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○救急救命処置の範囲等について

(平成4年3月13日)

(指第17号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省健康政策局指導課長通知)

救急救命士法(以下「法」という。)の施行については、平成3年8月15日健政発第496号をもって通知したところであるが、今般、法第2条第1項に規定する救急救命処置の範囲等を左記のとおり定めることとしたので、関係方面への周知徹底及び指導方よろしくお願いしたい。

1 法第2条第1項に規定する救急救命処置とは、「その症状が著しく悪化するおそれがあり、若しくはその生命が危険な状態にある傷病者(以下「重度傷病者」という。)が病院若しくは診療所に搬送されるまでの間又は重度傷病者が病院若しくは診療所に到着し当該病院若しくは診療所に入院するまでの間(当該重度傷病者が入院しない場合は、病院又は診療所に到着し当該病院又は診療所に滞在している間。)に、当該重度傷病者に対して行われる気道の確保、心拍の回復その他の処置であって、当該重度傷病者の症状の著しい悪化を防止し、又はその生命の危険を回避するために緊急に必要なもの」であり、その具体的範囲は、別紙1のとおりであること。

2 法第44条第1項及び救急救命士法施行規則第21条の規定により、別紙1に掲げる救急救命処置のうち心肺機能停止状態の重度傷病者に対する(2)、(3)及び(4)、心肺機能停止状態でない重度傷病者に対する(5)及び(6)は、医師の具体的指示を受けなければ、行ってはならないものであること。

なお、これらの救急救命処置の具体的内容及び医師の具体的指示の例については、別紙2を参照されたい。

(別紙1)

救急救命処置の範囲

(1) 自動体外式除細動器による除細動

・処置の対象となる患者が心臓機能停止の状態であること。

(2) 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液(別紙2参照)

(3) 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク又は気管内チューブによる気道確保(別紙2参照)

・気管内チューブによる気道確保については、その処置の対象となる患者が心臓機能停止の状態及び呼吸機能停止の状態であること。

(4) エピネフリンの投与((10)の場合を除く。)(別紙2参照)

・エピネフリンの投与((10)の場合を除く。)については、その処置の対象となる患者が心臓機能停止の状態であること。

(5) 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保及び輸液(別紙2参照)

(6) ブドウ糖溶液の投与(別紙2参照)

・ブドウ糖溶液の投与については、その処置の対象となる患者が血糖測定により低血糖状態であると確認された状態であること。

(7) 精神科領域の処置

・精神障害者で身体的疾患を伴う者及び身体的疾患に伴い精神的不穏状態に陥っている者に対しては、必要な救急救命処置を実施するとともに、適切な対応をする必要がある。

(8) 小児科領域の処置

・基本的には成人に準ずる。

・新生児については、専門医の同乗を原則とする。

(9) 産婦人科領域の処置

・墜落産時の処置……臍帯処置(臍帯結紮・切断)

胎盤処理

新生児の蘇生(口腔内吸引、酸素投与、保温)

・子宮復古不全(弛緩出血時)……子宮輪状マッサージ

(10) 自己注射が可能なエピネフリン製剤によるエピネフリンの投与

・処置の対象となる重度傷病者があらかじめ自己注射が可能なエピネフリン製剤を交付されていること

(11) 血糖測定器(自己検査用グルコース測定器)を用いた血糖測定

(12) 聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取

(13) 血圧計の使用による血圧の測定

(14) 心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送

(15) 鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去

(16) 経鼻エアウェイによる気道確保

(17) パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定

(18) ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定

(19) 自動式心マッサージ器の使用による体外式胸骨圧迫心マッサージ

(20) 特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持

(21) 口腔内の吸引

(22) 経口エアウェイによる気道確保

(23) バッグマスクによる人工呼吸

(24) 酸素吸入器による酸素投与

(25) 気管内チューブを通じた気管吸引

(26) 用手法による気道確保

(27) 胸骨圧迫

(28) 呼気吹込み法による人工呼吸

(29) 圧迫止血

(30) 骨折の固定

(31) ハイムリック法及び背部叩打法による異物の除去

(32) 体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察

(33) 必要な体位の維持、安静の維持、保温

(別紙2)

医師の具体的指示を必要とする救急救命処置

項目

処置の具体的内容

医師の具体的指示の例

(1) 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液

・留置針を利用して、上肢においては①手背静脈、②橈側皮静脈、③尺側皮静脈、④肘正中皮静脈、下肢においては①大伏在静脈、②足背静脈を穿刺し、乳酸リンゲル液を用い、静脈路を確保するために輸液を行う。

・静脈路確保の適否、静脈路確保の方法、輸液速度等

(2) 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク又は気管内チューブによる気道確保

・食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク又は気管内チューブを用い、気道確保を行う。

・気道確保の方法の選定、(酸素投与を含む)呼吸管理の方法等

(3) エピネフリンの投与(別紙1の(10)の場合を除く。)

・エピネフリンの投与(別紙1の(10)の場合を除く。)を行う。

・薬剤の投与量、回数等

(4) 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保及び輸液

・留置針を利用して、上肢においては①手背静脈、②橈側皮静脈、③尺側皮静脈、④肘正中皮静脈、下肢においては①大伏在静脈、②足背静脈を穿刺し、乳酸リンゲル液を用い、静脈路を確保し、輸液を行う。

・静脈路確保の適否、静脈路確保の方法、輸液速度等

(5) ブドウ糖溶液の投与

・低血糖発作が疑われる患者に対し血糖測定を行い、低血糖が確認された場合、静脈路を確保し、ブドウ糖溶液の投与を行う。

・薬剤の投与の適否、薬剤の投与量等

〔留意事項〕

① 処置の対象の状態については下記の表に示す。(○が対象となるもの)

項目

心臓機能停止及び呼吸機能停止の状態

心臓機能停止又は呼吸機能停止の状態

心肺機能停止前

(1)

乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液


(2)

食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスクによる気道確保


気管内チューブによる気道確保



(3)

エピネフリンの投与(別紙1の(10)の場合を除く)

心臓機能停止の場合のみ○


(4)

乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保及び輸液



(5)

ブドウ糖溶液の投与



② 医師が具体的指示を救急救命士に与えるためには、指示を与えるために必要な医療情報が医師に伝わっていること及び医師と救急救命士が常に連携を保っていることが必要である。

なお、医師が必要とする医療情報としては、全身状態(血圧、体温を含む。)、心電図、聴診器による呼吸の状況などが考えられる。

③ 心肺機能停止状態の判定は、原則として、医師が心臓機能停止又は呼吸機能停止の状態を踏まえて行わなければならない。

・心臓機能停止の状態とは、心電図において、心室細動、心静止、無脈性電気活動、無脈性心室頻拍の場合又は臨床上、意識がなく、頸動脈、大腿動脈(乳児の場合は上腕動脈)の拍動が触れない場合である。

・呼吸機能停止の状態とは、観察、聴診器等により、自発呼吸をしていないことが確認された場合である。