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○医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について

(平成一三年三月一二日)

(医薬発第一八八号)

(各都道府県知事あて厚生労働省医薬局長通知)

今般、診療用放射線の防護に関し、医療法施行規則の一部を改正する省令が平成12年12月26日厚生省令第149号として、関係告示(「廃棄物詰替施設、廃棄物貯蔵施設及び廃棄施設の位置、構造及び設備に係る技術上の基準の一部を改正する件」、「医療法施行規則第24条第6号の規定に基づき厚生労働大臣が定める放射性同位元素装備診療機器の一部を改正する件」及び「放射線診療従事者等が被ばくする線量当量の測定方法並びに実効線量当量及び組織線量当量の算定方法の全部を改正する件」)とともに公布され、平成13年4月1日から施行されることとなったが、この省令の改正の要点及び施行に当たり留意すべき事項は別添のとおりであるので、御了知されるとともに、管下政令指定都市、中核市、保健所設置市、関係団体等並びに管下医療機関に周知方お願いする。

今回の医療法施行規則及び関係告示の改正に当たっては、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年法律第162号)第6条の規定に基づき放射線審議会に諮問し、妥当である旨の答申を得ているので申し添える。

なお、「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について(平成元年1月18日 健政発第20号)」及び「医療法施行規則の一部を改正する省令に関する参考事項(平成元年7月17日 健政発第383号)」は、廃止されたので御了知されたい。

第一 改正の趣旨

(一) 国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告の取り入れ

放射線審議会の「ICRP 1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取り入れについて(意見具申)」(平成10年6月)を踏まえ、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告に基づき、法令上の用語及び放射線障害防止の基準等の改正を行ったこと。

用語については、次のとおり改められたこと。

用語等

旧法令

改正法令

防護基準

線量限度

・実効線量当量

・組織線量当量

・実効線量

・等価線量

管理区域に係る基準及びしゃへいに係る限度

・1センチメートル線量当量

・実効線量

測定

場所に係る測定

・1センチメートル線量当量率

・3ミリメートル線量当量率

・70マイクロメートル線量当量率

・1センチメートル線量当量率又は1センチメートル線量当量注1)

・(削除)

・70マイクロメートル線量当量率

 

外部被ばく線量の測定

・1センチメートル線量当量

・3ミリメートル線量当量

・70マイクロメートル線量当量

・1センチメートル線量当量

・(削除)

・70マイクロメートル線量当量

注1) 管理区域境界の線量等が、従前の1週間当たりから3月間当たりに改正されたことから、場所に係る測定に適した積算型の放射線測定器で測定を行う場合が想定されるため、場所に係る測定の用語に1センチメートル線量当量を追加した。

なお、法令上の「線量」という用語は、防護基準として用いる実効線量又は等価線量と測定に係る量(モニタリング線量)として用いる1センチメートル線量当量等の総称である。

(二) エックス線装置等の防護基準の見直し

エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置及び診療用放射線照射装置の防護について、ICRPのPub.33及び国際電気標準会議(IEC)のIEC60601等の国際基準との整合性を図るために基準の改正を行ったこと。

なお、エックス線装置等から発生する放射線の線量として、改正前の医療法施行規則(以下、「規則」という。)では照射線量(単位はクーロン毎キログラム)による基準が設けられていたところであるが、改正規則では、自由空気中の空気カーマ(以下「空気カーマ」という。単位はグレイ。)を採用している。

なお、空気中でイオン対1個を作るのに必要な平均エネルギー(W値)は、ICRU Report 47(1992)において、W/e=33.97±0.05(J/C)であることが示されている。すなわち、照射線量から空気カーマへの換算、1クーロン毎キログラムは33.97グレイを意味する。

改正規則において、線量等の単位がクーロン毎キログラム又はクーロン毎キログラム毎時から空気カーマ又は空気カーマ率に変更された条文のうち、第30条第1項第1号、同条第2項第5号、同条第4項第2号及び同項第3号並びに第30条の3第1項第1号については、単位の変更によるものとみなして差し支えない。

(三) 新しい医療技術への対応

近年の放射線を利用する医療技術の改良や開発等により、診療への有効性及び安全性の面から医療の現場での適用が望まれている新しい放射線の利用形態について、適切な放射線防護の措置を講じた上で、使用が可能となるように規定の整備を図ったこと。

具体的には、次の医療技術の適用を想定している。

① 核医学撮像装置の吸収補正用線源注1)の使用

② 核医学撮像装置とCT装置の同一室内での使用

③ 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具注2)を透視下で体内に挿入することによる放射線治療の実施

④ 移動型診療用高エネルギー放射線発生装置の手術室での使用

⑤ 診療用粒子線照射装置の使用注3)

注1) 吸収補正用線源とは、核医学撮像装置(PET装置又はSPECT装置)の画像診断の定量性を高め、精度の高い診断を可能とすることを目的とし、診療用放射性同位元素等からの放射線の臓器や組織による吸収を補正するために装備された専用の密封された放射性同位元素(診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具)のことである。

注2)

規則においては、密封された放射性同位元素を装備している照射機器のうち、装備する放射性同位元素の数量が下限数量に千を乗じて得た数量を超えるものが診療用放射線照射装置、下限数量に千を乗じて得た数量以下であるものを診療用放射線照射器具と規定している。

すなわち、診療用放射線照射装置と診療用放射線照射器具は用途による区分ではなく、装備する密封された放射性同位元素の数量による区分である。

診療用放射線照射装置は、テレコバルト、ガンマナイフ等による体外照射又はRALS(遠隔操作式後充填法)により患者の体内(体腔内を含む。以下同じ。)に挿入し短時間で高線量率照射を行う使用法が一般的であり、これらの場合、診療用放射線照射装置は診療用放射線照射装置使用室に据え置いて使用する必要がある。一方、血管内放射線治療として、血管内に挿入する形式の診療用放射線照射装置が近年開発されたことから、改正規則においては、診療用放射線照射装置の貯蔵施設及び運搬容器に関する規定を新たに設け、診療用放射線照射装置により治療を受けている患者を放射線治療病室に入院させるという規定を追加することとした。

また、核医学撮像装置の吸収補正用線源として、診療用放射線照射装置が用いられることもある。

診療用放射線照射器具は、患者の体内に挿入し組織内照射又は腔内照射を行う使用法が一般的であったが、核医学撮像装置の吸収補正用線源として体外から照射するものもある。

注3) 診療の用に供する陽子線又は重イオン線を照射する装置として、現状では陽子線、炭素イオン線が実用段階にあるものである。

第二 個別事項

(一) 届出に関する事項

1 エックス線装置の届出(第24条の2)

(1) 定格出力の管電圧(波高値とする。以下同じ。)が10キロボルト以上であり、かつ、そのエックス線のエネルギーが1メガ電子ボルト未満の診療の用に供するエックス線装置として、直接撮影用エックス線装置、断層撮影エックス線装置、CTエックス線装置、胸部集検用間接撮影エックス線装置、口内法撮影用エックス線装置、歯科用パノラマ断層撮影装置及び骨塩定量分析エックス線装置等の撮影用エックス線装置、透視用エックス線装置、治療用エックス線装置、輸血用血液照射エックス線装置等が該当する。これらのエックス線装置を病院又は診療所に備えたときは、10日以内に第24条の2の規定に基づく届出を行うこと。

(2) エックス線装置は、エックス線発生装置(エックス線管及びその付属機器、高電圧発生装置及びその付属機器並びにエックス線制御装置)、エックス線機械装置(保持装置、エックス線撮影台及びエックス線治療台等)、受像器及び関連機器から構成され、これら一式をもって1台のエックス線装置とみなすこと。

なお、複数のエックス線管を備えた装置であっても、共通した1つのエックス線制御装置を使用し、かつ、1人の患者の診療にしか用いる事が出来ない構造である場合は、1台のエックス線装置とみなすことができる。

(3) 移動型及び携帯型エックス線装置(移動型透視用エックス線装置及び移動型CT装置を含む。以下同じ。)を病院又は診療所に備えたときであっても、10日以内に第24条の2の規定に基づく届出を行うことが必要であること。この場合において、同条第4号に規定された「エックス線装置のエックス線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」として、当該エックス線装置の使用条件、保管条件等を具体的に記載する必要があること。また、移動型及び携帯型エックス線装置を、エックス線診療室内に据え置いて使用する場合は、届出に当たってその旨を記載すること。

(4) 第24条第10号の規定に基づき、第24条の2第2号から第5号までに掲げる事項を変更した場合は、第29条の規定により変更等の届出が必要であること。

なお、エックス線装置を構成する機器の一部の交換を行った場合にあっては、エックス線管、高電圧発生装置、受像器等の機器の変更により、第30条に規定するエックス線装置の防護基準に関する規格の変更等を伴う可能性がある項目については、届出を行う必要があるが、同一規格のエックス線管の交換の場合にあっては、届出は不要であること。

2 診療用粒子線照射装置の届出

(1) 届け出るべき場合(規則第24条第2号及び第12号)

病院又は診療所に診療用粒子線照射装置を備えようとする場合(規則第24条第2号)にあっては、管理者は、医療法第15条第3項の規定により、病院又は診療所所在地の都道府県知事に届け出なければならないものとされたこと。なお、病院又は診療所に診療用粒子線照射装置を備えなくなった場合(規則第24条第12号)についても、同様であること。

(2) 届出事項等(規則第25条の2)

診療用粒子線照射装置を病院又は診療所に備えようとする場合には、規則第25条の2各号に掲げる事項を記載した届出書を提出することにより行うこと。

粒子の発生装置については、従前のとおり放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号。以下「防止法」という。)の規定の適用を受けるものであり、その諸規定を遵守しなければならないこと。この点については、改正省令による改正後の規則の規定の適用後も変更ないものであること。

ただし、医療機関に設置される粒子線の発生装置については、従前のとおり防止法の規定の適用を受けるものであるが、診療用粒子線照射装置に粒子線を供する目的のものである場合には、放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の評価に必要な情報であることから、規則第25条の2各号に掲げる放射線障害の防止に関する構造設備及び予備措置の概要として、防止法第3条第2項の申請書の写等により以下の内容について確認するとともに、関連する診療用粒子線照射装置の届出と齟齬なきことを確認されたいこと。

(ア) 病院又は診療所の名称及び所在地

(イ) 粒子線の発生装置の制作者名、型式及び台数

(ウ) 粒子線の発生装置の定格出量

(エ) 粒子線の発生装置及び粒子線の発生装置を設置する室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要

(オ) 粒子線の発生装置の発生する粒子線の種類等

3 診療用放射線照射装置の届出(第26条)

(1) 第2号の規定において、従前は、診療用放射線照射装置の「台数」を届け出ることとされていたが、診療用放射線照射器具と同様の形状の診療用放射線照射装置の使用もあり得ることから、「個数」に改めたこと。

なお、据え置き型の診療用放射線照射装置については、「個数」は「台数」と読み替えること。

(2) 第3号の規定において、従前は、「診療用放射線照射装置及び診療用放射線照射装置使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」とされていたが、患者の体内に挿入し放射線治療に用いられる診療用放射線照射装置の使用実態にかんがみ、「診療用放射線照射装置、診療用放射線照射装置使用室、貯蔵施設及び運搬容器並びに診療用放射線照射装置により治療を受けている患者を入院させる病室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置」に改めたこと。

この場合における「診療用放射線照射装置により治療を受けている患者」とは、診療用放射線照射装置を継続的に挿入し放射線治療を受けている患者に限られるものであり、血管内への一時的挿入や高線量RALS(以下「一時的挿入等」という。)により治療を受けている患者は除かれること。

また、「診療用放射線照射装置により治療を受けている患者を入院させる病室」とは、診療用放射線照射装置を継続的に体内に挿入して治療を受けている患者を入院させる病室に限定され、診療用放射線照射装置を一時的挿入等をし、放射線治療を行った患者については、必ずしも放射線治療病室へ入院させなくても差し支えないこと。ただし、この場合においては、診療用放射線照射装置による治療等に関し、第30条の23に基づき記録を保存すること。

なお、本号における「貯蔵施設及び運搬容器」とは、体内に挿入して放射線治療を行うために用いられる診療用放射線照射装置を貯蔵する施設及び貯蔵施設から診療用放射線照射装置使用室等へ運搬する必要がある場合に用いられる運搬容器に限られること。

4 診療用放射線照射器具の届出(第27条)

(1) 核医学撮像装置における吸収補正用線源として体外照射により使用される診療用放射線照射器具の使用実態にかんがみ、今回の改正により、第1項第4号において、当該診療用放射線照射器具を診療放射線技師も使用できるよう規定されたものであること。

なお、体内に挿入して治療を行うために用いられる診療用放射線照射器具の取り扱いについては、従前通り、診療放射線技師が患者の体内に挿入することは認められないこと。ただし、直接体内に挿入しないリモートアフターローダの操作についてはこの限りではない。

(2) 第3項に規定する「毎年12月20日までに、翌年において使用を予定する当該診療用放射線照射器具について第1項第1号及び前項第1号に掲げる事項」とは、第2項により届出されているもののうち、同項第1号の規定に基づく1年間に使用する当該診療用放射線照射器具の型式及び個数並びに装備する放射性同位元素の種類及びベクレル単位をもって表わした数量に限られること。

なお、第1項第2号により届出されている数量等を超える量の診療用放射線照射器具の使用を予定する場合には、第1項第3号に規定する「放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」の変更に当たるので、あらかじめ第29条第1項による変更の届出が必要であること。

5 診療用放射性同位元素の届出(第28条)

(1) 本条に規定する診療用放射性同位元素とは、防止法の運用を適用除外されている医薬品である放射性医薬品及び薬事法(昭和35年法律第145号)第2条第15項に規定する治験の対象とされる薬物をいうものであること(ただし陽電子断層撮影診療用放射性同位元素を除く。)。

なお、陽電子断層撮影診療用放射性同位元素については、医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(平成16年8月1日医政発第0801001号)を参照のこと。

(2) 第1項第3号については、今回の改正により、第30条の16第1項に規定する濃度等及び第30条の26第3項における管理区域に係る線量等が3月間当たりで規定されたことから、従前の「ベクレル単位をもって表わした診療用放射性同位元素の種類ごとの最大貯蔵予定数量及び1日の最大使用予定数量」から「ベクレル単位をもって表した診療用放射性同位元素の種類ごとの最大貯蔵予定数量、1日の最大使用予定数量及び3月間の最大使用予定数量」に改められたこと。

この場合における3月間とは、4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする3月間のことであること。

この場合においては、第30条の8第3号に掲げる事項、第30条の9第2号及び同条第8号に掲げる事項、第30条の11第1項第1号及び同項第2号イ並びに同項第3号イ及びロに掲げる事項並びに第30条の26に掲げる事項の施設及び設備基準等の適合に関しては、本条第1項第4号に掲げる「放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」に係る線量等の再評価が必要になること。

(3) 第2項に規定する「毎年12月20日までに、翌年において使用を予定する診療用放射性同位元素について前項第1号及び第2号に掲げる事項」とは、第1項により、あらかじめ届出されている「病院又は診療所の名称及び所在地」及び「その年に使用を予定する診療用放射性同位元素の種類、形状及びベクレル単位をもって表わした数量」に限定されること。

なお、本条第1項第3号により届出されている数量等を超える診療用放射性同位元素の使用を予定する場合には、本条第1項第4号「放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」の変更に当たるので、あらかじめ第29条第1項の規定に基づく変更等の届出が必要であること。

(二) エックス線装置等の防護に関する事項

1 エックス線装置の防護(第30条)

(1) 本条に規定する「定格管電圧」とは、ICRP Pub.33及びIEC 60601等の国際基準に整合を図ることによるものであるが、従前の「定格出力における管電圧」をさすものであること。

(2) 第1項第1号で規定するエックス線管容器及び照射筒に関する防護については、従前通り、エックス線量によることとされているが、これはエックス線の空気カーマ率を意味すること。この場合において、「利用線錐以外のエックス線」とは、当該エックス線管容器又は照射筒からの漏えい線量のみをいうこと。

(3) 第1項第2号に規定する「総濾過」とは、従前通り装置自身による自己濾過を含むものであること。

この場合において、治療用エックス線装置、輸血用血液照射エックス線装置及び定格管電圧50キロボルト以下の乳房撮影用エックス線装置を除くエックス線装置の利用線錐方向の総濾過のうち、アルミニウム当量1.5ミリメートルは常設であること。

また、定格管電圧50キロボルト以下の乳房撮影用エックス線装置についても、アルミニウム当量0.5ミリメートル以上又はモリブデン当量0.03ミリメートル以上となるような総濾過を常設することが望ましいこと。

なお、附加濾過板の質は診療上適宜定められるものであるが、その基準は、概ね次のようなものであること。

管電圧(波高値とする。)

使用濾過板

20キロボルト以下

セロファン

20キロボルト~120キロボルト

アルミニウム

120キロボルト~400キロボルト

400キロボルト以上

(4) 第2項第1号の規定は、透視用エックス線装置の防護基準として、透視中における患者の放射線による被ばく線量を抑制するために設けられたものであること。

なお、高線量率透視制御を備えた装置にあっては、いかなる管電圧と管電流の組み合わせにおいても125ミリグレイ毎分を超えてはならないこと。

また、透視を行う場合にあっては、放射線診療従事者等は、できる限り防護衝立や防護スクリーンの背後で作業すること。これができない場合は、適切な他の放射線防護用具を使用すること。

(5) 第2項第2号に規定する「透視時間を積算する」とは、透視中の時間を把握し、患者及び放射線診療従事者等の被ばく線量を抑制するためのものであること。

(6) 第2項第3号の規定は、従前通り、患者の放射線による被ばく線量を抑制するために設けられたものであり、本号に規定する「インターロック」とは、エックス線管焦点皮膚間距離が30センチメートル未満の場合に、当該エックス線装置からのエックス線の発生を遮断するための装置をさすものであること。

(7) 第2項第7号に規定する「利用線錐以外のエックス線を有効にしゃへいするための適切な手段」とは、患者からの散乱線及びエックス線装置と患者との間に設けられた散乱体による散乱線に対する放射線診療従事者等の放射線防護手段であること。

(8) 第3項の規定は、従前通り、エックス線撮影の際、患者の不必要な放射線被ばくを少なくすること及び患者からの散乱線の発生を少なくすることを目的として設けられたものであること。

(9) 第3項第3号の規定は、移動型及び携帯型のエックス線装置にあっては、エックス線管焦点及び患者から放射線診療従事者等までの距離を2メートル以上にするべきであること。

なお、在宅においてエックス線撮影を行う場合にあっては、「在宅医療におけるエックス線撮影装置の安全な使用について(平成10年6月30日医薬安第69号)」を参照されたい。

(10) 第4項に規定する「胸部集検用間接撮影エックス線装置」とは、国際電気標準規格との整合を図るためのものであるが、従前の「間接撮影装置」をさすものであること。

なお、同項第2号及び第3号に規定するエックス線量の空気カーマは、エックス線管容器及び照射筒からの漏えい線量を含むものであること。

(11) 第5項における「濾過板が引き抜かれた時、エックス線の発生を遮断するインターロック」とは、患者の放射線防護のために設けられたものであること。

2 診療用高エネルギー放射線発生装置及び診療用粒子線照射装置の防護(第30条の2及び第30条の2の2)

(1) 第1号の「利用線錐以外の放射線量」は、従前通り当該発生管等からの漏えい線量のみをさすこと。

なお、本号においては中性子線を含まないが、実施しうる限り中性子線による影響を低減させることが求められること。

(2) 第2号に規定する「照射終了直後の不必要な放射線からの被ばくを低減する」とは、ターゲット等が放射化された場合にあっては、被ばく線量の低減を図る趣旨で設けられた規定であること。

なお、この場合における「適切な防護措置」とは、照射終了直後に保守作業として部品等を取り扱う必要がある場合の放射線に対する防護措置のことであること。

(3) 第4号に規定する「インターロック」とは、当該発生装置使用室又は照射装置使用室の扉が閉じていないときは放射線の照射ができず、万一、放射線を照射中に扉を開けられた場合でも、直ちに放射線の照射を停止することにより、放射線診療従事者等の放射線障害の発生を未然に防ぐためのものであること。

3 診療用放射線照射装置の防護(第30条の3)

(1) 第1号の放射線源の収納容器に関する防護については、照射口が閉鎖されているときの線量率であること。

なお、照射時における容器のしゃへい能力については、従前通り、個々の場合に応じてできるだけ患者が不必要な放射線に被ばくすることのないようにされたい。

(2) 第2号については、今回の改正により、照射口には、患者等の放射線障害の防止に必要な場合にのみ、適切な二次電子濾過板を設けることとされたこと。

(3) 第3号については、今回の改正により、「診療用放射線照射装置の操作その他の業務に従事する者の防護のための適当な設備を設けた場合」の適用は、診療用放射線照射装置を核医学撮像装置の吸収補正用線源として使用する場合又は患者の体内に挿入して治療を行うために使用する場合に限られること。この場合において、「防護のための適当な設備」とは、放射線防護に必要な防護衝立等による被ばく線量を低減するためのしゃへい物をさすものであること。

なお、しゃへい物を用いた場合であっても、必要に応じて防護衣を着用する等により、放射線診療従事者等の被ばく線量の低減に努めること。

これ以外の場合であって、体外照射により診療に用いる診療用放射線照射装置の放射線防護については、従前通り、照射室の出入口は、インターロックを設けて、室外からの遠隔操作によって開閉するための設備を設けること。

(三) エックス線診療室等の構造設備に関する事項

1 エックス線診療室(第30条の4)

(1) 第1号のエックス線診療室の画壁等の防護については、1週間当たりの実効線量によること。

また、第1号のただし書に規定する「その外側が、人が通行し、又は停在することのない場所」とは、従前通り、床下がただちに地盤である場合、壁の外ががけ、地盤面下等である場合など極めて限定された場所であること。ただし、床下に空間があっても、周囲を柵等で区画され、その出入り口に鍵その他閉鎖のための設備又は器具を設けた場合にあっては、「その外側が、人が通行し、又は停在することのない場所」が適用できること。

なお、特に天井及び窓等について防護が不完全な場合が予想されるので、従前通り、その適用については十分注意すること。

この場合の線量率は、通常の使用状態において画壁等の外側で測定すること。

(2) 第2号の「エックス線診療室の室内には、エックス線装置を操作する場所を設けないこと。」の規定のうち、「操作する場所」とは、原則として、エックス線撮影室と画壁等で区画された室であること。

なお、「操作」とは、エックス線をばくしゃすることであること。

(3) 第2号のただし書のうち、今回改正された「近接透視撮影を行うとき、若しくは乳房撮影を行う等の場合」とは、次に掲げる場合に限られること。

(ア) 乳房撮影又は近接透視撮影等で患者の近傍で撮影を行う場合。

(イ) 1週間につき1,000ミリアンペア秒以下で操作する口内法撮影用エックス線装置による撮影を行う場合。

(ウ) 使用時において機器から1メートル離れた場所における線量が、6マイクロシーベルト毎時以下となるような構造である骨塩定量分析エックス線装置を使用する場合。

(エ) 使用時において機器表面における線量が、6マイクロシーベルト毎時以下となるような構造である輸血用血液照射エックス線装置を使用する場合。

(オ) 組織内照射治療を行う場合。

なお、本号に掲げる「必要な防護物を設ける」とは、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルト以下となるような画壁等を設ける等の措置を講ずることであること。

この場合であっても、(ア)から(ウ)については、必要に応じて防護衣等を着用すること等により、放射線診療従事者等の被ばく線量の低減に努めること。

(4) (3)の(イ)の場合のうち、一時に2人以上の患者が診察を行わない構造になっている口内法撮影用エックス線装置による撮影を行う室については、エックス線診療室と診察室とを兼用しても差し支えないこと。

なお、この場合にあっても第30条の4に定める基準を満たし、あわせて管理区域を設定し第30条の16に定める措置を講ずること。

これ以外の場合にあっては、増改築、口内法撮影用エックス線装置の購入等の機会をとらえ、速やかに専用のエックス線診療室を整備されること。

(5) (3)の(エ)にいう輸血用血液照射エックス線装置については、放射線診療従事者以外の者が当該血液照射エックス線装置を使用する場所にみだりに立ち入らないよう画壁を設ける等の措置を講じ、画壁の内部から外部に通ずる部分に、鍵その他の閉鎖のための設備又は器具を設ける場合にあっては、当該血液照射エックス線装置の使用場所をエックス線診療室とみなして差し支えないものであること。

この場合にあっては、エックス線診療室全体を管理区域とすること。

2 診療用高エネルギー放射線発生装置使用室及び診療用粒子線照射装置使用室(第30条の5及び第30条の5の2)

第1号の診療用高エネルギー放射線発生装置使用室及び診療用粒子線照射装置使用室の画壁等の防護については、1週間当たりの実効線量限度によること。

なお、この場合の放射線の量の測定は、通常の使用実態において画壁等の外側で行うこと。

3 診療用放射線照射装置使用室(第30条の6)

第2号の診療用放射線照射装置使用室の区画等の防護については、1週間当たりの実効線量限度によること。

この場合において、体内に挿入して治療を行うために診療用放射線照射装置を使用する場合における放射線の量の測定に当たっては、通常の使用状態において画壁等の外側で行うこと。

4 診療用放射線照射器具使用室(第30条の7)

第1号の診療用放射線照射器具使用室の画壁等の防護については、1週間当たりの実効線量限度によること。

この場合において、体内に挿入して治療を行うために診療用放射線照射器具を使用する場合における放射線の線量の測定に当たっては、通常の使用状態において画壁等の外側で行うこと。

5 放射性同位元素装備診療機器使用室(第30条の7の2)

(1) 放射性同位元素装備診療機器の使用に当たっては、放射性同位元素装備診療機器使用室を設けることが原則であるが、従前通り、第30条の14に定めるように、本条に定める基準に適合する室である場合には、使用しても差し支えないものとすること。

なお、この場合において、第27条の2第3号の届出は、当該使用場所を放射性同位元素装備診療機器使用室とみなして行うこと。

(2) 第4号「その他適切な放射線障害の防止に関する予防措置」の内容は、次のとおりであること。

(ア) 骨塩定量分析装置に関しては、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルト以下となるようなしゃへい物又は間仕切りを設ける等の措置を講ずることにより管理区域を明確にすること。

(イ) ガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタに関しては、機器表面にディテクタに収納されている放射性同位元素の種類及び数量を示す標識を付すること。

(ウ) 輸血用血液照射装置に関しては、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルト以下となるような画壁を設ける等の措置を講ずることにより管理区域の境界を明確にすること。この場合にあっては、第30条の7の2に定める構造設備の基準に適合していれば、当該使用場所を放射性同位元素装備診療機器使用室とみなして差し支えないこと。

なお、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則(昭和35年総理府令第56号)第14条の6第1項第6号の規定により、輸血用血液照射装置を使用する場合に、その旨を自動的に表示する装置を設けなければならないこと。

6 診療用放射性同位元素使用室(第30条の8)

(1) 第1号の規定は、従前通り、診療用放射性同位元素が火災に際して近隣を汚染することの可能性にかんがみ、防火上の安全を図るために設けられたものであること。

(2) 第2号については、準備室(小分け、分注、調剤等を行う室をいう。)と診療を行う室の画壁は、準備室の診療用放射性同位元素によって汚染された空気、水等による診療を行う室の汚染を防ぐためのものであること。

(3) 第3号の区画等の外側における放射線の量の測定に当たっては、1週間等の一定期間における積算線量を測定することが望ましいが、これが困難な場合には、使用実態を考慮し、通常の使用量による1時間当たりの線量率を測定し、1週間当たりの時間(40時間)を乗じて算出して差し支えないこと。

なお、核医学撮像装置に装備する吸収補正用線源として診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する場合における線量率の測定に当たっては、通常の使用状態における場所に吸収補正用線源が存在するものとして行うこと。

(4) 第10号の規定は、準備室に設けられている洗浄設備について、診療用放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された水等を安全に廃棄するために排水施設に連結すべきことであること。

(5) 第11号の規定は、フード、グローブボックス等の装置の設置を義務付けたものではないが、これを設けた場合は排気設備に連結すべきであること。

(6) 診療用放射性同位元素等の使用に際し、適宜、放射線測定器を用いて測定を行うことにより、診療用放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染される物による使用室内(準備室を含む)の汚染状況を確認すること。

7 貯蔵施設(第30条の9)

(1) 第1号の規定は、貯蔵施設の基準として、貯蔵室又は貯蔵箱を設けることを定めたものであること。

(2) 第3号については、特定防火設備に該当する防火戸(建築基準法施行令第112条第1項に規定する特定防火設備に該当する防火戸をいう。)を設けることとされたこと。

(3) 第6号及び第7号の規定は、貯蔵室又は貯蔵箱等に適用されるものであること。

(4) 第8号に規定する、「次に定めるところに適合する貯蔵容器を備えること」とは、貯蔵施設として貯蔵室又は貯蔵箱を設けた場合の基準を定めたものであること。

この場合における1時間当たりの線量率は、使用状態を考慮し、通常貯蔵する量において測定すること。

なお、ただし書の「貯蔵箱等に診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を貯蔵する場合」とは、体内に挿入して治療を行うため又は吸収補正用線源として用いられる診療用放射線照射装置の使用実態に鑑み、「診療用放射線照射装置」が追加されたこと。

(5) 第8号ニの規定において、「貯蔵する診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具に装備する」とされたことは、体内に挿入して治療を行うために用いられる診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具及び吸収補正用線源として用いられる診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を貯蔵する場合に適用されること。

8 運搬容器(第30条の10)

運搬容器の構造の基準として、「診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素を運搬する場合」に改められたことは、診療用放射性同位元素、体内に挿入して治療を行うために用いられる診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具及び吸収補正用線源として用いられる診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を病院又は診療所内で運搬する場合に適用されること。

9 廃棄施設(第30条の11)

(1) 第1項第1号については、従前通り、他の使用室等と同様にその外側における放射線の量は、1週間当たりの実効線量によること。

また、排液処理槽、保管廃棄設備等の継続的に放射線を放出するものについては、その防護について留意されたい。

(2) 患者の排泄物及び汚染物を洗浄した水等については、その放射性同位元素の濃度が別表第3又は別表第4に定める濃度を超える場合は本条の適用を受けるものであり、排水設備により廃棄することとされたい。

なお、診療用放射性同位元素を投与された患者に伴う固体状の汚染物については、適切な放射線測定器を用いて測定することにより、放射線管理に関する適切な取り扱いを行うこと。

(3) 第1項第2号イ及び同項第3号イの規定に基づき、排水監視設備又は排気監視設備を設けて排水中又は排気中の放射性同位元素の濃度を監視すること。

また、これらの濃度を限度値以下とする能力を有する排水設備又は排気設備を廃棄施設とすること。

なお、排水監視設備及び排気監視設備において測定された濃度は、第30条の23の規定により記載し、帳簿を保存することとされたいこと。

(4) 第2項の規定は、第1項第2号イ及び同項第3号イに規定する能力を有する排水設備又は排気設備を設けることが著しく困難な場合において、病院又は診療所の境界における実効線量を1年間につき1ミリシーベルト以下とする能力を当該排水設備又は排気設備が有することにつき厚生労働大臣の承認を受けた場合は第1項第2号イ及び同項第3号イの規定を適用しないこととされたものであるが、承認は厚生労働大臣が個別に行うものであるので、病院又は診療所の開設許可申請又は施設設備の使用許可申請に当たり、本項の規定に該当する排水設備又は排気設備がある場合には、許可申請者に対して、あらかじめ厚生労働大臣から当該能力の承認を受けることとされたいこと。

10 放射線治療病室(第30条の12)

(1) 本条において、従前は、「診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素により治療を受けている」とされていたが、今回の改正により、「診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素により治療を受けている」とされたこと。

この場合における「治療を受けている」とは、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を体内へ挿入又は診療用放射性同位元素の投与により放射線治療を受けている患者であって、当該放射線治療を受けている患者以外の患者の被ばく線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれがある場合をいうこと。

なお、この場合であっても、診療用放射線照射装置及び診療用放射線照射器具の使用に当たっては、防止法の適用を受けることに留意されたい。

(2) 第1号の画壁等の防護については、使用実態を考慮し、通常の診療に用いる放射能の量において、患者の数及び患者の病床から画壁までの距離を考慮して測定すること。

なお、第1号ただし書により放射線治療病室相互の画壁等については、本号に規定するしゃへいを必要とされないこととされているが、この場合にあっても隣室の患者が不必要な放射線に被ばくすることのないよう適切な防護措置を講ずることとされたい。

また、2人以上を入院させる病室についても、各患者の間に適切なしゃへい物を設け、又は、適当な距離をとる等患者が不必要な放射線で被ばくすることのないこととされたい。

(3) 第3号において、今回の改正により、「ただし、第30条の8第8号の規定は、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具により治療を受けている患者のみを入院させる放射線治療病室については、適用しない」が追加されたこと。

この場合において、体内に挿入して治療を行うために用いられる診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の放置等の発見を容易にするための措置として、これら当該診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具のみで治療されている患者を入院させる放射線治療病室であっても、内部の壁、床等について、第30条の8第6号及び同条第7号の規定を適用すること。

なお、当該患者のみを入院させる放射線治療病室にあっては、放射性同位元素により汚染されるおそれがないので、第30条の8第8号の適用を除外するものであること。

(4) 第3号の規定は、従前通り、診療用放射性同位元素により治療を受けている患者を入院させる放射線治療病室における当該患者の嘔吐物、排せつ物等による放射性同位元素による汚染の除去を容易にするために設けられたものであること。

(四) 管理義務に関する事項

1 使用の場所等の制限(第30条の14)

(1) エックス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、診療用放射線照射器具使用室及び診療用放射性同位元素使用室における一般的な管理義務について

(ア) エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具及び診療用放射性同位元素(以下「放射線診療装置等」という。)は、それぞれ、エックス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、診療用放射線照射器具使用室及び診療用放射性同位元素使用室(以下「放射線診療室」という。)において使用するのが原則であるが、次の(2)から(11)までに掲げる場合にあっては、その限りでないこと。

(イ) 放射線診療室においては、同時に2人以上の患者の診療を行うことは認められないこと。また、放射線診療室において複数の放射線診療装置等を備える場合であっても同時に2人以上の患者の診療を行うことは認められないのが原則であるが、診療用放射性同位元素を投与された患者の診療、次の(4)(ウ)又は(8)に掲げる場合にあっては、その限りでないこと。

(ウ) 放射線診療室において、放射線診療と無関係な機器を設置し、放射線診療に関係のない診療を行うこと及び放射線診療室を一般の機器及び物品の保管場所として使用することは認められないこと。ただし、放射線診療に必要な患者監視装置、超音波診断装置及びその他のME機器等を放射線診療室に備えること並びに診療用高エネルギー放射線発生装置(リニアック装置)使用室に防止法の許可を得た放射化物保管設備又は放射化物のみを保管廃棄する保管廃棄設備を備えることは認められること。この場合において、第25条第4号の規定に関し、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要として、当該放射化物保管設備又は放射化物のみを保管廃棄する保管廃棄設備を備える旨を記載し、第29条第2項の規定により、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出を行う必要があること。

(エ) 歯科診療を行うチェアが1台で一時に2人以上の患者の診療を行わない構造の室においては、第二(三)1(4)が適用されるものであること。

(2) エックス線診療室における複数のエックス線装置の使用について

同一エックス線診療室において2台以上のエックス線装置を使用する場合には、以下の点に留意すること。

(ア) エックス線診療室に2台以上のエックス線装置を備えたときは、第24条の2の規定に基づく届出を、エックス線装置ごとに設置後10日以内に行う必要があること。

この場合において、第24条の2第4号の「エックス線装置及びエックス線診療室のエックス線障害の防止に関する構造設備及び予防措置の概要」に関し、各エックス線装置の使用の条件等を具体的に記載する必要があること。また、この使用の条件下で、当該エックス線診療室は放射線障害の防止に関する構造設備の基準を満たす必要があること。

(イ) エックス線診療室において2台以上のエックス線装置を備えた場合であっても、複数のエックス線装置から患者に対して同時にエックス線照射を行うことは認められないこと。

(ウ) (イ)の場合にあっては、2台以上のエックス線装置からの同時照射を防止するための装置を設けること。

(3) 移動型又は携帯型エックス線装置の使用について

エックス線装置の使用に関し、「特別の理由により移動して使用する場合」とは、移動型又は携帯型エックス線装置(胸部集検用間接撮影エックス線装置を除く。)を、移動困難な患者に対して使用する場合及び口内法撮影用エックス線装置を臨時に移動して使用する場合をいうものであること。

移動型又は携帯型エックス線装置の使用に当たっては、鍵のかかる等適切な保管場所を確保するとともに、当該装置のキースイッチ等の管理を適切に行うこと。

なお、移動型透視用エックス線装置の使用は、次の(5)に掲げられた場合にのみ認められ、一般病室や集中強化治療室及び心疾患強化治療室等での使用は認められないこと。

また、在宅医療においてエックス線撮影を行う場合にあっては、「在宅医療におけるエックス線撮影装置の安全な使用について(平成10年6月30日医薬安第69号)」を、手術室において移動型CT装置を使用する場合には「移動型CT装置の取扱いについて(平成12年2月10日医薬安第26号)」をそれぞれ参照されたい。

(4) エックス線装置を特別の理由によりエックス線診療室を除く放射線診療室において使用することについて

今回の改正により、「特別の理由により診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、診療用放射線照射器具使用室若しくは診療用放射性同位元素使用室において」エックス線装置を使用することが認められたところであるが、「特別な理由」とはエックス線装置と組み合わせて、次に掲げる診療に用いる必要がある場合に限定されること。

(ア) 診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置又は診療用放射線照射装置により放射線を体外照射すべき部位を決定するためにエックス線装置を使用する場合。

ただし、この場合、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置又は診療用放射線照射装置とエックス線装置が共通した1つの制御装置を使用していない場合には、同時にばくしゃすることは認められないこと。

(イ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具(以下「密封線源」という。)を患者の体内に挿入すべき部位を決定するため又は照射中の密封線源の位置を確認するためにエックス線装置を使用する場合。

(ウ) 診療用放射性同位元素を投与した患者の画像診断の精度を高めるため、CT装置によるエックス線撮影を核医学撮像装置の吸収補正用として使用する場合。ただし、この場合における核医学撮像装置は、密封された放射性同位元素を用いる吸収補正用線源が装備されていないこと。この場合においても、診療用放射性同位元素に対する放射線防護のほか、エックス線による他の患者及び放射線診療従事者等の被ばく線量を低減するため、防護衝立、防護スクリーン等のしゃへい物を設ける等、適切な放射線の防護措置を講ずること。

なお、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、診療用放射線照射器具使用室又は診療用放射性同位元素使用室にエックス線装置を備えたときは、第24条の2の規定に基づき、エックス線装置の設置後10日以内に届出を行う必要があること。

この場合において、第25条第4号、第25条の2第4号、第26条第3号、第27条第1項第3号又は第28条第1項第4号の規定に関し、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、診療用放射線照射器具使用室又は診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該エックス線装置を使用する旨を記載し、第29条第1項の規定により、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出を行う必要があること。

また、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素とエックス線装置を同時に使用するものとして、この同時使用の条件下での放射線障害の防止に関する構造設備の基準を満たした使用室であること。

(エ) 診療用放射性同位元素を投与した患者の核医学画像との重ね合わせのために、CT撮影を行う場合又はエックス線装置のうち、CT装置であって、これに診療用放射性同位元素を用いる核医学撮像装置が付加され一体となったもの(以下「核医学―CT複合装置」という。)によるCT撮影を行う場合。この場合においては、診療用放射性同位元素使用室の構造設備の基準を満たすのみならず、エックス線診療室の構造設備の基準を満たすこと。また、防護衝立の使用、必要に応じた防護衣の着用等により、放射線診療従事者等の被ばく線量の低減に努めること。さらに、当該診療用放射性同位元素使用室の室内にCT装置等を操作する場所を設けないこと。ただし、診療上やむを得ない理由により近接での操作が必要な場合は、この限りでないこと。

なお、同時に2人以上の患者の診療を行うことは認められないこと。

(オ) 核医学画像を得ることを目的とせず、CT撮影画像のみを得るために、CT装置又は核医学―CT複合装置によるエックス線撮影(以下「CT単独撮影」という。)を行う場合。この場合においては、核医学診療に関する安全管理の責任者たる医師又は歯科医師が、CT単独撮影を行う診療用放射性同位元素使用室における安全管理の責任者となり、CT単独撮影を受ける患者等が、診療用放射性同位元素による不必要な被ばくを受けることのないよう、適切な放射線防護の体制を確立すること。また、診療用放射性同位元素使用室の構造設備の基準を満たすのみならず、エックス線診療室の構造設備の基準を満たすこと。防護衝立の使用、必要に応じた防護衣の着用等により、放射線診療従事者等の被ばく線量の低減に努めること。さらに、当該診療用放射性同位元素使用室の室内にCT装置等を操作する場所を設けないこと。ただし、診療上やむを得ない理由により近接での操作が必要な場合は、この限りでないこと。

なお、同時に2人以上の患者の診療を行うことは認められないこと。

(5) 移動型透視用エックス線装置の使用について

移動型エックス線装置のうち、移動型透視用エックス線装置の使用については、①術中の病変部位の位置確認や手術直後に結果の確認等を行うため、術中あるいは術直後に手術室に透視用エックス線装置を移動して使用する場合、②CTアンギオグラフィーを実施するため、CT装置を備えたエックス線診療室に透視用エックス線装置を移動して使用する等、エックス線診療室で使用する場合、③診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具により治療を行うべき部位を決定するため、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室又は診療用放射線照射器具使用室に透視用エックス線装置を移動して使用する場合に限定されること。

この場合において、以下の点に留意すること。

(ア) 当該移動型透視用エックス線装置を、鍵のかかる保管場所等を設けて適切に保管することとし、装置のキースイッチ等の管理を適切に行うこと。

(イ) ①の場合にあっては、一時的に管理区域を設け、第30条の16に定める管理区域の基準を満たすこと。

なお、管理区域の設定に係る記録を行うこと。

(ウ) ②及び③の場合にあっては、当該移動型透視用エックス線装置を据え置き型透視用エックス線装置と同様の扱いをするものとし、必要な届出を行うこと。

この場合において、第24条の2第4号、第25条第4号、第25条の2第4号、第26条第3号、第27条第1項第3号又は第28条第1項第4号の規定に関し、エックス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室又は診療用放射線照射器具使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置として、当該移動型透視用エックス線装置を使用する旨を記載し、病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出を行う必要があること。

また、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具とエックス線装置を同時に使用するものとして、この同時使用の条件下での放射線障害の防止に関する構造設備の基準を満たすこと。

(6) 手術室での診療用高エネルギー放射線発生装置の使用について

今回の改正により、診療用高エネルギー放射線発生装置の使用に関し追加された「特別な理由により手術室に移動して使用する」とは、手術室で開創した状態の患部に術中照射を行う必要がある場合に限定されること。

なお、当該手術室において、診療用高エネルギー放射線発生装置を使用する際、第25条の規定に基づき、あらかじめ病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出すべきこと。

この場合であっても、防止法の適用を受けるものであることに留意されたい。

また、「適切な防護措置を講じた場合」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 当該手術室で診療用高エネルギー放射線発生装置を使用する際、第30条の2及び第30条の5の基準が満たされていること。

(イ) 当該手術室の目に付きやすい場所に、放射線障害の防止に必要な注意事項を掲示すること。

(ウ) 診療用高エネルギー放射線発生装置を使用する際には、当該手術室に管理区域を設けて、第30条の16に定める管理区域の基準が満たされていること。

なお、管理区域の設定に係る記録を行うこと。

(エ) 診療用高エネルギー放射線発生装置を当該手術室の室外から遠隔操作により動作させることとし、当該手術室の室外から患者の状態等を監視することができる装置を設けること。

(オ) 手術室内に照射を予告する表示灯やブザーの設置及び異常時に放射線の照射を停止する非常ボタン等を設けること。

(カ) 当該手術室における診療用高エネルギー放射線発生装置の取り扱い及び管理等に関し、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、当該発生装置の管理体制を明確にする組織図を作成すること。

(キ) 当該発生装置は、鍵のかかる部屋等を設けて適切に保管するとともに、装置のキースイッチ等の管理を適切に行うこと。

(ク) 保管場所から当該発生装置を移動させる途中の安全を確保するとともに、装置モニタリングを含む装置の校正、整備及び保守点検を行うこと。

また、保守点検を実施した事項を記録し、その記録を保存すること。

(ケ) 当該発生装置の保管場所については、当該装置の漏えい線量が第30条の26第3項第1号に規定する外部放射線に係る線量限度を超えるおそれがある場合には、第30条の16に規定する管理区域を設けて保管すること。

(コ) 当該発生装置の電源の形状の特定化を行う等により、当該手術室でのみ電源の供給ができる構造のものとすること。

(7) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具のエックス線診療室での使用について

今回の改正により、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を、特別の理由によりエックス線診療室で使用することが可能となったが、ここでいう「特別な理由」とは、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を患者の体内に挿入する際、挿入部位の位置確認のため、エックス線装置と組み合わせて使用する必要がある場合に限られること。

なお、エックス線診療室に診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を備えようとするときは、第26条又は第27条の規定に基づき、あらかじめ届出を行うこと。この場合において、第24条の2第4号の規定に関し、「エックス線診療室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置」として、当該診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する旨を記載し、第29条第1項の規定により、あらかじめ病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出を行う必要があること。

この場合において、当該エックス線診療室は、エックス線装置と診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の同時使用の条件下での放射線障害の防止に関する構造設備の基準を満たしていること。

この場合であっても、防止法の適用を受けるものであることに留意されたい。

また、「適切な防護措置」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 診療用放射線照射装置の使用核種は、リン-32、イットリウム-90及びストロンチウム-90/イットリウム-90に限られること。

(イ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を体内に挿入して治療を行う場合であって、当該放射線治療を受けている患者以外の患者の被ばく線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれがある場合には、放射線治療病室を有していること。

(ウ) エックス線に対する放射線防護のほか、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具による放射線診療従事者等の被ばく線量の低減を図るため、適切な防護措置を講ずること。

(エ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の紛失等の発見を容易にするため、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具を使用するエックス線診療室の床等は、突起物、くぼみ及び仕上げ材の目地等のすき間の少ないものとすること。

(オ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の使用後において、放射線測定器により使用場所等の線量を測定することにより、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具の紛失や放置されていないことを確認すること。

また、保管簿の記帳等により当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具の数量を確認すること。

(カ) 当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具を貯蔵する施設の構造設備の基準は、第30条の9の規定に従うものとすること。

(キ) 当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具を運搬する容器の構造の基準は、第30条の10の規定に従うものとすること。

(ク) エックス線診療室における診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する場合の取り扱い及び管理等に関し、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具の管理体制を明確にする組織図を作成すること。

(8) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の診療用放射性同位元素使用室での使用について

今回の改正により、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を、特別の理由により診療用放射性同位元素使用室で使用することが可能となったが、ここでいう「特別の理由」とは、診療用放射性同位元素を投与した患者の画像診断の精度を高めるため、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を核医学撮像装置の吸収補正用線源として使用する場合に限られること。

なお、診療用放射性同位元素使用室に診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を備えようとするときは、第26条又は第27条の規定に基づき、あらかじめ届出を行う必要があること。この場合において、第28条第1項第4号の規定に関し、「診療用放射性同位元素使用室の放射線障害の防止に関する構造設備及び予防措置」として、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具を使用する旨を記載し、第29条第1項の規定により、あらかじめ病院又は診療所の所在地の都道府県知事に届出を行うこと必要があること。

なお、この場合において、当該診療用放射性同位元素使用室は、診療用放射性同位元素と診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の同時使用の条件下での放射線障害の防止に関する構造設備の基準を満たしていること。

この場合であっても、防止法の適用を受けるものであることに留意されたい。

また、「適切な防護措置」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 診療用放射性同位元素による汚染防止並びに放射線防護のほか、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具による他の患者及び放射線診療従事者等の被ばく線量を低減するため、防護衝立、防護スクリーン等のしゃへい物を設ける等、放射線に対する適切な防護措置を講ずること。

(イ) 当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具を貯蔵する施設の構造設備の基準は、第30条の9の規定に従うこと。

(ウ) 当該診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を運搬する容器の構造基準は、第30条の10の規定に従うこと。

(エ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の使用後、放射線測定器により使用場所を測定するとともに数量を確認し、紛失や放置がないことを確認すること。

(オ) 診療用放射性同位元素使用室において吸収補正用線源として診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を使用する場合に関し、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具の管理体制を明確にする組織図を作成すること。

(9) 診療用放射線照射器具を集中強化治療室又は心疾患強化治療室において一時的に使用することについて

診療用放射線照射器具の使用に関し「一時的に使用する場合」とは、集中強化治療室又は心疾患強化治療室(以下「集中強化治療室等」という。)における医学的な管理の必要がある患者に対して、体内に挿入することにより用いられる診療用放射線照射器具の使用が必要かつやむを得ない場合に限り、一時的に使用することを認めるという趣旨であり、集中強化治療室等において管理する必要のない患者に対して使用することは認められないこと。

この場合であっても、防止法の適用を受けるものであることに留意されたい。

また、「適切な防護措置」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 診療用放射線照射器具使用室を有していること。

(イ) 診療用放射線照射器具により放射線治療を受けている患者以外の患者の被ばく線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれがある場合には、放射線治療病室を有すること。

(ウ) 診療用放射線照射器具を貯蔵する施設の構造設備の基準は、第30条の9の規定に従うこと。

(エ) 診療用放射線照射器具を運搬する容器の構造基準は、第30条の10の規定に従うこと。

(オ) 診療用放射線照射器具の使用後において、放射線測定器により使用場所を測定するとともに数量を確認し、紛失や放置がないことを確認すること。

なお、測定結果は記録すること。

(カ) 集中強化治療室等において診療用放射線照射器具を使用する場合は、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、集中強化治療室等における管理体制を明確にする組織図を作成すること。

(10) 診療用放射性同位元素を集中強化治療室等において一時的に使用することについて

診療用放射性同位元素の使用に関し、「一時的に使用する場合」とは、集中強化治療病室等における医学的管理の必要のある患者に対し、診療用放射性同位元素の使用が必要かつやむを得ない場合に限り、特別に使用することを認めるという趣旨であり、集中強化治療病室等において医学的管理を必要としない患者に対して使用することは認められないこと。

また、「適切な防護措置及び汚染防止措置」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 使用時において、汚染検査に必要な放射線測定器を備え、使用後は、スミア法等の適切な方法を用いて、汚染の有無を確認すること。なお、測定結果は記録すること。

(イ) 使用時においては、汚染除去に必要な器材及び薬剤を備えること。また、測定により汚染が確認された場合は、汚染除去等を行うこと。

(ウ) 集中強化治療室等で診療用放射性同位元素により汚染されるおそれのある場所の壁、床面は、気体又は液体が浸透しにくく、平滑で腐食しにくい構造であること。

(エ) 他の患者が被ばくする放射線の線量が1週間につき100マイクロシーベルト以下になるような措置を講ずること。

(オ) 診療用放射性同位元素使用室を有すること。また、使用する診療用放射性同位元素の準備及び使用後の汚染物の処理は、診療用放射性同位元素使用室で行うこと。

(カ) 集中強化治療室等において診療用放射性同位元素を使用する場合に関し、放射線防護に関する専門知識を有する医師、歯科医師又は診療放射線技師等の中から管理責任者を選任すること。また、集中強化治療室等における管理体制を明確にする組織図を作成すること。

(11) 手術室での一時的な診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素の使用について

手術室において、診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素を一時的に使用することは従前から認められてきたところであるが、使用に当たっては、適切な防護措置及び汚染防止措置を講ずる必要があること。

この場合における「適切な防護措置及び汚染防止措置」については、(9)又は(10)において集中強化治療病室において使用する場合に必要とされる「適切な防護措置及び汚染防止措置」と概ね同様であること(この場合、(9)又は(10)中の「集中強化治療室等」を「手術室」と読み替えること。)。

(12) 放射性同位元素装備診療機器については、従前のとおり、第27条の2の規定に基づく放射性同位元素装備診療機器の基準及び第30条の7の2に定める当該放射性同位元素装備診療機器使用室の構造設備の基準に適合している場合並びに第30条の26第3項に定める基準以下である場合、専用の放射性同位元素装備診療機器使用室を設置しなくても使用することが認められること。

2 診療用放射性同位元素等の廃棄の委託(第30条の14の2)

第1項に基づく「医療法施行規則第30条の14の2第1項の規定に基づく廃棄物詰替施設、廃棄物貯蔵施設及び廃棄施設の位置、構造及び設備に係る技術上の基準(昭和57年厚生省告示第145号)」についても所要の改正が行われたので、当該告示を参照されたい。

3 患者の入院制限(第30条の15)

(1) 今回の改正は、医療技術の改良・開発等に伴い癌等の患者の生存期間の延長により、患者の延命だけではない生活の質(QOL)も問われる状況が生じてきており、例えば、診療用放射性同位元素の投与により治療を受けている患者等が、放射線治療病室から一般病室等へ退出する場合等の適切な環境を整える必要性が近年指摘されてきたことをかんがみ、一般公衆及び自発的に患者を介護する家族などの安全性に配慮した上で、放射線治療病室からの退出を可能としたものであること。

なお、診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具の使用に際して、防止法の適用を受けることに留意されたい。

(2) 第1項の規定は、従前において、「診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素により治療を受けている患者」とされていたが、今回の改正により、「診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具又は診療用放射性同位元素により治療を受けている患者」とされたこと。

なお、本項で規定する「治療を受けている患者」とは、第二(三)10(1)に示す場合における当該放射線治療を受けている患者をさすこと。

(3) 入院制限のただし書については、従前は、「適切な防護措置及び汚染防止措置を講じた上で、集中強化治療室又は心疾患強化治療室に一時的に入院させる場合はこの限りではない」とされていたが、今回の改正により、「適切な防護措置及び汚染防止措置を講じた場合にあっては、この限りではない」こととされたこと。

なお、「適切な防護措置及び汚染防止措置」の内容は、概ね次のとおりであること。

(ア) 放射線治療病室から一般病室等に退出させる場合には、他の患者が被ばくする実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルト以下であること。

(イ) 診療用放射線照射装置又は診療用放射線照射器具を体内に挿入して治療を受けている患者から、当該診療用放射線照射装置又は当該診療用放射線照射器具が脱落した場合等に伴う適切な措置を講ずること。

(ウ) 放射性医薬品を投与された患者に対しては、放射線治療病室等からの退出に際し、「放射性医薬品を投与された患者の退出基準(平成10年6月30日医薬安第70号)」に係る患者及び介護者等への指導並びに退出の記録について徹底すること。

4 管理区域(第30条の16)

(1) 第1項の管理区域については、外部放射線に係る線量、空気中の放射性同位元素の濃度又は放射性同位元素によって汚染される物の表面の密度が第30条の26第3項に定める線量、濃度又は密度(「以下「線量等」という。)を超えるおそれのある場所を管理区域と定めて、当該区域にその旨を示す標識を付さなければならないこととされたこと。

なお、これ以外の場所であって、一時的に第30条の26第3項に定める線量等を超えるおそれのある病室等については、一時的に管理区域を設ける等により、適切な防護措置及び汚染防止措置を講じて、放射線障害の防止に留意されること。

(2) 第2項に規定する「管理区域内に人がみだりに立ち入らないようにするための措置」とは、従前通り、第1項に規定する標識を付するほか、注意事項を掲示し、また、必要に応じて柵を設ける等により、放射線診療従事者等以外の者の立ち入りを制限する措置であること。

5 敷地の境界等における防護(第30条の17)

(1) 本条の規定は、従前通り、病院又は診療所の敷地内に居住する者及び病院又は診療所の近隣に居住する者等の一般人の放射線による被ばくを防止するために設けられたものであること。

(2) 放射線取扱施設等の周辺の人に対する防護については、放射線取扱施設又はその周辺に適切なしゃへい物を設ける等の措置を講ずることにより、病院又は診療所内の人が居住する区域及び敷地の境界における線量を第30条の26第4項に定める線量限度以下にしなければならないとされていること。

6 放射線診療従事者等の被ばく防止(第30条の18)

(1) 第1項に規定する「放射線診療従事者等」は、従前通り、「診療用放射性同位元素又はエックス線装置等の取扱い、管理又はこれに付随する業務に従事する者であって管理区域に立ち入る者」であること。具体的には、放射線診療に従事する又は放射性医薬品を取り扱う医師、歯科医師、診療放射線技師、看護師、准看護師、歯科衛生士、臨床検査技師、薬剤師等をいうこと。

(2) 放射線診療装置等の使用において放射線被ばくのおそれのある場所には、原則として放射線診療従事者等以外の者を管理区域に立ち入らせないこと。

また、これらの者を使用時又は使用時以外に立ち入らせる場合にあっては、実効線量が1週間につき100マイクロシーベルトを超えるおそれのある場合は、線量の測定を行う必要があること。

(3) 第2項に規定する「実効線量」は、外部被ばくによる線量と内部被ばくによる線量を分けて測定し、それらの線量の和とすること。

また、「等価線量」は、外部被ばくによる線量の測定によるものであること。

(4) 第2項第1号の規定において、従前は、「放射線測定用具」とは、体に装着して測定できる個人被ばく線量計を意味していたが、今回の改正により、名称が「放射線測定器」に統一されたこと。

この場合における「放射線測定器」のうち個人被ばく線量の測定に関する規定は、従前通り、個人被ばく線量計のような「放射線測定器」を意味すること。

なお、測定することが著しく困難な場合にのみ、計算によって算出することが認められること。

(5) 皮膚の等価線量のうち、中性子線については、1センチメートル線量当量及び70マイクロメートル線量当量の値がほぼ等しくなるため、1センチメートル線量当量の測定でことたりること(詳細は“被ばく線量の測定・評価マニュアル2000原子力安全技術センター発行”を参照されたい。)。

(6) 眼の水晶体の等価線量は、今回の改正により、「1センチメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうち、適切な方とすること」とされたことは、個人被ばく線量計から得られた外部被ばくによる1センチメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうち、放射線の種類やエネルギー等を考慮して適切と判断される方をもって評価値とする必要があること。

なお、特定エネルギーの電子線による直接被ばくという極めて特殊な場合を除けば、1センチメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうち値が大きい方を採用することで眼の水晶体の等価線量に関する合理的な範囲での安全側の評価を行うことができること。

(7) 第2項第2号に規定にする女子の個人被ばく線量の測定方法は、従前は、「妊娠不能と診断されたものを除く女子」にあっては腹部とされていたが、今回の改正により、「妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を病院又は診療所の管理者に書面で申し出た者を除く女子」にあっては腹部で測定すること。

この場合において、妊娠の意思がない旨を管理者に書面で申し出ることによって、5ミリシーベルト/3月間の実効線量限度の適用を受けないこともできることとされたが、この規定の具体的な運用に当たっては、別紙1に示す「女子の線量限度の変更に伴う書面の運用に係る留意事項」を参考にし、徹底されるよう指導されたいこと。

なお、上記以外の女子にあっては、使用の状況に応じて、胸部又は腹部のうち適切な方で測定すること。

(8) 第2項第4号に規定する外部被ばくによる測定については、従前通り、管理区域に立ち入っている間継続して行うこと。

(9) 第2項第5号に規定する内部被ばくによる線量の測定は、放射性同位元素を誤って吸入摂取又は経口摂取した場合にはその都度、診療用放射性同位元素使用室その他の放射性同位元素を吸入摂取又は経口摂取するおそれのある場所に立ち入る場合には3月間を超えない期間ごとに1回、妊娠中である女子にあっては、本人の申出等により管理者が妊娠の事実を知った時から出産までの間1月を超えない期間ごとに1回行うこと。

(10) 外部被ばく及び内部被ばくによる実効線量の算定方法については別途告示「放射線診療従事者等が被ばくする線量の測定方法並びに実効線量及び等価線量の算定方法(平成12年12月厚生省告示第398号。以下「告示第398号」という。)」に定められたので、当該告示を参照されたいこと。

7 患者の被ばく防止(第30条の19)

放射線診療を受けている患者以外の患者の被ばく線量については、従前通り、3月間につき1.3ミリシーベルトであること。

8 取扱者の遵守事項(第30条の20)

(1) 本条に掲げる事項を遵守するため、病院又は診療所における放射線管理体制を明確にし、放射性同位元素等で汚染された物を取り扱う実務者の中から責任者を選任すること。

(2) 放射性同位元素等による汚染の除去は、従前通り、診療用放射性同位元素使用室内及び放射線治療病室内の汚染を除去するために設けられた場所又は専用の洗濯場において行うこと。

(3) 第2項第2号に規定する、「診療用放射性同位元素等で治療を受けている患者には適当な標示を付すること」とは、放射線治療を受けている患者以外の者が被ばくする実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれがある場合に適用されること。

9 エックス線装置等の測定(第30条の21)

治療用の装置については、その精度を確保する必要があるため、診療用エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置及び診療用放射線照射装置の測定については、従前通り、その放射線量を6月を超えない期間ごとに1回以上放射線測定器で測定し、その結果の記録を5年間保存すること。

10 放射線障害が発生するおそれのある場所の測定(第30条の22)

(1) 第2項第1号で規定する放射線の量の測定については、今回の改正により、「1センチメートル線量当量率又は1センチメートル線量当量について行うこと。ただし、70マイクロメートル線量当量率が1センチメートル線量当量率の10倍を超えるおそれのある場所においては、70マイクロメートル線量当量率について行うこと」と規定し、3ミリメートル線量当量率を測定する義務を課さないこととしたこと。

なお、この場合において、管理区域の境界に係る線量限度等が3月間当たりで規定されたことから、場所に係る測定に適した積算型の放射線測定器で測定を行う場合が想定されるため、場所に係る測定の項目に1センチメートル線量当量が追加されたこと。

この場合において、1時間当たりの線量率を測定した場合の線量は、使用実態を考慮し、8時間/日、40時間/週、500時間/3月とし、算定して差し支えないものとすること。

また、1週間又は1月間等の一定期間における積算線量を測定した場合は、3月間当たりの線量は、1週間の積算線量の13倍、1月間の積算線量の3倍とすること。

(2) 同項第2号の放射線の量及び放射性同位元素による汚染の測定について「最も適した位置において」とは、通常使用する頻度の最も高い場所及び位置において、適切な方法により測定を行うという趣旨であること。

また、「放射線測定器等を用いて測定することが著しく困難である場合」とは、物理的に測定することが困難な場合に限定されること。この場合にのみ、計算による算出が認められること。

11 記帳(第30条の23)

(1) 第1項の規定において、エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置及び診療用放射線照射器具の「1週間当たりの延べ使用時間」の記載が必要とされる趣旨は、放射線取扱施設等の画壁等の外側の実効線量が1週間につき1ミリシーベルトの基準が担保されていることを検証するためであること。また、今回の改正により、管理区域の境界における線量限度が、1.3ミリシーベルト/3月間と規定したことから、3月間当たりの使用時間又は実効稼動負荷(使用時間(秒)×管電流)(以下「使用時間等」という。)も併せて記載することとされたいこと。

なお、放射線防護及び放射線管理の観点から、医師みずから撮影する場合であっても使用時間等を記載することが望ましいこと。

(2) 1週間及び3月間当たりの装置ごとの使用時間等は、撮影1回当たりの使用時間等が明らかである場合は、それらの累積によることとし、また、使用時間等が明らかでない場合は、次に掲げる装置について、それぞれに掲げる1回撮影当たりの実効稼動負荷とみなし、1週間及び3月間当たりの撮影回数を乗ずることにより算出して差し支えないこと。

エックス線装置

単位(mAs)

(ア) 骨撮影用(1枚当たり)

 

① 手、腕、足、幼児

10

② 頭、頸椎、胸椎、大腿骨、骨盤

50

③ 腰椎

100

(イ) 透視用(1件当たり)

 

① 消化器系

1,000

② 血管系

15,000

(ウ) CT撮影用(1スライス当たり)

300

(エ) 口内法撮影用及び歯科用パノラマ断層撮影(1枚当たり)

10

(オ) 胸部集検用間接撮影(1枚当たり)

10

(カ) その他の撮影用(1枚当たり))

 

① 胸部

② 腹部

540

(3) 第1項に規定する「同表の下欄に掲げる線量率以下」とは、エックス線装置等の使用状態における積算線量等が適切な測定法により実測された線量であること。

なお、この測定が困難である場合には、第二(四)11(1)による装置ごとの1週間及び3月間当たりの使用時間等の記載が必要であること。

(4) 第2項においては、従前は、密封された放射性同位元素を装備している照射機器のうち、診療用放射線照射器具のみ記帳の対象とされていが、改正規則においては、診療用放射線照射装置及び診療用放射線照射器具の入手、使用及び廃棄に関する事項を記載すること。

また、密封された放射性同位元素の紛失等の事故が多発していることにかんがみ、診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具及び診療用放射性同位元素の保管に関する帳簿を備え、帳簿の1年ごとの閉鎖時に、数量等の保管状況を確認すること。

なお、保管の記録は、病院又は診療所において診療用放射線照射装置、診療用放射線照射器具及び診療用放射性同位元素を保管している間継続することが望ましいこと。

12 廃止後の措置(第30条の24)

診療用放射性同位元素使用室、放射線治療病室の用途を変更する場合は、従前通り、あらかじめ本条による措置を講ずること。

なお、第2号の規定による譲渡又は廃棄の受け渡しの相手方は、第30条の14の2の規定に基づき厚生労働大臣が指定した廃棄業者に限られるので留意されたいこと。

また、第29条第3号の規定に基づき、診療用放射性同位元素を備えなくなった場合は、10日以内にその旨を記載した届出書を、30日以内に本条各号に掲げる措置の概要を記載した届出書を病院又は診療所の所在地の都道府県知事に提出すること。

13 事故の場合の措置(第30条の25)

事故による放射線障害の発生又は放射線障害のおそれがある場合は、病院又は診療所のみならず周辺社会に与える影響が大きいことにかんがみ、ただちに病院又は診療所の所在地を所轄する保健所、警察署、消防署その他関係機関に通報すること。

なお、病院又は診療所において、事故発生に伴う連絡網並びに通報先等を記載した通報基準や通報体制をあらかじめ定めておくこととされたいこと。

また、放射線診療従事者等及びそれ以外の者が放射線障害を受け、又は受けたおそれのある場合には、遅滞なく、医師による診断や必要な保健指導等の適切な措置を講ずることとされたいこと。

なお、女子(妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を管理者に書面で申し出た者を除く。)を、放射線障害を防止するための緊急を要する作業に従事させない旨徹底されたいこと。

(五) 限度に関する事項

1 濃度限度等(第30条の26)

(1) 第1項に規定する「排液中若しくは排水中又は排気中若しくは空気中の放射性同位元素の濃度限度」は、従前通り、「3月間についての平均濃度」で規制されていること。

(2) 第2項に規定する空気中の放射性同位元素の濃度の限度については、従前は、「8時間についての平均濃度」で規制されていたが、今回の改正により、「1週間についての平均濃度」に改められたこと。

(3) 第3項に規定する、第30条の16第1項に規定する管理区域に係る外部放射線の線量及び空気中の放射性同位元素の濃度は、次に掲げる規定に改められたこと。

(ア) 第1号の外部放射線については、実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルト。

(イ) 第2号の空気中の放射性同位元素の濃度については、3月間についての平均濃度が空気中の放射性同位元素の濃度限度の10分の1。

(4) 第4項については、第30条の17に規定する線量限度は、従前の通り病院又は診療所内の人が居住する区域及び病院又は診療所の敷地の境界における実効線量が3月間につき250マイクロシーベルトとされていること。

2 線量限度(第30条の27)

従前の本条に規定する放射線診療従事者等の実効当量線量及び組織線量当量限度は、今回の改正により、用語を実効線量限度及び等価線量限度に改められたこと。

なお、それぞれの限度は次のとおりであること。

(1) 第1項に規定する実効線量限度は、以下のとおり。

(ア) 改正規則において追加された第1号の「平成13年4月1日以後5年後ごとに区分した各期間につき100ミリシーベルト」とは、5年間のブロック管理で規制することであること。具体的には、放射線診療従事者等の使用開始時期に関係なく、平成13年4月1日から平成18年3月31日、平成18年4月1日から平成23年3月31日、という期間ごとで区切られたブロック管理であること。

(イ) 第3号の規定については、従前の女子の腹部に規定された組織線量当量については、今回の改正により、妊娠していない女子の腹部で測定される外部被ばくの線量は、実効線量で評価されることとされたこと。

この場合における当該女子の実効線量限度は、「女子(妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を管理者に書面で申し出た者を除く。)については、前号に規定するほか、3月間につき5ミリシーベルト」とされたこと。

なお、3月間とは、従前通り4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする3月間のことであること。

(ウ) 第4号の規定においては、今回の改正により、妊娠中である女子の実効線量として、「本人の申出等により管理者が妊娠の事実を知ったときから出産までの間につき、内部被ばくについて1ミリシーベルト」と新たな規定が設けられたこと。

本号の規定は、受胎産物の放射線に対する感受性が高いことを考慮して設けられた規定であるが、内部被ばくによる線量は、実効線量で評価する旨徹底されたい。

(2) 第2項に規定する等価線量限度は、以下のとおりとされたこと。

(ア) 第1号に規定する「眼の水晶体については、4月1日を始期とする1年間につき150ミリシーベルト」については、従前のとおりである。

ただし、女子(妊娠する可能性がないと診断された者及び妊娠する意思がない旨を管理者に書面で申し出た者を除く。)を除く、放射線障害を防止するための緊急を要する作業に従事した放射線診療従事者等(以下「緊急放射線診療従事者等」という。以下同じ。)の眼の水晶体に対する等価線量限度(300ミリシーベルト)が新たに規定されたこと。

(イ) 第2号については、従前の「眼の水晶体以外の組織」で規定していた対象組織が、「皮膚」に変更されたこと。また、皮膚の等価線量限度は、4月1日を始期とする1年間につき500ミリシーベルト。

なお、緊急放射線診療従事者等の皮膚に対する等価線量限度(1シーベルト)が新たに規定されたこと。

(ウ) 第3号の規定については、今回の改正により、妊娠中である女子の腹部表面については、本人の申出等により管理者が妊娠の事実を知ったときから出産までの間につき、2ミリシーベルトとされたこと。

なお、腹部表面の等価線量は、腹部表面における1センチメートル線量当量で評価すること。

(六) 線量等の算定等

1 放射線の線量等の評価方法について

放射線の量は、測定された実測値に基づく評価方法と、計算により算定された値に基づく評価方法があるが、それぞれの評価法に関し、考慮すべき点を列挙するので参考にされたい。

(1) 放射線測定器による実測値に基づく放射線の量の評価方法

放射線測定器には、場所に係る線量を測定するものと個人の被ばく線量を測定するものがあるが、それぞれの放射線測定器を校正する換算係数が異なることに留意すること。このことから、場所に係る線量の測定に用いる放射線測定器は、JIS規格に基づいて適正に校正されたものを使用することを原則とすること。

ただし、標準線源等で定期的(最低1年間を超えない期間)にチェック又はメーカーで性能等が確認された測定器も、校正された放射線測定器に準ずるとみなして差し支えないこと。この場合においては、放射線測定器のチェック等を実施した年月日及びチェック事項を記録すること。

なお、測定に際しての注意点及び測定結果の取り扱いについて次に示すので参考にされたいこと。

(ア) 測定開始時における放射線測定器の正常動作等の確認について

① 測定器の外観により破損等を確認すること。

② 電池の消耗をチェックすること。

③ ゼロ調整、時定数の切替及び感度切替等を行って、適正に動作することの確認を行うこと。

(イ) 放射線取扱施設等における放射線量及び放射性同位元素の使用量が最大となる時間帯で測定することが望ましいこと。

(ウ) 測定に際し、従前通り線量率測定を行うことも可能であるが、改正規則では管理区域境界に係る線量限度等が3月間当たりで規定されたことから、1週間又は1月間等の一定期間における積算線量による測定も考慮されること。

(エ) 測定結果等の記録については、測定年月日、測定場所、測定値及び1週間及び3月間当たりの線量(測定値から積算線量を算定した場合の根拠)、測定に用いた測定器の型式、測定器の動作確認を行った事項、測定者の氏名及び管理責任者の確認について記載されていること。

(2) 計算により線量等を算定するに当たって考慮されるべきことについて

放射線取扱施設等の線量の算定に当たって、次に列挙することを考慮するものとされたい。

(ア) 線量の算定に用いる計算方法及びデータは、(六)2以後に示した方法を原則とするが、これ以外であっても、学会誌等(海外の学会誌も含む。)で公表された計算方法及びデータ等を用いてもよいこととすること。

なお、学会誌等で公表された根拠資料は、届出に際して添付することが望ましいこと。

(イ) 線量の算定評価に用いた使用量及び保管量等が、放射線取扱施設等において実際に使用された量を担保していることを確認できるよう、使用簿及び保管簿を適切に整備すること。

また、使用簿等の記載に際し、計算に用いた線量、使用時間等の条件を満たしていることを明確に示しておくこと。

2 放射線取扱施設等及び管理区域の境界における線量等の算定

(1) 線量の算定に当たっては、放射線診療装置等の使用状態に従い、使用時、保管時又は使用時及び保管時の合計の線量を計算すること。また、内部被ばくがある場合は、その数値を加算すること。新たに放射線診療装置等を備えようとする場合は、計算によること。なお、使用時及び保管時の線量の算定は以下のように行うこと。

(ア) 使用時における線量は、次のように算出すること。

① 第30条の23の規定により記帳されている放射線取扱施設にあっては、記帳された1週間当たりの延べ使用時間数に線量率を乗じて算出すること。また、当該施設に係る管理区域にあっては3月間当たりの延べ使用時間数に線量率を乗じて算出すること。

なお、計算に用いる時間数は、時間数を定めて届出する場合はその時間数とし、それを定めない場合は、年間の実労働時間を考慮した500時間(以上)/3月間(40時間(以上)/1週間)とすること。

また、1週間当たりで示されている時間数を3月間当たりに換算する場合は、13倍するものとする。

② 実効稼働負荷の設定に当たっては、エックス線装置ごとに届出された3月間当たりの延べ実効稼働負荷を用いて評価すること。

③ 診療用放射性同位元素使用室に係る管理区域にあっては、3月間の最大使用予定数量を使用するものとして算出すること。

④ 複数の放射線取扱施設に係る管理区域にあっては、各施設ごとの3月間当たりで算出した線量の和とすること。

(イ) 保管時における線量などの評価は、次のように算出すること。

① 3月間当たりの保管時間数は、保管時間数を定めて届出する場合はその時間数とし、定めていない場合は、年間の実労働時間を考慮した時間数から使用時間数を減じたものとすること。

② 複数の放射線取扱施設に係る管理区域にあっては、各施設の保管時間数に当該施設の線量率を乗じて算出した線量を合計すること。

(2) 線量の算定評価は、告示第398号を参考にされたい。

3 病院又は診療所の敷地の境界等における線量の算定

線量の算定に当たっては、従前のとおり病院等の敷地の境界等における3月間当たりの全ての放射線診療装置等の使用時及び保管時の線量を合計するものとする。この場合の3月間とは、4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする3月間とすること。

なお、算定に当たって用いる3月間の保管時間数は、時間数を定めて届出する場合はその時間数とし、それを定めず届出する場合は、2,184時間から使用時間数を減じたものとすること。

4 排水・排気等に係る放射性同位元素の濃度の算定

(1) 第30条の11第1項第3号ロ、第30条の18第1項第4号及び第30条の22第2項第2号の規定に基づく、人が常時立ち入る場所の空気中放射性同位元素の濃度の算定に当たっては、次式により、核種ごとに1週間の平均濃度を求め、次に当該平均濃度を規則別表第3の第2欄に示す濃度限度注1)で除して核種ごとの割合を求め、これらの割合の和を算出すること。

(1週間の平均濃度)=((1日の最大使用予定数量)×(1週間当たりの使用日数)注2)×(飛散率)注3)×(従事係数)注4))/(1週間の総排気量)

(2) 第30条の11第1項第2号イ及び第30条の22第2項第2号の規定に基づく、排水に係る放射性同位元素の濃度の算定に当たっては、次式により、核種ごとの3月間の平均濃度を求め、次に当該濃度を規則別表第3の第3欄に示す濃度限度注1)で除して核種ごとの割合を求め、これらの割合の和を算出すること。

なお、この割合が1を超える場合にあっては、従前通り希釈槽の希釈能力を考慮しつつ、最高10倍の希釈を行うこととして最終的な割合の和を算出して差し支えないこと。

(3月間の平均濃度)=(貯留時の放射能量)/(貯留槽1基の貯留量)=((1日の最大使用予定数量)×(混入率)注5)×[(1-exp(-λt1))/λ]×exp(-λt2))/(貯留槽1基の貯留量)

λ:核種の崩壊定数(/日)(=0.693/T)

T:核種の物理的半減期(日)

t1:(貯留槽1基の満水期間当たりの1日の最大使用予定数量の使用日数)(日)

なお、t1は次式により求め、小数点以下を切り上げた値とする。

t1=((3月間の最大使用予定数量)÷(1日の最大使用予定数量))/(91(日)÷(貯留槽1基の満水日数(日)))

t2:放置期間(日)

ただし、一定間隔の投薬等により実施される放射性同位元素内用療法に用いる核種の濃度の算定に当たっては、核種の種類、使用予定数量及び使用間隔を予め定めて届出を行う場合に限り、次式を用いて3月間の平均濃度を算定しても差し支えないこと。この場合において、当該算定式を用いて濃度の算定を行う病院又は診療所においては、放射性同位元素内用療法の実施に当たって、届出を行った諸事項を遵守するものとし、実施状況に関する記録を5年間保存すること。

(放射性同位元素内用療法に用いる核種の3月間の平均濃度)=(貯留時の放射能量)/(貯留槽1基の貯留量)=((1日の最大使用予定数量)×(混入率)注5)×[(1-exp(-λ×t1×tM))/(1-exp(-λtM))]×exp(-λt2))/(貯留槽1基の貯留量)

λ:核種の崩壊定数(/日)(=0.693/T)

T:核種の物理的半減期(日)

t1:(貯留槽1基の満水期間当たりの1日の最大使用予定数量の使用日数)(日)

なお、t1は次式により求め、小数点以下を切り上げた値とする。

t1=((3月間の最大使用予定数量)÷(1日の最大使用予定数量))/(91(日)÷(貯留槽1基の満水日数(日)))

t2:放置期間(日)

tM:一定間隔の投薬等により実施される放射性同位元素内用療法に用いる核種の使用間隔(日)注6)

(3) 第30条の11第1項第3号イ及び第30条の22第2項第2号の規定に基づく、排気に係る放射性同位元素の濃度の算定に当たっては、次式により、核種ごとに3月間の平均濃度を求め、次に当該平均濃度を規則別表第3の第1欄に掲げる核種について第4欄に示す濃度限度注1)で除して核種ごとの割合を求め、これらの割合の和を算出すること。

(3月間の平均濃度)=((3月間の最大使用予定数量)×(飛散率)注3)×(透過率)注3))×3月間の総排気量注6)

注1) 同一核種につき化学形が不明な場合にあっては、規則別表第3の第1欄により使用核種中最も厳しい値となる化学形等の濃度限度を用いること。

ただし、医薬品、医薬機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に基づいて承認されている放射性医薬品についての空気、排水及び排気濃度の算定に当たっては、当該医薬品核種の化学形の濃度限度を用いても差し支えないこと。

注2) 診療用放射性同位元素使用室においては、1週間当たりの使用日数とすること。

ただし、放射線治療病室については、使用条件が注4)の場合にあっては、1週間の使用日数に1日が適用できること。

注3) 飛散率及び透過率は、原則として従前通り次のとおりとする。