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○エンテロバクター菌による院内感染防止対策の徹底等について

(平成13年9月4日)

(医薬安発第129号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局安全対策課長通知)

院内感染対策については、従前より「医療施設における院内感染の防止について」(平成3年6月26日指第46号健康政策局指導課長通知)等を参考に対応して頂いているところであるが、今般、東京都内の医療機関よりエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)を原因とした院内感染による死亡事例の報告がなされた。

このため、エンテロバクター菌のようにヒト腸管内に常在する細菌であっても、死亡につながる院内感染が発生するおそれがあることにつき、貴職より改めて貴管下医療機関に対して注意喚起を徹底するとともに、貴職において、エンテロバクター菌による院内感染を疑う事例を把握している場合には、当職あて情報提供願いたい。

また、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に基づく報告の対象となっていない病原体による院内感染事例に関する情報提供については、「セラチアによる院内感染防止対策の徹底等について」(平成12年7月4日医薬安第88号医薬局安全対策課長通知)によりお願いしているところであるが、院内感染対策の推進に資すると判断される事例の情報提供について、今後とも御協力いただくよう、重ねてお願いする。

なお、前記「医療施設における院内感染の防止について」では、管理的立場にある職員、医師、薬剤師、看護婦、検査技師等病院内の各部門を代表する職員から構成される「院内感染対策委員会」を設置する必要性について述べている。この院内感染対策委員会の活動が形骸化せず、各医療機関において真に院内感染対策を推進することが可能となるよう、日頃より、各医療機関の院内感染対策マニュアルの徹底やその更新、職員に対する院内感染についての周知徹底等に関し主体的に取り組むよう、貴管下医療機関に対し一層の指導をお願いしたい。

おって、エンテロバクター菌について、その概要を別添のとおり示すので参考にされたい。

[別添]

エンテロバクター菌について

① エンテロバクター菌が引き起こす主な感染症

癌末期や大手術後などで、感染防御能力の低下した患者などで、散発的な日和見感染症が報告されている。医療用具に関連する感染症としては、カテーテル留置時の尿路感染、人工呼吸器装着時の呼吸器感染、静脈内高カロリー輸液等に伴う、本菌に起因する敗血症等が報告されている。

② 治療と予後

本菌は、ペニシリン系、第一世代セフェム系抗生物質に対し自然耐性を示す。また、第二、第三世代セフェム系、セファマイシン系抗生物質に対しては、これらの薬剤と接触することにより耐性を獲得することが知られている。本菌による敗血症例の死亡率は、2~5割程度とされている。

③ 棲息場所、病原性等

ヒトの腸管内常在細菌叢を形成するグラム陰性桿菌で、自然界の土壌、水に存在するが、病院環境では、流しやその排水口など湿潤箇所からしばしば分離される。

ヒトに対する病原性は弱いが、Enterobacter cloacae(E. cloacae)、E. aerogenes、E. agglomeransなどが、感染防御能力の低下した患者において感染症の原因菌となりうる。