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○医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律の公布について(抄)

(昭和三〇年八月八日)

(発医第七四号)

(各都道府県知事あて厚生省医務局長、厚生省薬務局長連名通達)

さきに第二二回国会において成立した標記の法律が、昭和三○年八月八日法律第一四五号をもつて公布となり、これが施行については近く具体的に通知する予定であるが、本法公布について左記事項につき御留意を得たく通知する。

一 この法律は、第二二回国会において議員提案により成立したものであり、昭和二六年法律第二四四号をもつて公布された医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律であること。

二 この法律の改正要点は、次の通りであること。

(イ) 医師、歯科医師に対して処方せん交付義務を課し、並びに調剤は原則として薬剤師が行うものであることを規定する昭和二六年法律第二四四号の根本趣旨は変らないものであるが、医師、歯科医師が処方せん交付義務を免れうる場合を法律に具体的に規定したものであること。

(ロ) 医薬分業実施地域に関する規定を削除したこと。

(ハ) 医師、歯科医師の調剤に関する義務違反に対する罰則をこれら以外の一般人のそれと区別して軽減したこと。

(ニ) 医薬関係審議会を廃止したこと。

三 この法律自体は、公布の日から施行されるものであるが、この法律により改正された昭和二六年法律第二四四号の施行期日は、昭和二九年法律第二一一号をもつて、昭和三一年四月一日と改正されているので、所謂新医薬制度は明年四月一日から施行されるものであること。

四 本法律の実施上、従来の医療報酬体系は改訂する必要があり、政府はすでに昭和二九年九月、従来行われた各種の調査等を基礎として「新医療費体系に関する構想」と公表したが、その後本構想の再検討を行つており、更にその再検討の結果に基いて、社会保険診療報酬点数の改訂を行うため、必要な措置をとる予定であること。

なお、参考までに、法律(略)及び衆議院社会労働委員会において医師法第二二条各号及び歯科医師法第二一条各号の内容に関して求められた政府の資料を添付する。

医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆法第五二号)の参議院における審議の際要求により提出した資料 (昭三○、七、二九)

一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれのある場合

これは医師の投薬の行為自体に心理的効果を求める所謂暗示療法と称せられる投薬をなす場合で、対象となる疾病は神経症(神経衰弱、ヒステリー、不眠神経症、強迫神経症、不安神経症等を含む。)、薬品しへきである。他の疾患に神経症症状を伴う場合、例えば結核性疾患や卒中後の麻痺の如く非常に長い慢性疾患の場合において、患者がその経過や症状の消長に敏感である場合に、それの影響の下に心因性の神経症そのものが加わるか、又はこれに類似した神経症症状を呈する場合も含まれる。

二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与えその疾病の治療を困難にするおそれがある場合

癌、肉腫、白血病等の如く当該疾患の予後が不良とされる疾患又は再生不能性貧血、血友病の如く殆どその治癒の見込が少ないとされる疾患の場合が典型的な例である。

三 病状の短期間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合

心不全に対するジキタリス投薬の場合の如く、有効量と中毒量との差が極めて小さい医薬品を中毒の発現が予想される用量に達するまで短い間隔で反覆投与する場合等である。

その他急性肺炎又は急性化膿炎のような急性感染性に対する化学療法剤の如く医薬品を衝撃的又は継続的に投与する場合において、中毒又は副作用の発現が予想される時期に至つた以後において、その都度患者の状態を判断しなければ、医薬品の要否又は分量を定めることができない場合も本号に該当する。

四 診療又は治療方法の決定していない場合

診断又は治療方法の未だ決定していない期間において、とりあえず、対症療法として、また、所謂さぐりをいれつつ薬剤を投与する場合に、患者が処方せんの内容から医師の診療に対して疑惑不安をもち、そのため爾後の疾病の治療を困難にするような場合である。

五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合

これは、例えば狭心症の患者が医師の診断を受けた後薬局に赴き又は帰宅する際に、途中発作がおこつたときの用心に亜硝酸アルミ等を持たせてやる場合のように、患者の病状又は病気の性質から患者に対して診療を行つて後短い時間の間に薬剤を投与する必要のあるような病状の変化のおそれのある場合に、その薬剤を薬剤師から交付を受ける時間的な余裕のない場合である。

六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けとることができる者がいない場合

患者が自己の病状に対して無自覚のまま単独で診療所を訪れ医師の診断の結果直ちに安静を要する病状であることが判明したような場合が典型的な例である。