添付一覧
○眼球提供者(ドナー)適応基準について
(平成一二年一月七日)
(健医発第二五号)
(各眼球あっせん機関の長あて厚生省保健医療局長通知)
眼球組織を用いた移植医療のうち角膜移植については、「角膜移植における提供者(ドナー)適応基準について」(平成一一年四月一三日健医発第六六五号)に基づき提供者となることができるかどうかを判断しそのあっせんが行われてきたところであるが、今般、強膜移植についてもそのあっせんを行い移植に利用する体制を整備するために同様の基準を策定する必要が生じたことから、公衆衛生審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会における了承を踏まえ、角膜移植に係る基準を強膜移植にも適用することとしたところである。
このため、眼球のあっせん一般に係るものとして別添のとおり眼球提供者(ドナー)適応基準を新たに定めることとしたので、以後、眼球のあっせんを行うに当たっては、本基準を遵守されたい。なお、左記のことに留意されたい。
記
(一) 平成一一年四月一三日付け健医発第六六五号「角膜移植における提供者(ドナー)適応基準について」は、本通知の施行に伴い廃止すること。
(二) 本基準については、適宜(少なくとも年一回)見直すこととしていること。
別添
眼球提供者(ドナー)適応基準
平成一二年一月七日
一 眼球提供者(ドナー)となることができる者は、次の疾患又は状態を伴わないこと。
(一) 原因不明の死
(二) 全身性の活動性感染症
(三) HIV抗体、HTLV―一抗体、HBs抗原又はHCV抗体などが陽性
(四) クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症等の遅発性ウイルス感染症、活動性ウイルス脳炎、原因不明の脳炎、進行性脳症、ライ(Reye)症候群、原因不明の中枢神経系疾患
(五) 眼内悪性腫瘍、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫等の悪性リンパ腫
二 次の疾患又は状態を伴う提供者(ドナー)からの眼球の提供があった場合には、移植を行う医師に当該情報を提供すること。
(一) アルツハイマー病
(二) 屈折矯正手術既往眼
(三) 内眼手術既往眼
(四) 虹彩炎等の内因性眼疾患
(五) 梅毒反応陽性
付記一 二の(一)のアルツハイマー病については、クロイツフェルト・ヤコブ病と症状が類似していることから、鑑別診断を慎重に行うこと。
付記二 二の(四)の梅毒反応陽性については、提供者(ドナー)が当該状態であっても、提供された眼球より強角膜移植片が作成された場合であって、かつ、当該移植片が三日以上四℃で保存されたものであるときは、感染力がないことに留意すること。また、その場合は、当該移植片につき当該方法で保存したものである旨を併せて移植を行う医師に情報提供すること。
付記三 全層角膜移植に用いる場合は、角膜内皮細胞数が2000個/mm2以上であることが望ましい。
付記四 上記の基準は、適宜(少なくとも年一回)見直されること。
別紙
「クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い」の取扱い
(1) 臓器あっせん機関は、臓器提供施設の医師に臓器提供者がクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性が認められるかどうかを確認し、その可能性が認められるとされた場合には、当該提供者の臓器を移植に用いない。
*クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性とは、病理診断による確定診断だけではなく、臨床診断を含む(参考)。
(2) 臓器あっせん機関は、臓器提供施設の医師等に協力を求め、以下に示すような、臓器提供者の病歴、海外渡航歴及びその血縁者の病歴等を詳細に把握するよう努め、下記①~⑤に該当する提供者からの臓器の提供は見合わせること。
①ヒト成長ホルモンの投与を受けた者
②硬膜移植歴がある者
③角膜移植歴がある者
④クロイツフェルト・ヤコブ病およびその類縁疾患の家族歴がある者
⑤クロイツフェルト・ヤコブ病およびその類縁疾患と医師に言われたことがある者
(3) 臓器あっせん機関は、下表に掲げる欧州等渡航歴を有する者及びヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴を有する者からの臓器の提供は、原則として見合わせるものの、移植医療における緊急性、代替性等にかんがみ、当分の間、臓器提供者が下表に掲げる欧州等渡航歴を有する場合であっても、臓器あっせん機関は、レシピエント候補者の検索を行うこととし、当該レシピエント候補者が、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)並びに移植に伴うその感染リスク及び移植後の留意点について移植医から適切な説明を受けた上で、当該臓器提供者からの臓器の提供を受ける意思を明らかにしている場合にあってはこの限りではない。
また、この取扱いにより移植が行われる場合には、臓器あっせん機関は、当該移植医に対して、vCJDの発症に関する当該レシピエントのフォローアップを十分行うよう促すこと。
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滞在国 |
通算滞在歴 |
滞在時期 |
A |
① |
英国 |
1か月以上 (1996年まで) 6か月以上 (1997年から) |
1980年~2004年 |
② |
アイルランド、イタリア、オランダ、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、ポルトガル、サウジアラビア |
6か月以上 |
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③ |
スイス |
6か月以上 |
1980年~ |
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B |
① |
オーストリア、ギリシャ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ルクセンブルグ |
5年以上 |
1980年~2004年 |
② |
アイスランド、アルバニア、アンドラ、クロアチア、サンマリノ、スロバキア、スロベニア、セルビア、モンテネグロ、チェコ、バチカン、ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、マルタ、モナコ、ノルウェー、リヒテンシュタイン、ルーマニア |
5年以上 |
1980年~ |
(注1) Bに掲げる国の滞在歴を計算する際には、Aに掲げる国の滞在歴を加算するものとする。
(4) 臓器あっせん機関は、移植医が患者に対して移植に伴う感染のリスクを十分説明するよう促すこと。
<参考>クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性
○ クロイツフェルト・ヤコブ病には、スクリーニング方法はない。このため、臓器提供者(ドナー)に対する問診を徹底して行い、クロイツフェルト・ヤコブ病の病因プリオンに感染した可能性があるかどうかを慎重に判断する必要がある。
○ クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した可能性は、以下を参考に行うこととする。
なお、詳細については、「難病の診断と治療指針」(六法出版社)を参照されたい。
<確定診断>
基本的には病理診断であるが、現在では異常プリオン蛋白の証明が必要である。
異常プリオン蛋白の証明には、免疫染色法またはウエスタンブロット法で行う。
<臨床診断>
・確実例:特徴的な病理所見を有する例で、ウエスタンブロット法や免役染色法で脳に異常プリオン蛋白の検出しえたもの。
・ほぼ確実例:病理所見がない症例で、進行性痴呆を示し、脳波でPSDを認める。さらに、ミオクローヌス、錐体路・錐体外路障害、小脳症状、視覚異常、無動・無言状態のうち2項目以上を示す症例。
・疑い例:ほぼ確実例と同じ臨床症状を呈するが、PSDを欠く症例。
別紙
狂犬病の取扱い
(1) 臓器あっせん機関は、臓器提供者の過去7年以内の海外渡航歴、及び海外における哺乳動物による咬傷等の受傷歴を確認し、海外渡航歴及び受傷歴のある場合には、移植医に対して、狂犬病及び移植に伴うその感染リスク等について、患者に対して十分に説明するよう促すこと。
(2) 上記(1)の場合において移植が行われたときは、臓器あっせん機関は、移植医に対して、狂犬病の発症に関する患者のフォローアップを十分行うよう促すこと。