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○臓器移植と検視その他の犯罪捜査に関する手続との関係等について

(平成九年一〇月八日)

(健医疾発第二〇号)

(各都道府県・指定都市・中核市衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局エイズ疾病対策課長通知)

臓器の移植に関する法律(平成九年法律第一〇四号。以下「法」という。)第七条において、医師は、死体(脳死した者の身体を含む。)から臓器を摘出しようとする場合において、当該死体について刑事訴訟法(昭和二三年法律第一三一号)第二二九条第一項の検視その他の犯罪捜査に関する手続が行われるときは、当該手続が終了した後でなければ、当該死体から臓器を摘出してはならないこととされたところである。

また、臓器移植と検視その他の犯罪捜査に関する手続に関しては、平成九年一〇月八日付け健医発第一三二九号保健医療局長通知「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の制定について」の別紙「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)」(以下「指針」という。)においても示されたところであるが、犯罪捜査に関する活動に支障を生ずることなく臓器の移植の円滑な実施を図るという観点から、その具体的な取扱いについては左記の点についても御留意されるよう、貴管下関係者に対し周知願いたい。

なお、本通知の内容については、関係省庁とも協議済みであるので、念のため申し添える。

また、平成三年四月一五日付け厚生省保健医療局疾病対策課長通知「角膜及び腎臓の移植に関する法律第四条の施行について」は、本通知の施行に伴い廃止する。

○臓器移植と検視その他の犯罪捜査に関する手続との関係等について

平成 9年10月 8日 制 定

平成22年 7月17日一部改正

第1 検視等の取扱い

1 指針の第12の5の「法第6条第2項に係る判定を行おうとする場合」とは、医師が、患者の状態について、法に規定する脳死判定を行ったとしたならば、脳死とされる状態にあると診断した場合(臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年厚生省令第78号)第2条第1項に該当すると認められる者(同項各号のいずれかに該当する者を除く。)について、同条第2項各号の項目のうち第1号から第4号までの項目のいずれもが確認された場合)であって、本人が脳死判定に従う意思がないことを表示しておらず、かつ、次のいずれかに該当することを確認した時点をいうものであること。

ア 本人が臓器を提供する意思を書面により表示し、かつ、家族が摘出及び脳死判定を拒まないとき又は家族がいないとき

イ 本人が臓器を提供する意思がないことを表示しておらず、かつ、家族が摘出及び脳死判定を行うことを書面により承諾しているとき

2 指針の第12の5の「所轄警察署長」とは、脳死判定が行われる医療機関の所在地を管轄する警察署長をいうものであること。ただし、個別の事案においては、警察から他の警察署長を連絡先として示されることがあるので、その場合にはその警察署長を連絡先とすること。

3 指針の第12の5の「検視その他の犯罪捜査に関する手続」(以下「検視等」という。)とは、検視、実況見分、司法解剖(検証許可状又は鑑定処分許可状を得て行われる解剖をいう。以下同じ。)、警察官が国家公安委員会規則に基づいて行う死体見分等の手続をいうものであること。

4 指針の第12の5の捜査機関に対する「必要な協力」とは、次の(1)から(4)をいうものであり、医師においては、臓器移植ネットワーク等の臓器のあっせんに係る連絡調整を行う者(コーディネーター)の協力を得て、これらの便宜を図ること。

なお、脳死した者の身体に対して行う検視等の犯罪捜査に関する活動に支障が生ずることのないようにするため、捜査機関にとってはこのような協力が不可欠とされているので、かかる場合においては、医師は、臓器移植の円滑な実施のためにも、捜査機関との連携を密にするよう努められたいこと。

(1) 捜査機関から検視等を行う旨の連絡を受けた場合には、当該捜査機関に対し、脳死判定予定日時及び場所、連絡責任者(医療機関の責任者又はこれに代わる者)の氏名、住所及び電話番号等必要な事項を連絡すること。

(2) 脳死判定及び死亡の事実を捜査機関が確認することに資するため、本人が脳死判定に従う意思を書面により表示している場合においては、当該書面、臓器を提供する意思を書面により表示している場合においては、当該書面、家族が脳死判定を行うこと及び臓器を摘出することを拒まないこと又は承諾することを記載した脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書、医師による法第6条第5項に規定する判定が的確に行われたことを証する書面、死亡診断書等を捜査機関に示し、それらの書面の写しを提供すること。

(3) 捜査機関が脳死した者の身体について検視等を行う場合には、当該捜査機関に対し、検察官、警察官等が待機する場所の提供や当該手続を行うため患者の病室等へ入室するに当たっての準備等当該手続を行うための便宜を図ること。

(4) 捜査機関から、検視等への立会い、生命維持装置等の取扱い、脳死した者の身体を検視等に必要な限度で動かすなど検視等を行うに当たって必要な補助を求められた場合にこれに協力すること。

第2 司法解剖等との関係

1 捜査機関において司法解剖を行う場合には、当該解剖は心臓停止後に行うものとしていること。

捜査機関による司法解剖が行われる場合には、当該解剖が終了するまで臓器の摘出はできないことから、通例、眼球以外の臓器を臓器移植のために摘出することは困難であること。

なお、捜査機関から司法解剖を行う旨の連絡を受けた場合は、当該捜査機関に当該解剖の対象となる者の心臓が停止した旨を連絡すること。

2 法第6条第2項に係る判定が行われ、その後移植に適さない等の理由により移植術のための臓器摘出が行われない場合においては、捜査機関は従来どおり心臓停止を待って検視等を行うものとしていること。

3 医師は、死体(脳死した者の身体を含む。)(確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体を除く。)から臓器の摘出を行おうとする場合においては、当該死体に対して検視その他の犯罪捜査に関する手続が行われるときは、その手続が終了した旨の連絡を捜査機関から受けた後でなければ、臓器を摘出してはならないこと。

4 指針の第5のとおり、虐待が行われた疑いのある児童が死亡した場合には、臓器の摘出は行わないこと。

このため、医療機関内の倫理委員会等の委員会で児童について虐待が行われた疑いがなく当該児童から臓器の摘出が可能であると判断した場合であっても、医師は、第1の4に規定する捜査機関に対する必要な協力を行うなどする中で、死亡した児童に対して司法解剖が行われるなど虐待が行われたとの疑いが生じた場合には、臓器の摘出は見合わせること。

第3 その他

前記のほか、臓器移植の円滑な実施を図るため、臓器提供施設においては、平素から関係捜査機関との連絡体制を確立するなど当該機関との連絡を密にし、当該機関の行う検視等に協力するとともに、犯罪捜査に関する手続の支障とならないよう留意すること。