添付一覧
○平成一〇年度の経営管理及び衛生検査所の指導の実施について
(平成一〇年五月一五日)
(健政発第六三〇号)
(各都道府県知事・各保健所設置市市長・各特別区区長あて厚生省健康政策局長通知)
標記については、毎年度格段の御配慮を煩わしているところであるが、平成一〇年度においては、次の事項に留意の上遺憾のないよう実施されたい。
Ⅰ 経営管理
一 実施方針
病院の経営管理指導については、「病院経営管理指導要領」に基づき、公的医療機関を中心に実施するものとするが、引き続き病院経営者の経営管理に関する自覚と認識を一層深め、健全な病院運営が図られるよう、次の事項に重点をおいて指導されたい。
なお、公的医療機関以外の医療機関についても、その申出に基づき実施されたい。
二 重点項目
(一) 病院管理体制
ア 病院の職員については、免許・資格を有する職種が多く、業務内容が区々であるが、業務を一体として遂行するためには相互の密接な協力が必要である。このため、日頃から、管理者と職員間及び職員相互間の十分な意思の疎通、各部門間の密接な連絡調整が極めて重要であることにかんがみ、病院の内部組織として設置されている運営会議、各種委員会の機能の再点検を励行し効果的に運営されるよう、また、職員の業務遂行に関し、各部門の監督の責任が明確にされ、適正な病院管理体制が確立されるよう必要な指導をすること。
イ 職員の服務の規律については、従来から不正な取引や経理の根絶、厳正な勤務体制の確立等の指導を願っているところであるが、この趣旨の徹底を図り、特に高額医療機器等の購入に当たって問題の生じないよう引き続き指導を強化されたいこと。
(二) 経営・財務管理の強化
ア 経営管理の改善
良質な医療を安定的に提供するという医療機関本来の目的を十分発揮するためには、医療機関の経営基盤の安定化を図ることが最も重要である。
また、「経営」とは、その病院の機能を最大限に生かす働きであり、その結果だけを評価することは適切でない。
地域の医療事情等を踏まえ、病院の方向性を明確にした経営戦略を策定し、その戦略の下に計画とその評価を軸に、経営管理の改善を図るよう指導されたいこと。
イ 管理者の経営に対する関心の薄さ、又は財務管理に対する理解の不足、あるいは一部の管理者等による専行等は、病院の経営を悪化させる要因となっている場合が少なくない。
近年、診療報酬債権を第三者に譲渡するなど経営上好ましくない事例も増えてきているが、内部監査等の実施、経営及び財務に関する講習会・研修会等への管理者及び事務担当責任者等の積極的参加、更には、経営状況の分析を行うなど、病院自体が経営の合理化、健全化に努めるよう指導を強化されたいこと。
なお、財務管理の改善向上を図るため、病院を開設する医療法人にあっては、「病院会計準則」(昭和五八年八月二二日医発第八二四号)による会計処理を原則としているので、これを踏まえて一層の指導を願いたいこと。
(三) 人事・労務管理の指導
ア 看護婦等については、「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針について」(平成四年一二月二五日健政発八三四号職発第八八六号文高医第二九九号)を踏まえて、夜勤回数、労働時間の改善に配慮し離職防止策を含めた確保対策を講じるよう指導されたいこと。
イ 健全な病院経営のためには、平常時における正常な労使慣行の確立が重要であり、管理者は、その点に十分な関心と注意を払うよう指導されたいこと。なお、労働争議が発生した場合には、患者の医療の確保に支障を来すことのないよう適切な指導を行うことはもとより、労働関係部署とも十分な連携を取りながら、必要に応じて、労働委員会に斡旋を依頼する等により、早期に解決が図られるよう指導されたいこと。
また、労働争議の発生に際しては、速やかに健康政策局指導課長に、その実情について連絡願いたいこと。
三 留意事項
(一) 医療施設経営改善支援事業の実施
ア 病院の経営改善は、病院自身の経営努力が基本であるが、行政サイドにおいても、その努力を効果的なものにするための支援を行う必要が指摘されており、平成六年度から都道府県で行っている医療施設経営改善支援事業の充実発展のために努められたいこと。
イ 本事業は医療機関の管理者・事務長に対する研修会を中心に経営管理に関する情報提供事業や経営相談、経営診断事業などが展開されているところであるが、これらの事業の充実強化を図るとともに、福利厚生事業や医療機器等の共同購入など医療機関の経営の相談に応ずることができるような体制の整備に努められたいこと。
(二) 病院機能評価マニュアルの活用
病院において、医療の質の向上と運営管理の合理化等を図るために自主的に機能評価を行うためのマニュアルとして「病院機能評価マニュアル」(平成元年六月二三日指第三三号)が示されており、これを活用しできるだけ多くの病院において自己評価されるよう普及に努められたいこと。
(三) その他
ア 医療機関に対する経営管理指導については、従来、公的医療機関を中心に実施しているところであるが、民間医療機関についても、地域医療の確保のために重要な役割を担っていることにかんがみ、医療法人については、毎年度提出される決算書により多額の負債がないか等について審査し、その他の民間医療機関についても、できる限り情報収集に努め、その健全な経営管理が行われているかどうかを把握し、経営上必要な指導を行うよう配慮されたいこと。
イ 医療機関の倒産等は、地域医療の確保に支障を来すばかりでなく、継続した医療を必要とする入院患者等の処遇上も大きな問題となるので、経営悪化の情報等を知り得た場合は、速やかにその実状を把握し、適切な指導を行うとともに、倒産等の概要について健康政策局指導課長に連絡願いたいこと。
Ⅱ 衛生検査所
一 実施方針
(一) 衛生検査所の立入検査については、「衛生検査所に対する指導監督の強化及び実態調査について」(昭和六二年二月二日医事第八号)により、少なくとも二年に一回以上実施することとしているが、都道府県によりその実施率に著しい差が見られるので、未実施の衛生検査所に対しては、本年度中に一巡されたい。
なお、衛生検査所の立入検査を実施する職員には、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律第二〇条の五第二項の規定による当該職員の身分を示す証明書を発行し、立入検査の際、必ず携帯するよう指導願いたい。
また、衛生検査所の登録及び変更を行う場合には、申請書の審査を十分に行うとともに、必ず実地調査を行い、申請内容と間違いないかを調査の上確認すること。
(二) 衛生検査所の立入検査については、「衛生検査所指導要領」に基づき実施するほか、「衛生検査所立入検査実施要綱」及び各都道府県で作成しているチェックリスト等の活用により遺漏のないよう実施されたい。
なお、精度管理等については、都道府県医師会、大学、都道府県衛生研究所等の専門家を「精度管理専門委員」として委嘱し、立入検査に同行させ、既知検体等を活用し、詳細に点検、指導するよう特段の配慮をされたい。
二 重点事項
(一) 検査業務
ア 検査案内書に記載すべき事項に関して、その記載された内容が登録事項及び実際に行われている業務内容と一致するよう指導すること。
イ 検体の保存状況については、温度管理、遮光、検査までの時間等が適切となっているよう、また、検査終了後も医療機関等からの問い合わせ、再検査等に対応できるよう検体保存を行うよう指導すること。
ウ 異常データが発生した場合については、原因究明を速やかに行い、医療機関に対し適切な対応を図るよう指導すること。また、その記録等を適正に管理するよう指導すること。
エ 検査機器保守管理標準作業書及び検査機器保守管理作業日誌が作成され、検査機器及び情報処理装置の保守管理が徹底して行われるよう指導すること。
(二) 精度管理の向上
ア 各検査項目ごとに―X―R管理図等の統計学的精度管理が正しく行われているか確認すること。
イ 定期的に内部ブラインド調査を行い、その結果を業務上に活用するよう指導すること。
ウ 都道府県、日本医師会、日本臨床衛生検査技師会、日本衛生検査所協会等が行う外部精度管理調査に年一回以上参加しているかの確認を行い、調査に参加していない場合は、調査に参加するよう指導すること。また、問題のあった項目について原因究明が適切に行われ、改善されているかを確認し、改善されていない場合は適切な措置を採るよう指導すること。
エ 試薬の使用は、用法に従い適切な方法で行われていること。また、各試薬の使用保管にあっては、試薬ごとに検査精度を適正に保つために必要な事項が表示され、有効期限の厳守等適切な保管がなされているか確認するとともに、試薬管理台帳を作成し、数量管理を行っているか確認すること。
三 留意事項
(一) 管理組織
ア 管理者、指導監督医及び精度管理責任者の勤務状況について確認するとともに、それぞれの職責を十分果たすべく指導すること。
イ 職員の研修については、研修内容に配慮するとともに、検体の受領搬送等の業務の従事者についても研修を実施するよう指導すること。
また、職員が外部研修に参加していない場合には、なるべく参加するよう指導すること。
ウ 衛生検査所の営業所、出張所、検体の搬送中継所等と称する場所に関しても、管理が十分になされるよう指導すること。
エ 精度管理責任者の氏名、組織運営規程が変更された場合は、速やかに変更の届出を行うよう指導すること。
(二) 職員の健康管理
職員の健康管理体制を確立し、定期健康診断により異常が発見された職員に対しては、必要な措置が採られるよう指導すること。
(三) 検体検査用放射性同位元素(RI)の管理
RIの使用及びRI廃棄物の管理について、現行法令の遵守を強力に指導すること。
(四) 医療廃棄物の適正処理
医療廃棄物のうち感染を生ずるおそれのある感染性廃棄物については、廃棄物処理及び清掃に関する法律を遵守するとともに、「感染性廃棄物の適正処理について」(平成四年八月一八日指第六一号)別紙「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」により適正に処理するよう指導すること。
(五) 厚生省令等改正後の立入検査
臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律施行規則及び医療法施行規則(病院又は診療所の施設で検体検査の業務を行う者の基準)については、平成九年六月に公表された「検体検査の精度管理等に関する委員会」報告書をもとに一部改正を行い、平成一〇年一〇月一日より施行されるものであるが、これに伴い「衛生検査所指導要領」についても一部改正を行うので、一〇月一日以降の立入検査については、これらの改正の趣旨を踏まえ実施されたい。