に応じて診療を行う等必要な対応を行うものとする。

また、都道府県と協力し、地域において救急搬送患者が円滑に受け入れられる救急医療体制を構築するにあたって中心的役割を担うものとする。

イ 支援医療機関

支援医療機関は、原則として、必要な空床を確保し、管制塔病院からの転送・紹介患者を受け入れるものとする。

また、支援医療機関は、管制塔病院からの要請により、必要に応じて管制塔病院に医師の応援派遣等を行うものとする。

ウ 支援診療所

支援診療所は、管制塔病院からの要請により、必要に応じて管制塔病院に医師の応援派遣等を行うものとする。

(4) ヘリコプター等添乗医師等確保事業

地方公共団体は、ヘリコプター等による救急患者の搬送に当たっては、次により添乗医師等を確保するものとする。救急患者1人の搬送に対し、原則として医師1人の添乗とする。

ただし、救急患者の症状に応じて看護師等1人の添乗を追加できるものとする。

4.整備基準

(1) 病院群輪番制方式

ア 当番日における入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な診療機能及び専用病床を確保するものとする。

イ 当番日における病院の診療体制は、通常の当直体制の外に重症救急患者の受け入れに対応できる医師等医療従事者を確保するものとする。

(2) 共同利用型病院方式

ア 入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な診療機能及び専用病床を確保するものとする。

イ 病院の診療体制は、通常の当直体制の外に重症救急患者の受け入れに対応できる医師等医療従事者を確保するものとする。

(3) 小児医療拠点病院

ア 小児重症救急患者の入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な診療機能及び専用病床を確保するものとする。

イ 病院の診療体制は、休日夜間に小児重症救急患者の受け入れに常時対応できる小児科医師及び看護師等医療従事者を確保するものとする。

(4) 管制塔機能を担う救急医療機関等運営事業

ア 管制塔病院

(ア) 救急患者を確実に受け入れ、直ちに症状に応じた適切な医療を提供できる医療機関・診療科に転送・紹介するため、支援医療機関と連携し、地域で受け入れ可能な空床を確保するための調整機能を有するものとする。

(イ) 病院の診療体制は、休日夜間に症状等に応じた適切な医療を提供できる医療機関・診療科へ患者を転送・紹介する業務等に対応できる医師等医療従事者を確保するものとする。

また、必要に応じ、医師の負担軽減のための診療補助者(診療記録管理者、医師事務作業補助者等)を確保するものとする。

イ 支援医療機関

管制塔病院と連携し、地域で必要となる受け入れ可能な空床を確保するものとする。また、管制塔病院からの要請に応じるため、派遣のために必要な医師を確保するものとする。

ウ 支援診療所

管制塔病院からの要請に応じるため、派遣のために必要な医師を確保するものとする。

(5) ヘリコプター等添乗医師等確保事業

地方公共団体は、ヘリコプター等へ容易に添乗できる体制を確保するものとする。

(6) 施設及び設備

ア 病院群輪番制病院及び共同利用型病院運営事業

(ア) 施設

入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な診療部門(診療室、処置室、手術室、薬剤室、エックス線室、検査室等)及び専用病室等を設けるものとする。

また、必要に応じ、心臓病及び脳卒中の重症救急患者を受け入れるため、心臓病専用病室(CCU)及び脳卒中専用病室(SCU)を設けるものとする。

(イ) 設備

入院を要する(第二次)救急医療機関の診療機能として必要な医療機械を備えるものとする。

また、必要に応じ、心臓病及び脳卒中の重症救急患者の治療等に必要な専用医療機器を備えるものとする。

このほか、必要に応じて、搬送途上の患者の様態を正確に把握し、医師の具体的指示を搬送途上に送るため、地域の中心的な入院を要する(第二次)救急医療機関に心電図受信装置を備えるものとする。

イ 小児救急医療拠点病院

(ア) 施設

小児重症救急患者の入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な小児科診療部門(診療室、処置室、手術室、薬剤室、エックス線室、検査室等)、小児専用病室等を設けるものとする。

(イ) 設備

小児重症救急患者の入院を要する(第二次)救急医療機関として必要な医療機械等を備えるものとする。

ウ 管制塔病院

(ア) 施設

必要に応じ、適切な場所にヘリポートを設けるものとする。

(イ) 設備

必要に応じ、診療体制の充実のための医療機器の整備や環境の整備を行うことができるものとする。

第5 救急医療専門領域医師研修事業

1.目的

この事業は、救急医療に係る専門的な実地研修を実施することにより、救急医療体制の質の向上を図るとともに、その機能に応じた相互連携を図り、地域が一体して対応できる体制を構築することを目的とする。

2.補助対象

都道府県(委託を含む。)が、入院を要する救急医療を担う医療機関等に勤務する医師を対象として救命救急センター等において実施する下記実地研修とする。

(1) 脳卒中

(2) 急性心筋梗塞

(3) 小児救急

(4) 重症外傷

(5) その他都道府県知事が特に必要と認める専門領域

第6 救命救急センター

1.目的

この事業は、都道府県が救命救急センターを整備し、休日夜間急患センター、在宅当番医制等の初期救急医療施設、病院群輪番制等の第二次救急医療施設及び救急患者の搬送機関との円滑な連携体制のもとに、重篤救急患者の医療を確保することを目的とする。

2.補助対象

都道府県の医療計画等に基づき、都道府県知事の要請を受けた病院の開設者が整備、運営する救命救急センターで厚生労働大臣が適当と認めるものを対象とする。

ただし、小児救急専門病床(小児専門集中治療室)を設置する場合は、小児病棟を有し、広域搬送による受入が可能な医療機関を補助対象とする。

3.運営方針

(1) 救命救急センターは、原則として、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者を24時間体制で受け入れるものとする。

(2) 救命救急センターは、初期救急医療施設及び第二次救急医療施設の後方病院であり、原則として、これらの医療施設及び救急搬送機関からの救急患者を24時間体制で必ず受け入れるものとする。

(3) 救命救急センターは、適切な救急医療を受け、生命の危険が回避された状態にあると判断された患者については、積極的に併設病院の病床または転送元の医療施設等に転床させ、常に必要な病床を確保するものとする。

(4) 救命救急センターは、医学生、臨床研修医、医師、看護学生、看護師及び救急救命士等に対する救急医療の臨床教育を行うものとする。

4.整備基準

(1) 救命救急センターは、救命救急センターの責任者が直接管理する相当数の専用病床(概ね20床以上(ただし、病床数が10床以上20床未満であって、平成19年度以前に整備されたもの、又は平成19年度中に国と調整を行っており平成20年度において整備されるものについては、この限りではない。))の専用病床を有し、24時間体制で、重症及び複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者に対する高度な診療機能を有するものとする。

(2) 最寄りの救命救急センターへのアクセスに時間を要する地域(概ね60分以上)においては、地域救命救急センター(専用病床が10床以上20床未満の救命救急センター)を整備することができる。

(3) 救命救急センター(地域救命救急センターを含む)には、24時間診療体制を確保するために、必要な職員を配置するものとする。

ア 医師

(ア) 救命救急センターの責任者は、重症及び複数の診療科領域にわたる重篤な救急患者に適切に対応できる三次救急医療の専門的知識と技能を有し、高度な救急医療及び救急医学教育に精通した医師であるとの客観的評価を受けている専任の医師とする。(例:日本救急医学会指導医等)

(イ) 救命救急センターは、救急医療の教育に関する適切な指導医のもとに、一定期間(3年程度)以上の臨床経験を有し、専門的な三次救急医療に精通しているとの客観的評価を受けている専任の医師を適当数有するものとする。(例:日本救急医学会認定医等)

(ウ) 救命救急センターとしての機能を確保するため、内科、外科、循環器科、脳神経外科、心臓血管外科、整形外科、小児科、眼科、耳鼻科、麻酔科及び精神科等の医師を必要に応じ適時確保できる体制を有するものとする。

(エ) 必要に応じ、心臓病の内科系専門医とともに外科系専門医を、脳卒中の外科系専門医とともに内科系専門医を専任で確保するものとする。

(オ) 小児救急専門病床(小児専門集中治療室)を設置する救命救急センターは、小児の救急患者への集中治療に対応する小児科医師を専任で確保するものとする。

(カ) 必要に応じ、重症外傷に対応する専門医師を専任で確保するものとする。

(キ) 救急救命士への必要な指示体制を常時有するものとする。

イ 看護師及び他の医療従事者

(ア) 重篤な救急患者の看護に必要な専任の看護師を適当数有するものとする。

また、小児救急専門病床(小児専門集中治療室)を設置する救命救急センターは、小児の救急患者への集中治療に対応する看護師を専任で確保するものとする。

(なお、専任の看護師は、専門的な三次救急医療に精通しているとの客観的評価を受けていることが望ましい。例:日本看護協会救急看護認定看護師等)

(イ) 診療放射線技師及び臨床検査技師等を常時確保するものとする。

(ウ) 緊急手術ができるよう、必要な人員の動員体制を確立しておくものとする。

(3) 施設及び設備

ア 施設

(ア) 救命救急センターの責任者が直接管理する専用病床及び専用の集中治療室(ICU)を適当数有するものとする。

また、急性期の重篤な心臓病、脳卒中の救急患者、小児重症患者及び重症外傷患者を受け入れるため、必要に応じて心臓病専用病室(CCU)、脳卒中専用病室(SCU)、小児救急専門病床(小児専門集中治療室)及び重症外傷専用病室を設けるものとする。

(イ) 救命救急センターとして必要な専用の診察室(救急蘇生室)、緊急検査室、放射線撮影室及び手術室等を設けるものとする。

(ウ) 必要に応じ、適切な場所にヘリポートを整備するものとする。

(エ) 診療に必要な施設は耐震構造であること。(併設病院を含む。)

イ 設備

(ア) 救命救急センターとして必要な医療機器及び重症熱傷患者用備品等を備えるものとする。

また、必要に応じ、急性期の重篤な心臓病、脳卒中の救急患者、小児重症患者及び重症外傷患者の治療等に必要な専用医療機器を備えるものとする。

(イ) 必要に応じ、ドクターカーを有するものとする。

(ウ) 救急救命士への必要な指示ができるよう、必要に応じ心電図受信装置を備えるものとする。

(注) ドクターカーとは、患者監視装置等の医療機械を搭載し、医師、看護師等が同乗し、搬送途上へ出動する救急車である。

第7 高度救命救急センター

1.目的

この事業は、都道府県が高度救命救急センターを整備し、救急医療の円滑な連携体制のもとに、特殊疾病患者に対する医療を確保することを目的とする。

2.補助対象

都道府県の医療計画に基づき、都道府県知事の要請を受けた病院の開設者が整備、運営し、厚生労働大臣が認めた救命救急センターのうち、特に高度な診療機能を有するものとして厚生労働大臣が適当と認めるものを対象とする。

3.運営方針

高度救命救急センターは、救命救急センターに収容される患者のうち、特に広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者を受け入れるものとする。

4.整備基準

(1) 高度救命救急センターは、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病患者に対する救命医療を行うために必要な相当高度な診療機能を有するものである。

(2) 高度救命救急センターには、24時間診療体制を確保するために、必要な職員を配置するものとする。

ア 医師

常時高度救命救急医療に対応できる体制をとるものとする。特に麻酔科等の手術に必要な要員を待機させておくものとする。

イ 看護師等医療従事者

特殊疾病患者の診療体制に必要な要員を常時確保すること。特に手術に必要な動員体制をあらかじめ考慮しておくものとする。

(3) 設備

高度救命救急センターとして必要な医療機器を備えるものとする。

第8 ドクターヘリ導入促進事業(夜間搬送モデル事業を含む)

1.目的

この事業は、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(平成19年法律第103号)の趣旨に基づき、救命救急センターにドクターヘリを委託により配備し、救急患者の救命率等の向上、広域救急患者搬送体制の向上及びドクターヘリの全国的導入の促進を図ることを目的とする。

2.補助対象

(1) 都道府県又は都道府県知事の要請を受けた救命救急センターが実施する事業で厚生労働大臣が適当と認めるもの。

(2) 都道府県が、救命救急センターに配備し、当該センターにおいて実施する事業で厚生労働大臣が適当と認めるもの。

3.運営方針

(1) ドクターヘリの運航に係る関係機関等との調整、地域住民への普及啓発等を行う運航調整委員会を設置し、本事業の実施、運営に関する必要事項に係る諸調整等を行い、ドクターヘリの運行に万全を期すとともに地域住民の理解と協力が得られるよう努めなければならない。

(2) 運航調整委員会の委員は、都道府県、市町村、地域医師会、消防、警察、国土交通、教育委員会等関係官署に所属する者、ドクターヘリ運航会社及び有識者により構成するものとし、これら関係機関と密接な連携をとって当該事業を実施するものとする。

(3) 事業の実施に当たっては、救急医療専用ヘリコプター、操縦士、整備士及び運航管理者等を運航会社との委託契約により配備するものとする。

(4) 事業の実施に当たっては、ドクターヘリに同乗する医師、看護師等を確保(都道府県の委託により事業を実施する場合は配備先の救命救急センターにおいて確保)するとともに、出動及び搬送においては、必ず医師を、必要に応じて看護師を同乗させるものとする。

(5) 出動及び搬送については、原則として消防官署又は医療機関からの要請に対して医師、操縦士等の判断のもと行うものとする。

(6) 出動範囲は、原則として県内全域を対象とするものとし、必要に応じて、隣県に及ぶ広域についても対象とするものとする。

(7) 飛行中のドクターヘリと救命救急センター又は救急隊等との通信手段の確保に努めなければならないものとする。

(8) ドクターヘリの運航を委託する運航会社の選定指針及び無線による通信手段を確保する場合の無線の運用指針については、別に定める。

(9) 特に、夜間搬送モデル事業を行う場合においては、安全性を十分確保するものとする。

4.整備基準(都道府県の委託により事業を実施する場合は配備先の救命救急センターについても同様の基準とする。)

(1) 救命救急センターの医師が直ちに搭乗することができる場所にヘリポートを有し、救命救急センター内までの導線及び患者移送の方法が確保されていること。

(2) 救急医療用ヘリコプターについて十分な見識を有すること。

(3) 救命救急センターを設置する地域が、当該事業目的に従い十分に効果を発揮する地域であること。

(4) 救命救急センターを運営する病院が、当該事業に対して総力を挙げて協力する体制を有すること。

(5) 救命救急センターと消防機関等との連携が従前より緊密であること。

(6) 救命救急センターの運営に支障を来たさないこと。

(7) 夜間搬送モデル事業を行う場合においては、ドクターヘリが離着陸を行うヘリポートに照明器具を設置すること。

(注) 「ドクターヘリ」とは、救急医療に必要な機器及び医薬品を装備したヘリコプターであって、救急医療の専門医及び看護師等が同乗し救急現場等に向かい、現場等から医療機関に搬送するまでの間、患者に救命医療を行うことのできる専用のヘリコプターのことをいう。

第9 救急救命士病院実習受入促進事業

1.目的

この事業は、医療機関において救急救命士の資格を有する救急隊員の行う心肺蘇生等の救急救命処置の実習を行うための体制整備を促進することにより、救急救命士の資格を有する救急隊員の業務の高度化と資質の向上を図ることを目的とする。

2.補助対象

都道府県又は都道府県知事の要請を受けた病院の開設者(救命救急センターを除く。)が行う救急救命士の病院実習受入促進事業を補助対象とする。

3.運営方針

救急救命士の資格を有する救急隊員の病院実習は、以下の内容の病院実習を実施する。

(1) 「救急救命士の薬剤投与の実施のための講習及び実習要領について(平成17年3月10日付け医政指発第0310002号)」に基づく救急救命士の資格を有する救急隊員の教育

(2) 「救急救命士の気管内チューブによる気道確保の実施のための講習及び実習要領について(平成16年3月23日付け医政指発第0323049号)」に基づく救急救命士の資格を有する救急隊員の教育

(3) 「救急救命士の資格を有する救急隊員に対して行う就業前教育の実施要綱について(平成6年4月1日付け消防救第42号)」に基づく救急救命士の資格を有する救急隊員の就業前教育

(4) 「救急隊員の教育訓練の充実強化について(昭和60年4月8日付け消防救第32号」、「救急隊員資格取得講習その他救急隊員の教育訓練の充実強化について(平成元年5月18日付け消防救第53号)」及び「救急業務の高度化の推進について(平成13年7月4日付け消防救第204号)」に基づく救急救命士の資格を有する救急隊員の再教育

4.整備基準

(1) 救急救命士の実習を行う病院には、原則として、救急医療に精通している医師を複数有するものとする。(日本救急医学会が認定する救急科専門医・認定医、日本麻酔科学会認定専門医(旧指導医)等)

(2) 救急救命士の実習を行う病院は、院内の救急医療に精通している医師の中から1人をコーディネーター医として指定し、主に以下の業務を行うこと。

ア 病院実習を受けるに足りる知識・技能を有する救急救命士であることの確認

イ 入院患者等へのインフォームドコンセントの実施・確認について倫理委員会への報告

ウ 受入診療科における指導医の確保に関する調整(診療時間の調整等)

エ 指導医の指導内容の調整(重複や漏れのチェック)

オ 実習終了認定の調整(各診療科からの評価結果の総合評価)

カ 消防機関との受入時期等の調整

キ 地域メディカルコントロール協議会への出席 等

(3) 救急救命士の実習を行う病院は、患者への同意を行う体制や安全確保に関する体制が整備されていること。

5.設備

救急救命士の実習を行う病院として必要な医療機器等を備えるものとする。

第10 救急勤務医支援事業

1.目的

この事業は、医療機関における休日及び夜間において救急医療に従事する医師に対し、救急勤務医手当(注)を創設し、過酷な勤務状況にある救急医等の処遇改善を図ることを目的とする。

2.補助対象

都道府県の医療計画等に基づき、地方公共団体又は地方公共団体の長の要請を受けた病院の開設者が整備、運営する救命救急センター、第二次救急医療機関、総合周産期母子医療センター又は地域周産期母子医療センターで、厚生労働大臣が適当と認めたものを対象とする。

3.運営方針

医療機関の長は、救急医療に従事する医師(ただし、総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターにおいては、産科医、麻酔科医、新生児科医、小児科医等を含む。)に対し、救急勤務医手当を支給することを就業規則等に盛り込むものとする。

なお、救急勤務医手当の創設に当たっては、既存の手当の減額を伴う就業規則の改正等を行ってはならないものとする。

(注) 救急勤務医手当とは、宿日直手当や超過勤務手当とは別に、医師の救急医療への参画を条件に当該医療機関に勤務する職員に対して支給される手当全般を指すものとする。

第11 非医療従事者に対する自動体外式除細動器(AED)の普及啓発事業

1.目的

この事業は、非医療従事者に自動体外式除細動器(以下 AEDという。)の普及、啓発及び講習を実施し、医療従事者の速やかな確保が困難な場合の心肺停止者に対する除細動措置を行うことにより、救命率の向上に資することを目的とする。

2.補助対象

都道府県(委託を含む。)が実施するAED普及・啓発事業並びに非医療従事者等への講習を補助対象とする。

3.実施基準

都道府県(委託を含む。)において、AEDを普及するための関係者からなる協議会を設置し、AEDの設置場所の選定、AEDを普及するための指導者養成講習会の実施、地域住民を対象とした普及のための講習会等を実施するものとする。

第12 救急医療情報センター

(広域災害・救急医療情報システム)

1.目的

この事業は、都道府県が県全域を対象とした救急医療情報センター(広域災害・救急医療情報システム)を整備するとともに、都道府県センター間のコンピュータネットワークの運営、バックアップセンターの運営を行い、通常時は救急医療施設から的確に情報を収集し、医療施設、消防本部等へ必要な情報の提供を行い、円滑な連携体制の基に、救急患者の医療を確保し、また、災害時には医療機関の稼働状況、医師・看護師等要員の状況、電気等の生活必需基盤の確保、医薬品等の備蓄状況等、災害医療に係る総合的な情報収集及び提供を行うことを目的とする。

2.補助対象

都道府県又は都道府県知事の委託を受けた法人が整備、運営する救急医療情報センター(広域災害・救急医療情報システム)を補助対象とする。

3.運営方針

(1) 通常時は、各都道府県の状況に応じた救急医療情報システムとする。すなわち、休日夜間急患センター、入院を要する(第二次)救急医療機関及び救命救急センター、その他救急医療に必要な体制に関する情報を収集し、医療施設及び消防本部等に必要な情報を提供するものとする。

(2) 必要に応じ、隣接する都道府県と連携し、相互に情報提供を行うとともに、周産期医療情報システムとの相互連携を図るものとする。

(3) 救急医療情報システムに参加する医療機関は、救急患者の搬送が円滑に行われるよう、救急患者受入可否等の救急医療情報の随時更新に努めるものとする。

なお、主として住民への情報提供に資するものについては、その必要に応じて更新するものとする。

(4) 災害時に迅速かつ的確に救援・救助を行うため、全国の医療施設の状況を全国の医療施設、消防機関、保健所その他の行政機関等が把握可能な情報システムとする。

(5) 災害時に交換する情報は、全国共通化するものとする。

(6) 都道府県センターは、災害時において災害・救急医療情報を広域的に利用するために後方支援(以下「バックアップ」という。)機能を保持するバックアップセンターと結ぶものとする。また、災害時において都道府県センターが機能しなくなった場合においては、都道府県センターの役割をバックアップセンターが直接行えるようにするものとする。

(7) 災害時に登録した情報は、国民が有効に利用できるよう必要な情報をインターネットを通じ公開するものとする。

(8) 地域における救急医療に係る問題点への取り組みや医療・消防機関等関係者との連携体制を構築するため、都道府県センターに「救急医療情報センター運営委員会」を設置し、都道府県メディカルコントロール協議会※と連携して地域の救急医療体制が適正に機能する体制を確保する。

※メディカルコントロール協議会

救急救命士等の活動等について医師が指示・指導・助言及び検証することにより病院前救護の質を保障する体制の整備に係る協議の場。

4.事業内容

(1) 通常時の事業

ア 情報収集事業(随時更新)

(ア) 診療科別医師の在否

(イ) 診療科別の手術及び処置の可否

(ウ) 病室の空床状況(診療科別、男女別、集中治療室等の特殊病室及びその他)

(エ) その他救急医療情報センター運営委員会等が必要と認める情報

イ 情報提供、相談事業

医療施設、消防本部及び地域住民からの問い合わせに対して適切な受入れ施設の選定、確認又は回答を行うものとする。

ウ 救急医療情報センター運営委員会の開催

(2) 災害時の情報収集及び提供事業

ア 医療施設状況

イ 患者転送要請

ウ 医薬品等備蓄状況

エ 電気等の生活必需基盤の確保状況

オ 受入患者状況

5.整備基準

(1) バックアップセンター

ア 全国の災害・救急医療情報をバックアップするために全国に1か所バックアップセンターを置くものとする。

イ 運用は24時間体制で行うものとする。

ウ 耐震性の建物に設置するものとする。

(2) 都道府県センター

ア 各都道府県には、広域災害・救急医療情報システムを運用、登録するための都道府県センターを設けるものとする。

イ 運用は24時間体制で行うものとする。

ウ 耐震性の建物に設置するよう配慮するものとする。

(3) 端末機器

医療施設、保健所その他の行政機関等に広域災害・救急医療情報システムの情報交換のための端末機器を置くものとする。

(4) 救急医療情報センター運営委員会

運営委員会の委員は、都道府県、市町村、保健所、二次医療圏協議会、消防機関、地区医師会、救命救急センター等に所属する者から構成するものとする。

6.上記によりがたい場合は、あらかじめ厚生労働大臣に協議の上適当と認めたものとする。

第13 救急患者受入コーディネーター事業

1.目的

この事業は、都道府県が地域の実情に精通した救急医等を「救急患者受入コーディネーター」(以下「コーディネーター」という。)として医療機関等に配置することにより、救急搬送困難事案の解消を図り、円滑な救急搬送受入体制を構築することを目的とする。

2.補助対象

都道府県又は都道府県知事の委託を受けてコーディネーターを配置する救命救急センター又は周産期母子医療センター等を補助対象とする。

3.運営方針

夜間・休日を中心に、救急隊が搬送先の選定に苦慮する場合において、消防機関等からの要請に応じてその搬送先医療機関の調整を迅速に行う。

また、医師がコーディネーターとなる場合は、必要に応じて救急隊に対し、適切な救急救命処置又は応急の手当を行うために指示・助言を行う。

4.整備基準

(1) 体制・役割

コーディネーターは、原則として医師が務めることとする。ただし、医師の確保が困難な場合においては、医師以外の職員が務めることができるものとする。この場合、医師をオブザーバーとして選任する等により、搬送先医療機関の調整に時間を要する場合等に医師が速やかにバックアップできる体制の確保を図ることとする。

本事業の目的が適切に果たすことができるよう、コーディネーターの役割、具体的な業務内容、消防機関との連携体制その他必要な事項について、都道府県が主体となって地域の実情等を踏まえながら明確にすること。また、定めた業務内容等については予め消防・医療機関等の関係機関に対して周知徹底すること。

(2) 支援体制の確保

コーディネーターは、日頃より同一県内の関係医療機関及び医師と意思疎通を図りやすい体制を築いておくよう努めることとする。

また、産科等一般の救急医療体制とは別の診療体制が必要な患者に対応するため、例えば周産期医療ネットワーク等既存の医療機関間ネットワークにコンタクトポイントを設定する等により、必要に応じて搬送先医療機関の調整を依頼できる体制を確保することとする。

(3) 県境を越える患者搬送体制の整備

県内医療機関では受入困難な救急患者の搬送については、予め関係都道府県間により定められた搬送ルールに基づき、コーディネーターが搬送照会を行うことが望ましい。

(4) 連携体制の構築等

コーディネーターの選定及び業務内容の検討、事後的な検証及び検証に基づく改善策の検討等については、必要に応じて都道府県メディカルコントロール協議会や地域メディカルコントロール協議会と連携を図ること。

5.上記によりがたい場合は、あらかじめ厚生労働大臣に協議の上適当と認めたものとする。

第14 中毒情報センター情報基盤整備事業

1.目的

この事業は、財団法人日本中毒情報センターが化学物質等による急性中毒の治療方法等に関する情報を迅速に提供するため、それらの情報に関する情報基盤を整備し、急性中毒対策の充実を図ることを目的とする。

2.補助対象

財団法人日本中毒情報センターとする。

3.事業内容

(1) 化学物質等によって起こる急性中毒に関する次のような情報の収集及び提供

ア 急性中毒の原因となる物質の名称、成分、組成等に関する情報

イ アの物質を含有する商品の名称、含有量等に関する情報

ウ 急性中毒の症状及び治療方法等に関する情報

(2) (1)により収集した情報の整理集積

(3) 急性中毒に関する情報提供に必要な基礎資料の作成

(4) 24時間体制で医師の適切な指示が受けられる体制を確保する。

第15 救急医療支援センター運営事業

1.目的

この事業は、休日・夜間において脳卒中や心筋梗塞及び小児等に関する診断(CT・MRI等による画像診断や心電図の評価、治療方針の決定等を指す。以下、「診断」という。)を行う専門医を確保し、地域の救急医療機関の診断・治療の支援を行う救急医療支援センターを設置することにより、救急医療体制の充実を図ることを目的とする。

2.補助対象

厚生労働大臣が適当と認める救急医療支援センターを補助対象とする。

3.運営方針

(1) 救急医療支援センターは、救急医療機関とITネットワークを活用する等により診断に必要な情報の提供を受け、地域の救急医療機関の診断・治療の支援を行うものとする。

(2) 救急医療支援センターが支援を行うに当たっては、あらかじめ救急医療機関と契約を締結するものとし、事業の実施に当たっては診断等の実施に必要な費用を請求するものとする。

4.整備基準

(1) 救急医療支援センターは、休日・夜間において診断を行う専門医を確保するものとする。

(2) 救急医療支援センターは、救急医療機関から送信される画像等の診断に必要な情報を受信するために必要な機器を有するものとする。

第16 救急医療トレーニングセンター運営事業

1.目的

この事業は、救急医療に対する需要の増大や国民の要求水準の高まりといった近年の救急医療の要請に対応するため、救急医療に関する専門技術の研修等により、救急医療を担う人材の養成、確保を図ることを目的とする。

2.補助対象

厚生労働大臣が適当と認める救急医療トレーニングセンターを補助対象とする。

3.運営方針(研修内容)

救急医療トレーニングセンターは、後期臨床研修医等(以下「研修生」という。)に対し、予め策定された研修プログラムによりトレーニングを実施するものとする。なお、プログラムの策定に当たっては以下を参考にするものとする。

(1) 研修プログラムは、救急医療の技術向上のための到達目標を設けること。

(2) 研修内容の審査、評価を行うため、院内に評価委員会を設けること。研修修了に当たっては、評価委員会において、到達目標の達成の適否を審査すること。

(3) 研修プログラムには、短期的な救急医療の特訓プログラムや、長期的な実践プログラムなど、研修生が希望により期間・内容を選べるよう豊富なコースを用意するものとし、必要に応じて以下のようなプログラムを盛り込むこと。

・救急処置シミュレーター活用プログラム

・海外交流を盛り込んだプログラム

・指導医クラスを対象にした研鑽プログラム

・その他、救急医療の技術向上に繋がる実践的なプログラム

(4) 長期的な実践プログラムには、一定期間の医師不足地域等での地域医療の実地研修を含めること。

4.整備基準

(1) 救急医療トレーニングセンターは、研修生が研修に専念し、効果的なトレーニングができるよう、適切な環境整備に努めること。例えば、必要な処遇の保障、交替勤務制の導入、医師事務作業補助者の導入、院内保育の実施などに努めるものとする。

(2) 救急医療トレーニングセンターは、研修の実施に必要な指導医(研修医2人に対して指導医1人以上の割合)及び研修プログラム責任者を確保するものとする。

(3) 救急医療トレーニングセンターは、研修プログラムの実施に必要な資器財等(例:救命処置シミュレーター)を整備するものとする。