添付一覧
○臓器提供者確保事業の実施について
(平成七年五月二四日)
(健医発第六八六号)
(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
臓器移植ネットワークについては、平成四年一月の脳死臨調の答申を踏まえ、「臓器移植ネットワークのあり方等に関する検討会」、「日本臓器移植ネットワーク準備委員会」等において検討が行われてきているところである。
平成七年度においては、これまでの議論を踏まえ、腎移植の円滑な推進を図るため既存の腎移植ネットワークの見直しを行い、移植情報施設を移植実施施設から分離する、移植情報の流れは全国において一本化する等を基本的な考え方として、より公平で適正な腎移植ネットワークを整備することとし、今後はこの新たな体制で腎提供者確保事業を実施していくこととした。
新たな腎移植ネットワーク事業については、別添1「臓器提供者確保事業実施要綱」、別添2「都道府県腎移植コーディネーター設置要領」及び別添3「HLA検査センター運営要領」により実施することとしている。
腎移植ネットワークの運営は、「臓器提供者確保事業実施要綱」に基づき社団法人日本腎臓移植ネットワークにおいて行うものとし別添4のとおり通知したところであるが、各都道府県においては、引き続き腎移植及び角膜移植に関する普及啓発についての充実強化、腎移植の円滑な実施を図るために必要な「都道府県腎移植コーディネーター設置要領」に基づく都道府県腎移植コーディネーターの設置施設の選定及び適任者の調整等についてご尽力願い、なお一層の臓器提供者確保事業の推進をお願いする。
また、HLA検査センターの指定については、別途、各施設の長あて通知することとしているので、指定後改めてお知らせする。
なお、これまで腎移植を推進してきた地方腎移植センター及び都道府県腎移植推進・情報センターは、本年三月三一日をもってその役割を終えたことに伴い、平成元年一一月一〇日健医発第一、四一三号「都道府県腎移植推進・情報センター施設設備整備事業実施要綱について」、平成元年一一月一〇日健医疾発第三四号「都道府県腎移植推進・情報センターについて」の各通知については廃止する。
〔別添1〕
臓器提供者確保事業実施要綱
1 目的
この事業は、腎移植について、国民に対する普及啓発活動、腎移植情報システムの整備、各種委員会の開催、腎移植コーディネーター(連絡調整者)の設置、移植適合者の検索選定処理、その他公平で適正な腎移植ネットワークの整備を行うとともに、都道府県腎移植コーディネーター、HLA検査技師の設置及び人工透析技術者の研修に要する経費等への助成を行い、また、角膜移植について、普及啓発活動、角膜提供申込者の登録及び各ブロックにおけるアイバンク広域活動連絡会に要する経費への助成を行い、もって慢性腎不全患者に対する腎移植及び視力障害者に対する角膜移植の円滑な推進を図ることを目的とする。
2 事業の実施主体
この事業は、社団法人日本腎臓移植ネットワークが行うものとする。
3 事業の内容
(1) 腎移植に関する普及啓発事業
ア 腎移植について、都道府県、保健所及び医療機関等の協力を得て広く国民に対して普及啓発を行う。
イ ドナーカード(意思表示カード)については、腎提供の意思を表しやすい自由配布制によるドナーカード(基本的デザインの統一されたもの)を作成し、都道府県、保健所及び市町村等の協力を得て普及を図る。
(2) 日本腎臓移植ネットワーク運営管理事業
日本腎臓移植ネットワークを運営管理するため、中央にネットワーク全体の運営管理をする本部(情報システムを含む。)を、また、北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国四国、西日本の七つのブロックにブロックセンター(地方別センター)を設置し、以下の事業を行うことにより、公平で適正な腎移植ネットワークの推進を図る。
ア 本部における事業
(ア) 本部においては、移植施設の登録、各種委員会の運営等、ネットワーク全体の運営管理を行う。
(イ) 国立佐倉病院内に設置されたホストコンピューターを利用し、腎移植情報システムの運用、移植に関する情報・データーの管理を行う。
(ウ) 本部に、学識経験者等から構成された企画管理委員会を設置し、各ブロックとの連絡調整等ネットワーク運用に関する諸問題について審議・決定を行う。
(エ) 本部に、内科医、救急医療に携わる医師、移植医、腎移植コーディネーター、法律家を含む有識者等から構成された中央評価委員会を設置し、各ブロックの地域評価委員会からの報告を受けて評価を行うとともに、ブロックを越えた事例については主としてレシピエント(移植希望者)の選択の過程等について自ら評価を行い、問題事例については審査委員会に送付する。
(オ) 本部に、関係医学会を代表する者、及び有識者で構成され、独立した機能を有する審査委員会を設置し、腎移植にかかる症例のうち問題事例について審査する。
(カ) 移植施設については、移植登録施設基準を設け、審査の上本ネットワークに登録するものとする。
(キ) 本部に、腎移植に関する情報の管理、分析等を行うネットワーク情報管理者を設置する。
(ク) 腎移植に関するコーディネート業務の適正かつ円滑な実施を図るため、腎移植コーディネーターの養成及び資質の向上を目的として、移植医療に関する技術、腎移植コーディネーターの実務等コーディネート活動に必要な事項について研修を実施する。
イ ブロックセンターにおける事業
(ア) ブロックセンターは、ブロック内の都道府県、移植関係医療機関、都道府県腎移植コーディネーター等の協力を得て、腎移植体制の整備を図る。
(イ) ブロックセンターにコンピューターを設置し、国立佐倉病院内に設置されたホストコンピューターと通信回線により接続することにより、移植希望者の登録・情報更新及び提供腎発生時に別紙の基準によるレシピエント候補者の検索及び選定、腎摘出チームの決定等を行う。
(ウ) 各ブロックセンターに、ブロックセンターを代表するブロックセンター長(移植を行わない医師)を置き、腎移植コーディネーターの指導・監督、都道府県腎移植コーディネーターの指導、その他ブロックセンター業務の統括を行う。また、医学面からの助言を行う医師を確保する。
(エ) 各ブロックセンターに、次のすべての要件を備えた者をチーフ(主任)腎移植コーディネーターとして設置し、ブロックセンター長の指導下に移植コーディネーター間の連絡調整、レシピエントの登録・情報更新、提供腎発生時におけるレシピエント候補者の検索選定等の業務を行う。
a 医療有資格者又は四年制大学を卒業した者
b 腎移植コーディネーターの経験が三年以上又は経験が二年以上でかつ提供に関わった経験を一〇例以上有する者
c 腎提供の承諾について五例以上の経験を有する者
d 厚生省が指定する研修を受講し、別に実施するコーディネーター試験に合格した者
(オ) 関東甲信越ブロックセンター及び東海北陸ブロックセンターに、次のすべての要件を備えた者をサブ(補助)腎移植コーディネーターとして設置し、チーフ腎移植コーディネーターの指導下に移植コーディネーター間の連絡調整、レシピエントの登録・情報更新、提供腎発生時におけるレシピエント候補者の検索選定等の業務を行う。
a 医療有資格者又は四年制大学を卒業した者
b 厚生省が指定する研修を受講し、別に実施するコーディネーター試験に合格した者
(カ) ブロックセンターに、内科医、救急医療に携わる医師、移植医、腎移植コーディネーター、法律家を含む有識者等から構成された地域評価委員会を設置し、移植実施関係資料に基づき、ブロック内で実施された移植例についてレシピエントの選択等の評価を行う。
(3) 都道府県腎移植コーディネーター設置助成事業
都道府県における腎移植の円滑な実施を図るため、都道府県、腎バンク、救命救急センターその他の医療施設(移植部門を除く。)が、「都道府県腎移植コーディネーター設置要領」により行う腎移植コーディネーター設置事業に対して助成を行う。
(4) HLA検査技師設置等助成事業
ア 腎移植のためのHLA検査等を円滑に実施するため、「HLA検査センター運営要領」により組織適合性検査等を行う施設として厚生省から指定されたHLA検査センターに対し、検査技師設置のための助成を行う。
イ 腎移植のための組織適合性検査に使用するHLA検査トレイの作成及び設備整備に要する経費に対して助成する。
(5) ファックス設置助成事業
提供腎発生時の連絡調整活動を迅速かつ円滑に実施するため、救命救急センター等移植関係機関のファックス設置に対して助成を行う。
(6) 腎摘出協力病院助成事業
腎摘出病院で使用する死体腎摘出時の消耗品等の実費に対して助成を行う。
(7) 人工透析技術者研修助成事業
財団法人腎研究会が人工透析技術者の医学知識、技術の向上を図るため、次の事項に基づいて行う研修事業に対して助成を行う。
ア 研修の対象者
透析医療機関において、研修終了後引き続き透析業務に専ら従事する医師、看護婦、臨床検査技師、衛生検査技師及び臨床工学技士であって次の要件を備える者のうち、所属施設の長が推薦した者とする。
(ア) 臨床経験が二年以上の医師
(イ) 受講時において、透析室勤務の経験が三か月以上の看護婦(士)
(ウ) 受講時において、透析室勤務の経験が三か月以上の臨床検査技師、衛生検査技師及び臨床工学技士
イ 研修項目
講義及び実習
(8) 角膜提供者確保助成事業
財団法人日本眼球銀行協会が行う次の事業に対して助成を行う。
ア 都道府県、保健所及び医療機関等の協力を得て、広く国民に対して角膜移植に関する普及啓発を行う。
イ 角膜提供申込者の登録
角膜提供希望登録者に対して提供発生時の連絡先を明記したドナーカードを作成し、登録者に交付する。
ウ 角膜広域活動連絡会の開催
各ブロックの広域的な角膜あっせん体制を整備するために、各ブロックのアイバンクにおいて、ブロック内の関係都道府県及びアイバンクから構成された角膜広域活動連絡会を開催し、角膜移植推進方策に関する協議・検討を行う。
(別紙)
腎臓のレシピエント選択基準、ドナー適応基準
Ⅰ レシピエントの選択基準
下記の基準により選択するものとするが、この基準は今後実際に行われる移植例を評価したうえで適宜見直しを行う。
1)ABO式血液型の一致
2)HLA検査の適合度
順位 DR座の適合数 A座及びB座の適合数
1 2 4 →全国シッピングの対象
2 2 3
3 2 2
4 2 1
5 2 0
6 1 4
7 1 3
8 1 2
9 1 1
10 1 0
11 0 4
12 0 3
13 0 2
14 0 1
15 0 0
3)HLA型の適合度の順位が同一の場合は、待機期間の長い順
4)リンパ球直接交叉試験(全リンパ球あるいはTリンパ球)陰性
○ 臓器搬送(シッピング)に当たっては、さらに以下の点を考慮する。
① 全国シッピングはHLA型6抗原一致の場合とするが、遠隔地のレシピエントについては臓器搬送に要する時間を配慮する。PRA検査が可能な場合はPRA検査陰性を満たすこととする。
② 全国シッピング対象以外の、HLA型の適合度の順位が同一であって、かつ、待機期間の長さが同等である場合には、臓器搬送に要する時間、医学的条件等の事項に配慮する。
(注) 1年以内にレシピエントの登録情報が更新されていることを必要条件とする。
Ⅱ ドナーの適応基準
1)以下の疾患または状態を伴わないこととする。
① 全身性、活動性感染症
② HIV抗体、HTLV―1抗体、HBs抗原、HCV抗体陽性
③ 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く)
2)血液生化学、尿所見から器質的腎疾患が存在しない。
3)年齢:70歳以下が望ましい。
〔別添2〕
都道府県腎移植コーディネーター設置要領
1 目的
都道府県、腎バンク、救命救急センターその他の移植部門を除く医療施設等(以下「設置施設」という。)に腎移植コーディネーターを設置し、腎移植の円滑な実施を図ることを目的とする。
2 設置者
設置者は、原則として設置施設の長とする。
ただし、腎移植コーディネーターは、都道府県が、設置施設と関係機関等と調整して決定するものとする。
3 設置基準
腎移植コーディネーターは、以下の要件をすべて満たす者で、原則として当該都道府県内全域の腎移植推進業務に従事する者とする。
(1) 原則として医療有資格者又は四年制大学を卒業した者(腎移植コーディネーターの経験が三年以上かつ腎提供の承諾について三例以上の経験を有する者を含む。)
(2) 社団法人日本腎臓移植ネットワークが行う研修の受講者(研修の受講を予定している者を含む。)
(3) 社団法人日本腎臓移植ネットワークが行う腎移植コーディネーター試験に合格した者
(4) 腎臓移植ネットワークにおいて当該都道府県を担当するブロックセンター及び設置施設の長の推薦がある者
(5) 設置施設に常駐できる者又は所属する施設の業務以外に腎移植コーディネーターとしての業務に相当時間を費やすことのできる者
4 業務内容
腎移植コーディネーターは、当該ブロックセンター長の指導のもとに、主に次の業務を行う。
(1) 日常業務
ア 都道府県内の腎提供に協力いただく施設の医療従事者等に対し腎移植に関する普及啓発活動を行い、腎提供協力の拡充に努めるとともに、腎提供に協力いただく施設等を定期的に巡回し、腎提供に対する理解及び協力を得る。
イ ブロックセンターと定期的に連絡を取り、情報交換等を行うとともに活動月報を作成する。
ウ 腎移植希望者に対し、登録申請のための受付業務を行う。
エ 腎提供者の遺族に対し、移植患者の事後報告等について礼意をもって対応する。
(2) 腎提供発生時業務
ア 原則として、ブロックセンターのチーフコーディネーター及び主事医と連絡を取りつつ、腎提供可能者の家族に対して腎移植についての説明を行う。
なお、腎提供発生時には、夜間・休日においても対応するものとする。
イ 組織適合性検査の実施のため腎提供者の血液の確保とともに、HLA検査センターへ血液の搬送又はその手配を行う。
ウ 摘出された腎臓の運搬の手配を行う。
エ 円滑な移植の実施を図るため、関係機関(ブロックセンター、腎提供に協力いただく施設、腎移植実施病院等)との連絡調整活動を行う。
オ コーディネート活動の経過等について、ブロックセンターに報告を行う。
5 その他
この設置要領は、平成八年四月一日から適用するものとする。
〔別添3〕
HLA検査センター運営要領
1 目的
HLA検査センターは、腎移植ネットワーク体制の中で、移植施設等と連携を取り、腎移植に伴う組織適合性検査及び移植関連検査を実施し、またHLA全国トレイの作成のために必要な措置を講じて、腎移植の円滑な推進を図ることを目的とする。
2 業務内容
(1) 腎移植希望登録者のHLA型等の検査を行い、そのデータを腎移植ネットワークにおける該当するブロックセンターに送付する。
(2) 提供腎が発生した場合に、組織適合性検査及び移植関連検査を緊急に行う。
(3) その他関係機関等との必要な連絡調整を行う。
3 検査体制
HLA検査センターは、腎移植医療を円滑に行うため、次のとおりHLA総合センター、HLA協力センター及びHLA検査センターに区分して検査体制を組織し、検査等の遂行に必要な措置を講ずる。
(1) HLA総合センター
HLA検査を全国で円滑に行うため、国立佐倉病院をHLA総合センターとし、社団法人日本腎臓移植ネットワークと協力して次の業務を行う。
ア HLA抗血清作成
イ HLA全国トレイ作成
ウ HLA全国トレイの精度検査
エ HLA検査(腎移植希望登録者、腎提供候補者)
オ リンパ球交叉試験
カ 移植関連検査(感染症等)
キ PRA検査
ク HLA検査の教育・研修の支援
ケ HLA関連情報の提供
(2) HLA協力センター
HLA全国トレイの円滑な配布と腎移植ネットワークにおける組織適合性検査及び移植関連検査を支援するため、地域内にHLA協力センターを設置し、次の業務を行う。
ア HLA抗血清作成
イ HLA抗血清の精度検定
ウ HLA総合センターで作成したトレイによるHLA検査(腎移植希望登録者、腎提供候補者)
エ リンパ球交叉試験
オ HLA検査及びリンパ球交叉試験の夜間緊急時対応
カ 移植関連検査(感染症等)
キ PRA検査
ク HLA検査の研修・実習への協力
(3) HLA検査センター
腎移植のネットワークにおける組織適合性検査及び移植関連検査を円滑に行うため、HLA検査センターを設置し、次の業務を行う。
ア HLA抗血清作成(妊産婦血液の収集を含む)支援
イ HLA抗血清の精度検定
ウ HLA総合センターで作成したトレイによるHLA検査(腎移植希望登録者、腎提供候補者)
エ リンパ球交叉試験
オ 移植関連検査(感染症等)
カ PRA検査
キ 検査体制が可能ならば、HLA検査及びリンパ球交叉試験の夜間緊急時対応
4 組織適合性に関する委員会の指導・調整
HLA全国トレイ作成、検査センターにおける検査の精度管理、HLA検査のための教育研修等を行うため、社団法人日本腎臓移植ネットワーク本部に組織適合性に関する委員会を設け、HLA総合センター、HLA協力センター及びHLA検査センターに対して必要な指導・調整を行うことができる。
5 その他
この運営要領は、平成八年四月一日から適用する。
別添4 略