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○診療用放射線の安全管理の徹底について

(平成一一年三月二三日)

(医薬安第三一号・医薬監第三四号)

(厚生省医薬安全局安全対策・監視指導課長から各都道府県衛生主管部(局)長あて通知)

医療機関における診療用放射線の安全管理については、かねてよりご配慮いただいているところであるが、今般、別添の通り標記に係る事故が発生し、これを契機に、診療用放射線照射器具(以下「照射器具」という。)あるいは診療用放射線照射装置(以下「照射装置」という。)を使用する医療機関の取扱体制に関する自主点検の実施と、取扱職員に対する教育訓練の徹底について、通知しているところにより、貴管下医療機関に対し、関係法令の遵守、医療機関内の管理体制の確立等について指導の徹底を図られたい。

なお、万一の事故の発生の際には、医療法施行規則第三〇条の二五により保健所、警察署、消防署その他関係機関に通報するとともに、放射線障害の防止に努めなければならないこととなっており、その遵守方についても併せて指導されたい。

(別添)

医療機関において発生した医療放射線の事故について

1 琉球大学医学部附属病院における照射装置の線源交換中の事故の例

平成10年6月30日、診療用放射線照射装置使用室(放射線ラルストロン室)内において、放射線治療用アフターローディング装置の192Ir線源の交換作業中に、放射線診療従事者の被ばく事故が発生した。

事故の直接の発生原因は、以下の通りであった。

① 運搬容器のロック解除が不完全な状態のままで、線源交換作業を開始したこと。

② 遠隔操作装置の操作卓上での動作不良表示の原因を確認するにあたって、放射線測定器(サーベイメーター等)を持たずに診療用放射線照射装置使用室に入室したこと。

③ ワイヤー付の線源について、線源の付着端を非付着端と誤認したこと。

④ 使用室内に設置されている放射線測定器(エリアモニター)の警報の設定値は高めにしてあり、鳴りにくい状態となっていたこと。

また、直接の原因ではないが、線源交換にあたっての作業マニュアルの不備、機器の点検整備を行う体制が不十分であったことについても指摘されている。

この事故により2名の放射線診療従事者が被ばくしたが、被ばく線量は、全身について最大で2.3mSv(胸部に装着していたフィルムバッジの読みとり値による。)、局所手指の皮膚については最大で370mSv(線源のステンレスカプセル部分に接触、その際の線源からの距離0.5cm、接触時間1秒の仮定による。)であったと推定された。現在までのところ、この被ばくによる健康被害は認められていない。

なお、事故の再発の防止を期するため、同病院内の放射線安全委員会にて、障害防止法に基づく放射線障害予防規定の見直しが検討され、また、職員の再教育、安全意識の向上、作業マニュアルの策定等が行われたところである。

2 大阪医科大学附属病院における照射器具の紛失事故の例

平成9年度の高槻保健所による医療監視の際に、使用予定のない照射器具については廃棄するよう指導が行われていたところであるが、平成10年9月の科学技術庁の立ち入り検査の際にも同様の事項が指摘された。これらを受けて、60Coの針、管の計23本(内訳は、74MBq針5本、111MBq針5本、370MBq管8本、740MBq管5本。放射能量は、昭和44年の購入当初のもの。)を廃棄処分することとし、平成10年10月20日に(社)日本アイソトープ協会に線源を譲渡したところ、同協会での測定の結果、60Coの370MBq管8本のうち2本が線源ではなかったことが、10月27日判明した。

この60Coの針、管の23本については、昭和44年の購入当初より現在にいたるまで診療に使用された実績がなかった。また一方で、模擬線源には通常、糸を通すための穴が空けてあるが、今回のものについてはそうした穴がなかったことから、いわゆる模擬線源として用いられるものとは異なると考えられ、その入手時期、管理状況等の詳細についても不明であった。

しかしながら、同病院において自主的に2週に1度行われていた密封線源の本数の確認の記録には、異常を認めるとの記載はなく、線源ではないものが混入した経緯等に不明な点はあるものの、線源の管理、線源の確認、及びそれらの記録を行う体制の不備が、紛失事故の原因となったことは否定できないと考えられている。なお、紛失した線源の所在については、捜索にも関わらず依然不明である。(紛失した線源の、現時点での放射能量は、7.9MBq/本と推定されている。)

また、測定器を用いた線源の捜索の過程において、同じ貯蔵室に管理されていた226Ra管の一部に破損があることが別途明らかになり、これに関しては、貯蔵箱の除染を行う等の放射線障害を防止するための適切な処置を行ったところである。