添付一覧
○輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準の廃止及び輸血療法の適正化に関するガイドラインの制定について
(平成元年九月一九日)
(健政発第五〇二号)
(厚生省健康政策局長通知)
今般、「輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準を廃止する告示」(平成元年九月厚生省告示第一六三号)が別添のとおり公布され、「輸血に関し医師又は歯科医師の準拠すべき基準」(昭和二七年六月厚生省第一三八号)が廃止されたところですが、これは輸血療法における環境の変化に対応するものであり、これに伴つて別紙のように標記ガイドラインを定めますので、これを参照し輸血療法の適正化に努めますよう貴会会員に対しよろしく周知方願います。
別添 略
(別紙)
輸血療法の適正化に関するガイドライン
Ⅰ 輸血療法についての基本的事項
1 輸血療法の考え方
(1) 適応の決定
(補充療法)
輸血療法は、血液中の赤血球や凝固因子等の各成分の機能や量が低下したときにその成分を補充することを主な目的として行われる。他の薬剤の投与によつて治療可能な場合には輸血は行うべきでない。
(リスクとのバランス)
輸血療法は一定のリスクが伴うことから、リスクを上回る効果が期待されるかどうかを十分に考慮し、適応と輸血量を決める。
(説明と同意)
輸血療法を行う際には、患者またはその家族に理解しやすい言葉でよく説明し、同意を得た上でその旨を診療録に記録しておく。
(2) 成分輸血
(製剤の選択、用法、用量)
血液中の各成分は必要量、血管内寿命、産生率等がそれぞれ異なり、また、体外に取り出され保存された場合には、その機能が生体内にある場合とは異なつてくる。したがつて、輸血療法に当たつては、各血液成分の持つ機能を十分考慮して、用いる製剤の種類、量、輸血の回数及び間隔を決める必要がある。
(成分輸血)
余分な成分による副作用や合併症をできるだけ防ぎ、循環係への負担を最小限にするとともに、限られた資源である血液を有効に用いるため、全血製剤を用いる全血輸血よりも、赤血球製剤等の成分製剤を用いる成分輸血を輸血療法の基本とするべきである。
(3) 適正な輸血
(供血者数)
肝炎等のリスクを減らすためには、できるだけ供血者の数を少なくすることが重要である。四○○ml以上輸血する場合は、一人から四○○ml採血した血液を用いることが望ましい。同様に血漿と赤血球等を併用するいわゆる「抱合わせ輸血」は、特別な場合の外は避けるべきである。
(栄養補給ではない)
輸血された血漿蛋白は体内で分解され、そのアミノ酸の一部が肝臓においてアルブミンの再合成に用いられるが、その率は低いなどの理由から、栄養補給を目的としての輸血はするべきでない。経口でカロリーを補えないような場合には経管栄養法や静脈栄養法を用いる。
(ガイドライン)
新鮮凍結血漿、赤血球濃厚液及びアルブミン製剤の適正な使用方法については、血液事業検討委員会によりガイドラインとしてまとめられている(薬発第六五九号、昭和六一年八月)ので、参照されたい。
2 実施上の注意点
1) 輸血用血液の安全性及び患者との適合性の確認
(1) 輸血用血液の安全性
(供血者の問診)
輸血用血液の採血を行うにあたつては、輸血療法にともなう合併症を防ぐために供血者の問診を行い、リスクのある供血者を除く必要がある。
(検査項目)
採血された血液については次の検査を行う。
梅毒血清反応、HBs抗原、HIV抗体、HTLV―1(ATLA)抗体、GPT、ABO式血液型、Rho(D)因子。さらに可能な場合には、間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニングも行う。
なお、日本赤十字社血液センター(以下、血液センターという)で製造されている血液製剤については、不規則抗体スクリーニングを含めてこれらの検査が既に行われている。
(2) 患者との適合性
a 患者の血液検査
(検査項目)
患者(受血者)については不適合輸血を防ぐため、ABO式血液型、Rho(D)因子の血液型検査を行う。また、可能な限り間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニングも行う。
(ABO式血液型)
ABO式血液型を検査する際には、患者血球の抗原を調べるオモテ検査と患者血清中の抗A抗体、抗B抗体、抗A、B抗体の存在を調べるウラ検査とを行う。
b 交差適合試験
交差適合試験は患者とABO式血液型が同型の血液を用いて行うが、患者がRho(D)陰性の場合にはABO式血液型が同型で、かつRho(D)陰性の血液を用いて行う。なお、患者が臨床的に意義のある不規則抗体を持つていることが明らかな場合には、対応する抗原を持たない血液を用いて交差適合試験を行う。交差適合試験には、患者血清と供血者血球の反応をみる主試験と患者血球と供血者血清の反応をみる副試験とがある。
(交差適合試験)
不適合輸血を防ぐために、ABO式血液型の不適合を検出でき、かつ三七℃で反応する抗体を検出できる適正な方法で交差適合試験を行う。
(赤血球製剤と副試験)
交差適合試験の際、供血者の血液型検査と間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニング及び患者の血液型検査とが正しく行われていれば、副試験は省略されてもよい。
(血漿、血小板製剤と交差適合試験)
血漿成分製剤及び赤血球をほとんど含まない血小板製剤の輸血に際しては、交差適合試験は省略してよい。ただし、供血者の血液型検査と間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニング及び患者の血液型検査とを正しく行い、原則としてABO式血液型の同型血液を使用する。なお、患者がRho(D)陰性の場合、特に女児もしくは妊娠可能な女性の場合は、Rho(D)陰性の血小板製剤をできるだけ使用するように努める。Rho(D)陽性の血小板製剤をRho(D)陰性患者特に女児もしくは妊娠可能な女性に用いなければならなかつた場合、抗D免疫グロブリン製剤の事後の注射により、抗D抗体の産生を予防できることがある。
(検体の採取時期)
過去三か月以内に輸血歴または妊娠歴のある場合には、交差適合試験に用いる検体を輸血予定日前三日以内に採取することが望ましい。
(検体のダブルチェック)
検体の取り違えをチェックするために、交差適合試験に用いる検体は患者の血液型を調べるための検体とは別に、新しく採取したものが望ましい。
(3) 手術時の血液準備量
血液を無駄にせず、また輸血業務を効率化するため、合併症のない待機的手術症例では、準備する血液について次の方法を積極的に用いるべきである。
(タイプ・アンド・スクリーン)
出血量が五○○~六○○ml以下と少なく、術中輸血の可能性が三○%以下と小さいことが予想される待機的手術では、受血者のABO式血液型、Rho(D)因子、不規則抗体の有無をあらかじめ調べ、Rh陽性で不規則抗体がない場合は、術前に交差適合試験を行わない。緊急に輸血療法が必要になつた場合には血液を取りよせ、オモテ検査によりABO式血液型のみを確認するか、あるいは交差適合試験(主試験)を生理食塩液法(迅速法)により行い、適合血を輸血する。(こうした方法をタイプ・アンド・スクリーン‥T&Sと呼んでいる。)
(最大手術血液準備量)
確実に輸血療法が行われると予測される待機的手術では、各病院ごとに過去に行つた手術から手術術式別の輸血量(出血量)と準備血液量を調べ、通常は実際の平均輸血量の一・五倍程度の血液を交差適合試験を行つて準備する。(これを最大手術血液準備量‥Maximum Surgical Blood Order Schedule,MSBOS という。)
(4) 緊急時の輸血及び大量輸血における例外
a 緊急時の輸血
緊急に赤血球の輸血が必要になつた場合は、直ちに患者の検査用血液を採取することに努めるとともに、その状況に応じて次のように対処するが、ABO式血液型の同型血液を使用することを原則とする。
(同型血液製剤)
患者の最新の検体でABO式血液型の検査を直ちに実施し、同型の赤血球製剤または全血製剤を使用するとともに、引き続き交差適合試験を行う。
(O型赤血球製剤)
患者のABO式血液型の検査をする余裕もない場合は、O型の赤血球製剤を使用する。しかし、できるだけ速やかにABO式血液型の検査を行い、同型の赤血球製剤または全血製剤の輸血に切り替える。やむを得ずO型赤血球製剤で輸血を開始し、相当量の輸血をしてしまつた後、患者のABO式血液型が決定し得たときは、その後の輸血については、輸血の途中で採取した最新の患者血液と同型の赤血球製剤または全血製剤との間で行つた交差適合試験(生理食塩液法の主試験)の結果に基づいて判断する。
(Rho(D)陰性の場合)
Rho(D)因子の検査の結果、Rho(D)陰性と判明したときには、緊急にRho(D)陰性血液製剤を入手することは困難なことが多い(日本人でのRho(D)陰性の頻度は○・五%)。しかし、できるだけRho(D)陰性の赤血球製剤や全血製剤を輸血するように、特に患者が女児もしくは妊娠可能な女性の場合は、Rho(D)陰性の血液製剤に切り替えるように努力する。
(事由の説明と記録)
緊急に輸血が必要となつた際に、やむを得ず交差適合試験未実施の血液あるいはRho(D)陰性患者にRho(D)陽性の血液を輸血する場合には、担当医師はその事由を理解しやすい言葉で患者またはその家族に説明した上で、同意を得る努力をし、その経過と結果を診療録に記載する。
b 大量輸血時の適合血
大量輸血とは、二四時間以内に患者の循環血液量と等量またはそれ以上の輸血が行われることをいう。
(交差適合試験)
大量輸血後の患者にさらに輸血を必要とする場合には、交差適合試験を十分に行う時間が少ないことも多いが、少なくとも生理食塩液法(室温)による交差適合試験(主試験)を実施する。患者の血液は新しく採血して検査に用いる。なお、患者があらかじめ不規則抗体を持つていることが明らかな場合には、抗血清試薬により対応する抗原を持たない血液製剤を選んで前途の交差適合試験を行うことに努めるが、輸血前の検査用血液が残つている間は、それを用いてもよい。
2) 実施体制
(1) 輸血前
(保存法)
病院内においても、全血、赤血球製剤及び新鮮液状血漿は、四℃~六℃で、新鮮凍結血漿はマイナス二○℃以下で、それぞれ温度記録計の設置されている保冷庫中に恒温で保存するべきである。血小板製剤はできるだけ速やかに輸血することに努めるべきであるが、保存する場合には室温(二○℃~二四℃が最適である)で振盪撹拌しつつ保存することが望ましい。
(病室等での保管)
全血と赤血球製剤においては、温度管理が不十分な状態では赤血球の質が低下したり、血液中に混入していた細菌が増殖したりする場合があるなど、問題が生じやすいので、病室や手術室でも血液を実際に使用するまでは厳重な温度管理の下で保管するべきである。
(外観)
輸血の実施前には、溶血や凝血塊、バックの破損などの異常がないかどうかを肉眼で確かめる。
(一回一患者)
輸血の準備及び実施は、できるだけ一回に一患者ごとに行うことが望ましい。複数の受血者用の血液を一度にまとめて準備し、患者から患者へ続けて輸血することは、取り違えによる誤りをおかす原因となりやすいからである。
(チェック項目)
事務的な過誤による血液型不適合輸血を防ぐために、輸血用血液の受け渡し時、輸血準備時呼び輸血実施時にそれぞれ、血液型、血液製剤製造番号、有効期限、交差適合試験等の検査結果と輸血用血液が該当患者に適合しているものであることを複数の人でチェックする。
(照合の仕方)
チェックする場合には二人で声を出し合つて読み合わせをし、その記録をする。
(同姓同名患者)
同姓同名の患者がいる場合があり得るので、生年月日、IDナンバー等による個人の同定も必要である。
(追加輸血時)
同様な注意は引き続き輸血を追加する場合にもあてはまり、追加されるそれぞれの輸血用血液についても必要である。
(2) 輸血中
(輸血速度と観察)
輸血する速度は患者の状況に応じて設定するが、一般的には輸血開始時はゆるやかに設定し、輸血による急性反応の有無について少なくとも開始後の五分間程度観察する。
(開始後の観察)
輸血開始後一五分程度経過した時点において再度様子を観察し、その後も適宜観察する。
(3) 輸血後
(確認事項)
輸血終了後に、再度患者名、血液型及び血液製剤製造番号を確認し、診療録にその製造番号を記録する。
(検体の保存)
輸血後の副作用あるいは合併症が生じた際の原因調査と治療に役立てるため、患者血液と輸血血液のパイロット血液は少なくとも一~二週間、四℃程度で保存しておくことが望ましい。
(4) 副作用発生時の対応
(輸血の中止)
輸血による副作用と考えられる症状を認めた場合には、直ちに輸血を中止する。しかし、血管は確保しておき、生理食塩液等の点滴に切り換えて必要な処置を講ずる。
(即時型副作用)
即時型の重篤な副作用としては、血管内溶血、アナフィラキシーショック、循環不全、細菌汚染血輸血によるエンドトキシンショック(菌血症)等がある(副作用の種類については参考資料を参照)。
(原因究明)
輸血副作用をみた場合には、その原因を明らかにするように努め、類似の事態の再発を予防する対策に資する。
3) 患者のフォローアップ
(輸血後肝炎)
輸血後肝炎の多くは輸血後三か月以内に発症し、六か月を超えて発症するものは稀である。このため輸血後肝炎に罹患していないかどうかについては最低三か月間、できれば六か月間程度、肝機能をフォローアップすることが望ましい。
(その他)
その他の輸血感染症の発症の有無や免疫抗体産生の有無等についても、必要に応じてフォローアップすることが望ましい。
4) 輸血の管理体制
輸血療法の実施にあたつては、医療機関内の複数の部署がかかわるため、次のような一貫した業務体制をとることが望ましい。
(輸血部門の設置と責任医師の任命)
輸血療法を日常的に行つている機関では、できるだけ専門の輸血部門を設置し、集中的に業務を行い、院内における輸血業務の実施全般について責任を持つ医師を任命しておく。
(輸血療法委員会の設置)
病院管理者及び輸血療法に携わる各職種からなる輸血療法についての委員会を病院内に設け、その委員会で輸血療法の適応の問題、血液製剤の選択、輸血検査項目・術式の選択、輸血実施時の手続き、院内での血液の使用状況、輸血療法に伴う事故や副作用・合併症対策等について検討する。
Ⅱ 院内血輸血について
院内血による輸血療法の場合には、Ⅰで述べた基本的事項に加え、その適応や実施体制において特殊性があるので、以下の諸点に留意する必要がある。
1 説明と同意
院内血輸血が必要となる場合には、患者またはその家族に理解しやすい言葉でよく説明し、同意を得た上でその旨を診療録に記録しておく。
2 必要となる場合
院内血輸血は、採血した血液の検査が不十分になりやすく、また供血者を集めるために患者や家族等に負担をかけることから、血液センターからの供給体制が確立されている現状においては、特別な事情がある場合の他は行うべきではない。院内血輸血が必要となる場合は次のとおりである。
(1) 成分採血
顆粒球や特定の血小板を必要とする場合で、血液センターからこれらが得られないため、院内でアフェレーシスを用いて採血する場合。
(2) 緊急時
離島や僻地等で各血液センターから遠く、血液の搬送が間に合わないといつた緊急事態の場合。
(3) 当日新鮮血
赤血球とともに血小板または新鮮血漿成分あるいはこれらの両者を同時に必要とする場合で、止血機能が高い当日新鮮血が適応となるが、血液センターから入手できない場合。
しかしこのような場合でも、採血翌日の血液として採血後二四時間程度の血液が各血液センターから入手可能なことが多いことから、なるべく血液センターからの新鮮血を用いるべきである。また、新鮮血を用いる場合は、GVHR等のリスクを考慮して必要最小限に留める必要があり、大量輸血で当日新鮮血を用いる場合でも、全量が当日新鮮血である必要はなく、一般的には全輸血血液量の二○~二五%が当日新鮮血であればよいとされている。
3 不適切な使用
以下の場合は、院内血としての当日新鮮血を必要とする特別な事情のある場合とは考えられず、不適切である。
(1) 単に止血機能のみを目的とした場合
止血機能が低下している場合に、血小板が不足していれば血小板、凝固因子が不足していれば凝固因子を補うべきである。
(2) 赤血球の酸素運搬能の維持を目的とした場合
赤血球の酸素運搬能の維持する必要のある場合でも、採血後一週間以内の赤血球濃厚液、保存血液中の赤血球で対応できる。
(3) 単にアシドーシスまたは高カリウム血症の予防を目的とした場合
採血後三~五日の保存血であればほとんど問題にならない。
(4) 肝再生、未知の因子による効果等の医学的根拠が未だ明確でない効果を目的とした場合
4 供血者への注意
採血に伴う供血者への重大な事故や副作用をできるだけ避けるため、以下の諸点に注意する必要がある。
(1) 採血基準
「採血及び供血あつせん業取締り法」に基づき供血者について行うべき健康診断の方法(厚生省令、昭和六一年一月)が示されているので、原則としてこれに従つて採血するべきである。問診を行う際には、聞き漏らしのないように、あらかじめ問診票を用意しておくことが望ましい。
(2) 供血者への説明
採血された血液について行う検査内容を、あらかじめ供血者に説明しておく。
(3) 消毒
採血針を刺入する部位の清拭と消毒は入念に行う。
(4) 正中神経損傷
極めて稀であるが、正中神経損傷を起こすことがありうるので、針の刺入部及び深さに注意する。
(5) 血管―迷走神経反射
血管―迷走神経反射等の反応がみられる場合がある(供血者の一%以下)ので、採血中及び採血後も供血者の様子をよく観察する必要がある。採血後に一五分程度の休憩をとらせる。
(6) 止血
採血後の圧迫による止血が不十分であると血腫ができやすいので、適正な圧力で十分な時間圧迫する。
5 採血の実施体制
(1) 担当医師との連携
採血に携わる者は指示を出した医師と緊急度や検査の優先順位等について十分連携をとることが必要である。
(2) 採血場所
院内採血を行う場合は清潔を保ち、採血を行うために十分な広さと明るさがあり、静けさと適切な温度が保てることが必要である。
6 院内血の安全性及び適合性の確認
(1) 検査事項
院内血の検査も、Ⅰ21)輸血用血液の安全性及び患者との適合性の確認の項での記載と同様に行う。
(2) 緊急時の事後検査
緊急時等で検査が輸血前に行えなかつた場合でも、輸血後の患者の経過観察と治療が必要になる場合に備えて、事後に輸血に用いた血液について前途の検査をしておくことが望ましい。
7 自己血輸血
自己血輸血のうち、手術が既に予定されている患者で、術前に自己の血液をあらかじめ採血しておき、または手術中に出血した血液を回収するなどして自己の血液を輸血に用いる方法については、以下のように考える。
(1) 自己血輸血の利点
(感染症の予防)
血液を介する感染症を合併するリスクがない。
(同種免疫の予防)
同種免疫等の免疫反応による副作用のリスクがない。
(免疫抑制作用の予防)
同種血輸血により引き起こされると考えられている免疫抑制作用を防ぐことができる。
(2) 自己血輸血の不利な点
(確保量の限界)
採血または回収できる量に限界がある。
(循環動態への影響)
採血により循環動態等に対して悪影響を与える可能性がある。
(細菌汚染の危険)
細菌による汚染に注意が必要である。特に液状保存や回収式では注意が必要である。
(人手と技術)
採血、保存、管理等に通常の輸血以上の人手や技術が必要である。
(3) 自己血輸血についての評価
(推奨される場合)
術前状態が良好で緊急を要しない待機的手術の場合や、特に稀な血液型や免疫抗体がある場合には、自己血輸血の適応を積極的に検討することが推奨される。
(選択と組合せ)
自己血輸血の方法としては、患者の病状、術式等を考慮して術前の貯血式、術直前の稀釈式、術中の回収式等の各方法を適切に選択し、または組み合わせて行うことを検討するべきである。
